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正しい舌の位置は?(子どもの歯並びと歯科矯正の話)

更新日:2023年9月2日

はじめに


突然ですが、あなたの舌は普段、口の中のどこに位置していますか?

以下の3つの画像のうち、1つ正解があります。

(※正解の舌の位置は後の項目で発表します)


下あごに舌の先端が接触
A. 下あごに舌の先端が接触している

舌の先端のみ
B. 舌の先端のみが上あごに接触している

舌の中央まで接触
C. 舌の先端〜中央まで上顎に接触する

当院での矯正治療は、歯並びだけではなく、鼻呼吸や唇の形、舌の位置、飲み込み方、姿勢などもチェックしていきます。「歯並び以外になぜこのようなチェックが必要なの?」と聞かれることもありますが、歯並びが崩れるには「原因」があります。実は、この舌の位置も歯並びに影響します。


今回は「正しい舌の位置」についてお話ししていきます。


目次▼

 

正しい舌の位置はどこでしょうか?


先程の正しい舌の位置はCでした。


Cのように正しい舌の位置の人は常に上のあご(上の歯並びの内側)に収まっています。舌の先は上の前歯のやや後ろ、そして舌の本体は重力に逆らって上のあごにぴったりとついていることが理想です。


舌が間違った位置に常にいる場合、口呼吸をしている、または歯並びが悪くなっている恐れがあります。間違った位置とは、Aのように下顎にいる状態です。


舌は正しい位置に常に存在することで上あごの成長を支えてくれています。しかし間違った位置にいれば、上あごの成長が弱まるだけではなく、上下の歯に異常な力を与えて、歯並びに悪影響を及ぼすこともあります。


 

舌をいつも正しい位置にするためには


常に舌を正しい位置に置くためは以下の4つの方法があります。


1. 舌を受け入れるだけの大きさを上あごに確保する


舌が常に上あごに存在するために、まずは受け皿である上のあごの大きさが舌を無理なく入れることが可能なサイズになっている必要があります。上の歯並びの幅が極端に狭いと舌は自然に入ることができません。


狭い歯並びの人は、舌が難なく上あごにスッと入るためにも矯正装置を使用して上の歯並びをある程度広げておきましょう。


2. 口を閉じて舌が上あごにつけやすい環境をつくる


口が常に開いた状態では、自然に上あごへ吸着できません。


意識すれば可能ですが、口が開いた状態で舌を上顎に長時間キープするのはとても困難です。舌と上顎の距離は口を開いた状態では長くなり、口を閉じた状態では短くなります。


口を閉じた方が舌を上げる労力が少なくなり、楽に上げることができますよね。つまり、話をする時やご飯を食べる時以外は口をしっかり閉じた状態にすることが、舌を上あごに上げる環境づくりの第一歩です。


3. 舌の力をつける


舌を持ち上げる力は、赤ちゃんの時から培われます。この時期に簡単にミルクが出る柔らかい吸い口の哺乳瓶を使用すると、舌をあまり使わなくても飲めてしまいます。赤ちゃんの食事は毎日トレーニングの場です。舌の力が足りないと、舌を上にキープしておくことが難しくなってしまいます。


では、赤ちゃんの時に舌の力が鍛えることができなければ手遅れなのでしょうか?


いいえ、舌の力はいつからでもトレーニングで鍛えることが可能です。

小児期の歯並びや咬み合わせ異常の原因として口腔筋機能障害(お口周りの悪い癖など)があり、この対策として鼻・舌・飲み込み・唇のトレーニングがあります。


現在では、高齢者のオーラルフレイル(口腔機能の衰え)対策の1つとして、歯科医院では舌の力を測定したり、MFT(口腔筋機能療法)の一部に舌のトレーニングがあります。


4. 舌の動きを制限する原因を除去する(舌小帯)


舌を伸ばしたくても思うように伸びないお子さんもいます。この場合舌の裏の部分のスジが短い場合(舌小帯短縮症)や、つっぱりが強い(舌小帯強直)ことがあります。


舌小帯短縮症

6歳時で以下の症状がある場合は舌の動きが制限されている可能性があります。


  • 舌を伸ばすと舌の先が後ろに引かれハート型になる(ハート舌)

  • 口を開けた状態で舌で上あごを触ることができない

  • 舌を上に上げるとスジの部分が太く短い

  • カ行・サ行・タ行・ナ行・ラ行がうまく発音できない

  • 下の前歯が離れている


舌の運動機能を高めるための訓練で改善する場合もありますが、トレーニングを重ねても改善しない場合は、局所麻酔後に外科処置を行うことがあります。


ただし、外科処置後は早期に舌の挙上トレーニングを行わないとまた癒着する場合もありますので放置はしないようにしてください。


 

この記事を書いた人


歯科衛生士

医療法人社団 統慧会 かわべ歯科 歯科衛生士スタッフ


当院では、私達が歯科医師の指導のもとお子様の歯並び矯正中もお口の中のクリーニングを行い、トレーニングの指導も行っております。

 

参考文献


1. 眞木吉信,萩名子:くちペディア.医歯薬出版株式会社,2020.


2. 山口秀晴,大野粛英,橋本律子:はじめる・深めるMFT お口の筋トレ実践ガイド.株式会社デンタルダイヤモンド社,2016.


3. 近藤亜子, et al. "幼児期における舌小帯異常の実態調査." 小児歯科学雑誌 59.3 (2021): 107-116.



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