口呼吸は百害あって一利なし(子どもの歯並びと歯科矯正の話4)

最終更新: 7月17日

「あなたは普段、鼻で呼吸していますか?それとも口で呼吸していますか?」


全国66の小児歯科医院を訪問し3歳〜12歳までの3000人以上を対象とした調査で、健康状態や生活習慣に関する44項目のアンケートを子どもの保護者にとったところ、「お子さんの口は日中によく開いてますか?」という質問に「そう思う」と答えた方は30.7%でした。


専門家が様々な基準で検査を行った結果、口呼吸と判定された人の割合は50〜75%だったそうです。つまり保護者のアンケート調査と検査結果での判定との間では20%以上の隔たりがあります。


口呼吸が習慣化されると口が常に開く「お口ポカン」になってしまいます。
口呼吸の幼児 口が開いています

口呼吸は自覚することが難しいです。家族の方でも子どもが口を開けていることに違和感を感じていない、または親も口呼吸だったというケースもあります。

そのため第三者である医療機関での検査ではじめて気がつくこともあります。


今回は鼻呼吸と口呼吸についてお話ししていきます。



1鼻は匂いを感じるだけでなく加湿機能付きの空気清浄機の役割がある


鼻は匂いを感じる嗅覚の他に加湿器と空気清浄機の役割があると言われています。

空気が鼻を通ると程よい温かさと湿気を与え、空気中のホコリや細菌などをフィルター機能によって取り除いてくれます。湿度がある空気は肺で酸素が最も吸収されやすくなります。


一方、鼻呼吸がうまくできずに口呼吸になっているとホコリや細菌により病気になりやすくなり、お口の中は乾燥し、唾液が少なくなるので前歯の着色や口臭、むし歯、歯周病のリスクになります。また、口から直接乾いて冷たい汚れた空気が入ることで、のどが痛くなる、扁桃腺が腫れることもあります。特にアデノイド肥大は鼻づまりを引き起こし鼻呼吸を妨げる原因となります。また口呼吸をしている人は見た目としてもあまり良くありません。口呼吸は百害あって一利なしですね。



2口呼吸の原因は大きく分けて3つ


口呼吸の原因は主に3つに分けられます。


①鼻・気道の病気・問題が原因の口呼吸


アデノイドや口蓋扁桃など扁桃腺が大きくなる、アレルギー性鼻炎、蓄膿症などで鼻の通りが悪くなってしまい、うまく鼻呼吸することができないため口呼吸になってしまった状態です。


矯正歯科のX線撮影装置、セファログラムでは矯正に必要な骨格の情報だけでなく、気道の大きさや、アデノイドの有無を確認することが可能です。
セファログラムからアデノイドがみられます

口蓋扁桃も炎症などで腫脹すると呼吸困難となることがあります。
口蓋扁桃

上の写真は、左がアデノイド、右が口蓋扁桃の肥大です。アデノイドは直接目で見ることができないため医科なら内視鏡、歯科ならセファログラムやC Tのようなレントゲンで確認することが必要です。


鼻・気道の病気・問題が原因の場合は耳鼻咽頭科での相談が必要です。


② 咬み合わせが原因の口呼吸


上顎の発達が大きすぎる、または下顎の成長が上顎に比べ大幅に悪いなど、咬み合わせの異常によってお口が閉じづらく、口呼吸になってしまう場合があります。この場合は歯科矯正治療で改善する場合があります。


③ 習慣性の口呼吸


鼻呼吸が可能なのにクセで口呼吸を継続している状態です。幼少期から鼻がつまっていて口呼吸が習慣となってしまっている場合、鼻が通っていても鼻であまり呼吸をしていないことがあります。


2020年から新型コロナウイルス感染防止対策として、マスクを使用する機会が多くなりました。長期間のマスクの使用による息苦しさや暑さが口呼吸の原因になると考えられます。またマスクで表情が見えないことから、お口周りの筋肉の力が衰えてしまうことも懸念されます。



3口呼吸が原因の悪影響を9つ説明します


口呼吸の影響は


①唇が乾燥し荒れる


乾燥した空気が唇を通るため水分を失いひび割れ、出血を起こすことがあります。


②プラークがつきやすくなる


鼻呼吸20名と口呼吸20名の若い人達に歯科医院でのクリーニングとホームケアを6ヶ月行なった結果口呼吸のグループの方がプラークの付着範囲が大きかったという研究があります。(唾液の出る量には差はないとのことです)


③口の中が粘つく


唾液の水分が乾燥し少なくなるため、口の中に粘つき不快症状がでます。


④歯ぐきの炎症が出やすい


唾液が乾燥してしまうことで、歯ぐきの部分についた細菌を洗い流す力が弱くなり、プラークが定着し、炎症を起こしやすくなります。


⑤前歯の着色


上の前歯の表面が乾燥によって唇のラインに沿って着色しやすくなります。


⑥下の上に色素や舌苔がつきやすい


舌苔は低位舌と口が開いて、細菌が繁殖してしまった状態です。


⑦口臭になりやすい


唾液の量が減り、お口の中の衛生環境が悪化すると口が臭くなりやすいです。


⑧舌が落ち込んでしまう


口呼吸をすると口から空気を多くとりいれるために舌を下に下げてしまいます。これが続くと舌の筋肉が衰えてしまいます。


⑨出っ歯や、すきっ歯になりやすい


前歯を唇側から抑える力がないため、舌で前に長期間押され出っ歯や、すきっ歯になりやすくなります。



まとめ


①口呼吸は自覚が難しい


②鼻呼吸は加湿とフィルター機能がある


③口呼吸の原因は鼻の問題・咬み合わせ・習慣性の3つがある


④口呼吸は様々な病気との関連性があるなど健康上無視できない



この記事を書いた人


菊川の一般歯科と矯正歯科、小児歯科の歯医者さん。

医療法人社団 統慧会 かわべ歯科 理事長 川邉滋次




参考文献


①Y Nogami. Prevalence of an incompetent lip seal during growth periods throughout Japan:a large-scale,survey-based,cross-sectional study.Environ Health Prev Med 2021.


②今井一彰. 鼻呼吸歯医者さんの知りたいことがまるわかり鼻と口の呼吸で何が違う?なぜ違う?. クインテッセンス出版株式会社 2020.


③山口英晴 大野粛英 橋本律子. はじめる・深めるMFT お口の筋トレ実践ガイド. デンタルダイヤモンド社 2016.


④河井聡.口腔習癖見逃してはいけない小児期のサイン. 医歯薬出版株式会社 2019.


⑤Mummolo S.Salivary markers and microbial flora in mouth breathing late adolescents.Biomed Res Int 2018.


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