花粉症免疫療法に子供の乳歯抜歯で危険な副作用?

最終更新: 14時間前

はじめに


先日歯学博士・医療行政アナリストの中田智之先生の記事を拝見させていただき、

中でも「花粉症でも抜歯注意!?免疫療法で危険な副作用」の記事は非常に参考になり、

この情報を当院そしてブログを見てくださっている方々にもお知らせしたく、

中田先生から許可をいただきましたので、私の調べた情報も加えて掲載します。

この記事を読んでいただき「怖いから薬を避ける」のではなく「正しく情報を知っていただくことで薬と一緒にお付き合いしながら歯科診療を行う」と考えていただければ幸いです。


まず記事の内容ですが、一部をそのまま載せます。


喉頭粘膜浮腫(喉頭浮腫)というのは喉頭(こうとう)と呼ばれるのどの部分が腫れ膨らんでしまう状態です。空気の通り道になるため、膨らみが大きいと窒息の危険性もあります。


ではシダキュアとはどういう薬なのか?そしてなぜシダキュアと歯科の外科手術が関係しているのか?今後歯科治療でシダキュア処方の患者さんにはどのように対処すればいいのか等をお話していきたいと思います。



1シダキュアはどんな薬?


シダキュアは2018年7月に販売開始された円形で木のマークが彫られている舌下錠です。

舌下錠というのは舌の下に薬を置き、唾液の力で溶ける薬です。

舌の下には粘膜があるため薬の吸収が早いです(飲むタイプの錠剤は30分舌下錠は2分)


シダキュアの「シダ」はCedarスギ、「キュア」はCure治癒という意味です。

シダキュアの成分は主にスギ花粉エキス粉末です。


このシダキュアには現在2000JAUと5000JAUの2種類があります。

このJAUというのはJapanese Allergy Unitsという日本アレルギー学会が設定した日本独自のアレルギー活性の単位で数値が大きいほど濃度が高くなります。


実はシダキュアが販売される前にはシダトレンという液体の薬がありました(現在は販売中止)。しかし冷蔵保存が必要で液体の状態で2分間舌の下に保持する必要がありました。


一方、シダキュアは常温で管理ができ、固体の状態で1分舌の下に保持する薬のため、保存も使用もシダトレンよりも簡易的になっていると考えられます。


シダキュアのような治療法はアレルゲン免疫療法とよばれ、スギやダニ、ハウスダストなどのアレルゲンを少しずつ長い間投与して症状を緩和させる治療法で小児にも有効です。シダキュアの年齢制限は定められていませんが、メーカーは5歳以上を推奨しています。


治療開始はスギ花粉が飛散してない時期で使用期間は3〜5年の継続使用とのことです。


アレルゲン免疫療法には他にも「アシテア」(円形でS・A・Cの文字)、「ミティキュア」(円形で五角形のマーク)というダニアレルギーのための薬があります。スギアレルギーのためのシダキュアとダニアレルギーのためのミティキュアの併用もされているとのことです。



2シダキュアの説明書に抜歯やお口の手術時の注意記載がある


では、そのようなアレルギーを克服することを目指す薬がなぜ歯科の外科治療でアレルギー症状を起こす危険性があるのでしょうか?


シダキュア説明書の重要な基本的注意という部分に

「抜歯後は口腔内の術後又は口腔内に傷や炎症がある場合には口腔内の状態を十分観察し本剤投与の可否を判断すること。(口腔内の状態においては本剤の吸収に影響を与える恐れがある。また本剤が傷が炎症部位に刺激を与える恐れがある)」

と記述されています。

これはダニアレルゲン「アシテア」「ミティキュア」にも同様の内容が記載されています。


中田先生の記事では

「今回、歯周病の外科処置を行ったことで、創部から高い濃度の薬(スギ花粉エキス粉末)が体内に入り、強いアレルギー反応を起こしたと考えられます。口の中に傷があれば同じことが起こりうるので、抜歯だけでなく外科手術でも同様のことが起こる可能性はあります。特に奥歯付近でアレルギー反応が起こると粘膜が腫れて最悪窒息のリスクがあるかもしれません。特に子供は体格と比較して浮腫などが大きく出やすいです。抜歯等に関しての注意書きはありますが、販売が2018年ということもありこの情報は歯科大学教育ではまだとりあげられてませんし、必ずしも歯科業界の中で周知されているわけではありません」

と説明されています。



3小児は短い期間で抜歯の場面が来ることが多い


「でも3年間なら歯を抜く時ってそこまでないよね?」という意見もあると思います。


大人の歯(永久歯)が生えそろっている中学生〜成人の方であれば歯を抜く場面は、むし歯を放置してかぶせものができないくらい進行してしまった、歯周病重度になってしまった、かみあわせやけがで歯が割れてしまった、親知らずや過剰歯の抜歯、成人矯正の治療のために必要な抜歯などです。

最近の平成28年歯科疾患実態調査の表14喪失歯所有者数の年次推移を参照しても40〜44歳の歯を失った方が2016年は31.1%と「歯を抜くまたは脱落する経験」をしていない方は約7割ということになるため、抜歯をする状況はそこまで多くないと考えられます。(ただし親知らずは喪失歯に含まれません)



しかし子供の場合はどうでしょうか?


当院では小児矯正・小児歯科を行っていますが、5〜6歳以降から中学生までの間に子供の歯が抜け大人の歯が生えてくる「生え変わり」の機会が、ほぼ全ての子供達にあります。

その際、子供の歯が抜けそうで抜けない場合や、大人の歯が子供の歯の根元から見えてきている場合には子供の歯を抜歯をする必要があります。

シダトレンは小学生のお子様でも使用できるため抜歯時に注意が必要です。


そこで、今後シダキュアを使用したお子さんの来院を想定し、

実際シダキュアを処方している内科医の先生に質問させていただきました。

その結果シダキュアについて詳しい回答をいただけましたので、

今回一部抜粋して掲載します。


「シダキュアスギ花粉錠は3年を目処に継続予定ですが、ご教示いただきました通り、シダキュアスギ花粉抜歯後に粘膜の傷口にアレルゲンである舌下錠を投与することによりアレルギー反応が惹起される危険性もあります。抜歯前3〜4日から抜歯後1週間程度は舌下療法一時中止していただいても問題ありません。参考にしていただけましたら幸いです」

※惹起(じゃっき)=問題を引き起こすこと


歯を抜く前3〜4日前と抜いた後1週間は休薬しても問題ないよという内容です。ただし患者さんの年齢や状態によって左右する場合も考え、「アシテア」「ミティキュア」を含めたアレルゲン免疫療法を行っている患者様には処方している医科との連携を行っていく所存です。



まとめ


シダキュアはスギ花粉症のアレルゲン免疫療法ですが、2の説明にも記述した通り、3年〜5年は継続使用とのことですので、スギ花粉症の季節に関係なく処方し続けている可能性が高いです。


だからこそ当院も患者さんに「アレルゲン免疫療法を行っていますか?」も含んだ全身症状や処方薬のチェック強化を行っていきたいと思っております。この記事を見ていただいた方の中にもし「アレルゲン免疫療法」を行っているまたは今後行う予定がある場合には、かかりつけの歯科医院にご相談ください。



この記事を書いた人



医療法人社団 統慧会 かわべ歯科 理事長 川邉滋次


小児矯正では歯並びや口腔周囲筋のトレーニングだけでなく、食育アドバイザー、幼児食インストラクターの資格もあり食育に関する教育にも力を入れています。

最近の趣味は読書、ウォーキングです。



参考文献


①中田智之:「花粉症でも抜歯注意!?免疫療法で危険な副作用」

https://nakadashika.blogspot.com/2021/03/blog-post.html


②公益社団法人日本小児歯科学会:小児歯科学専門用語集第2版.医歯薬出版株式会社(2020)


③湯田厚司,小川由起子,萩原仁美,鈴木祐輔,神前英明,清水猛史:多重抗原感作が花粉飛散期におけるスギ花粉免疫療法の治療効果に及ぼす影響.日本耳鼻咽頭学会会報124巻3号p211-p217(2021)


④厚生労働省:平成28年歯科疾患実態調査






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