はじめに
乳歯が生えはじめる頃から、むし歯や歯ぐきの炎症、歯並び・かみ合わせの異常などが出てくることは知られています。しかし、歯が生える前にもまれに病変がみられることがあります。むし歯等と比べて目にする機会が少ないため、心配してしまう方も多いと考えられます。
そこで、今回は乳歯が生える前に発生することがある歯やお口の中の異常についてまとめてみました。これらに対する対策も載せておりますので、現在このような症状があるお子さんを持つ親御様やこれから赤ちゃんを授かる予定の親御様に参考にしていただけると幸いです。
目次▼
歯ぐきに白いプツプツ-上皮真珠(じょうひしんじゅ)
乳幼児の時に歯ぐきにできる白または黄色っぽい白をした真珠のような小さい塊を上皮真珠とよびます。
歯がつくられる途中で一部剥がれてしまったものが土手部分に出てきたものです。1個または数個の小さな塊が前歯や奥歯部分に発生することがありますが、上あごの前歯部分が多いです。
自然に消失するため歯科治療では経過を見守ることが多いですが、一度かかりつけの歯科医院に相談することをお勧めします。
歯が生える部分にふくらみ-萌出性嚢胞(ほうしゅつせいのうほう)
乳歯が歯ぐきから出てきた時に、歯ぐきが歯を覆うように膨らんで袋状になった状態です。
袋の中は半透明または青紫色の液体が含まれているため、やや青紫色に見えることがあります。
乳歯だけでなく永久歯でもみられることがありますが、乳歯の奥歯に多くみられます。痛みはなく歯が生えてくると消失する傾向があるため、経過を見守ることが多いです。
生まれつき歯が生えている-先天歯(せんてんし)
出産時にすでに生えている乳歯、または2ヶ月以内に生えてきた乳歯を先天歯(先天性歯・出産歯)とよびます。魔歯とよばれることもありますが正式名称ではありません。発生率は0.1%〜0.187%と稀です。先天歯は同じ部分にこれ以上乳歯が生えてこないタイプと、同じ部分に後から正常な乳歯が生えてくるタイプがあります。
5ヶ月以上から生えてくる正常な乳歯と比べると構造が不完全で茶色になっている、表面がザラザラとして凹凸がみられることがあります。これは歯の表面にあるエナメル質とよばれる硬い部分がうまく形成されていないことが原因です。
下の前歯に発生することが多く、授乳の時に先天歯が舌を傷つけてしまいえぐれ、潰瘍をつくってしまう(リガ-フェーデ病)ことがあります。痛みで哺乳や食べることが辛くなり、食欲不振になってしまうことがあります。
歯の根の部分も未熟でグラグラと動揺しやすく、自然に抜けてしまうことが多いです。
先天歯の原因は不明で、歯科での治療も基本的には経過を見守っていきます。
ただし、寝ている時に先天歯が抜けてしまい誤って飲みこんでしまう「誤飲」を防ぐために、早期に抜歯することもあります。他にも母乳を吸う時に乳首を傷つけてしまうこともあるため先天歯の尖りを丸める処置をすることがあります。
先天歯を抜いた・脱落した後はエプーリスとよばれる歯ぐきの増殖を起こすこともあるため歯科医院の定期的な通院は大切です。
まとめ
1. 乳歯が生える前でもお口の中の異常がみられることがある。
2. 上皮真珠・萌出性嚢胞・先天歯に対する歯科治療は、どれも基本的には経過を見守ることが多いが、まずはかかりつけの歯科医院に相談することをお勧めする。
この記事を書いた人
医療法人社団 統慧会 かわべ歯科 理事長 川邉滋次
参考文献
1.波多野宏美, et al. "先天歯に関連したエプーリスの 3 例." 小児歯科学雑誌 51.1 (2013): 36-42.
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