
過蓋咬合(かがいこうごう)はどんな歯並びなの?子どもの矯正治療方法は?(子どもの歯並びと歯科矯正の話6)
更新日:2021年7月31日
1過蓋咬合ってどんな歯並びなの?
過蓋咬合は上下の歯を咬み合わせた時に上下前歯のかぶり方が過度に深い状態です。
上下の前歯の垂直的なかぶり度合いを歯科用語でオーバーバイトといいます。

このオーバーバイトが乳歯列、永久歯列ともに、下の前歯の覆われ方が下の前歯の長さの2/3以上だと過蓋咬合と診断されます。日本人の下の前歯(下顎中切歯)の平均の長さは8.846mmのため、約6mm以上かぶりがあれば過蓋咬合と仮定すると、平成28年歯科疾患実態調査から12歳から15歳までの6mm以上の分布は約5%になります。かぶり方が大きいと正面からは下の前歯が上の前歯に隠れてしまい見えにくくなってしまいます。

過蓋咬合は他にも下の前歯が内向きに倒れ、歯が重なっていることが多く、下の前歯が上あごの歯ぐきに突き刺さってしまうケースがあります。
①下の前歯が内向きに倒れ、歯が重なっている

過蓋咬合になると咬み合わせの力の影響を大きく受けます。特に下の前歯は小さいため、咬み合わせの力が内向きにかかり、下の前歯が後ろ向きに傾いてしまいます。そのため、歯列弓が狭くなるので歯が重なる可能性が大きくなります。
②下の前歯が上あごの歯ぐきに突き刺さってしまうケース


過蓋咬合が過度に強いと下の前歯は上の前歯ではなく、その後方部分の歯ぐきにぶつかってしまう場合があります。突き刺さった部分の歯ぐきは下の前歯の跡がついていることもあります。
2過蓋咬合の原因は何があるの?
①クレンチング(くいしばり)
クレンチングとは歯ぎしり(ブラキシズム)の1つでくいしばりというかみしめが続いてしまう状態を指します。クレンチングの日中起きている時でも起こっていることが多いという特徴があります。クレンチングは子どもの生活の変化(入園・入学・受験)によるストレスとも関係していると言われています。クレンチングによって歯に垂直的な力を強くかけ続けると咬合高径が低くなり、前歯のかぶりが深くなります。学生28人を対象にした研究ではクレンチングによる歯の移動が大きいという報告があります。
②ほおづえ
ほおづえはあごに非常に強い力を押しつけるため上下のあごのゆがみや歯列のゆがみを短期間で引き起こしてしまいます。下のあごを過度に押しつけることによってクレンチングと似た状態となる場合もあります。
③うつぶせ寝
うつぶせ寝は下あごをおしつけることによってほおづえと似たような症状を起こしてしまいます。
④唇を咬む
上下の前歯に唇が入ることで、上の前歯は前に押し出され、下の前歯は後ろ方向 に倒されてしまい、上下の隙間が大きくなります。さらに隙間が多くなることで下口唇がより入りやすくなるため、負のスパイラルに入ってしまい、自然治癒が困難になります。
⑤口呼吸
口呼吸によって口輪筋の力が弱くなってしまうため、口を閉じるために他の筋肉を活用することになってしまいます。他の筋肉を利用し続けることで、下あごの成長が抑えられ下顎が前方へ成長しにくくなります。
3過蓋咬合の子どもの矯正治療方法は?
過蓋咬合の小児期での歯科矯正方法としては、まずは、過蓋咬合になって原因の特定のための検査やカウンセリングを行っていきます。原因が特定されたあとは原因を取り除くためのトレーニングを行って、オーバーバイトを減少させていきます。



過度に咬み合わせが深い場合は奥歯の咬み合わせをレジンと呼ばれるプラスチックを乳歯の奥歯に盛り上げて高さを出してから矯正治療に入る場合があります。かみ合わせを上げる前に歯の生え変わり状態やあごの骨の成長度合いや顔の長さオーバーバイトの量、オーバージェットの量、上下の前歯の傾き方、ガミースマイル(会話や笑う時に歯ぐきがみえる状態)の有無、お口を閉じた時の筋肉の緊張の有無などを確認します。
まとめ
①上下の前歯のかぶり方が大きく下の歯の長さの2/3以上が隠れていると過蓋咬合
②過蓋咬合の原因にはくいしばりやほおづえ、うつぶせ寝、唇をかむなどがある。
③小児での過蓋咬合 の歯列矯正では原因の除去が必要である
この記事を書いた人

医療法人社団 統慧会 かわべ歯科 理事長 川邉滋次
参考文献
①Takao Naitou. Dentition Obtained from Anatomy of Japanese Permanent Tooth.Article from dental technician.2010
②厚生労働省.平成28年度歯科疾患実態調査.https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/62-28.html.2017
③Daniele ManFredini et al. Bruxism is unlikely to cause damage to the periodontium: findings from a systematic literature assessment. Journal of Periodontology 2015; 86(4): 546-555.