加熱式たばこや電子たばこは口の中に影響がないの?(たばこと歯周病の話)

更新日:9月4日

2020年4月1日に健康増進法の一部を改正する法律の全面施行がされ、学校や病院などでは敷地内禁煙(屋外の喫煙場所設置は可)、飲食店や事業所では原則屋内禁煙(喫煙専用室は喫煙可)、20歳未満の喫煙場所への立ち入り禁止になったという話を聞いた方も多いと思います。そして2021年10月にはたばこ税の増税があります。この流れは喫煙者本人の健康被害だけでなく周りの人や子供たちへの望まない受動喫煙による健康被害をなくそうという背景があります。その中で煙の少ない加熱式たばこと電子たばこなど新型たばこがコンビニエンスストアなどでよく見られるようになりました。今回は歯科の立場から、たばこや新型たばこと歯周病の関係、受動喫煙の周囲の人たちの口の中への影響などをお話ししていきたいと思います。



1たばこの成分


たばこには約4000種類の化学物質と40種の発がん性物質が含まれています。

タバコの主な有害物質はニコチンとタール、一酸化炭素です。


ニコチンは依存性が強く、毛細血管収縮作用という、細い血管の血流を悪くさせてしまう作用があります。


喫煙(たばこ)は肺だけでなく口腔内への影響があります。特に歯周病のリスクファクターにもなっており歯にも着色等の影響があります。
たばこのヤニによる着色

タールはヤニともよばれ、強い発がん性があり口の中の表面に沈着して唾液の出る部分を塞いでしまい、唾液の分泌量を減少させてしまいます。唾液の少ないお口の中はプラークや歯石が付着しやすい環境になってしまいます。


一酸化炭素は酸素よりも血中のヘモグロビンと結合しやすいため血液の色が黒くなるだけでなく、酸素が全身に行き渡りにくくなります。



2タバコと歯周病


①喫煙は歯周炎の主要な危険因子であり、米国の成人の歯周炎症例の半分以上に関与している可能性があると結論づけた。成人の歯周炎の大部分は、タバコの喫煙を予防・中止することで予防できる可能性がある。


②タバコの煙は、口の中の微生物を変化させ、喫煙者の歯周病をより重症化させる。


③喫煙者は免疫反応が抑制され、より重篤な歯周病につながることを報告。


①〜③の論文の報告からもわかるように、たばこは歯周病の進行を早める、歯周病治療の効果を減少させる、歯周病の再発を引き起こすなど、歯周病の危険因子となります。

たばこを吸う人は吸わない人と比較して、2.7倍歯周病にかかりやすく、歯の喪失が10年早まるといわれています。


たばこのニコチン成分が毛細血管を収縮させ、血行が悪くなることで、歯ぐきに酸素や栄養が行き届かなくなり、歯周病を悪化させます。またタールの唾液量低下や一酸化炭素の酸素の供給が行き届きにくくなることも歯周病のリスクになります。

喫煙による歯周病への影響の特徴として、出血などの自覚症状が出にくく、炎症症状が隠されてしまうため進行していることに気づかず歯周病が悪化していることがあります。


他にもたばこは、歯ぐきへの着色、味覚が鈍くなる、口腔内や咽頭のがんの発生率が高くなる、口臭が悪化する、口の中の乾燥する等の影響があります。



3葉巻、パイプは歯周病と関係あるの?


では葉巻やパイプでの喫煙は問題ないのでしょうか?

アメリカ合衆国のメリーランド州ボルチモアでの調査で、葉巻やパイプの喫煙は吸わない人と比べて中等度および重度の歯周炎の有病率が高く、歯ぐきの下がり方も高かったことから、

歯周病の健康や歯の喪失に対して、紙巻たばこと同様の悪影響を及ぼすことが報告されています。葉巻、パイプでの喫煙者の方も歯周病の改善と歯を失うリスクを減らす手段として、禁煙の努力が必要だと考えられます。



4加熱式たばこや電子たばこも歯周病に影響があるの?


加熱式たばこや電子たばこは新型たばことよばれています。2018年の調査では日本人の9.7%が新型たばこを使用しているというデータがあります。

加熱式たばこは、たばこ葉を使用し、焼くのではなく加熱することで発生した蒸気を吸うたばこです。一方、電子たばこにはたばこ葉は入っておらず、液体を電気で加熱することで蒸気を吸い、たばこではなくたばこ類似製品として扱われています。


加熱式たばこは紙巻たばこと比較してタールや一酸化炭素の量を減らしています。タールは先述の通り発がん性と唾液の量を減らす作用があります。しかしニコチンは紙巻たばこと比較して13%〜87%と含まれており、ニコチンの歯周病の危険因子としてはタールよりも高く、加熱式たばこの使用者は紙巻たばこの場合よりも使用頻度が増えることも報告されていますので加熱式たばこの歯周病へのリスクは依然として存在すると考えられます。


電子たばこは医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律によってニコチンが規制されているため、日本ではニコチン入りの電子たばこは販売していません。

タールも含まれていないため健康に対しての影響に関してはまだ分かっていませんが、加熱式たばこと比べると普及率は低いです。



5受動喫煙


受動喫煙とは、たばこから出る副流煙などで、吸っていない人もその煙を吸い込んでしまうことです。この受動喫煙は肺だけでなくお口の中にも健康被害を及ぼすことがあります。

歯周病、子どものむし歯、歯ぐきの着色など、本人が吸っていなくても家族に喫煙者がいる場合はこのような影響が出る場合があります。

オフィスの喫煙専用室などで分煙していても、吸ってからしばらくは、吐く息、髪や衣類から有害物質が出るため他の人に悪い影響を与えてしまう場合があります。



6歯科での禁煙支援


たばこには2つの依存があり、ニコチンによる依存と、習慣的に吸ってしまう心理的依存があります。そのため、禁煙をしたくてもなかなか続かない場合もあります。

そこで医科の禁煙外来とともに歯科でのお口の中のメインテナンスも一緒に行うことは有効だと考えます。

それは、口臭や歯周病、歯の着色などたばこの影響を直接自覚症状で確認できるのはお口の中のため、継続して口腔内のメインテナンスを行うことで、目で見える部分の改善を認知することで禁煙のきっかけになることがあるからです。ぜひかかりつけの歯科医院をつくっていただき歯科治療だけでなく、メインテナンスも続けて受けていただくことをお勧めします。


まとめ


①たばこの主な有害物質はニコチン・タール・一酸化炭素。

②たばこを吸う人は吸わない人と比べ歯周病のリスクが2.7倍ある。

③葉巻やパイプも紙巻たばこと同様の歯周病リスクがある。

④加熱式たばこは紙巻たばこと比べてニコチンやタール・一酸化炭素の量を減らし煙も少なくなっているが、ニコチンが入っているため歯周病のリスクはある。

⑤電子たばこは法によりニコチンが含まれていないため、まだ健康被害については判明しないが、普及率が少ない。

⑥たばこの副流煙でたばこを吸っていない家族や周りの人たちもお口の中の健康被害が出ることがある。

⑦禁煙するために歯科のメインテナンスを利用することも1つの手段である。



この記事を書いた人


静岡県菊川市のかわべ歯科院長兼理事長で歯科医師の川邉滋次です。

医療法人社団 統慧会 かわべ歯科 理事長 川邉滋次



参考文献


①S L Tomar, S Asma. Smoking-attributable periodontitis in the United States: findings from NHANES Ⅲ. National Health and Nutrition Examination Survey. J Periodontol;71(5):743-51.2000.


②J M Albandar et al. Cigar, pipe, and cigarette smoking as risk factors for periodontal disease and tooth loss. J Periodontol;71(12):1874-81.2000.


③田淵 貴大. 新型タバコのリスク-喫煙とアレルギー,さらにその先へ-. 日本小児アレルギー学会誌;34巻1号,2020.


④高橋 正知.新型タバコ(加熱式タバコ、電子タバコ)の健康リスク Health risks as associated with new tobacco products of heat-not-burn tobacco and electronic cigarettes. 八戸学院大学紀要;60:21-39.2020


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