予防歯科
当院の予防歯科は
「なんとか歯を残して欲しい」
「これ以上なるべく歯を削られたくない」
「将来虫歯や歯周病に悩まされたくない」
「お口の中の健康に興味がある」
「今のお口の中の状態を良い状態で維持したい」
方のための
予防方法やアドバイスをご提案しています。
お口の中のリスク診断
当院では予防処置をする前に
来院される方のお口の中を知るための
「お口の中のリスク診断」
を行っています。
お口の中のリスク診断内容
などをカウンセリングを含め行っていきます
お口のクリーニング
ホームケアの徹底
「ホームケアの徹底」
使用している歯ブラシの種類が違うように、
1つ1つの歯ブラシの動かし方にも
歯ブラシの特性を生かした磨き方をするべきだと考えています。
患者様の普段の歯ブラシの使用方法や時間などを
確認させていただき、
歯ブラシの力や効率的な磨き方を提案させていただきます。
患者様にあったフロスや歯間ブラシなどの
補助器具を実際に使用していただき、
動かし方や使用中の注意点などを説明させていただきます。
食生活を見直すための
「食生活指導」かみ合わせのための「姿勢指導」
も行わせていただいています。
虫歯ってどんな病気?
1 むし歯の原因論は昔と現在で変化しています
むし歯を引き起こす細菌は、皆さん1度は耳にしたことがある「ミュータンス菌」だと考えられてきました。
しかし2014年に日本人のむし歯から分子解析で検出された細菌種ではミュータンス菌だけではなく乳酸菌やビフィズス菌などお口の中の様々な常在菌の集まり(バイオフィルム、プラーク)が原因であることが報告されています。
お口の常在菌とは、お口の中にもともと住み着いている菌で、健康なお口の中でも存在しています。
砂糖だけがむし歯の原因だという考え方も変わってきています。現在でも砂糖はむし歯になりやすい王様には変わりありませんが、それ以外でもブドウ糖や果糖、熱を通したデンプンもむし歯をおこしやすい「発酵性糖質」として、細菌達が酸をつくるためのエサになります。
特に年配の方に多いむき出した歯の根っこ部分はうどんやお米が長時間挟まっているだけでもむし歯の原因になりうることがあります。
2 近年では子どものむし歯が減少し、高齢者のむし歯が増加している
以前までは、むし歯は子供がかかりやすい病気というイメージがありました。しかし、最近ではそのイメージとは違った結果が出ています。
(平成29年度学校歯科保健調査結果より)
上のグラフは中学校1年生のむし歯本数を毎年調査したものですが、全国平均、静岡県どちらも昔と比べて減少しています。つまり、子供のむし歯はフッ化物配合歯磨き粉の普及などで減少しています。
一方で55歳以上のむし歯は増えてきています。その理由として高齢者の中には介護が必要になってくる人が増えるため、お口の中のケアが不十分になりやすくむし歯になってしまうことが多くなってしまったこと、歯周病で歯の根元が見えるようになってしまい、根元は頭の部分と比べて虫歯になりやすいことなどが挙げられます。
3 先進の虫歯の予防方法は?
現在のむし歯予防の主体は「シュガーコントロール」と「フッ化物の適切な使用」です。この2つに必要なのは技術ではなく正しい知識です。
①シュガーコントロール(糖類の調整)
むし歯の多い方には食生活の乱れが背景にあります。特に糖類です。
シュガーコントロールは糖類を過剰摂取しないように、砂糖を多く含んだ食品や飲み物を減らすことです。
糖類の量を控えるだけでなく「飴やキャラメルなどの長く口に残りやすいお菓子は選ばない」「ダラダラ食べはしない」「寝る前には食べない」など糖類の質や時間、頻度にも注意していきます。
ただ「甘いものやおやつは絶対食べちゃダメ」「料理にも砂糖使ってるから使わない料理にして」「お菓子やケーキはもらっても食べないで」「天然の甘味料を使用してください」という強引で伝えた本人でも達成できなさそうな指導は間違ってると思います。
現在の食生活を振り返って、患者さんと私たち歯科医療従事者が改善できる部分を一緒に考え、目標をつくって実行していくことが、歯科教育だと思っています。
糖類だけでなくデンプンなどの多糖類、キシリトールなどの糖アルコール、天然甘味料、人工甘味料、異性化糖など甘みを感じる成分を使った商品が多くあります。これらの甘味料がどのように出来るのか?
むし歯になりやすいのか?安全性はあるか?
などをなるべくわかりやすくお伝えすることも私たちの役目です。
②歯みがき(ブラッシング)
プラークのないところにむし歯は発生しません。
プラークは1gあたり約1000億の細菌の集合体と有機物と水でできています。
またプラークは食後8時間程で歯の表面に形成されますが、この時のプラークはまだ害はほとんどありません。
しかしみがき残しや放置で2日間(48時間)くらい経過するとむし歯原因菌が出す酸によってプラークが酸性になります。
プラークが酸性になると酸に強い悪玉菌の割合が多くなり、さらに酸性に傾きます。
食後、口の中はミュータンス菌(むし歯菌)や乳酸菌などのはたらきで酸性になり、歯のカルシウムを溶かし始めます。
歯のカルシウムが溶け出ることを脱灰といいます。
ごく表面だけ脱灰が起こった場合や短時間だけ脱灰が起きたときには、プラークがすぐに取り除かれれば、歯は再石灰化し自然に修復することもありますが、プラークが長期間ついたままであったり、歯の奥深くまで脱灰が進んだ場合には、この自然修復作用が妨げられます。このように歯の脱灰が元に戻らないところまで進んでしまい、歯に穴を開け始めた状態がう蝕(むし歯)です。
とくに砂糖の摂取はプラークの形成と酸の産生をより促進させ、むし歯のできやすい状態を作ります。
③フッ化物の適切な使用
2017年3月に日本ではじめてフッ素濃度1000〜1500ppm(0.1〜0.15%)のフッ化物配合歯みがき剤が厚生労働省から医薬部外品として承認されました。
またフッ化物のうがい液に関しても2019年にフッ素濃度225ppmの毎日使い洗口液が一般用医薬品第3類となったため、医師や薬剤師の指導がなくても購入できるようになっています。
フッ化物配合歯磨き粉の市場シェアは2015年で91%(ライオン歯科研究所2016より)となっており、フッ化物の効果について認知されています。
歯の主成分はヒドロキシアパタイトとよばれるものです。そのヒドロキシアパタイトにフッ化物イオンが作用するとフルオロアパタイトが作られます。このフルオロアパタイトはヒドロキシアパタイトよりも酸に強い性質があります。
つまり酸に強いフルオロアパタイトはむし歯予防効果があります。
お子さんの場合、フッ化物をぬるのは、生えたてまたは生えている途中の歯に行うことが効果的です。このような歯は、歯の表層へフッ素イオンを多く取り込んでくれる反応性が高い時期だからです。
ただ、歯は一気に生え変わるものではなく徐々に生えてくる、生え変わってくるものなので、生えるたびにフッ化物を塗ることが好ましく、何度も繰り返して塗る方が、効果が上がると考えられています。
乳歯が生えてくる6ヶ月頃から歯がある限り生涯わたって年齢に応じた濃度のフッ化物を塗っていくことが効果的です。高齢者の根部分のむし歯を防ぐために高濃度フッ化物をピンポイントに塗る方法もあります。
ただし、フッ化物入り歯磨き粉は正しい使用法で使用しなければむし歯予防効果は十分に得られません。
例えばフッ化物配合の歯みがき粉でみがいた後、少量(5〜15ml)の水で短時間ゆすぐまたは水なしで吐き出すだけにとどめ、お口の中で成分をとどめておく方がむし歯予防効果はあります。
フッ素の安全性ですが、歯科で塗っているフッ化物は危険性がありません。
フッ化物とはフッ素が他の元素とくっついた状態をいいます。通常フッ素は単体では安定しないため他の元素と一緒にくっついて存在することが多いです。
日本ではよく「フッ素」と言うことが多いですが、厳密にはフッ化物です。
歯科医院ではではフッ化ナトリウム、歯みがき粉ではフッ化ナトリウムやモノフルオロリン酸ナトリウム、フッ化第一スズなどが使われていますが、どれも安全性の高い化合物です。では単体と化合物で何が違うのでしょうか?
たとえば「塩素」は単体では特有の臭いがあり、腐食性と強い毒があると書かれています。しかしナトリウムとくっついて塩化ナトリウムとなると皆さんが食事の中で必ず口にする「塩」になります。つまり元素は何と結合するかで安全性が決まるということです。
さらにフッ化物はお茶(茶葉200〜400ppm飲むお茶1〜4ppm)、海産物(イワシの骨395ppm缶詰のカニ10ppm)や野菜(0.1〜1ppm)にも含まれています。
つまり、普段の食品のなかでも私たちは何気なく摂取しているのです。
フッ化物の摂りすぎ(中毒)についてですが、例えば10kg(1歳〜1歳半)のお子さんがお家で大人のフッ化物入り歯みがき粉を飲んでしまった場合、中毒量はフッ素量約20mgですので、国内でフッ化物濃度の高い1450ppmの歯科医院専売の歯磨き粉でも13,79gくらい飲み込まないと中毒量に達することができないため、中毒は非常に起こりにくいものと思われます。従って、フッ化物は比較的安全性が高いと考えられます。
ただし摂りすぎはよくないため、必ず有効量を確認し、正しく使用してください。
フッ化物が万能というわけではありません。
スカルドビア菌とよばれるむし歯関連菌は特殊な代謝経路を持っており、フッ素耐性があることが報告されています
。やはり、食生活の改善と日々のブラッシングが大事です。
どうしてもフッ化物以外でむし歯予防をしたいという方には、お口の中の善玉乳酸菌「ロイテリ菌」を使用した予防歯科の方法プロバイオティクスをご案内しています。
4 赤ちゃん〜3歳までのむし歯を防ぐために
(赤ちゃんのむし歯予防方法の一例)
生まれたばかりの赤ちゃんのお口の中にはミュータンス菌はいません。
もしむし歯菌が入ってきたとしても定着できる歯が存在しないとむし歯菌も生きていけないのです。
歯が生え出した時からむし歯菌が徐々に増えていきます。
その頃に赤ちゃんにむし歯菌がうつるから「キスをしない方がいい」、「お話しする時はつばをとばさないで」「フーフーしちゃだめ」というお話を聞くことがあるかもしれません。
しかし、会話など唾液が飛ぶだけではむし歯関連菌が赤ちゃんに感染することは少ないと考えられます。
WHOの報告でもむし歯は非伝染性の疾患と定義しています。
そのため食器などを分ける方法は予防手段として効果的ではないことも研究で報告されています。
それよりも接触する親御さん達自身が歯科医院での治療・メインテナンス・予防歯科とホームケアでお口の中のプラークコントロールを普段からしっかり行って、赤ちゃんに愛情を注いであげられるようにしましょう。
母乳に関しては、スキンシップや免疫の観点からもとても大事ですが、長期間の授乳は広範囲のむし歯の原因になるため、1歳半までにはやめるようにしましょう。
(3歳までのむし歯予防の一例)
1歳半から2歳半の間はむし歯の感染を受けやすい時期で「感染の窓(Caufield)」とよばれています。
またこの時期にむし歯が発生するとむし歯の本数が増加する可能性が高くなるという報告もあるため、できるだけこの時期にむし歯をつくらないことを心掛けてください。
そのため、少なくとも3歳までは甘いものを与えないことが大事です。
歯の構造
エナメル質
歯の頭の最表層にある体の中で最も硬い部分。通常の歯で目に見えている部分がエナメル質です。
象牙質(ぞうげしつ)
歯の頭の最表層にある体の中で最も硬い部分。通常の歯で目に見えている部分がエナメル質です。
歯髄(しずい)
歯の中にある空洞(くうどう)部分、ここには神経と血管がはいっており、ここにむし歯が行き着くと、ズキズキとした痛みを起こす場合があります。
虫歯の進行
(島田の分類)
日本の歯科医院で多く使用されている分類ですが、
予防歯科の観点からするとむし歯になる前の分類が少ないと考えられます。
酸蝕症
(Erosive Tooth Wear,Lussi 2014より)
1酸蝕症(さんしょくしょう)とは
酸蝕症は、食べ物や飲み物に含まれる酸や胃酸で歯が溶ける現象です。虫歯が無いきれいなお口の中でも歯が溶けるので、注意が必要です。
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虫歯と酸蝕症の違い
簡単に説明すると、「虫歯は一部分、酸蝕歯は広い範囲です」
酸蝕症は酸性の食べ物や飲み物を繰り返し摂取することで、歯の表面に酸が長時間接触し歯が溶け始める「現象」です。
飲食物はお口の中全体に行き渡るため、酸蝕歯は広範囲に起こることが多いです。
また、飲食物だけでなくダイエットやストレスで嘔吐することが多い場合や、酸性の工業物を扱う仕事に従事する方も、胃酸や酸性物質によって歯が溶ける傾向があります。
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酸蝕症の症状
<酸蝕症(前歯)の症状>
①歯の先端部分が欠ける
②歯の表面に白濁ができる
③先端近くの透明感が増す
④歯の表面がザラつく
④冷たいものがしみる
<酸蝕症(奥歯)の症状>
①歯全体が丸みを帯びて特徴が少なくなる
②歯がへこんでいる
③歯が割れる
④つめものが浮き上がってみえる
⑤噛んだ時に痛みがある
⑥歯の表面がザラつく
⑥冷たいものがしみる
2唾液の量も酸蝕症に影響する
同じ量の酸性度が同じものをたべても酸蝕症になりやすい方と、なりにくい方がいます。
大きな違いは「唾液の量」と考えられます。 食事をするとお口の中は酸性のものをたべていなくても20分くらいは酸性に傾きます。 その後、徐々に中性近づいてきます。
これは唾液が緩衝作用(かんしょうさよう)とよばれる、酸性を中和する作用(中性に近づける力)をもっています。 つまり唾液の量があれば、食べた後のお口の中の酸性状態が短くなります。
そのためにも唾液を確保してほしいため、唾液を少なくする口呼吸はおすすめできません。
3酸蝕症の予防方法と治療方法
酸蝕症の予防方法は「お口の中が酸性になっている時間を減らす」ことです。
もちろん酸性の強い食べ物を毎日食べないことなども必要です。
食べた後に、早めにお水やぬるま湯でうがいするなどをすると、お口の中の酸性度が和らいでいきます。
他にも、ストローを使って飲むと直接歯に触れにくく酸食症を予防する手段になりますが、飲み過ぎは注意してください。 酸蝕症になってしまった歯には、軽度であれば、知覚過敏予防の材料をぬることで、しみる対策ができます。
大きく溶けてしまった場合にはダイレクトボンディングとよばれる白い材料で覆う治療法があります。