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歯科界が取り入れている歯周病PCR検査とは?

更新日:2023年4月22日

はじめに


歯周病は、歯肉だけでなく歯を支える骨まで病気が進行することがあるため、早期発見が大切です。


歯科医院で実施される歯周病検査は、歯周病を早く発見し、進行の度合いを把握するために重要です。


よく行われる歯周病検査として歯周ポケット測定があります。歯と歯肉の間に歯科器具を挿入してポケットの深さを測定していきます。歯科医院に通っている方であれば経験したことがあるのではないでしょうか?


他にも歯科用レントゲンや、歯の揺れの測定、歯肉の厚みの検査などがありますが、特に細菌検査は、歯周病の原因となる細菌を特定することで、適切な治療方法を選択するために役立つ検査となります。


細菌検査には、顕微鏡検査とPCR検査の2種類があります。顕微鏡検査は、細菌を顕微鏡で観察することで、どの種類の細菌が繁殖しているかを調べます。一方、PCR検査は検出したい菌の遺伝子配列を増幅させることで、細菌の種類をより正確に判定することができます。


細菌検査の結果は、患者さんのお口の中の健康状態を評価するための参考となります。特定の歯周病菌が検出された場合には、その細菌が引き起こす可能性のある問題を予測し、対策することが可能です。当院ではこの情報を元に、お口の中の健康状態を改善するための治療やクリーニングの計画に役立てていきます。


そこで、今回の記事では、細菌検査についてさらに詳しく説明します。


目次▼


 

歯科の顕微鏡検査とは?


歯周病菌の有無を調べる方法として、まずは顕微鏡があります。これは歯周ポケット内のプラークを採取し、1000倍ほどに拡大して見ることで、菌が存在するかを診ていく方法です。歯科医院では位相差顕微鏡が主に使用されます。


歯科用の顕微鏡
歯科用の顕微鏡、スマートフォン等で撮影できます

大学病院では最大倍率100万倍で見ることのできる電子顕微鏡があります。


歯周病のP C R検査とは?


PCR検査は新型コロナウィルス感染症で多くの方に認知されるようになりましたが、実は歯科でもPCR検査があります。新型コロナウィルス対象のPCR検査では「陽性・陰性」の判定ですが、歯周病のPCR検査は歯周病菌の種類と数を検出します。


この検査はお口の中から採取した細菌のDNAを増幅させ、検出することで歯周病菌の存在を確認していきます。この結果は歯周病の進行具合や治療の方針を決定する上で大切な情報となります。


実際に歯周病PCR検査をやってみよう


今回はGC社の「ジーシーサリバチェックラボ」というP C R検査キットを使用して、流れを説明します。


この検査は、以下の点を守っていただかないと、検査結果が正しく反映されない可能性があります。


1. 検査前1時間以上飲食は歯みがきをしないこと。

2. 検査日当日に殺菌成分配合のマウスウォッシュを使用してないこと。


検査前の説明書
検査前の説明書

口の中からサンプルを取ります。唾液と歯周ポケット内の浸出液の2種類の採取方法があります。


歯周ポケットが浅い場合や歯周病の症状がみられない場合は、唾液を採取して今後の歯周病のリスクを検査していきます。歯周病が発生している場合はポケット内の浸出液を採取します。


(唾液の採取の仕方)


まず専用のガムを5分間噛んでお口に溜まった唾液をカップに吐き出してもらいます。カップに溜まった唾液の泡立っていない部分を、スポイトで慎重に吸い取り、検体輸送カプセルに入れます。


PCR検査専用のガム
専用のガム(味はしません)

唾液を採取するカップ
唾液を採取するカップ(中は水です)

唾液をスポイトで取る
唾液をスポイトで取る

専用のカプセルに唾液を入れる
専用のカプセルに唾液を入れる

(歯周ポケット内の浸出液の採取の仕方)


歯周ポケット内からは、歯肉溝滲出液(しにくこうしんしゅつえき)と呼ばれる湧き水のような液体が出ます。この液体には、好中球という白血球が豊富に含まれており、本来であれば歯と歯ぐきの間を細菌感染から守る役割があります。


しかし、歯周病による炎症が起こると、歯周病菌が好むタンパク質が豊富に含んでいるため、餌が多い歯周病菌の活動拠点となってしまいます。湧き水の水質汚染のように、歯周ポケット内の液体が汚染され、歯周病の進行を促すことになります。


従って、この歯周ポケット内の液を採取することで、歯周病の活動を把握することが可能です。


採取方法は、ポケットの深さを測定した後、ペーパーポイントとよばれる歯科材料を歯周ポケット1箇所に2本挿入し、10秒間保持します。その後、取り出し、検体輸送カプセルに入れます。


この際、唾液に触れてしまうと検査結果にブレが出るため、唾液が入り込まないように唾液を排除する装置をつけておきます。


歯周病検査のサンプル採取
唾液が入らないように吸引装置を使います

(歯周病PCR検査の結果について)


約1〜2週間後にこのような検査結果の資料が来ます。細菌が検出されるか、検出された時の菌の数、歯周病のリスクなどがチャートと表で記載されています。


歯周病PCRの結果
歯周病PCRの結果

歯周病PCR検査で特定できる菌の種類


歯周病において、一般的にレッドコンプレックスという3種類の細菌が大きく関わっていることが知られています。具体的には、「ポルフィロモナス・ジンジバーリス」「トレポネーマ・デンティコラ」「タネラ・フォーサイシア」の3つ菌種がレッドコンプレックスに分類され、歯周病の進行に深く関わっています。


また、急速に進行するタイプの歯周病に関与する細菌や、女性ホルモンをエサにする細菌などがありますので、紹介させていただきます。


1. ポルフィロモナス・ジンジバーリス(P.g菌)


ポルフィロモナスジンジバーリスは歯周病原因菌の代表的な菌であり、歯周病の発症に関与しています。糖には反応せず血に含まれるタンパク質や鉄分をを好む、まるでドラキュラのような細菌です。


また酸素を嫌い、歯周ポケットの奥底に生息し、強い悪臭を放ちます。また、毒素や分解酵素を出して歯肉の炎症や歯を支える骨を溶かします。


この菌は周りに毛を持っており、歯周ポケットの中や細菌に貼りつく役割があります。また、大阪大学の天野敦雄教授の研究では、毛にヘアータイプみたいなものが5種類あり、パンチパーマのような2型やスキンヘッドのような4型があると報告されています。


2. トレポネーマ・デンティコーラ


トレポネーマデンティコラ(歯周病菌)

トレポネーマ・デンティコーラ(Td)はスピロヘータというらせんの形をした動く菌の一種で、歯周病原因菌の1つです。お口の中の歯周ポケットやプラーク、舌苔(舌の表面に付着した細菌のかたまり)に生息します。


この菌は他の歯周病菌と協力して歯周病を発症・進行させます。特にポルフィロモナスジンジバーリスと一緒になるとより強い病原性を持つことが知られています。


3. タネレラ・フォーサイシア


タネラフォーサイシアは細い葉っぱのような形をした菌で、お口の中のプラークや歯石などに生息しています。


この菌は繁殖することによって、毒素や酵素を出し、歯ぐきを破壊します。


4. アグリゲイティバクター・アクチノマイセテムコミタンス


すごく名前の長い細菌で、学生時代にこの名前を覚えることに一苦労でした。


急激に進行するタイプの歯周病に関わりのある細菌です。毒素を出し、歯ぐきの炎症や歯を支える骨を溶かします。また、細菌やウィルスから体を守ってくれる白血球に対する毒素を作ります。


5. プレボテラ・インターミディア


女性ホルモンによって発育が進む細菌です。思春期や妊娠時などに発生する歯肉炎の原因菌です。


 

まとめ


1. 細菌検査には、顕微鏡検査とPCR検査の2種類がある。


2. 歯周病の顕微鏡検査は、歯周ポケット内のプラークを採取して位相差顕微鏡で菌の有無を調べる方法。


3. 歯周病のPCR検査は、口から採取した細菌のDNAを増幅させて歯周病菌の種類と数を検出する方法。


4. 歯周病のPCR検査キットを使用する際には、検査前に飲食を控え、マウスウォッシュを使用しないこと。


5. 歯周病のPCR検査は、唾液と歯周ポケット内の浸出液のどちらかを採取する。


6. 「ポルフィロモナス・ジンジバーリス」「トレポネーマ・デンティコラ」「タネラ・フォーサイシア」の3種類がレッドコンプレックスと呼ばれ、歯周病の進行に深く関わっている。


7. 急速に進行するタイプの歯周病に関与する細菌や、女性ホルモンをエサにする細菌も存在する。


 

この記事を書いた人


歯科医師の院長

医療法人社団 統慧会 かわべ歯科 理事長 川邉滋次


 

参考文献


1. 天野敦雄. "Porphyromonas gingdvalis 線毛の付着能と遺伝子多型の歯周病原性との関連." 日本歯周病学会会誌 45.4 (2003): 357-363.


2. Amano, A., et al. "Prevalence of specific genotypes of Porphyromonas gingivalis fimA and periodontal health status." Journal of dental research 79.9 (2000): 1664-1668.


3. Edmondson, Diane G., Bo Hu, and Steven J. Norris. "Long-term in vitro culture of the syphilis spirochete Treponema pallidum subsp. pallidum." MBio 9.3 (2018): e01153-18.


4. Khzam, Nabil, et al. "Prevalence of the JP2 genotype of Aggregatibacter actinomycetemcomitans in the world population: a systematic review." Clinical Oral Investigations 26.3 (2022): 2317-2334.


5. 山本浩正. Dr.Hiroのペリオ図鑑. クインテッセンス出版株式会社. 2022: 30-31, 66-75.


6. 奥田克爾. お口の中の悪いやつら 歯科からはじめる感染対策. クインテッセンス出版株式会社. 2022: 32-37.




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