乳歯が早く抜けてしまう?むし歯やケガではない「低ホスファターゼ症」という病気をご存知ですか?

乳歯が早く抜けてしまう?むし歯やケガではない「低ホスファターゼ症」という病気をご存知ですか?


乳歯は生まれてから7ヵ月ころから生えはじめ、2歳半頃に全部の乳歯が生えそろいます。そして正常な場合、6歳頃から永久歯の生え変わりで徐々に抜けていきます。


しかし、むし歯の進行が早く、歯の大部分が無くなってしまった場合には歯を抜く場合があります。また事故やケガなどで歯がぶつかってしまい、6歳未満でも乳歯が抜けてしまうことがあります。


他にも、むし歯やケガ以外に「低ホスファターゼ症」とよばれる乳歯が早く抜けてしまう病気があります。今回はこの低ホスファターゼ症についてお話しします。


 

1低ホスファターゼ症ってどんな病気?


歯や骨をつくるために必要なアルカリホスファターゼという酵素があります。


低ホスファターゼ症はこの酵素の量が体内で不足する病気です。

骨や歯の成長がうまく進まなくなり、骨折しやすくなる、歯が抜けやすくなるため、難病指定とされています。


体の中で酵素をつくるようにプログラムされている遺伝子が変異し、酵素を十分につくることができないことが、酵素が少なくなってしまう原因です。変位した遺伝子が偶然子どもに受け継がれて発症することがあります。


低ホスファターゼ症の方は日本では10万人に1人ですが、フランスでは30万人に1人と国によって差があります。


 

2低ホスファターゼ症には治療薬があるが、軽症の場合見逃されやすいことも


日本では2015年7月に世界に先駆けてアスホターゼアルファとよばれる治療薬を使用して「酵素の補充」という治療が受けられ、早期に受けることで骨の成長を促すことが可能になりました。


低ホスファターゼ症は重症の場合、出生と共に診断がつき治療を開始されます。

一方、軽症だと生まれてからしばらく体の骨にほとんど問題がみられないないことが多いため、見逃されやすく後から影響が出てくるケースがあります。


骨折しやすい、歯が弱いという危険信号が出ていても 日常生活に差し支えなければ病気の影響と思われず、早期治療の機会を逃してしまうこともあります。


低ホスファターゼ症は進行性の病気のため、現在症状が軽度でも、成長と共に症状が出てくることも考えられますので、早期に発見することが必要です。


 

3低ホスファターゼ症を早期に発見するには?


では軽症の低ホスファターゼ症を早く発見できる方法はあるのでしょうか?

答えとしては、歯科への受診が早期に発見できる可能性があります。


①4歳になる前に抜けてしまう、歯がグラグラする


乳歯が永久歯に生え変わるのは6歳頃からです。もちろん個人差はありますが4歳になる前に乳歯が抜けてしまうことは早すぎだと考えます。そのため4歳になる前に乳歯が揺れていたり、抜けてしまった場合は早めに歯科医院に行きましょう。


②歯の根がきれいに残っている


生え変わりでもないのに乳歯が抜けてしまった場合、歯科医院に抜けた歯を持っていくと原因がわかる場合があります。


生え変わりで抜ける歯は、下から生えてくる永久歯に突き上げられると、歯の根の部分が溶けてしまうためほとんど残っていません。
生え変わりの場合永久歯が乳歯の根本を吸収する(正常)

生え変わりで抜ける歯は、下から生えてくる永久歯に突き上げられると、歯の根の部分が溶けてしまうためほとんど残っていません。


低ホスファターゼ症で抜けてしまった歯には歯の根がしっかり残っています。つまり大人の歯に押されることなく抜けてしまったという状況です。


③乳歯の周りに歯周ポケットができている


乳歯で歯周ポケットが出てくることはほとんどありません。

乳歯の歯ぐきの溝が1〜2ミリしかないため、歯周病菌が住み着くにはあまり良い環境ではないからです。歯ぐきが腫れることはありますがほとんどが歯肉炎(歯周病の初期状態)です。


しかし低ホスファターゼ症の子どもには、炎症が少なくても乳歯の周りに深い歯周ポケットが見られる場合があります。このポケットの中にプラークがたまってしまうと二次的に歯周病を起こす場合があります。


 

4なぜ低ホスファターゼ症の場合乳歯が早く抜けてしまうの?


健康な歯は歯根膜という周りを包んでいる丈夫な靭帯によって、あごの骨にがっちりくっついています。歯根膜で歯根の外側にあるセメント質とあごの骨をしっかり固定しているため、ケガや重度の歯周病でなければ抜け落ちることはありません。


一方、低ホスファターゼ症の場合、歯根膜が弱く歯のセメント質のできも悪くなります。

歯の根があごの骨としっかり結合できず固定が不十分なため歯が抜けやすくなってしまいます。


前歯が抜けやすいのは、奥歯が根の数が複数なのに対し、前歯は1本のため歯根膜がくっついている面積が少なく、支える力が弱いからです。


 

5乳歯が予定より早く抜けた場合の対処法は?


歯科の対策としては以下の方法があります。


①歯がグラグラしてきたら定期的にお口の中のクリーニングやブラッシングの指導を受けて炎症が起きないようにする。


②お口の中の型取りができるようになったら抜けた歯の部分に入れ歯を作る。


③乳歯の早期脱落が多くの歯で起こった場合、残った歯の負担が大きくなってさらに脱落を起こすため、残っている乳歯がかむ力の負担にならないように咬み合わせを維持して守る。


 

まとめ


①低ホスファターゼ症は歯や骨をつくる酵素が不足しているために、骨折しやすくなる、歯が抜けてしまうなどの症状がでる遺伝性の病気である。


②日本ではアルカリホスファターゼ症に対し酵素の補充という治療法があるため、早期発見できれば骨の成長が見込める可能性がある。


③4歳までに乳歯が抜けてしまう、歯のぐらつきがある、乳歯で歯周ポケットがある場合は低ホスファターゼ症の場合があるため歯科医院に相談をおすすめする。


④乳歯が早く抜けてしまった時は歯科医院での治療法がある。


 

この記事を書いた人


静岡県菊川市のかわべ歯科院長兼理事長で歯科医師の川邉滋次です。

医療法人社団 統慧会 かわべ歯科 理事長 川邉滋次

 

参考文献

①Mornet E: Hypophosphatasia. Best Pract Res Clin Rheumatol 22 (1): 113-127, 2008.


②大薗恵一: 低ホスファターゼ症. 最新医学社.71(10): 57-63, 2016.

閲覧数:98回0件のコメント