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授乳の方法で将来の歯並びが影響する?(0歳からはじめるあごの育成)

更新日:2023年9月21日

はじめに


あごの育成

生まれてから6歳までの幼児期は、上あごの発育に大切な時期で、母乳育児が顔の筋肉とあごの発達に良い影響を与えます。授乳時の姿勢や舌の動きが大切で、正しい母乳の与え方は将来のあごの形状を育成します。哺乳瓶育児では口の筋肉の発達が制限され、あごの形状や呼吸に問題が生じる可能性があります。しかし、適切な措置を講じて顔の発達をサポートすることが可能です。


今回は授乳の方法によってどのようにあごの成長や歯並びに影響するのかをまとめてみました。


▼目次


なぜ母乳育児はあごの育成に関係しているの?


生まれてから最初の永久歯が生える6歳頃までは、上あごの骨と骨をつなぐ柔らかい部分(縫合部・ほうごうぶといいます)が柔らかく動かしやすい状態です。上あごは、頭や顔の様々な骨とつながっています。授乳中に使われる舌・頬・唇の筋肉の動きは、顔・口・あごの骨の成長に影響します。


骨の成長発達が悪ければ、歯並びやかみ合わせが悪くなる恐れがあります。まだ歯が生えていない時期でも、親御さんが将来のあごの育成や歯並びのために可能なことは多くあります。


まず、赤ちゃん自身が、上あごや自分の歯の周りの歯ぐきに舌を強く当てて刺激することが大切です。生後6ヶ月間は、この刺激が主に母乳を飲むことで可能です。母乳は栄養面だけでなく、母乳を吸うという行動によって、筋肉の動きが自然にトレーニングされるため、あごの成長や気道(呼吸の侵入経路)の発達が促されます。


赤ちゃんは成長するにつれて顔や口の構造が変化するため、授乳する時のくわえ方や姿勢が顔や口の形に影響します。筋肉の動きは、ミルクの流れ具合や哺乳位置などの要因に適応して変化します。赤ちゃんが母乳を飲む時は、舌を上あごに押し上げて広く平らな形を保ち、鼻呼吸を促すために、赤ちゃんが直立または半直立の姿勢が好ましいとされています。


母乳育児を行う際には、唇と顔をしっかり密閉し、乳房を赤ちゃんの口の中に完全に入れる必要があります。舌の後方が下がって真空状態となり、乳房から食道へ母乳が吸い上げられます。


口を閉じることができると、舌を上あごに当てられるようになり、上あごの形を維持することができます。上あごはお口の天井と鼻の下の両方を形成しているので、形を維持することはとても大切です。広い上あごを発達させることができれば、鼻呼吸ができて鼻腔が開いて気道が関係する睡眠の問題の発症を緩和することが可能です。また、体力の向上や姿勢を良くすることも欠かせません。舌を上げ、唇を合わせ、背筋を伸ばすことが大切です。


舌がうまく動かない場合は舌小帯が原因かも?


舌の下側にあるスジを舌小帯(ぜつしょうたい)と言い、短い場合には一般に舌小帯短縮症と呼ばれます。赤ちゃんが舌小帯短縮症で生まれてきた場合、舌が上あごにつきにくいことがあります。舌小帯の制限の程度や舌の動きの制限は、舌をどのくらい動かすことができるかや舌がどの位置で快適に落ち着くかによって判断されます。舌の可動域が制限され、授乳の妨げになり、授乳中の母親に不快感を与える場合は、通常舌小帯を切除します。ただし、その問題が舌小帯の制限によるものかを確認するためにも、歯科医院での検査は大切です。お口の運動の問題の中には舌の制限のように目に見えるものもあり、一定期間の治療で解決することができます。


哺乳びんで育てても母乳と同じ結果は得られない?


上あごの形が深すぎたり、狭すぎたりして形が悪いと歯の問題や睡眠呼吸障害をもつ子どもにみられる気道の問題を引き起こします。上あごが狭いと鼻腔が狭くなります。このような子ども達は、鼻で呼吸したり、舌をあげることが難しく、悪循環に陥ってしまいます。


哺乳瓶で育てる場合、赤ちゃんの舌・ほほ、くちびるの筋肉の働きは違い、筋肉の動きがとても少なくなります。また、赤ちゃんは飲み物を飲むことでさえできればお腹が満たせるので、姿勢の修正が必要であるかどうかわかりません。


母乳育児では陰圧を作ることによって母乳が出て、それを赤ちゃんが飲みこむといった流れがありますが、哺乳瓶育児ではそれがありません。その結果、哺乳瓶では誤った吸い方、あごの動き、舌の位置を覚えさせてしまいます。上あごは哺乳瓶の乳首の形に合わせて形成され(親ゆびしゃぶりやおしゃぶりの習慣のように)、高くて狭い形状になり、下は上あごにつかずに低い位置にとどまってしまいます。その結果、あごの形状を維持することができなくなります。


哺乳びんでの育児中心でも歯並びのために可能なこと


もちろん母乳で育てることをお勧めしますが、哺乳びんで育てざるを得ない場合でも、より良い顔の発達を促すためにできることがあります。


1. 哺乳びんでの授乳の際には、赤ちゃんを寝かせた状態にしない


耳だれや中耳炎になりやすくなってしまうためです。哺乳瓶での授乳姿勢は赤ちゃんを起こした状態にしましょう。



誤った哺乳びんでの授乳方法
誤った哺乳びんでの授乳方法

舌・くちびる・ほほをなるべく使わせる体勢
舌・くちびる・ほほをなるべく使わせる体勢


2. 顔や口の筋肉が母乳を飲むときに近い動きになる哺乳びんを使用する


哺乳育児を忠実に再現できる哺乳瓶はまだありませんが、赤ちゃんの力が強くなるにつれて、よりしっかり吸うことができるように、ミルクの出る量を調整できる乳首の哺乳瓶を選びましょう。


3. マッサージや体操でお口周りの筋肉を使うように補助してあげる


お口周りを意識したマッサージや体操で、赤ちゃんの顔・口・のどの筋肉が適切に協調して動くようになります。


どのような授乳方法であっても、マッサージや体操で顔や口の筋肉の発達を促すことが可能です。赤ちゃんが見て真似できるようになったら、赤ちゃんと一緒に口と顔の筋肉を最大限に動かせるように自分自身がモデルになってあげましょう。


多くの赤ちゃんは音を出すことが大好きで、お父さんお母さんの真似をするのも遊びも大好きです。赤ちゃんは顔を見たり音を聞いたりしたら、すぐに興奮気味に反応し、たくさん目を合わせてあげると、さらにやってくれるようになります。例えば、「いないいないばあ」は赤ちゃんを注目させて、たくさん笑わせる用に最適な遊びです。大きく深く笑うことはのどと顔のトレーニングになります。また、認可されている「かむ」おもちゃをたくさん使いましょう。赤ちゃんがとにかくかむようにするのです。


 

まとめ


1. 母乳育児は上あごと顔の成長に重要。


2. 舌小帯短縮症がある場合、歯科医院で検査が必要


3. 哺乳びん育児では顔の発達に影響があるが、姿勢や乳首の選択で改善可能。


4. マッサージや体操で赤ちゃんの口と顔の筋肉を発達させる方法がある。


 

この記事を書いた人



歯科矯正担当歯科衛生士(菊川市)


かわべ歯科 歯科衛生士スタッフ


 

参考文献


1. Bahr, Diane. Nobody ever told me (or my mother) that!: Everything from bottles and breathing to healthy speech development. Future Horizons, 2010.


2. Guilleminault, Christian, and Shannon S. Sullivan. "Towards restoration of continuous nasal breathing as the ultimate treatment goal in pediatric obstructive sleep apnea." Enliven: Pediatr Neonatol Biol 1.1 (2014): 001.


3. Guilleminault, Christian, Shehlanoor Huseni, and Lauren Lo. "A frequent phenotype for paediatric sleep apnoea: short lingual frenulum." ERJ Open Research 2.3 (2016).

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