歯磨き剤の成分 何に有効かわかりますか?歯磨き剤の選び方をお伝えします
- かわべ歯科歯科衛生士スタッフ
- 2 日前
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はじめに
皆さんはお家にある歯磨き剤を、数ある中からどのような理由で選びましたか?
2021年、インターネットのアンケートで「歯磨き剤を買おうとしたとき頭の中に思い浮かべるブランド」を1,000人に調査した結果では、テレビのコマーシャルなどでよく見かける歯磨き剤が揃っていました。
また、ランキングに入った歯磨き剤は「効能」以外で、「使い慣れている」が理由として挙げられていました。
ただ、いつも使っているからという理由は、自分に合った歯磨き剤と出会えていない可能性もあります。やはり、自分自身のお口の中の環境に合ったものを選びたいものです。
では、自分に合った歯磨き剤を選ぶためにはどうすればいいのでしょうか?
そこで今回は「歯磨き剤を正しく選ぶ方法」についてまとめてみました。
他にも「市販品と歯科医院専売品の違い」についてもご紹介させていただきます。
この記事をご覧になって、少しでも「歯磨き剤選び」の参考にしていただけたら幸いです。
▼目次
歯磨き剤を選ぶ時はここに注目!
早速「自分に合った歯磨き剤を選ぶ方法」について説明しますが、最初に残念なお話をしなければなりません。それは歯磨き剤は歯ブラシの邪魔をしてしまっているという事実です。
従来は「歯磨き剤を使うと効率よくプラークを取り除くことができる」と考えられていましたが、2016年の研究論文では、
ブラッシング時に歯磨剤を使っても使わなくてもプラークの取れ方に影響はない
ということが報告されています。
むしろ歯磨き剤が歯と歯の間に入り込んでしまうと、溜まってしまった部分は歯ブラシの毛先が滑ってしまうため、汚れに届かないスライディング効果という現象を起こし、歯ブラシの清掃効果を弱めてしまいます。

つまり、使用しない方がプラークが取れるということになります。
この話を聞くと歯磨き剤の使用は無意味ではないかと思ってしまいますよね?
このデメリットを払拭する歯磨き剤を使うメリットとして「有効成分」が挙げられます。
有効成分には「知覚過敏の予防」「むし歯予防効果」「殺菌、炎症を抑える」「着色汚れを除去する」などがあるため、自分に合った有効成分が入ったものであれば使用した方が良いと考えられます。

特にフッ化物(フッ素)は市場の歯磨き剤の92%に入っており、普及によって子どものむし歯予防に大きく貢献しているため、フッ化物が入っているものが有用であると考えられます。
しかし、シェアが大きいのにもかかわらず、令和4年歯科疾患実態調査によると、フッ化物配合歯磨剤を使用したことがある人の割合は52.4%と2人に1人とまだまだフッ化物入りの使用率は低いです。
つまり、歯磨き剤を選ぶ基準として、
1. 自分自身が悩んでいるお口の中のトラブルを解決できる有効成分が入っているか?
2.フッ化物が配合されているか?(濃度が大切です)
を意識しながら購入することをおすすめします。
歯周病予防の歯磨き剤は歯周病が治るわけではない
「殺菌剤」や「抗炎症剤」が含まれている歯周病予防の歯磨き剤が販売されています。
しかし、歯周病予防の歯磨き剤は「使えば歯周病が治る」というわけではありません。
殺菌剤や抗炎症剤などの有効成分は、歯周病の初期段階の「歯肉炎」を抑える効果はありますが、歯周病が進行した深い歯周ポケットまで到達することは期待できません。
歯周病を治すためには、日常のブラッシングに加えて、歯科医院で歯周治療することが大切です。
市販と歯科専売品の歯磨き剤の違いは?
歯科専売品が市販と異なる点は「低研磨性」と「低発泡性」です。
1 . 低研磨性(ていけんませい)
「研磨剤(清掃剤)が少ない」という意味です。研磨剤は着色汚れを落とす作用があります。
歯磨き粉の「歯を白くする」という表示は、ホワイトニング効果のある特別な有効成分が入っていなくても、汚れを落とす成分が入っていれば法律で表示が認められています。
研磨剤は「着色汚れ」や、「ホワイトニング後の色戻りの防止」には有効ですが、歯の根元が露出している場合などは削れてしまい症状を悪化させる場合もあるので注意が必要です。
2 . 低発泡性(ていはっぽうせい)
低発泡性とは「発泡剤が少なく、泡立ちが少ない」という意味です。

市場に出回っている歯磨き剤に、「発泡剤」としてラウリル硫酸ナトリウムが配合されています。この成分のためにブラッシング時に泡立ちが生じるわけです。
発泡剤配合・不使用の効果を比較した研究論文では、泡立ちにプラーク抑制効果や歯肉炎抑制効果は確認されませんでした。従って歯磨き剤の泡立ちそのものに清掃効果は期待できないことになります。
また、泡立ちは磨いている部分を見えにくくさせてしまうため、磨き残しを発生させるリスクになります。
ただし、泡を出すことでブラッシング時の満足感を与えることがあります。毎日使用するものなので、味など使用感が良い方がブラッシングのモチベーションも高まります。そのため泡立ちもモチベーション維持という点ではメリットといえます。
歯科医院専売品は、泡が少ない分最初は物足りなさを感じる方もいるとは思いますが、可能であれば低発泡性のものをおすすめします。
3. 歯科専売品と市販品でフッ化物濃度に差はあるの?
日本では製造販売承認基準によって、歯磨き剤にはフッ化物イオン濃度が1,500ppm以下に定められています。歯科専売品でも市販品でも最大で1,450ppmくらいの商品が販売されているため、フッ化物濃度の上限には差はありません。
まとめ
1. 歯磨き剤を使用してもプラーク除去効率が良くなるというわけではないが、有効成分という付加価値を考えると歯みがき粉は使用する方が望ましい。特にフッ化物が入っているものをお勧めする。
2. 歯周病予防の有効成分の入った歯みがき剤は歯肉炎への対策としては良いと考えられる。歯周病が進行している場合はプラスして歯科医院での歯周治療も必要。
3. 歯科医院専売品歯磨き剤の特徴は「低研磨」「低発泡」である。フッ化物濃度上限には差がない。
4. 発泡剤はブラッシングの満足感を与えるが、正しいブラッシング方法を実践するのであれば低発泡をおすすめする。
この記事を書いた人

医療法人社団 統慧会 かわべ歯科 理事長 川邉滋次
参考文献
1. 紺谷洋子ほか: 歯ブラシの植毛部の状態による歯垢除去効果について 第3報. 小児歯誌, 24(3): 548(1986)
2. Cees Valkenburg et al: Does dentifrice use help to remove plaque? A systematic review. Journal of Clinical Periodontology, 43(12):1050-1058(2016)
3. S Sälzer et al: The effectiveness of dentifrices without and with sodium lauryl sulfate on plaque, gingivitis and gingival abrasion-a randomized clinical trial. Clinical Oral Investigations, 20(3):443-450(2016)
4. 厚生労働. 令和4年歯科疾患実態調査結果の概要. 24. 2023. https://www.mhlw.go.jp/content/10804000/001112405.pdf
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