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フッ化物(フッ素)入り歯みがき粉の濃度基準が2023年に変わりました!

更新日:2023年10月21日

はじめに


フッ化物(フッ素)が配合された歯磨き粉の研究は世界中で行われており、むし歯予防に高い効果があると報告されています。


日本でも、2012年に母子健康手帳に「フッ化物についての質問事項」が追加され、2017年には歯磨き粉のフッ化物イオン濃度の上限が1,500ppmまで引き上げられ、1,450ppmの歯磨き粉が歯科医院やドラッグストアに並ぶようになりました。


そして、2023年1月には主に幼児から小学生を対象としたフッ化物入り歯みがき剤の推奨される濃度の基準が変更されました。


今回は、適切にフッ化物を使用するために、2023年の変更点とフッ化物についてまとめました。


▼目次

 

フッ化物(フッ素)の働きは?


フッ化物の働きは以下に記載した4つが挙げられます。


1. 歯の修復を早くする(再石灰化)

2. 歯が溶けるスピードを遅くする

3. 歯を強くする

4. 細菌の活動をジャマする


これらの働きによって、フッ化物はむし歯の進行を遅らせることができます。


フッ化物の効果を十分に得るためには、フッ化物入り歯磨き粉を使用してブラッシングし、お口の中にフッ化物を保つことが必要です。フッ化物濃度1,000ppmで約23%、1,500ppmで約30%のむし歯予防効果が期待されます。


フッ化物は、歯が届きにくい部位にも有効であるため、子供から高齢者まで幅広い年齢層の方に使用することがおすすめです。


フッ化物入り歯磨き粉は世界で15億人以上が使用しており、日本でも2020年においては歯磨き粉のうち92%のシェアを誇っています。


2023年1月の変更で何が変わったの?



年齢別フッ化物の利用方法2023

(歯が生え始めた〜2歳の場合)


従来は500ppmが上限でしたが、2023年1月から1,000ppmまで引き上げられました。フッ化物入り歯磨き粉の濃度は1,000ppm(市販だと950ppmが多いです)で、使用量は1〜2ミリです。1日に2回(寝る前を含む)歯磨きで使用します。


乳児の場合、歯ブラシが使用できない場合にはガーゼやコットンを使用することもできます。


保管については、子どもの手の届かない場所に保管し、歯磨き方法については歯科医師や歯科衛生士のアドバイスを受けることをおすすめします。


(3〜5歳の場合)


こちらも従来は500ppmが上限でしたが、1,000ppmまで引き上げられています。

フッ化物入り歯磨き粉の濃度は1,000ppmで、使用量は5ミリです。1日に2回(寝る前を含む)歯磨きで使用し、気になるようであればつばで軽く吐き出すか少量の水で1回のみゆすぐことも可能です。


(6歳〜大人・高齢者の場合)


以前は1,000ppmが上限でしたが、2023年からは1,500ppmに変更になりました。フッ化物入り歯磨き粉の濃度は1,500ppm(市販だと1,450ppmが多いです)で、使用量は2センチです。1日に2回(寝る前を含む)歯みがきで使用します。また、口の中にインプラントやチタン冠が入っていても、日本で販売されているフッ化物入り歯磨き粉であれば使用できます。


フッ化物配合濃度が上がるとむし歯予防効果は変わる?


2015年の信頼性の高い論文によると、フッ化物濃度1000ppmの歯磨き粉を使うことで23%のむし歯予防効果があったのに対し、1450ppmでは29.3%の予防効果に上昇していることが認められました。


つまり、同じように歯磨きをしていてもフッ化物配合濃度によって6.3%もむし歯予防効果を高められるのであれば、6歳以上の場合1450ppmの歯磨き粉を選ばない理由はないと考えられます。


この論文には続きがあり、2200ppm・2800ppmとさらに高い濃度だと、33.7%・35.5%とむし歯予防効果は増加するという内容がありますが、日本では1500ppm以下しか認可されていないため、これ以上の濃度は日本で実践することは難しいです。


フッ化物入り歯磨き粉を使っているのにむし歯が発生するのはなぜ?


日本では、毎日歯磨きをする人は95.3%、そして毎日2回以上磨く人も77.0%と増加を続けています。


しかし、これほど多くの人が毎日2回以上歯を磨いているのにもかかわらず、いまだにむし歯が多いのが現状です。


実際、当院でも年に一回幼稚園や保育園の歯科検診があるのですが、むし歯にかかっているお子さんがいます。


この理由として、以下のことが考えられます。


1. フッ化物濃度が低い歯磨き粉を使用している。またはフッ化物が入っていない歯磨き粉を使用している。


2.フッ化物入り歯磨き粉の使用量が少ない。


3. ブラッシング時間が短い、または磨き残しがある。


4.フッ化物入り歯磨き粉を使用した後に何回もゆすいでしまう。


5. 飲食の内容や回数に問題がある


6. 唾液の量が少ない、または口呼吸で口の中の唾液が少なくなっている


7. フッ化物入り歯磨き粉を使用した後すぐに水を飲む


先ほど濃度や使用量について説明したため、この次の項目では4と7の理由についてご説明します。


フッ化物入り歯磨き粉使用後の大量ゆすぎはNG!?


フッ化物入り歯磨き粉を使用しても、たっぷりのうがいで大半を流してしまうことがあります。そのため、「計量カップ大さじ1杯分(15ml)くらいの水で約5秒くらいの軽い1回のゆすぎ」にして、フッ化物をしっかりとお口の中にキープすることが大切です。この方法で、むし歯予防効果をより高めていきましょう。


また、フッ化物入りの歯磨き粉を使用した後すぐに「水ならむし歯の原因にならないから大丈夫」と思って飲んでしまう方もいます。せっかくお口の中にフッ化物をキープしておきたいのに、水を飲んでしまったことによって濃度が薄くなりフッ化物の効果が弱くなってしまいます。


もし、喉が乾く場合にはフッ化物入り歯磨き粉を使用する前にあらかじめ水を飲むことをお勧めします。またキシリトール100%でも、チューイングガムやグミはフッ化物入り歯磨き粉を使用した後は効果を弱くしないためにも控えることをお勧めします。


むし歯になりやすい歯、人のタイプは?


生え始めたばかりの永久歯は、硬さが中途半端でみがきにくいため、むし歯になりやすいです。このような場合には、フッ化物入りの歯磨き粉を使用して予防することをおすすめします。


他にも、ドライマウス(お口の中が乾燥する状態)、矯正治療中、仕事で糖や酸を飲食する回数が多い、手が不自由でブラッシングが難しい方などはむし歯のリスクが高いため、フッ化物入り歯磨き粉に加えてフッ化物入りうがい液などのケアもおすすめです。


フッ化物洗口液の使用方法について


フッ化物洗口液は4歳以上とされていますが、子どもがしっかりと「ぶくぶくうがい」を行えるかが大切です。家庭など毎日の洗口で使用するフッ化物の濃度は225〜450ppmの製品が歯科医院だけでなく薬局でも販売されています。


むし歯リスクの低い子どもが毎日自宅で使用する場合は225ppmや250ppmのものを、むし歯になりやすい子どもは450ppmのものをお勧めします。


使用方法としては、自宅用であれば1日1回就寝前にフッ化物洗口液を使用してください。フッ化物歯磨き粉の後にフッ化物を追加する目的でフッ化物洗口を行うため、フッ化物歯磨き粉でのブラッシングは必要です。


購入した際は、正しい使用方法や量を確認してください。洗口後は最低30分間はうがいや飲食をしないことを守っていただきたいため、夏季など水分補給が必要な時期は、洗口前に水や麦茶などを飲むことをおすすめします。


フッ化物の安全性


子どもにフッ化物を使用することを不安に感じる親御さんもいらっしゃるかもしれません。

その心配を解消するためにも、年齢や歯の生える状況に合わせたフッ化物の濃度を知ることが大切です。


フッ化物の注意点としては、副作用の「急性中毒」と「アレルギー」があります。ただ、フッ化物配合歯磨き粉の適切な使用法と量を守れば中毒による不快症状は発生することは少ないと考えられます。


ブラッシング後、フッ化物入り歯磨き粉は吐き出しますが、一部は口に残ります。3〜5歳児では使用量の約15%が残るのですが、この量であれば中毒の心配はありません、


歯磨きや洗口の際に飲み込んでしまったとしても1回量であれば問題はありません。しかし、毎回飲み込んでしまうようであれば慢性中毒の心配があるため、使用後はしっかり吐き出すことをお子さんに説明してください。フッ化物配合歯磨き粉や洗口液を初めて使用する前に水でぶくぶくうがいをして吐き出すトレーニングが常にできるようにしておきましょう。


また、使用するにあたっては保護者の方の協力が必要です。小さい弟さんや妹さんがいる場合は、誤飲の危険もあるため、フッ化物歯磨き粉や洗口液はお子さんの手の届かないところに保管してください。


フッ化物濃度が濃ければ濃い方がむし歯予防に効くだろうという考え方も危険です。中学生以下のお子さんの使用するフッ化物歯磨き粉に関しては、年齢に合わせた適切な濃度と量を守ってください。


例えば、5歳以下の幼児は、体重あたりのフッ化物量が多くなると、歯のフッ素症(歯に白や茶色の斑点が出る症状)を起こす恐れがあるため、子ども用(約1,000ppm)のフッ化物入り歯磨き粉の使用をおすすめします。


歯のフッ素症

一方、高校生以上になると、歯のフッ素症の心配がほぼなくなるため、日本で販売許可されている高濃度のフッ化物入り歯磨き粉を使用することが可能です。


適切な濃度と適切な量を守れば問題はありませんが、それでも心配な場合は、体内に取り込まれにくいフッ化物「モノフルオロリン酸ナトリウム(MFP)を使用している歯磨き粉をお勧めします。


フッ化物を活用するスウェーデン式歯磨きとは?


では、フッ化物配合歯磨き粉を活用しやすい歯磨き方法はあるのでしょうか?ここではスウェーデンで開発された「イエテボリテクニック」と「スラリー法」をご紹介します。


1. イエテボリテクニック(2+2+2+2のテクニック)


1日2回(朝と寝る前)、1回につき2分間、フッ化物入り歯磨き粉を2センチメートル使用して磨き、ブラッシング後は2時間飲食を控えるという方法です。フッ化物の効果をより出すためにうがいを控えることをお勧めします。


固定式の矯正装置を使用している方や、むし歯治療を多く経験している方、口の中が乾燥しやすい方(ドライマウス)は、1日3回に増やしましょう。


電動歯ブラシやヘッドの小さな歯ブラシの場合は、2センチメートルの幅がないため、1センチメートル使用して上あごの歯、再度1センチメートル足して下あごの歯を磨いていきましょう。


2. スラリー法(PBSR)


これは歯磨き後にフッ化物をよりお口の中に行き渡らせながら滞留させる方法です。


フッ化物入り歯磨き粉を歯全体にまんべんなく塗り付け、歯を磨いている2分間何も吐き出さずにおきます。それから、10ミリリットルの少量の水を口に含ませて、20〜30秒間お口の中を活発に動かしてブクブうがいをします。


この間、口の中にある歯磨き粉と少量の水が合わさりスラリー(泥状の液体)が作られ、フッ化物を多く含んだ液体が、お口の中の広範囲に行き渡りやすくなります。


20〜30秒間のブクブクうがい後は、歯磨き粉を吐き出し、再度うがいは行わず、2時間飲食を控えます。(どうしても口の中が不快な場合は少量の水で軽くゆすいでも良いです。)


 

まとめ


1. フッ化物はむし歯の進行を遅らせる効果があり、フッ化物入り歯磨き粉は世界でも幅広く利用されている。


2. 5歳以下の幼児は、フッ化物濃度による歯のフッ素症を起こさないためにも、約1,000ppmのフッ化物入り歯磨き粉をおすすめする。


3. フッ化物入り歯磨き粉でブラッシングした後の多めのうがいはNG。また2時間以内の飲食は水でもなるべく控える。


4. むし歯のリスクが高い人ほどフッ化物でのむし歯予防は大切。


5. フッ化物入り歯磨き粉は1日2回以上、フッ化物洗口液は1日1回すると良い、フッ化物洗口はフッ化物入り歯磨き粉と併用することが望ましい。

 

この記事を書いた人



静岡県菊川市の歯科衛生士


かわべ歯科 歯科衛生士スタッフ


 

参考文献


1. FDI World Dental Federation.Caries prevention and management chairside guide.2017.

https://www.fdiworlddental.org/caries-prevention-and-management-chairside-guide


2. Buzalaf, Marília Afonso Rabelo, et al. "Mechanisms of action of fluoride for caries control." Fluoride and the oral environment 22 (2011): 97-114.


3. Wright, J. Timothy, et al. "Fluoride toothpaste efficacy and safety in children younger than 6 years: a systematic review." The Journal of the American Dental Association 145.2 (2014): 182-189.


4. 4学会合同のフッ化物配合歯磨剤の推奨される利用方法. 一般社団法人 日本口腔衛生学会, 公益社団法人 日本小児歯科学会, 特定非営利活動法人 日本歯科保存学会, 一般社団法人 日本老年歯科医学会. 2023.


5. 厚生労働省. 平成28年歯科疾患実態調査結果の概要. https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/62-28-02.pdf


6. Twetman, Svante. "The evidence base for professional and self-care prevention-caries, erosion and sensitivity." BMC Oral Health15.1 (2015): 1-8.

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