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「口が乾いた時の飴」が歯には危険!?(口腔乾燥症)

更新日:1月27日

はじめに


唾液の量が減る状態が続くと、お口の乾燥感やネバつき、話しづらい、パンなどの乾いた食べ物が食べにくいなどの不快感が出ます。これがドライマウス(口腔乾燥症)です。ドライマウスの人は唾液の働きが弱く、むし歯や歯周病に対してリスクがとても高い状態です。


今回は唾液の機能とドライマウスについてまとめてみました。


▼目次

唾液は唾液腺という組織からつくられる

唾液成分の0.5%にバラエティ豊かな作用

ドライマウスの原因は?

ドライマウスは口の中に影響するの?

口が乾いてしまった時のあめが歯には危険な理由

ドライマウスの方へのむし歯予防

緊張するとお口の中が乾きネバつくのはなぜ?

睡眠中は唾液の量が少ない

まとめ

参考文献


唾液は唾液腺という組織からつくられる


唾液は1日約1000ml〜1500ml分泌されますが、薬剤や全身の病気、体の中の水分量などの影響を受けるため個人差があります。


お口の中には唾液がつくられるぶどうの房のような形をした「唾液腺」とよばれる組織があり、唾液線には大唾液腺と小唾液腺があります。その他にもお口の粘膜に小さな唾液腺が多数あります。大唾液腺からは唾液の9割がつくられています。


大唾液腺

大唾液腺は「耳下腺」「顎下腺」「舌下腺」の3つがあります。耳下腺は体積が最も大きく、サラサラの唾液が分泌されます。顎下腺は分泌量が最も多く全唾液の70%を占めます。舌下腺はヌルヌルと粘ついた唾液が出ます。


唾液成分の0.5%にバラエティ豊かな作用


唾液成分の99.5%は水分ですが、残りの0.5%の成分に様々な作用があります

今回は2つの大きな働き「食物をスムーズに胃へ送り込む作用」と「粘膜の保護作用」をみてみましょう。


食物をスムーズに胃へ送り込む作用はサラサラの唾液の役割です。水分が細菌や食べ物を洗い流してお口を清潔に保ちます。また「唾液アミラーゼ」とよばれる消化酵素が入っており、デンプンを分解してくれます。


粘膜の保護作用ヌルヌル粘つく唾液の役割です。このネバつきは「ムチン」とよばれる成分が主体です。粘膜を潤して、粘膜を保護してお口の中に潤いを保ち、口内炎になりにくくします。例えるなら魚のヌルヌルが皮膚から寄生虫を守ってくれるイメージです。


(その他の唾液の機能)


1. 細菌感染から体を守る


唾液に含まれる酵素「リゾチーム」には、外から侵入してくる細菌などに対する抗菌作用があり、細菌感染による病気を予防する働きがあります。


2. 酸を中和させる


唾液中の重炭酸塩が、お口の中のpHを弱アルカリ性に保っています。食後は口腔内が酸性に傾き、その状態が長時間続くと「むし歯」になりますが、この重炭酸塩が酸を中和して弱アルカリ性に戻すことによって予防しています。


3. 再石灰化(歯のミネラルの補充)


酸によって歯のカルシウムやリンなどのミネラルが溶け出しても、失われた部分に唾液の中のミネラルが補充してくれます。唾液に含まれている「スタテリン」は、歯の外周部分エナメル質の成分と結びつき、修復する作用があります。


4.粘膜・神経繊維の修復


唾液に含まれる成長因子(EGF・NGF)は粘膜や神経の修復を促すホルモンです。


5. 活性酸素の除去


唾液は、「体の老化」など様々な病気の原因となる活性酸素(フリーラジカル)を分解して除去する「ペルオキシターゼ」という酵素を含んでいます。


唾液の作用

ドライマウスの原因は?


年を重ねると唾液の量が少なくなる方が多くなりますが、加齢自体が原因で唾液量が減少しているケースはほとんどないと報告されています。


薬
薬の服用でドライマウスになることも

ドライマウスの原因の多くが「薬の服用」で、薬剤の80.5%に「口渇」という唾液が出にくくなる副作用があります。服用する薬剤の種類が多くなると、唾液量は減少する危険性は増えてしまい、むし歯や歯周病になるリスクが高くなります。また、サプリメントの普及による若い人のドライマウスもみられるようになってきています。


他の原因として全身の病気(シェーグレン症候群や糖尿病、甲状腺機能障害、放射線治療の影響など)やストレス、更年期障害(女性ホルモンの低下)などが挙げられます。


ドライマウスは口の中に影響するの?


お口の中の唾液量の減少は、「むし歯の多発」「歯周病」「口臭」「口角炎」「舌のザラザラした部分がツルツルになる」などの病気を起こしやすく、症状としては「せんべいやビスケットのような乾いたものが食べにくい」「入れ歯が痛い」「舌がヒリヒリする」「味が感じにくい」などがあります。


口が乾いてしまった時のあめが歯には危険な理由


自分自身でできるケアとして唾液腺(唾液が出るところ)のマッサージや保湿剤の使用があります。また食事をよくかむようにするなど普段の生活の中で少し工夫するだけでもドライマウスの解消につながります。


口が乾くと、ついついあめをなめてしまう人もいるかもしれません。唾液の少ない状態で糖を長時間摂取すると、急速にむし歯が進んでしまいます。甘いものが恋しい時や唾液の分泌を増やすためには、キシリトールが入ったシュガーレスガムをかむと良いです。果汁パウダーや糖類・酸味量の入っていないガムを選んでください。食べ過ぎはお腹がゆるくなりやすいので注意が必要です。


ドライマウスの方へのむし歯予防方法


ドライマウスの人のむし歯予防はとても難しく、生活面では「飲食の回数をコントロール(ダラダラ食べをしない)」「酸性の飲食物を控える」ことをおすすめします。


ホームケアでは、唾液の作用が期待できないため食後早めの歯磨きが有効です。歯ブラシをお口の中で動かすことによって唾液の分泌が促されることも報告されています。フッ化物入り歯磨き粉にプラスして、寝る前のフッ化物含有のマウスウォッシュ(洗口液)でうがいがおすすめです。


それでもドライマウスはむし歯や歯周病のリスクが高いため、歯科医院での定期的なメインテナンスや予防処置を受け、お口の中の良い環境を維持してください。


緊張するとお口の中が乾きネバつくのはなぜ?


神経には自分の意思で体をコントロールできる神経とコントロールできない神経があります。このコントロールできない神経が「自律神経」とよばれ、交感神経と副交感神経があります。


唾液線はこの自律神経に支配されており、リラックスしている時はサラサラ唾液が分泌されますが、ストレスや緊張している時は交感神経が働きサラサラ唾液は抑えられ粘液性の唾液が少量出ます。つまり、緊張すると粘ついた唾液が分泌されるのですが、量が少ないため口が乾きネバネバしやすくなります。


緊張とリラックス


睡眠中は唾液の量が少ない


唾液には、何もしていない時に自然に出る「安静時唾液」と、食べ物の味覚や嗅覚、酸などの化学物質による刺激、かむことによる刺激を受けた時に出る「刺激時唾液」があります。

安静時唾液はネバネバした唾液が多く、刺激時唾液はサラサラした唾液が多いです。


むし歯予防の観点からするとサラサラ唾液の方が水分が多く、酸を中和してくれる「緩衝能」という作用を持つ重炭酸イオンが多いため、むし歯になりにくいと言えます。


では1日のうちいつ唾液が多く出て、どの時間が唾液が出にくいのでしょうか?

食べ物と唾液の分泌量について1988年に報告された論文では、

睡眠時間が7時間と仮定すると 睡眠中に分泌される唾液の量は平均約40mlに過ぎないことになる。

と食事の時(1時間未満)に刺激時唾液、それ以外の起きている時間は安静時唾液、寝ている時は唾液がほとんど出ないことが報告されています。


1日の唾液分泌時間

寝ている時は唾液の量がとても少ないため、お口の中は細菌から無防備状態のようなものです。寝る前の歯磨きが不十分だとむし歯や歯周病のリスクが高くなることがわかります。


また口呼吸が続いている人はよだれが出やすくなるため、さらにお口の中に唾液が少なくなります。


 

まとめ


①唾液線によって唾液の出る量やサラサラ唾液とヌルヌル唾液の比率は異なる。


②サラサラの唾液は食物をスムーズに胃へ送り込み、消化作用もある。


③ヌルヌル唾液は「ムチン」とよばれる成分が主体で、粘膜を潤して、粘膜を保護する。


④ドライマウスの原因として、「薬の服用」や「全身の病気」「ストレス」「更年期障害」がある


⑤甘いものが恋しい時や唾液の分泌を増やすためには、キシリトールが入ったシュガーレスガムをかむことがおすすめ。唾液が少ない時にあめをなめるとむし歯のリスクがより高くなる。


⑥ドライマウスはむし歯や歯周病のリスクが高いため、家でのケアと歯科医院でのメインテナンスで口腔内の環境を改善していくことを推奨する。


⑦緊張すると交感神経が働き粘ついた唾液が分泌されるが、量が少ないため口が乾き粘着きやすくなる。


⑧寝ている時はドライマウスではない場合も唾液の量がとても少ないため、むし歯や歯周病のリスクが高いため、磨き残しには注意。


 

この記事を書いた人



医療法人社団 統慧会 かわべ歯科 理事長 川邉滋次


 

参考文献


①Humphrey, Sue P., and Russell T. Williamson. "A review of saliva: normal composition, flow, and function." The Journal of prosthetic dentistry 85.2 (2001): 162-169.


②阪井丘芳. "唾液と口腔機能の関わり." 日本静脈経腸栄養学会雑誌 31.2 (2016): 675-680.


③Watanabe, Seiya, and Colin Dawes. "The effects of different foods and concentrations of citric acid on the flow rate of whole saliva in man." Archives of oral biology 33.1 (1988): 1-5.


④中村誠司. "ドライマウスの分類と診断." 日本口腔外科学会雑誌55.4 (2009): 169-176.


⑤Han, Phuu, Piedad Suarez-Durall, and Roseann Mulligan. "Dry mouth: a critical topic for older adult patients." Journal of prosthodontic research 59.1 (2015): 6-19.


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