食後30分は歯みがき禁止は本当なの?(歯の酸蝕症の話)

更新日:9月1日

皆さんは「食後すぐに歯ブラシをしてはいけない」、「食べた後30分以上待ってから歯ブラシをしましょう」というお話を聞いたことがありますか?


以前、当院の歯科衛生士スタッフがブラッシング指導を行っていると、本やインターネットで視聴した患者様から「食べた後すぐに歯ブラシすると歯に良くないのでは?」とご質問をお受けすることもありました。


実はこの「すぐみがいてはいけない」アドバイスはむし歯ではなく、酸蝕症(さんしょくしょう)の話です。これは酸に触れた歯が柔らかい間は、削れたりすり減ったりしやすいから余計な力を加えないでという考え方からです。


酸蝕症とは、酸性の食べものや飲みものを繰り返しとることで、歯の表面が直接ダメージを受け、溶けてしまう状態です。酸性飲食物だけでなく、摂食障害やつわりなどで起きた胃酸の逆流でも起こることがあります。


またむし歯と違い、広範囲の歯に起こることが多く歯ブラシで解決できるわけではありません。


(以前に酸蝕症の歯についての文章もありますので、興味がある方は読んでみてください)https://www.kawabeshika.com/yoboushika


むし歯と酸蝕症は大きな違いがあるにもかかわらず、同じように理解されてしまったのは、本やインターネットで情報が部分的に強調されてしまった、誤った情報が一人歩きしてしまった結果です。


今回は酸蝕症を予防するために必要な、食べ物や飲み物についての知識や、酸蝕症になりやすい歯の特徴、食後早めの歯みがきは問題ないのか?というお話をします。



1酸性の食べもの、飲みものはなにがあるの?


飲食物のpH値を表にまとめてみました。永久歯の表面のエナメル質が溶けやすくなるpH値はpH5.5です。5.5より低くなれば酸性度が強くなります。(ただし、このpH5.5はむし歯を基準とした数値なので、飲食物の場合は配合成分などでエナメル質が溶けやすいpH値は左右されます。つまり)  酸性飲食物としてわかりやすいのは炭酸飲料やスポーツドリンクなどの甘い飲み物です。お酒では焼酎は中性に近いですがワインや梅酒などは酸性です。  グレープフルーツやレモン、オレンジのような柑橘類だけでなくパイナップルやいちごなども酸性食品です。
食べもの・飲みものの酸性度

永久歯の表面のエナメル質が溶けやすくなるpH値はpH5.5です。5.5より低くなれば酸性度が強くなります。(ただし、このpH5.5はむし歯を基準とした数値なので、飲食物の場合は配合成分などでエナメル質が溶けやすいpH値は左右されます。つまり)


酸性飲食物としてわかりやすいのは炭酸飲料やスポーツドリンクなどの甘い飲み物です。お酒では焼酎は中性に近いですがワインや梅酒などは酸性です。


グレープフルーツやレモン、オレンジのような柑橘類だけでなくパイナップルやいちごなども酸性食品です。



2炭酸が歯を溶かすの?炭酸以外を選べばいいの?


炭酸飲料の炭酸が歯を溶かす原因ではありません。


リン酸、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、ビタミンC(アスコルビン酸)、レモン果汁等が酸味料です。酸味料は飲み物に清涼感を与えますが、酸性になるため歯にはダメージとなります。
酸味料にはビタミンC(アスコルビン酸)・クエン酸・リン酸・酒石酸・リンゴ酸・レモン果汁などがある

炭酸飲料だけでなくジュースなども酸味料が使用されているため酸性になります。

この酸味料は飲んだ時のさわやかな感じを出す、味を調整するだけでなく、

飲み物に微生物が増殖しないように衛生面や品質を維持することも目的とされています。


つまり歯を溶かすのは炭酸ではべく歯に触れないようにするために、ストローを使用して酸性の飲み物の歯に触れる機会を少なくする方法があります。

なく、酸味料が原因だったのです。そのため酸性の飲み物=炭酸飲料と考えないようにしましょう。



3幼児や高齢者の歯は成人よりも溶けるリスクが高い理由


幼児の口の中は乳歯と生えたての永久歯なので、成人の永久歯と比較して柔らかく酸に弱くなっています。


高齢者の場合は歯周病などで歯ぐきが下がってしまい、歯の根本部分がむき出しになってしまうことがあります。


長年歯を使用しているため歯がすり減ってしまい、表面のエナメル質が剥がれてしまうなど、象牙質とよばれる内層部分が出ている場合もあります。


この象牙質の部分はエナメル質よりも柔らかく酸に弱くなっています。


したがって、親が食べている酸性のものを子どもに与える時や、若い頃よく飲食していた酸性のものを口にする際には、量を少なくしたり、酸性度が少ないものに変更できるかなどを考える必要があります。



4酸性の飲食物と上手に付き合っていくには?


酸性の食べものや飲みものは歯が溶ける危険があるから避けたほうがいいというアドバイスは間違いです。酸性の飲食物を口に入れるときにルールをつくって一緒に付き合っていく方法をおすすめします。


そのためには3つのキーワード「酸が歯に触れる時間を少なくする」「酸をなるべく歯に触れないようにする」「(唾液や水で)酸を中和する」が重要です。


1つめの酸が歯に触れる時間を少なくする方法として、ダラダラ食べをしない・ちびちび飲まない、健康に良いという理由で酸性のものを毎日摂るのではなくお休みの日をつくる、

1日の間食回数を少なくすると時間や回数の工夫があります。


2つめの酸をなるべく歯に触れないようにするために、ストローを使用して酸性の飲み物の歯に触れる機会を少なくする方法があります。


3つめの酸を中和するために、飲食後は水やお茶を飲んだり、水でゆすぐ、キシリトールガムを食べて唾液を出すなどがあります。



5食後すぐの歯みがきはいけないと聞いたことがあるけど本当なの?


まず結論として食事後早めの歯みがきは歯にとってマイナスではなく、良い面が多いです。


「食後すぐに歯ブラシをしてはいけない」、「食べた後30分以上待ってから歯ブラシをしましょう」という酸蝕症の対策は、酸性飲食物を過剰摂取している人に当てはまるもので日本の一般的な食事で歯がとけることはほとんどありません。


また、酸性の飲食物で一時的に口の中が酸性になってもすぐに唾液の作用で中和されます。

それでも心配であれば、飲食後に水やお茶で中和させてからブラッシングを行っても構いません。


しかし、むし歯はお口の中のむし歯原因菌が食べものの中の糖質を分解して作り歯を溶かす病気です。食後3分くらいたつと、菌の塊であるプラークの中が酸性になっていきます。


プラークが付着している歯は唾液の中和作用が行き届きにくくなり、むし歯原因菌の酸で歯を溶かしてしまいます。早めにこのプラークを除去しなければむし歯原因菌はどんどん活動していきます。


つまり、むし歯対策としてはすぐに歯をみがいて食べかすやプラークを除去した方が良いと考えられます。



まとめ


1酸性飲料=炭酸と考えると、炭酸以外の飲み物であれば大丈夫と思いこんでしまうが、ジュース等の清涼飲料水にも酸味料が使用されているものがあるため、注意が必要。


2幼児や高齢者の場合、乳歯や、歯の根部分の露出によって、成人の歯と比べて酸に弱い。

そのため、酸性の食べものや飲み物の量や質も考える必要がある。


3酸性の食べものや飲みものは避けるのではなく「酸が歯に触れる時間を少なくする」「酸をなるべく歯に触れないようにする」「(唾液や水で)酸を中和する」ことで一緒につきあっていくことが望ましい。


4酸性の食べものや飲み物を極度に摂取している場合を除いて、食後の早めの歯みがきはむし歯予防のためにも行った方が良い。



この記事を書いた人


静岡県菊川市のかわべ歯科院長兼理事長で歯科医師の川邉滋次です。

医療法人社団 統慧会 かわべ歯科 理事長 川邉滋次


参考文献


①公益社団法人 小児歯科学会. 食後のみがきについて. 2012.

http://www.jspd.or.jp/contents/gakkai/information/2012_01.html.


②Kitasako Y et al. Age-specific prevalence of erosive tooth wear by acidic diet and gastroesophageal reflux in Japan. J Dent; 43: 418-423. 2015


E. Bernabé et al. Early Introduction of Sugar-Sweetened Beverages and Caries Trajectories from Age 12 to 48 Months. Journal of Dental Research; 99(8): 898-906.2020.