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むし歯予防に「食後30分は歯磨きを避けて」は本当?

更新日:2022年12月4日

はじめに


皆さんは「食後すぐに歯磨きをしてはいけない」、「食べた後30分以上待ってからブラッシングをしましょう」というお話を聞いたことがありますか?


当院でも、本やテレビ、ウェブ等から知った患者様から、「食べた後すぐに歯ブラシすると歯に良くないのでは?」とご質問をお受けすることもありました。


今回は「この30分以内歯磨き禁止は本当なの?」についてお話ししていきます。


目次

「歯磨きを避ける」はむし歯のアドバイスではない?

食後の歯みがきはむし歯予防には有効

酸性飲食物を好む人は食後すぐ歯磨きを避けるべき?

まとめ

参考文献


 

「歯磨きを避ける」はむし歯のアドバイスではない?


まずは、30分以内の歯磨きを避ける話のルーツをたどってみましょう。


1999年に、歯の表面にクエン酸を3分浸してから歯磨きを行いどのくらい削れているかを計測した研究によって、30分後の歯磨きと60分後の歯磨きで明らかに差があったと報告されています。他の炭酸飲料スプライトを使用した研究でも60分以上経過後の歯みがきが望ましいと結論づけられています。


実はこの「食事後すぐみがいてはいけない」はむし歯ではなく、酸蝕症(さんしょくしょう)のアドバイスでした。日本歯科保存学会日本口腔衛生学会日本小児歯科学会でも「30分以内の歯磨きを避けることは根拠に欠けており、引き続き食後のブラッシングはむし歯の予防に有効」と報告されています。


甘さに関係せず、飲食物や化学物質、胃液に含まれる酸が直接歯に触れることで、歯が溶けていく状態を酸蝕症とよびます。

酸蝕症についての詳細


むし歯はお口の中の細菌たちがバイオフィルム(プラーク)を歯の表面に作ります。そして、バイオフィルムの中に糖を取り込んでエネルギーを得る際に副産物として出た酸が歯を溶かして発生・進行します。


酸蝕症とむし歯はこのような違いがあるのに、本やメディア、ウェブで情報が部分的に強調されてしまった結果、誤った情報が一人歩きしてしまったと考えられます。


食後の歯みがきはむし歯予防には有効


食事後早めの歯みがきは、むし歯予防に関してメリットの方が大きいです。


むし歯はお口の中の細菌が、飲食物の糖質を分解して酸を作り歯を溶かす病気です。菌の塊であるプラークの中が酸性になっていきます。


プラークが付着している歯は唾液の中和作用が行き届きにくくなり、細菌の酸で歯を溶かしてしまいます。早めにこのプラークを除去しなければ細菌はどんどん活動していきます。


つまり、むし歯対策としては早めに歯をみがいて、食べかすやプラークを除去した方が良いと考えられます。


酸性飲食物を好む人は食後すぐ歯磨きを避けるべき?


「食後すぐに歯ブラシをしてはいけない」という酸蝕症の対策は、酸性飲食物を過剰摂取している人に当てはまるもので、一般的な食事で歯が溶けることはほとんどありません。


しかし、「気合いを入れるためにエナジードリンクを毎日飲んでいる」「健康や美容のために乳酸菌飲料やお酢を飲んでいる」ように酸性の飲食物を常用していると酸食症になる恐れがあります。酸食症で溶けてしまった歯は、もろくなっているため歯みがきでも削れてしまう場合があります。


ここで「30分歯磨きを避けるのは有効か?」というと、研究の方法が長時間酸につけておくという現実では考えにくいシチュエーションのため30分という根拠も薄いと考えられます。

そのため酸食症に対しては歯磨きのタイミングよりも食生活のコントロールが必要です。


「酸性の飲食物は歯が溶ける危険があるから全く口にしない方がいい」というアドバイスでは生活が楽しめなくなるため、酸性の飲食物と一緒に付き合っていく3つの方法をおすすめします。

1. 酸が歯に触れる時間を少なくする


「ダラダラ食べをしない」・「ちびちび飲まない」、「毎日摂るのではなくお休みの日をつくる」、「1日の間食回数を少なくする」「寝る前に摂取しない」など時間や回数を工夫しましょう。

2. 酸をなるべく歯に触れないようにする

ストローを使用して酸性の飲み物の歯に触れる機会を少なくする方法があります。

3. 酸を中和する

酸性の飲食物で一時的に口の中が酸性になってもすぐに唾液の作用で中和されます。

それでも心配であれば、飲食後に水やお茶を飲んだり、水でゆすぐ、キシリトールガムを食べて唾液を出すことで酸性の度合いを低くすることが可能です。


 

まとめ


1. 30分以内の歯磨きを避けることはむし歯ではなく酸蝕症のアドバイスであり、食後早めのブラッシングはむし歯予防に有効。


2. むし歯対策としては早めに歯をみがいて、食べかすやプラークを除去した方が良いと考えられる。


3. 酸性の食べものや飲みものは完全に避けるのではなく「酸が歯に触れる時間を少なくする」「酸をなるべく歯に触れないようにする」「(唾液や水で)酸を中和する」ことで一緒につきあっていくことが望ましい。


4. 酸性の食べものや飲み物を極度に摂取している場合を除いて、食後の早めの歯みがきはむし歯予防のためにも行った方が良い。


 

この記事を書いた人


静岡県菊川市のかわべ歯科院長兼理事長で歯科医師の川邉滋次です。

医療法人社団 統慧会 かわべ歯科 理事長 川邉滋次

 

参考文献


①Jaeggi, T., and A. Lussi. "Toothbrush abrasion of erosively altered enamel after intraoral exposure to saliva: an in situ study." Caries Research 33.6 (1999): 455-461.


②Attin, Thomas, et al. "In situ evaluation of different remineralization periods to decrease brushing abrasion of demineralized enamel." Caries research 35.3 (2001): 216-222.


③日本歯科保存学会.「食後30分間は歯みがきを避けること」についての見解(2013)

http://www.hozon.or.jp/member/statement/file/opinion_20131211.pdf


④一般社団法人 日本口腔衛生学会. 食後30分間、ブラッシングを避けることの是非(2013)

http://www.kokuhoken.or.jp/jsdh/meeting/file/meet_62_meeting4.pdf


⑤公益社団法人 小児歯科学会. 食後のみがきについて(2012).

http://www.jspd.or.jp/contents/gakkai/information/2012_01.html.


⑥Kitasako Y et al. Age-specific prevalence of erosive tooth wear by acidic diet and gastroesophageal reflux in Japan. J Dent; 43: 418-423(2015).


⑦E. Bernabé et al. Early Introduction of Sugar-Sweetened Beverages and Caries Trajectories from Age 12 to 48 Months. Journal of Dental Research; 99(8): 898-906(2020).

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