市販ジュースに入っている「異性化糖」ってなに?歯に悪いの?
更新日:4月14日
はじめに
皆さんは市販のジュースの甘味成分に何が使われているかご存知ですか?砂糖や果汁、人工甘味料など、甘味成分は様々な種類があります。
では「果糖ブドウ糖液糖」や「ブドウ糖果糖液糖」という甘味料は聞いたことがありますか?これらが異性化糖です。もし近くに100%果汁以外の市販のジュースがあれば、成分表示を見てみてください。意外にも、異性化糖が含まれていることが多いことがわかると思います。
「果糖ブドウ糖液糖」や「ブドウ糖果糖液糖」を異性化糖と呼ばれます。異性化糖は、砂糖と比べて「大量に生産できる」「溶かす手間がない」「輸送が便利」「保存がきく」という利点があり、飲料や加工食品に多く使われます。
異性化糖は砂糖よりも価格が安いため、市販のジュースやスポーツドリンクなどの清涼飲料水、ドレッシングやめんつゆ、納豆のタレ、焼肉のタレなど、多くの飲食品に配合されています。
今回は、異性化糖についてまとめてみました。そして歯科医療の視点から異性化糖とむし歯の関係についても触れさせていただきましたので、参考にしていただけると幸いです。
▼目次
ホットコーヒーや温かい紅茶にガムシロップを入れないのはなぜ?
異性化糖って何?
異性化糖とは、トウモロコシやジャガイモ、サツマイモなどのデンプンから作られる、液体の食品添加物です。異性化糖は果糖の含有量で下記のように分類されます。

トウモロコシと聞くと市販されているスイートコーンを想像しますが、ここでのトウモロコシはデントコーン(馬歯種コーン)とよばれる直接食べるのではなく、コーンスターチ(デンプン)や飼料の原料、バイオエタノールの生産に使用される品種を使用します。

異性化糖はどのようにつくられているの?

異性化糖は、トウモロコシなどに含まれるデンプンを酵素と水で細かく分解して作られます。この結果、デンプンが最小単位であるブドウ糖の集まりになります。
次に、異性化酵素を使用してブドウ糖の一部を果糖に変換します。
このブドウ糖と変換された果糖の混合物が異性化糖です。
ホットコーヒーや温かい紅茶にガムシロップを入れないのはなぜ?
ホットコーヒーや温かい紅茶にガムシロップを入れないのはなぜでしょうか?
カフェなどで冷たい飲み物を注文するとガムシロップ、温かい飲み物を頼むと砂糖が必要かを店員さんから聞かれることありますよね?
この理由として「砂糖が低温で溶けにくい」「異性化糖の果糖が冷たい状態で甘さが引き立つ」ことが挙げられます。
1. 砂糖が低温で溶けにくい
砂糖は高温では溶けやすいですが、低温で溶けにくい性質があります。
一方、ガムシロップは元々液体状にあるため、低温のアイスコーヒーやアイスティーでも素早く溶けてくれます。
そのため、冷たい飲み物でも飲んだ時の砂糖のザラザラした感触がなく、美味しく飲むことができます。
2. 異性化糖の果糖が冷たい状態で甘さが引き立つ
異性化糖の果糖は、温度によって甘さが変わる性質があります。
果糖は40℃で砂糖と同じ甘さになりますが、40℃を越えると甘さが低下していきます。逆に40度より低いと甘さが強くなっていきます。
つまり、飲み物が熱いと甘さを感じにくく、冷たいと甘く感じるのです。
異性化糖のはむし歯の原因にならないの?他のデメリットは?
異性化糖はむし歯の原因になります。その理由として異性化糖が砂糖の構造と一緒のため、むし歯菌が代謝しやすくなっています。
異性化糖は先ほどご説明したように、ブドウ糖と果糖の集まりです。
米などに含まれる一般的な糖質はブドウ糖に分解され、血管を通って脳や筋肉など全身のエネルギーになります。つまりブドウ糖は運動すれば体中で簡単に燃焼されます。
一方、異性化糖の果糖は肝臓でしか代謝されないため、摂りすぎると肝臓に負担がかかります。消費されずたまってしまった果糖は中性脂肪になり、脂肪肝を引き起こします。
脂肪肝になるとメタボリック症候群や動脈硬化、肝硬変など、全身の病気や不調の大きな原因となります。
また果糖は血糖値を大きく上げないため、摂りすぎると血糖値を下げるためのインスリンが正しく働かなくなってしまう恐れがあります。その結果、血糖値が下がりにくくなってしまい、2型糖尿病の発生や進行に悪影響を与えることがあります。
同じ果糖でも果物は大丈夫なの?
果物は、異性化糖の入った清涼飲料水などと比較すると、果糖含有量が少ないです。ビタミン類や食物繊維なども豊富に含まれているので、食物繊維の作用で果糖がゆっくり吸収できるため、適量を食べる分には問題ありません。ただし、食べ過ぎは禁物です。
まとめ
1. 異性化糖はトウモロコシなどのデンプンから作られる、液体の食品添加物。
2. デンプンを分解し、ブドウ糖の集まりになったところで、異性化酵素を入れることでブドウ糖が一部果糖になる。このブドウ糖と果糖の集まりが異性化糖。
3. 異性化糖は、冷たい状態だと甘味を強く感じられるため、主に清涼飲料水などの冷たい飲食物や調味料に使われる。
4. 異性化糖の果糖は肝臓でしか代謝されないため、摂りすぎると肝臓に負担がかかる恐れがある。
この記事を書いた人

医療法人社団 統慧会 かわべ歯科 理事長 川邉滋次
参考文献
①ロバート・H ・ラスティグ著. 中里京子訳.果糖中毒-19億人が太り過ぎの世界はどのように生まれたのか?. ダイヤモンド社 2018.
②岡崎好秀.世界最強の歯科保健指導 上巻 -診療室から食育まで-.クインテッセンス出版株式会社 2017.
③新美寿英.お砂糖博士のほん糖学 初級 上級.2021.