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カロリーゼロ飲料の「人工甘味料」は歯に影響しないのか?

はじめに


皆さんはカロリーゼロ飲料を飲んだことありますか?


カロリーゼロ飲料の中には「特定保健用食品(通称トクホ)」という、安全性や有効性について国からの許可を受けている商品もあります。

→特定保健用食品の説明はこちら


飲料の陳列

安全性が国で認められている一方で、「太りやすくなるのでは?」「さらに甘いものを求めるようになるのでは?」など、デメリットについてはまだわからない部分もあります。


では歯科の観点からみてみるとカロリーゼロ飲料の成分は歯や口の中に悪い影響はないのでしょうか?


そこで今回は、「カロリーゼロ飲料に入っている成分」と、「カロリーゼロ飲料は歯に影響しないのか?」についてまとめてみました。


▼目次

ゼロカロリー飲料と他の飲料の違いは人工甘味料

人工甘味料ってどんなもの?

人工甘味料の種類

なぜ砂糖の代わりに人工甘味料が使用されるの?

人工甘味料は安全性に問題はないの?

カロリーゼロ飲料は歯に影響がないの?

まとめ

参考文献


 

ゼロカロリー飲料と他の飲料の違いは人工甘味料


まずは同じメーカーの炭酸飲料Aと名前が一緒のカロリーゼロ炭酸飲料Bの原材料表示を見てみましょう。原材料表示は配合量の多い順番で記載されます。


炭酸飲料
炭酸飲料A

カロリーゼロ飲料
カロリーゼロ炭酸飲料B

Aは果糖ぶどう糖液糖や砂糖などの糖類が1番多く、次いで炭酸、カラメル色素が入っています。

→果糖ぶどう等液糖についての詳細はこちら


Bは最初に食物繊維、その後炭酸、カラメル色素が記載されています。甘味成分は酸味料の後の甘味料が相当します。


このAとBの異なる点としては


1 . 内容量以外に食物繊維の有無と甘味成分の違いがあった。


2 . Aの原材料の中で糖類の配合量が一番多かった。


3 . Bは食物繊維の配合量が多く、甘味料の配合量は少なかった。


4 . Bの甘み成分は4種類入っていた。(Aは2種類)


が挙げられます。


食物繊維についてはトウモロコシ由来の難消化性デキストリンとよばれる食後の血糖値の上昇を抑える働きがあり、この成分がトクホに関与していると考えられます。


そして甘み成分ですがBの原材料表示に記載されている4種類は「人工甘味料」とよばれています。つまりカロリーゼロ飲料はこの人工甘味料が関わっていることがわかります。

人工甘味料ってどんなもの?


人工甘味料は合成甘味料ともいわれ、化学合成によってつくられる、食品衛生法に基づく指定添加物です。


少量で砂糖の数百倍以上の甘みがでるのでカロリーが抑えられ、「ゼロカロリー」や「ノンカロリー」、「カロリーフリー」など0または低カロリー甘味料として使用されます。


また、むし歯原因菌は人工甘味料を代謝できないため、むし歯の原因にはなりません。


人工甘味料の種類


人工甘味料は「アスパルテーム」「スクラロース」アセスルファムK」「サッカリン」「ネオテーム」があります。食べ物や飲み物の商品表示にはこの名前が記載されています。


この中で古いのがサッカリンで、1878年アメリカ合衆国の大学でコールタールの研究中に偶然発見したのがはじまりです。


ちなみにステビアという甘味料を昔のスポーツドリンク等で目にした方もいるかと思いますが、ステビアは「天然甘味料」であり人工甘味料ではありません。


1 . アスパルテーム


アスパルテームは砂糖と比較して甘味度は200倍あり、炭酸飲料やガム、医薬品の苦味を抑えるためにも幅広く使用されています。人工甘味料の中でも比較的多く使用されています。


2 . スクラロース


スクラロースは砂糖の600倍ほど甘味度があります。


砂糖に近い味があり後味が良く、加熱しても安定していることから、飲料や菓子、パンなどに使用されています。人工甘味料の中では重量単価が高い甘味料です。


アスパルテームやスクラロースはキシリトールと同じ特定保健用食品(通称トクホ)に使用される甘味料です。


3 . アセスルファムK


アセスルファムKの「K」は「カリウム」という意味です。甘味が早く出てすっきりとしていることが特徴です。


濃度が高くなると少し苦味があるため他の合成甘味料と組み合わせることが多いです。熱や酸に強い性質もあり飲料(健康飲料も含む)や菓子に使用されています。


カロリーは0kcal、甘味度は砂糖の200倍です。


4 . サッカリン


サッカリンは砂糖の350倍の甘味度がありますがカロリーは0kcalです。一度は発がん性の疑いで販売が禁止されていましたが、見直しの結果、発がん性リストから削除され現在では再認可されています。


5 . ネオテーム


ネオテームはアミノ酸由来の合成甘味料で、砂糖の7,000〜13,000倍と他の人工甘味料よりもとても高い甘味度を持っているのが特徴です。同じアミノ酸由来のアスパルテームの「ネオ」(新しい)という位置付けです。

13,000倍と聞くと驚きですが、この甘さを超えた14,000〜48,000倍の甘さをもつ「アドバンテーム」という人工甘味料が2014年日本で認可を受けています。



人工甘味料の輸入量
農林水産省砂糖および異性化糖の需給見通しよりグラフの表記を一部改変

なぜ砂糖の代わりに人工甘味料が使用されるの?


人工甘味料は、「砂糖と違う構造」「天然の甘味料と比較して甘さが非常に高い」ことから、カロリーを抑えることができる、血糖値の上昇を抑えることができる、むし歯の原因にならない・なりにくいことが理由として挙げられます。


砂糖の構造式
砂糖(スクロース)の構造式

アスパルテームの構造式
アスパルテームの構造式

1. カロリーを抑えることができる


例えば砂糖1gあたりのカロリーは4kcal、アスパルテームも同じ1gで4kcalです。(スクラロースやアセスルファムKは0kcalです)


しかし甘味度がアスパルテームの場合砂糖の200倍あるため、甘味を出すために砂糖50g(200kcal)使用する必要のある飲料が、アスパルテームを使用すると0.25g(1kcal)で同じような甘みを出すことが可能と考えられます。


飲料の場合100mlあたり5kcal未満は「カロリーゼロ」「ノンカロリー」「カロリーフリー」と記載することができますので、合成甘味料を使用すると0カロリー飲料を作ることが可能です。


2. 血糖値の上昇を抑えることができる


ブドウ糖を投与した時は血糖値の上昇がみられたが、合成甘味料の投与では血糖値に変化が認められなかったことから、人工甘味料は血糖値やインスリン値に直接の効果がないことが確認されています。


人工甘味料は砂糖の代替甘味料として、「肥満や糖尿病の予防や治療を考える上では食事全体のカロリーや栄養バランスを考慮した上で上手に活用することが大切」と結論づけられています。


3. むし歯の原因にならない・なりにくい


アスパルテームはたんぱく質の成分であるアミノ酸からできているため、むし歯原因菌が酸やプラークの成分をつくることができず、むし歯の原因になりにくいです。


アセスルファムKやスクラロースもむし歯原因菌に代謝や分解されることがないためむし歯の原因にならないことが報告されています。


人工甘味料は安全性に問題はないの?


「トクホとして国が認可している」「カロリーが少ない」「血糖値が上がりにくい」「むし歯になりにくい」とメリットが多く、魔法のような甘味料にみえますが、安全性に問題はないのでしょうか?


結論としては、「不明な部分が多いため積極的に飲食することは控えたほうが良い」と考えられます。その理由としていくつかの学術論文をまとめてみました。


1. 太りやすくなる


「人工甘味料は甘みのあとに血糖上昇が起こらないため、食べ過ぎ、エネルギーの過剰摂取などでむしろ太りやすくなる可能性が報告されている。」

血糖値は満腹を知らせてくれるセンサーにもなります。しかし、通常の清涼飲料であれば血糖値が上がるのに対し、人工甘味料を使用した飲料の場合血糖値が上がりにくいため、食事を多く食べ過ぎてしまう恐れがあると考えられます。


2. 味覚の麻痺


人工甘味料の強い甘みに対する慣れが甘みに対する感覚麻痺をもたらし、より甘みに関連した糖質を多く摂取する可能性もある。

人工甘味料は砂糖よりも甘味が強いため、その甘味に慣れてしまうと、昔よりも甘味が強いものでなければ満足できない恐れがあると考えられます。


3. 甘味の依存や中毒


甘いものは一時的であればストレスの解消に役立つが、強い欲求が続くともっと食べたい・もっと飲みたいと分泌をコントロールできなくなり依存や中毒になってしまう。

こちらも2と同じように甘味が強いために起こりやすいと考えられます。


4. 腸内細菌叢の糖代謝異常


人工甘味料は腸内細菌叢や味覚を介して糖の代謝に影響を与える可能性が明らかとなりつつある。更なる人での検証が必要である。

こちらに関してはまだ分からない部分が多いと考えられます。


人工甘味料を否定するつもりはありません、しかし、安全性についてわからない部分が多いため、ダイエット目的や血糖値で毎日0カロリー飲料を毎日飲み続けたりすることは避けたほうが良いと考えます。


カロリーゼロ飲料は歯に影響がないの?


人工甘味料はむし歯になりにくいことは明らかになっていますが、甘みの依存や中毒という点では、カロリーゼロ飲料だけでなく他の糖質を多く摂ってしまい、虫歯のリスクが高くなる恐れもあります。


また、カロリーゼロ飲料は清涼飲料水のように「酸性」の飲み物が多いです。頻繁に摂取すると虫歯ではなく、飲食物の酸が歯を溶かす「酸蝕症」を引き起こすリスクは高くなると考えられます。

→酸蝕症についての詳しい説明はこちら


 

まとめ


1. 人工甘味料は化学合成によってつくられた食品衛生法に基づく指定添加物である


2. 人工甘味料にはアスパルテーム、スクラロース、アセスルファムK、サッカリン、ネオテーム、アドバンテームがある。


3. 人工甘味料は「カロリーを抑えることができる」「血糖値の上昇を抑えることができる」「むし歯の原因にならない・なりにくい」という理由で砂糖の代替甘味料として使用されている。


4. 人工甘味料は安全性においてまだ不明な点が多いため、積極的な摂取は控える方が良いと考えられる。


5. カロリーゼロ飲料は清涼飲料水同様「酸性」のものが多いため、頻繁に摂取すると酸蝕症のリスクは高いと考えられる。


 

この記事を書いた人


かわべ歯科院長川邉滋次

医療法人社団 統慧会 かわべ歯科 理事長 川邉滋次


これは豆知識ですが、ゼロカロリー飲料を糖度計(ブリックス法)で測定すると、糖度が約2〜3と低く出ることが多いです。(砂糖が入った炭酸飲料は約5〜15)その理由としてブリックス法は砂糖などの内容物の密度を光の屈折率で測定するため、甘さは一緒なのに人工甘味料の入っている量が砂糖と比べて非常に少ないため糖度が低くなります。


 

参考文献


①Allison C Sylvetsky. Metabolic effects of low-calorie sweeteners: a brief review. Obesity 2018:https://doi.org/10.1002/oby.22252


②Steinert RE et al. Effects of carbohydrate sugars and artificial sweeteners on appetite and the secretion of gastroin- testinal satiety peptides. Br J Nutr 105(2011): 1320-1328

③Suez, J et al. Artificial sweeteners induce glucose intolerance by altering the gut microbiota, Nature 2014; 514: 181-186.


Sharon P.G.Fowler.Low-calorie sweetener use and energy balance: Results from experimental studies in animals, and large-scale prospective studies in humans. Physiol Behav 2016; 164(Pt B): 517-523.


⑤藤田 孝輝. 甘味料としての糖類Sugars as Sweeteners.日本調理科学会誌2020; 53(2): 147-152.


⑥吉田 昊哲, 花田 信弘, 藤原 卓, 眞木吉信, 奥 猛志. ゼロからわかる 小児う蝕予防の最前線.クインテッセンス出版 2018.

⑦農林水産省.令和2砂糖年度における砂糖および異性化糖の需給見通し(第2回).2020.



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