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子供の口呼吸・お口ポカンと歯並びの関係:影響と対策

更新日:2023年9月4日

皆さんは、食事や会話以外の場面でも口を閉じていることができますか?


全国66箇所の小児歯科医院で行われた調査によると、3歳から12歳までの3,000人以上の子どもたちの保護者に「健康状態や生活習慣に関する44項目のアンケート」を実施したところ、「お子さんの口は日中によく開いてますか?」という質問に対して「そう思う」と回答した保護者の割合は30.7%でした。


口呼吸の子供

口が開けっ放しになってしまう理由は2つあります。1つは「口で呼吸している」こと、そしてもう1つは「無意識に口がポカンと開いてしまう」ことです。


この両方が、歯並びに悪い影響を与えると考えられています。では、なぜ口を開けっぱなしにすると歯並びが悪くなるのでしょうか?そこで、今回は「子供の口呼吸や口ポカンが歯並びへどのように影響するのか?」を中心にまとめてみました。


目次▼

 

鼻は加湿機能付き空気清浄機の役割がある


鼻は、嗅覚以外にも加湿器と空気清浄機のような役割を果たすと言われています。空気が鼻を通ると、程よい温かさと湿気を与え、フィルター機能によって空気中のホコリや細菌などを取り除いてくれます。湿度がある空気は肺で酸素が最も吸収されやすくなります。


一方、口呼吸が続くと、フィルター機能がないためホコリや細菌が入り込み、病気になりやすくなります。また、口の中が乾燥し唾液が少なくなるため、前歯の着色、口臭、むし歯、歯周病のリスクが高くなります。さらに、口から直接乾燥した冷たい汚れた空気が入ることで、のどが痛くなったり、扁桃腺が腫れたりすることもあります。


子供の口呼吸の原因は?


子供の口呼吸の原因は、鼻詰まりが1つの要因としてあります。鼻詰まりが起こる理由としては、アデノイド(咽頭扁桃)や口蓋扁桃などの扁桃腺が大きくなることや、アレルギー性鼻炎や蓄膿症などで鼻の通りが悪くなることがあります。

アデノイドと口蓋扁桃

また、鼻づまりが無いにもかかわらず、口呼吸を続けてしまう場合もあります。過去に鼻がつまっていたために、解消しても口呼吸が習慣となってしまう場合や、鼻が通っているのについつい鼻を使わずに口で呼吸を続けてしまっている場合があります。


普鼻呼吸をしていないと、鼻呼吸をするための筋肉が発達していません。逆に普段から鼻呼吸をすることで、鼻の機能を改善することが可能です。


口が開いている原因は?


口唇閉鎖不全(こうしんへいさふぜん)やポカン口とも呼ばれる状態は、口元がゆるく、口が開いたままになってしまう状態です。口を閉じようとしても、唇はきちんと閉じられず、上の前歯が常に見えており、上唇は富士山型で下唇はたらこ状になるのが特徴です。


口ポカン

この症状は、口呼吸がある場合、ない場合どちらでも見られます。


他にも、上あごの発達が大きすぎる、または下あごの成長が上顎に比べて悪いなど、咬み合わせの異常によって口が閉じにくくなることがあります。


口呼吸やお口ポカンが歯並びに悪影響を与える理由


口呼吸やお口ポカンによって、舌の位置は低位になってしまい、開咬の原因となることがあります。また、舌が低位になると、上あごに舌圧がかからないため、上あごが大きくならず、成長不足になることがあります。


口呼吸やお口ポカンの悪影響は歯並び以外にどのようなものがあるの?


口呼吸やお口ポカンの「口を開けっぱなした状態」が続く悪影響として、以下のことが挙げられます。


1. 唇が乾燥し、荒れることがあります。乾燥した空気が唇を通り、水分を失われてひび割れたり、出血を起こすことがあります。


2. プラークがつきやすくなります。ある研究によれば、鼻呼吸20名と口呼吸20名の若者たちに歯科医院でのクリーニングとホームケアを6ヶ月行なった結果、口呼吸のグループの方がプラーク付着範囲が大きかったという報告があります。ただし、唾液の出る量には差はなかったとのことです)


3. 口の中が粘つくことがあります。唾液の水分が乾燥し、少なくなるため、口の中に粘つき不快症状が現れることがあります。


4. 歯ぐきの炎症が出やすくなります。唾液が乾燥することで、歯ぐきの部分についた細菌を洗い流す力が弱くなり、プラークが定着し、炎症を起こしやすくなります。


5. 前歯の着色がしやすくなります。上の前歯の表面が乾燥によって唇のラインに沿って着色しやすくなります。


6. 舌苔がつきやすくなります。舌苔とは、舌の表面に細菌や食べかすが付着して形成される白っぽい膜のことです。口の乾燥や、口が開いている状態で舌が低い位置になることが原因です。


7. 口臭が生じやすくなります。唾液の量が減り、お口の中の衛生環境が悪化すると、口臭が起こりやすくなります。


8. 舌が下がってしまい、筋肉が衰えることがあります。口呼吸をすると、口から空気を多く取り込むため、舌が下がってしまいます。これが続くと、舌の筋肉が衰えることがあります。


子供の口呼吸や口が開いている場合の対策は?


鼻呼吸ができない場合は、呼吸のために口を開けることになります。そのため、まずは口呼吸を改善することが大切です。歯科では、正しい鼻呼吸の方法を学び、良い習慣に変えていくように指導します。


しかし、鼻づまりの程度によっては、歯科だけでは対応が難しい場合があります。特に、アデノイド肥大は鼻づまりを引き起こし、鼻呼吸を妨げる原因となるため、耳鼻咽喉科と歯科の医療連携が大切です。


口を閉じるトレーニングの最初のステップは、「自分が口呼吸していることに気付くこと」です。鏡や動画撮影、シールやふせんを貼って気づきやすくする方法があります。


その後、唇を閉じる練習を始めます。最初は、頑張って口を閉じようとする意識を持ちながら力を入れ続ける感覚になります。このトレーニングは本人にとって大変なものですが、継続していくことで、唇が閉じる筋力がついてくるため、容易に閉じられるようになります。


筋力不足の場合には、専用のトレーニング器具を使用したり、「風船膨らまし」「吹き戻し」「割り箸くわえ」などのトレーニングを指導することもあります。


唇の筋肉を鍛える器具
唇の筋肉を鍛える器具

吹き戻し
歯科用の吹き戻しはやや膨らましにくい

またお口周りの筋力がつくと唇が引き締まり、口角も上がるようになるため、見た目の改善がモチベシーションにつながります。

 

まとめ


1. 口呼吸は自覚が難しい


2. 鼻呼吸は加湿とフィルター機能がある


3. 口呼吸の原因は鼻の問題・咬み合わせ・習慣性の3つがある


4. 口呼吸は様々な病気との関連性があるなど健康上無視できない


 


この記事を書いた人


菊川の一般歯科と矯正歯科、小児歯科の歯医者さん。

医療法人社団 統慧会 かわべ歯科 理事長 川邉滋次



 


参考文献


1. Y Nogami. Prevalence of an incompetent lip seal during growth periods throughout Japan:a large-scale,survey-based,cross-sectional study.Environ Health Prev Med 2021.


2. 今井一彰. 鼻呼吸歯医者さんの知りたいことがまるわかり鼻と口の呼吸で何が違う?なぜ違う?. クインテッセンス出版株式会社 2020.


3. 山口英晴 大野粛英 橋本律子. はじめる・深めるMFT お口の筋トレ実践ガイド. デンタルダイヤモンド社 2016.


4. 河井聡.口腔習癖見逃してはいけない小児期のサイン. 医歯薬出版株式会社 2019.


5. Mummolo S.Salivary markers and microbial flora in mouth breathing late adolescents.Biomed Res Int 2018.


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