永久歯がなかなか生えてこない…生えるのが遅いときに知りたい歯の生え変わり時期
- 歯科医師 川邉滋次
- 7月16日
- 読了時間: 6分
更新日:8月1日
はじめに -お子さんの歯の生え変わりが遅いと不安になりますよね!?
▼目次

お子さんの「乳歯から永久歯への生え変わり」は、実はとても個人差が大きいものです。同じ小学校の同学年でも、すでに何本も永久歯が生えている子もいれば、まだすべて乳歯のままという子もいます。
これは決して異常なことではなく、一人一人の「個性」と考えていただいて大丈夫です。
とはいえ、「うちの子、歯の生え変わりが遅いけど大丈夫かな?」「乳歯が抜けたのに、なかなか永久歯が見えてこない…」そんな状況を見ると、仕上げ磨きなどで毎日お口の中を見ている親御さんとしては、やっぱり心配になると思います。
筆者である私自身、幼い頃は歯の生え変わりが遅く、そのたびに口の中をのぞき込む両親が心配そうにしていたことを思い出します。
そこで今回は、歯の生え変わりに関して注意して見ておきたいポイントを、以下の3つに分けてご紹介します。
歯が生え変わる時期の目安
歯が生えてくる順番
左右で同じ歯が生える時期の違い
それぞれのポイントに加えて、考えられる原因や対策についてもわかりやすくまとめました。歯の生え変わり時期に不安に感じている親御さんにとって、少しでも参考になれば幸いです。
乳歯・永久歯の生える時期の目安
まず、歯の生え変わり時期には大きな個人差があります。目安より遅れていても、必ずしも「異常」とは限りません。
ただ極端に遅れていたり左右差が大きい場合は注意が必要です。あくまで目安のひとつとして、ご参考にしていただければと思います。
(乳歯の生える時期)

乳歯は、通常、下の前歯(下A)から生え始めます。乳歯の生える時期が大幅に遅い場合は、成長ペースがゆっくりなのか、周囲の歯に押されて出られないなど要因を考慮します。また、乳歯の本数自体が不足しているケースもあります。
(永久歯の生える時期)

永久歯は、生える年齢の幅が広く、後の歯ほどばらつきが大きいです。また、「歯が骨の中に埋もれたまま出てこない(埋伏)」や「位置や方向がずれている」といった問題が起こることもあります。
永久歯の生えてくる順番は人によって違う
乳歯はほとんどの場合、決まった順番(A→B→D→C→E)で生え変わります。一方で永久歯は個人差が大きく、順番が前後することもあります。

口の中だけの見た目では順番の予測が難しいため、定期的にレントゲン撮影で確認することをおすすめします。
「左右で歯の生え方が違う?」注意したいサイン
通常、親知らずを除き左右対称に生えます。ただし、生まれつき永久歯の本数が少ない「先天性欠損(先欠)」の場合は、非対称なこともあります。
特に注意したいのは、「片側の歯が生えてから反対側が12ヶ月以上経っても生えてこない場合」です。このような場合は何らかの異常がある恐れがあります。ただし、1年も様子を見てしまうと、対応が難しくなるケースもあります。
「まだ反対側が出てこないな」と思ったら、4ヶ月ほど様子を見ても生えない場合は一度歯科医院に相談することをおすすめします。
学校検診だけでは見つけにくい?歯科医院で早めのチェックを
お子さんの乳歯や永久歯の生え変わり(萌出)に異常がある場合、対応のタイミングが遅れてしまうと、将来的に治療が難しくなることがあります。

「学校検診や園の健診で見てもらっているから大丈夫」と思いがちですが、検診には限界があります。
学校検診ではレントゲンを使わず短時間でチェックするため、歯の生え変わりの異常を正確に見つけるのが難しいのです。
また、異常を疑った場合も、「歯列・咬合の問題」や「その他」と記載されるだけで、詳細が保護者に伝わりにくいというのが現状です。
歯科医院ではレントゲン等を使用して、目では見えない部分も含めて精査することが可能です。検診で異常がなくても「ちょっと遅いかな?」と気になった時点で相談することをお勧めします。
歯が「なかなか生えてこない」「生えるのが遅い」原因
歯の生え変わりが遅い場合、以下のような原因が考えられます。

「乳歯の重度むし歯で根の先に膿ができてしまった」(図左下)
「乳歯をぶつけ亀裂が入り、そこから細菌感染した」(図中央)
「抜けるはずの乳歯が残り、永久歯の生えるスペースを塞いでいる」
「過剰歯(歯の数が多い)で、永久歯を邪魔している」(図右上)
「上唇小帯(上の前歯根元付近の筋)が太く、歯の間のスペースを狭めている」(図右下)
永久歯が生えない場合の歯科処置
それぞれの原因に応じて、適切な歯科治療が必要になります・
1. 根の先に膿ができた
根の部分の治療を行います。小児の場合はむし歯が進行して発生することが多いため、むし歯の徹底的な除去もしていきます。
2. 乳歯をぶつけ亀裂が入り、そこから細菌感染
こちらも根の部分の治療を行います。細菌感染している部分は除去し、亀裂を塞いでいきます。
3. 抜けない乳歯がスペースを塞ぐ
原因である乳歯を抜いて、永久歯がスムーズに生えてこれるように誘導します。永久歯が自力で生えてこれない場合には、矯正装置を使用して、歯を引っ張り出すような処置がとられる場合があります。
4. 過剰歯が邪魔をする
過剰歯を除去していきます。永久歯が自力で生えてこれない場合には、矯正装置を使用して、歯を引っ張り出していきます。また過剰歯が原因で本来生えるはずの歯がねじれを起こしている場合には矯正装置でねじれを解消していきます。
5. 上唇小帯が太い
上唇小帯を切除して歯がスムーズに生えるスペースを確保していきます。
まとめ
1 .「歯の生え変わり時期の目安」「生える順番」「左右差」は永久歯の遅れの参考となる
2. 「ちょっと遅いかも」と思ったら、早めに歯科医院で相談、レントゲン検査をお勧めする。
3. 学校検診だけでは限界があるため、違和感を感じたら歯科医院でのチェックを受けること。
4. 永久歯が自力で生えない場合は、引っ張り出すなどの処置を行うこともある。
この記事を書いた人

医療法人社団 統慧会 かわべ歯科 理事長 川邉滋次(歯科医師)
参考文献
1. 有田憲司, et al. "日本人小児における乳歯・永久歯の萌出時期に関する調査研究 II その 1. 乳歯について." 小児歯科学雑誌 57.1 (2019): 45-53.
2. 有田憲司, et al. "日本人小児における乳歯・永久歯の萌出時期に関する調査研究 II その 2. 永久歯について." 小児歯科学雑誌 57.3 (2019): 363-373.
3. Makino, Eiko, et al. "Difference in bilateral timing of eruption of permanent teeth." The Bulletin of Tokyo Dental College 59.4 (2018): 277-284.
4. 田口洋. "萌出障害の臨床 上顎中切歯と上顎犬歯." 小児歯科学雑誌 47.5 (2009): 673-682.
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