子供の歯が生えるのが遅い‥知っておきたい乳歯・永久歯が生える時期と順番
- 歯科医師 川邉滋次
- 5月26日
- 読了時間: 7分
はじめに -お子さんの歯がなかなか生えてこないと不安になりますよね

お子さんの「乳歯から永久歯への生え変わり」は、実はとても個人差が大きいものです。同じ小学校の同学年でも、すでに何本も永久歯が生えている子もいれば、まだすべて乳歯のままという子もいます。
これは決して異常なことではなく、その子その子の「個性」と考えていただいて大丈夫です。
とはいえ、「今まで順調に生え変わっていたのに、ある歯だけなかなか永久歯が生えてこない…」「乳歯が抜けたのに、何ヶ月も経っても永久歯が見えてこない…」そんな状況を見ると、仕上げ磨きなどで毎日お口の中を見ている親御さんとしては、やっぱり心配になってしまいますよね。
そこで今回は、歯の生え変わりに関して注意して見ておきたいポイントを、以下の3つに分けてご紹介します。
<チェックしたい3つのポイント>
歯が生え変わる時期の目安
歯が生えてくる順番
左右で同じ歯が生える時期の違い
それぞれのポイントに加えて、考えられる原因や対策についてもわかりやすくまとめました。「うちの子、ちょっと遅いのかな…?」と不安に感じている親御さんにとって、少しでも参考になれば嬉しいです。
▼目次
乳歯・永久歯の生える時期はいつ?
歯の生え変わりには個人差があります。中には、生え変わりがゆっくりなお子さんもいらっしゃいますので、一般的な目安より遅れていても、必ずしも異常とは限りません。
あくまで目安のひとつとして、ご参考にしていただければと思います。
(乳歯の生える時期)

乳歯は、通常、下の中央部分の前歯(下A)から生え始めます。
生える時期に大きな遅れが見られる場合には、歯の成長スピードがゆっくりなだけなのか、それとも周囲の歯に押されて生えてこられないのかなど、いくつかの要因を考慮して判断していきます。また、生えるのが遅いという理由だけでなく、乳歯の本数が不足しているケースもあります。
(永久歯の生える時期)

永久歯は、乳歯と比べて生えてくる年齢の幅が広く、特に後から生えてくる歯ほど、生え始める時期にばらつきが見られる傾向があります。
また、乳歯に比べて、永久歯には「歯が骨の中に埋もれたまま出てこない(埋伏)」や「生える位置や方向がずれている」といった問題が起こることも少なくありません。
永久歯の生えてくる順番は人によって違う
乳歯は生えてくる順番が上下ともA→B→D→C→Eとなっておりこの順序が入れ替わることはまれです。しかし永久歯の場合生えてくる順番には個人差があります。

そのため、口の中の診査だけでは生えてくる順序を予想することが難しく、確認するためには定期的なレントゲン撮影が大切です。
「左右で歯の生え方が違う?」永久歯が片側だけ遅れているときの異常のサインかも!?
親知らずを除くと、通常、永久歯は左右対称に生えてきます。ただし、生まれつき永久歯の本数が少ない「先天性欠損」がある場合は、この限りではありません。
→ 先天性欠損についての詳しい情報はこちら
さて、左右の歯の生え方に大きなズレがある場合は、少し注意が必要です。
例えば、片側の歯が生えてからもう一方の歯が12ヶ月以上経っても生えてこない場合、何かしらの異常がある可能性があります。
ただし、1年も待ってしまうと、必要な対応が難しくなるケースもあります。そのため、「あれ?反対側がまだかな?」と気になった時点から、4ヶ月くらい様子を見ても生えてこない場合は、一度歯科医院にご相談いただくことをおすすめします。
学校検診だけでは気づけない?歯の生え変わりに歯科医院で早めのチェックを
お子さんの乳歯や永久歯の生え変わり(萌出)に異常がある場合、対応のタイミングが遅れてしまうと、将来的に治療が難しくなることがあります。

「学校検診や園の健診で見てもらっているから大丈夫」と思われがちですが、実はそこにも限界があります。
学校や園で行われる検診は、レントゲンを使わず短時間で検査が行われるため、生え変わりの異常を正確に見つけることが難しいのです。
また、もし歯科医師が何らかの異常を疑った場合でも、健康診断のお知らせには「歯列・咬合の問題」や「その他」とだけ記載されることが多く、詳細が保護者の方へ伝わりにくいというのが現状です。
歯が「なかなか生えてこない」「生えるのが遅い」…その原因とは?
お子さんの歯の生え変わりが遅れている場合、いくつかの原因が考えられます。
「乳歯が重度のむし歯になり、根の先に膿の袋(病巣)ができてしまった」(図左下)
「過去に乳歯をぶつけ、亀裂が入り、そこから細菌が入り込んで病巣ができた」(図中央)
「本来抜けるはずの乳歯が抜けずに残り、永久歯の生えるスペースを塞いでいる」
「過剰歯と呼ばれる、通常より多く歯がある状態で、永久歯の邪魔をしている」(図右上)
「上唇と前歯の間につながる筋(上唇小帯)が太く、歯の生えるスペースを妨げている」(図右下)
このような原因があると、永久歯がうまく生えてこなかったり、生える位置がズレてしまったりすることがあります。
永久歯が生えない場合に行われる歯科の処置
先ほど述べた原因への対策として、以下の歯科治療を行います。
1. 根の先に膿の袋(病巣)ができてしまった
根の部分の治療を行います。小児の場合はむし歯が進行して発生することが多いため、むし歯の徹底的な除去もしていきます。
2. 過去に乳歯をぶつけ、亀裂が入り、そこから細菌が入り込んで病巣ができた
こちらも根の部分の治療を行います。細菌感染している部分は除去し、亀裂を塞いでいきます。
3. 本来抜けるはずの乳歯が抜けずに残り、永久歯の生えるスペースを塞いでいる
原因である乳歯を抜いて、永久歯がスムーズに生えてこれるように誘導します。永久歯が自力で生えてこれない場合には、矯正装置を使用して、歯を引っ張り出すような処置がとられる場合があります。
4. 過剰歯と呼ばれる、通常より多く歯がある状態で、永久歯の邪魔をしている
過剰歯を除去していきます。永久歯が自力で生えてこれない場合には、矯正装置を使用して、歯を引っ張り出していきます。また過剰歯が原因で本来生えるはずの歯がねじれを起こしている場合には矯正装置でねじれを解消していきます。
5. 「上唇と前歯の間につながる筋(上唇小帯)が太く、歯の生えるスペースを妨げている
上唇小帯を切除して歯がスムーズに生えるサポートをしていきます。
まとめ
1 . 「歯の生え変わる時期の目安」「歯の生えてくる順番」「左右反対側の同じ歯との生える時期の違い」が永久歯が生えてこない&遅れの参考となる
2. 生えてくるのが遅いという違和感を感じた時に早めに歯科医院で相談し、レントゲンを含めた検査することがお勧め。
3. 学校検診では永久歯の遅れ等の検査は時間と設備の問題もあり発見することは難しい。
4. 永久歯が自力で生えてこれない場合には引っ張り出すような処置がとられる場合がある。
この記事を書いた人

医療法人社団 統慧会 かわべ歯科 理事長 川邉滋次
参考文献
1. 有田憲司, et al. "日本人小児における乳歯・永久歯の萌出時期に関する調査研究 II その 1. 乳歯について." 小児歯科学雑誌 57.1 (2019): 45-53.
2. 有田憲司, et al. "日本人小児における乳歯・永久歯の萌出時期に関する調査研究 II その 2. 永久歯について." 小児歯科学雑誌 57.3 (2019): 363-373.
3. Makino, Eiko, et al. "Difference in bilateral timing of eruption of permanent teeth." The Bulletin of Tokyo Dental College 59.4 (2018): 277-284.
4. 田口洋. "萌出障害の臨床 上顎中切歯と上顎犬歯." 小児歯科学雑誌 47.5 (2009): 673-682.
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