子どもの永久歯の数が足りない現象。咬み合わせや歯並びに影響あるの?歯科矯正での治療方法は?

皆さんは人間の歯が何本か知っていますか?


ヒトの歯は親知らずを除いて上あごに14本、下あごに14本、合計で28本あります。
正常な歯列模型(親知らずを除く)

親知らずを除いて乳歯列なら上あご10本、下あごが10本の合計20本で、永久歯列なら上あごに14本、下あごに14本の合計で28本あります。(親知らずを除く)

私たちは28本の永久歯を生きている間使い続けることになりますが、この間にむし歯や歯周病、歯が割れてしまう、歯科矯正を行う時に抜く、など歯を失ってしまうこともあります。


しかし、大人でも全員が28本存在するとは限りません。親知らずが人によって0本〜4本あるように、元々永久歯が28本に満たない方もいます。


今回は永久歯の数が足りない状態についてお話ししていきます。



1永久歯が生えてこない原因は?予防方法はあるの?


本来生えるべき永久歯28本の中で、1本以上歯が足りない状態を歯の先天性欠如(せんてんせいけつじょ)、略して「先欠」とよばれています。


原因としては、歯がつくられる時期になにかの障害がありできなかった、歯の細胞が増えなかったことで起こります。

歯が多く存在していない場合は、遺伝の影響や全身の病気、ホルモン分泌の異常などが考えられます。


ただ、永久歯がつくられる時期はお母さんのお腹の中にいる時から生後9ヶ月のため、この時期に歯の先欠を予防するのは非常に難しいと考えられます。



2歯の先欠はどのくらいの確率で起こるの?


2010年に日本小児歯科学会で行われた7歳以上の小児15544人を対象にした調査では、先欠は1568名(10.09%)でした。これは「約10人に1人」ですので、決してまれでないことがわかります。


歯の先欠は上(4.37%)よりも下の歯(7.58%)の方が多いですが、左右の差はないようです。


歯の種類では下の第2小臼歯(下5番)が多く、次いで下の側切歯(下2番)、上の第2小臼歯(上5番」)、上の側切歯(上2番)の順と報告しています。



先天性欠如歯は下顎の第二小臼歯に多く、レントゲン等で確認ができることがある。隣の4の永久歯の形成度から予想して今後永久歯が出てくる可能性としては低いと考えられる。
下の5番(第2小臼歯)部位に永久歯がない

上顎側切歯も歯の先天性欠如で多いと考えられる歯の1つです。この歯は6〜8歳頃に萌出することが多く、子どもの歯が生えてこないことを心配になって来院する親御様もいらっしゃいます。
上の2番(側切歯)部位に永久歯がない



欠如本数については1本が5.22%、2本が2.93%、3本が0.57%、4本が0.50%、5本以上が0.87%となっています。


男女や地域、人種での発現の差に関しては、「差が見られない」「女性の方が男性より多い」と報告が様々でまだ不明な部分があります。



3先欠を早く発見するにはどうしたらいいの?


子どもの場合先欠は普段の生活で発見することは難しいとされています。なぜなら永久歯が存在しなくても、歯が生えかわる時期まで異常が起きることが少ないからです。


そのため4つの点で、歯の先欠を疑う必要があります。


①乳歯の生え変わりが遅い


②乳歯に癒合歯(ゆごうし)がある。

※2つの隣同士の歯がくっついた状態を癒合歯と言います


癒合歯(ゆごうし)は2本の隣同士の歯が1本にくっついてしまう状態です。大人の歯よりも子どもの歯で見られ、下の前歯の側切歯と犬歯(乳歯なら乳側切歯と乳犬歯)または中切歯と側切歯(乳歯なら乳中切歯と乳側切歯)とのくっつきが多くみられます。乳歯では約4%ほどで起こるため決してまれな状態ではありません。原因は不明ですが顎の中で歯が作られる過程で隣とくっついてしまった説があります。
癒合歯(隣同士の2本の歯がくっついて1本になっている)

③両親に歯の先欠がある


④乳歯列の時に乳歯に先欠がある


以上のポイントはあくまでも可能性なので、必ずあるわけではありません。確実性を考えると、お子様がかかりつけの歯科医院に定期的に通い、レントゲンで先欠がないかを早期に確認していただくことをお勧めします。


年齢によっては、永久歯の形がなく、欠如歯の可能性があると思われると部位でも、数年後に再度撮影すると、その部位に永久歯が発見されるケースもあります。



4先欠は咬み合わせや歯並びに影響はないの?


永久歯が足りない状態のため、


①歯と歯の間が空いてしまいすきっ歯になる。


②歯が生えていないスペースに隣の歯が倒れ込んできてしまう。


③歯が生えていないスペースに上下の歯が伸びてきてしまう。


④かみ合わせが悪くなってしまう。


などの歯並びへの悪影響が考えられます。



5子どもの歯科矯正治療では先欠はどのように対応するの?


子どもの歯科矯正治療では状況に応じて以下の対応をとっています


①歯科矯正治療で足りない歯のスペースを閉じる。


②足りない歯のスペースを確保し、将来インプラントやブリッジ、入れ歯などで補う。


③乳歯の根が残っているようであれば、かみ合わせなど診断し相談の上残しておく。



まとめ


①永久歯28本の中で1本以上足りない状態を歯の先天性欠如という。


②多くの歯が欠如している場合には遺伝の影響や全身の病気、ホルモン分泌の異常などが考えられる。


③歯の先天性欠如に対する予防は難しい


④歯の先天性欠如は約10人に1人


⑤歯の本数が少ないと歯並びや咬み合わせに影響する


⑥歯科矯正治療で歯のスペースを調整し咬み合わせ治療を行うことも可能

 場合によっては乳歯をそのまま残しておくケースもある



この記事を書いた人


静岡県菊川市のかわべ歯科院長兼理事長で歯科医師の川邉滋次です。

医療法人社団 統慧会 かわべ歯科 理事長 川邉滋次


参考文献

①山﨑要一, 岩﨑智憲, 早﨑治明, 齋藤一誠, 徳冨順子ほか: 日本人小児の永久歯先天性欠如に関する疫学調査, 小児歯誌, 48 : 29−39, 2010.


呉健一, 新井一仁:永久歯先天性欠如の発現様式のメタアナリシス A meta-analysis of tooth agenesis pattern of permanent teeth, 日本矯正歯科学会雑誌, 70(3): 184-196, 2011.

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