子どもの歯と歯がくっついている?もしかしたら癒合歯かもしれません。
はじめに

上の写真のように2本以上の歯が結合している歯の状態を癒合歯(ゆごうし)といいます。
乳歯の癒合歯はヨーロッパやアメリカの人では1%に対し、日本人で3〜4%くらいみられます。
永久歯よりも乳歯で多く見られ、下あごの歯の方が上のあごの歯に比べて発生率が高いです。
癒合歯は80%以上下の前歯部分に見られます。以下の図より下あごのAとBまたはBとCでくっついていることが多いです。

2つ以上の歯がくっついた外見ですが、神経は1つにつながっている、または2つ独立している場合があります。

くっつき方によって名前が変わり、セメント質という表層でくっついている場合は「癒着歯」、象牙質という内部の組織でくっついている状態を「癒合歯」といいます。簡単にいうと癒着歯は癒合歯に比べてくっつき方が浅いイメージです。癒着歯は神経が2つに分かれています。
また癒合歯の後から生えてくる永久歯が生まれつき無い場合も40〜50%と多く、あったとしても歯が本来より小さいなど形や位置、生える時期の異常が起こりやすいです。
今回は「癒合歯はお口の中でどのような影響があるのか?」「癒合歯は歯ならびに影響はないのか?」等についてまとめてみました。お子さんの歯の中でこのような歯がある方は、この記事をご覧になって少しでも参考になさっていただければ幸いです。
癒合歯について
歯がくっついてしまう現象は生えてからではなく、骨の中で歯が出現して成長する過程の中で近接する歯が結合することで発生します。
歯と歯がくっついていますが幅は乳歯2本分よりも小さくなるため、後から生える永久歯が存在すると生えるスペース不足が予想されます。
癒合歯は分割するとリスクも大きいため、経過を見守ることが多いです。
永久歯にも癒合歯はみられることがありますが、乳歯の10分の1くらいのため、500〜1000人に1人くらいと少ない発生率と考えられます。
癒合歯(癒着歯)で気をつけること
1 . むし歯
癒着歯は歯と歯がくっついている部分に溝ができてしまうことがあり、プラークがたまりやすく、むし歯のリスクが高いと考えられます。そのため溝を歯科材料であらかじめ埋めておく、またはフッ化物でむし歯対策をしていくことをおすすめします。
2 . 後から生える永久歯
乳歯の癒合歯がある場合は、後から生えてくる永久歯が存在していないことが多くあります。2013年東京歯科大学の調査によると、癒合歯がある場合の後から生えてくる永久歯がない割合が全体で49.4%あります。部位毎による詳細は以下の画像で表記しています。
特に上の乳歯に癒合歯が出現している場合、永久歯があったとしても「生えてくる時期に遅れが出る」「本来の大きさより小さい」など何かしら異常が見られることがあります。
3 . 生え変わり
乳歯の癒合歯の後に生えてくる永久歯が存在していても、生えてくる時期の遅れや、スペースの不足による歯の重なり、歯列の中心位置のずれなどの歯並びに大きく影響する場合があります。
癒合歯がある場合の歯科矯正方法
乳歯が癒合歯で後から生えてくる永久歯の本数が少なく、下の歯が1本足りない場合は上下の中央位置は合わなくなる・かみ合わせがやや深くなってしまいますが、その後大きな問題にならないこともあります。
しかし2本少ない場合には上の歯を抜歯するなどの調整を要する場合があります。
スペースをつくって将来インプラントなどで間を埋める治療法もありますが、下の前歯のスペースは非常に狭いためあえてスペースを長期間確保することはあまり現実的ではないと考えられます。
まとめ
1. 癒合歯はむし歯や、後の永久歯の存在、生え変わりに影響が出る。
2. 癒合歯自体は経過を見守ることが多い。
3. 癒合歯の本数によって矯正治療方法が変わる。
この記事を書いた人

医療法人社団 統慧会 かわべ歯科 理事長 川邉滋次
参考文献
1 . 辻野啓一郎, and 新谷誠康. "小児の歯数異常・萌出異常への対応 2. 乳歯癒合歯." (2014).
2 . Tsujino, Keiichiro, Takuro Yonezu, and Seikou Shintani. "Effects of different combinations of fused primary teeth on eruption of the permanent successors." Pediatric dentistry 35.2 (2013): E64-E67.
新谷誠康. "クリニカル 乳歯の癒合歯が後継永久歯に与える影響." 日本歯科医師会雑誌/日本歯科医師会 [編] 65.12 (2013): 1434-1442.
3. 三條晃, et al. "演題 1. 癒合歯に対する歯科矯正学的対応について." 岩手医科大学歯学雑誌 35.3 (2010): 154.