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歯の予防に役立つシーラントの知識と注意点

更新日:2023年9月2日

はじめに


シーラントは歯の溝やくぼみ部分など、むし歯の危険性が高い部分を一時的に封鎖することで、むし歯を予防する処置です。主に子供の永久歯に適用されることが一般的です。


シーラント

溝の部分はプラークが入り込みやすく、完全にプラークを取り除くことは大変なため、あらかじめ溝を浅く平坦に近い状態にすることでブラッシングの効率を上げることが可能です。


今回はこのシーラントについてより深く知っていただくことと、注意点についてまとめてみました。シーラントを通じて予防歯科に興味を持っていただけたら幸いです。


目次▼


 

シーラントはむし歯の予防ができるの?


現在では、お口の中のケアや、フッ化物入りの歯磨き粉を正しく使用する、食生活の改善(糖や酸)、唾液(口呼吸)などむし歯に対する予防方法が多くあるため、シーラントの優先度は低くなっています。


また、シーラントは全ての歯に予防効果が出るというわけではありません。現に乳歯ではシーラントの有効性は確認されていません。つまりどの歯でもシーラントをすれば良いわけではなく、対象歯は限られています。


対象となる歯は、第一大臼歯と第二大臼歯の噛み合わせ面、前歯の盲孔、癒合歯(乳歯・永久歯)です。


1. 第一大臼歯の噛み合わせ面


第一大臼歯は6歳臼歯ともいわれ、6歳前後で生えてくる歯です。完全に生えてくるまでに時間がかかるため、噛み合わせ面の一部が歯茎に覆われている期間が長い上に、溝の形態が複雑で清掃が難しいため、むし歯になりやすい部位といえます。


第一大臼歯の溝

そのため第一大臼歯は生え出して溝が見え始めた頃に、噛み合わせ面をシーラント処置を行なってむし歯を早い段階から予防する方法が取られることがあります。


ただし、年齢を重ねていくうちに歯の溝は浅くなる傾向があるため、成人の方でシーラントを行うことはほぼありません。


歯の溝

2. 第二大臼歯の噛み合わせ面


永久歯列期になると乳歯の交換が終了し、第二大臼歯(12歳臼歯)が生えてきます。この時期は小学校高学年〜中学生のため、口腔ケアや間食など親御さんの目から離れている事が多く、部活動やスポーツクラブによるスポーツドリンクなどの清涼飲料水をよく飲んだり、塾や習い事で忙しくなりブラッシングが疎かになってしまうなど、口の中の環境が悪くなりやすい時期です。


その結果、生えたばかりの第二大臼歯の噛み合わせ面にプラークが停滞し、むし歯になってしまうことも少なくありません、その際、今までのむし歯の経歴やむし歯のリスクを調査した後、むし歯になる危険性が高い場合は、第2大臼歯の噛み合わせ面にシーラント処置を行うこともあります。


3. 前歯の盲孔


前歯の裏側に盲孔という陥没のような形ができる場合があります。この部分は歯ブラシが届きにくいため清掃不良となりやすく、むし歯になりやすい場所となります。この部分に関しては早期にシーラント処置をすることをお勧めします。


4. 癒合歯


乳歯では1〜5%の確率で癒合歯と呼ばれる2つの歯がくっついている現象が見られるため永久歯よりも頻度は高いです。癒合歯に裂溝が生じている場合にはむし歯になりやすいため早めにその溝をシーラント処置を行い予防することがあります。


シーラントに使う材料は?


処置に用いられる歯科材料は「グラスアイオノマー系」と呼ばれるセメント「レジン系」と呼ばれる樹脂材料とに大きく分けられ、歯の状態によって使い分けられます。


歯が生えたばかりで一部歯ぐきに覆われている歯には、グラスアイオノマー系を使用します。フッ素徐放性レジン系シーラントが普及しているため、「物理的な封鎖+歯の強化」によってむし歯予防効果が期待できます。


上下の歯が噛み合うくらいまで生えてきた際にはレジン系の材料が使用されます。歯の溝の面を物理的に埋めることを目的としているため、歯としっかり接着していることがポイントとなります。


6種類のイオン(フッ化物、ナトリウム、ホウ酸、アルミニウム、ケイ酸、ストロンチウム)をを含むグラスアイオノマーとレジンの良い部分を兼ね備えた歯科材料(ジャイオマー:GIOMER)は子どもの歯に対して高いむし歯予防効果が期待されています。


歯の溝部分だけでなく、エナメル質形成不全や矯正装置の周りなどむし歯のリスクが高い部分にも使用できる材料もあります。


シーラントで注意したいこと


シーラント処置を行う際は乾燥状態を保てるかが大切です。特にレジン系の材料は湿度に弱く、90%の湿度で接着が低下してしまう傾向があります。


口の中には唾液が存在し、唾液は水蒸気としてお口の中を舞います。

口の中の湿度は口の奥に行くほど湿度が増加し、口の中の湿度は90%以上に達します。

そのため、このままの状態で処置をしてもすぐはがれてしまったり、隙間ができやすく予防効果が無いだけでなく、むしろむし歯の温床になることもあります。


簡易防湿(かんいぼうしつ)という歯科用の綿を用いる方法では、唾液や湿気を防ぐことは難しく湿度を抑える効果はほとんどないことが報告されています。さらに、子どもはお口の中が狭く、歯科用の綿を置くことでさらに作業範囲が狭まる上に、お口を大きく開け続けることは難しいと考えられます、また唾液が出る量が多いため、処置の途中で綿が水分を吸いきれずに唾液があふれてしまうことも少なくなく、せっかくきれいにした歯の面を汚染させてしまいます。接着面に唾液が付着してしまうとタンパク質の膜を張ってしまうため、水で洗っただけでは接着強さは完全に回復しないことが知られています。


上あごの歯であれば唾液が触れないから大丈夫と思う方もいるかもしれませんが、綿を入れると口の開く量は少なくなるため、内側に舌が歯の面に触れやすいのと口の中の湿度で乾燥状態を保つことは難しくなります。


ラバーダム防湿であれば治療する歯の周りをゴムで覆うため、湿度が低くなり、室内環境と同じくらい(45%)のレベルになります。


ラバーダム防湿
ラバーダム防湿


シーラントの手順


シーラント処置は以下のステップによって行われます。


まずラバーダム防湿やZOOと呼ばれる歯科治療防湿器具を使用し、唾液が入らないように準備します。


歯をクリーニングして歯の溝やくぼみ部分を清潔にし、プラークを赤色に染める染色液を使い汚れが残存していないか確認します。


従来は酸処理と呼ばれる歯に接着しやすいように歯の表面を酸でザラザラにさせる処置が必要でしたが、健康な歯をわざわざ酸に晒して溶かすことでむし歯になりやすくなってしまうリスクもあります。そのような懸念を払拭できるセルフエッチング処理です。

セルフエッチング処理とは酸による歯の溶けを最小限に抑え、歯の表面を健全に保ちながら接着しやすい環境をつくる処理方法です。


シーラント剤が溝部分に過不足なく、泡が入らないように丁寧に詰めていきます。その後噛み合わせを確認し、シーラント部分が噛み合わせ部分に当たっていないかチェックします(当たっていると剥がれたり割れる恐れがあります)


シーラントをしたからもう安心というわけではない


シーラントは永久的なものではなく、時間が経つと剥がれることがあるため、定期的なチェックのために歯科医院を受診し、必要に応じて補充・補強する必要があります。


シーラント処置後は、シーラントの形が保たれているか、割れやはがれが無いかを確認します。シーラント処置直後にその部位を画像で記録することで、次回以降患者さんが来院した際に細かい変化をチェックすることができます。


割れや剥がれを放置してしまうと、その部位にプラークが溜まりやすくなるため、シーラントしない状態よりもむし歯のリスクが高くなる事があります。シーラントの下でむし歯が広がっていくケースもあるため、むし歯の発見が遅れてしまうこともあります。


シーラントの下で発見されたむし歯
シーラントの下で発見されたむし歯

そのため、シーラントを行った際には定期的な検診を受け、シーラント部分に関してはより細かいチェックを受けていただくことをおすすめします。


 

まとめ


1. シーラントはむし歯予防のための処置で、歯の溝やくぼみ部分を封鎖する


2. シーラントは子供の永久歯に主に行われ、特定の歯に対して予防効果がある。


3. シーラントは「グラスアイオノマー系」と「レジン系」が使われ、歯の状態によって選択される。


4. シーラントの際には湿度の管理が重要で、湿度が高いと接着が弱くなる。ラバーダム防湿をすることで湿度を制御することが可能。


5. シーラントを施した後も定期的な検診が必要であり、割れや剥がれがある場合は早めに対処することが大切。


 

この記事を書いた人


静岡県菊川市のかわべ歯科院長兼理事長で歯科医師の川邉滋次です。

医療法人社団 統慧会 かわべ歯科 理事長 川邉滋次


 

参考文献


1. 波部剛, and 高森一乗. "口腔内の温・湿度分布とエア・ブロー, サクション, ラバーダム防湿の影響." 日本歯科保存学雑誌 51.3 (2008): 256-265.


2. 亀山敦史. "やればやるほど楽しくなるコンポジットレジン修復 コンポジットレジン修復に防湿は必要か? 2." 日本顎咬合学会誌 咬み合わせの科学 40.3 (2020): 290.


3. 英保裕和, and 亀山敦史. "各種防湿装置の有用性: 装着感の評価と口腔内環境への影響." 接着歯学= Adhesive dentistry 27.3 (2009): 111-117.


4. 日本口腔衛生学会フッ化物応用委員会. う蝕予防の実際 フッ化物局所応用実施マニュアル. 社会保険研究所. 2017.

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