top of page

むし歯になりにくいグミの選び方と食べ方をお伝えします!

はじめに


むし歯になりにくいグミの食べ方

近年グミ市場が成長しています。2021年には、ついにグミの売り上げが伸びガムを上回り、2022年にはその差は200億円以上にまで拡大しました。


一方でガムの売り上げは下がっています。2023年3月には26年間も続いていた明治のガム「キシリッシュ」が販売を終了しました。しかし、その代わりに「キシリッシュグミ」というグミとして生まれ変わっています。


ガムとグミの市場規模

このグミ市場の好調ぶりを裏付けるように、2023年7月の日本経済新聞には興味深い記事が掲載されました。それは、のど飴で有名な「カンロ」がグミを生産する工場を拡張するというものです。グミの需要が増加していることがわかります。


私もコンビニやスーパー、薬局を訪れた際にグミのコーナーを見てきました。そこで驚いたことは、かつてないほどのグミの種類の豊富さです。新しいフレーバーやカラフルなパッケージのグミが並び、目移りしてしまうほどでした。


しかし、これだけグミが人気を集める一方で、健康に気を使わなければならない側面も存在します。歯科医師の立場からは、グミの過剰摂取によるむし歯のリスクを指摘します。


そこで、私たちの歯科医院では、むし歯予防の一環として、患者様に普段の食生活や間食の内容についてカウンセリングを行い、食事のアドバイスをしています。食生活の調査を行っていると、小学生や中学生の間で、グミが人気の間食として目立つようになってきました。


ただ、健康を考える上では「グミは食べちゃだめ」「お菓子は食べないで」「生野菜やチーズ、ナッツ(糖質を含まないもの)だったらおやつや間食に食べていい」といった指導は、歯科の観点として正しい意見かもしれませんが、グミ好きな人にはあまり受け入れてもらえないかもしれません。


そこで私たちはグミが好きな方々の視点にも立ってみました。どうすればむし歯のリスクを減らしつつ、グミを楽しむことができるのか、そのための工夫や注意点をまとめてみました。今回の記事を通して、グミが大好きな方々でも、健康を守りながら楽しめる方法を知っていただけたら幸いです。ご参考にしていただければと考えています。


目次▼

 

グミについてもっと詳しく知ってみよう


グミは元々ドイツで生まれたお菓子で、「gummi」という言葉はドイツ語で「ゴム」を意味します。多くの人が見たことがあるかもしれませんが、ハリボーというドイツの会社が有名で、クマのイラストがパッケージに描かれたグミを製造しています。


グミ

当時、グミは子ども達の「噛む力」を強化するために作られたお菓子でした。そのため、今でもハリボーのグミはかなり固い仕様になっています。


日本では1980年に製造・販売が始まり、研究が進んで、味や固さなど様々な種類のグミが登場しました。日本ではグミは一般的に「グミキャンディ」または「キャンディ」(キャンデー表記もあり)という名称が多いです。


グミの主成分は主に砂糖、水飴、ゼラチンです。ゼラチンはコラーゲンから作られており、その量によってグミの弾力(固さ)が変わります。ゼラチンを多く入れると、より弾力のある、固いグミを作ることができます。


コラーゲンはタンパク質が3本組み合わさった鎖のような構造をしています。常温では水に溶けませんが、長時間加熱すると結合が切れ、水に溶けるようになります。これがゼラチンです。


ゼラチンをお湯に溶かすと、バラバラだった鎖が水を吸収しながら再び結びついてゲル状になります。液温が高いうちは鎖が動き回りますが、冷えると固まり、弾力のある食感になります。


グミの弾力のひみつ
グミの弾力のひみつ

「果汁100」と記載されているグミを見たことがあるでしょうか?この裏面成分表示を見てみると「水あめ、砂糖、濃縮ぶどう果汁、ゼラチン‥」と水あめと砂糖が先に記載されています。これは濃縮果汁を用いており、生の果汁に換算すると100%に相当する量を使用していることを意味しています。(濃縮果汁が例えば5倍の濃度なら、グミの中に濃縮果汁20%含まれている計算です。5×20=100%ということです。残りの80%部分に水あめや砂糖、ゼラチンなどで占められています)


濃縮還元果汁

ちなみに、ゼリーとグミの違いはゼラチンの量にあります。グミの方がゼリーよりもゼラチンが多く含まれています。また、ゼリーにはゼラチンではなく寒天を使っているものもあります。


グミは3〜4歳以上を対象としていますが、ハードグミのような弾力が強いものは噛む力や飲み込む力が未熟な子供の場合、のどや気管に詰まらせる危険があるため注意が必要です。


小児が誤嚥の原因となった食品

消費者庁が医療機関からの情報を元にした統計によると、5歳以下の子供がお菓子や豆・ナッツなど硬いもので窒息や誤嚥(ごえん)のリスクが高いと報告しています。7歳以上でも事故報告があるため、小学校低学年までの子どもにグミ与える際には親御さんが一緒にいてよく噛むように促すようにしてください。


なぜグミ市場が拡大しているのか?


1. SNS等で簡単に共有できる魅力的な要素がある


グミは、飴やガムとは異なり、柔らかく弾力のある特性を持っています。そのため、グミは様々な形に加工でき、可愛らしいものからインパクトのあるものまでバリエーションが豊富です。さらに多彩なフレーバーや食感のバリエーションもあり、幅広い需要に対応できることが魅力的な点と言えます。


これらの特徴と手頃な価格から、グミはSNS投稿に適しており、簡単に拡散されやすくなっています。


SNS

実際に「このグミ、コンビニで見かけて買おうかどうか迷った。」や「良く食べてるグミ紹介します。」「(グミの)新商品試したくなってしまう。」などの投稿が見られます。また、日本グミ協会といったS N Sを活用した活動も存在しており、そのアカウントには17万人以上のフォロワーがいるほど人気です。


2. 様々な硬さや食感を楽しめる


グミは柔らかいものから弾力のあるものまで様々な食感が楽しめます。製菓会社である明治さんでは、グミの噛み応えを「1・2・3・4・5・5+」の6段階に分けた食感チャートをパッケージに記載しています。これにより、消費者は自分の好みに合った噛み応えのグミを選びやすくなっています。


3. 刺激的な味やフレーバー


濃い味のお茶が販売されたり、お酒でもアルコール度数が強いものが売れていたりするなど、味が濃い、刺激があるものは一部の消費者に好まれる傾向があります。


また、ストレスを感じている時には、気分転換や心の栄養を求めて刺激的な商品を選ぶことがあります。


4. 持ち運びやすく食べる時間が自由


グミは気温が上がってもベタつきにくく、ゴミが少ないという利便性があります。ガムのように食べた後に捨てる必要もないため、手軽に持ち運びでき、いつでも好きな時に食べることができます。


持ち運びしやすい

5. 健康に良さそうなイメージ


グミは美味しいだけでなく、健康やダイエットにも良いというイメージが広がっています。


パッケージには「コラーゲンが〇〇mg配合」「着色料不使用」「ビタミンCたっぷり」「歯に優しい緑茶ポリフェノール配合」「国産〇〇果汁100%使用」「糖類〇〇%オフ」といった健康に良さそうなキャッチコピーが記載されていることもあります。


これらの情報により、消費者は「お菓子の中でも後ろめたさがなく、どうせ食べるのであれば美味しくて少しでも身体に良いものを選ぼう」という理由で購入する傾向があります。


なぜグミがむし歯になりやすいのか?


1. いつでも食べることができる


グミは糖を多く含んでいます。細菌は糖を分解した結果、歯を溶かす酸を作り出します。


特に間食の種類や頻度はむし歯の発生と関係があり、2015年にWHO(世界保健機関)より、糖類(フリーシュガー)の摂取を1日25グラム以下に抑えるように強い勧告をしています。そのため、お子さんが好んで食べるものや飲み物の糖分量を把握することが大切です。


ではグミの中に入っている糖の種類や量はどれくらいでしょうか?


グミの中に入っている糖の種類は原材料名を見てみるといいでしょう。原材料名は量が多いものから先に記載するというルールがあります。(以下のイラスト参照)


グミの中に含まれる最も有名な糖は砂糖(ショ糖・スクロース)です。ご存じの通り、砂糖はむし歯の原因になります。次に水飴ですが、水飴はデンプンを酸や酵素で分解し、糖の混合物(グルコース、マルトース)にしたものであり、これもむし歯の原因になります。


他にも濃縮還元果汁や果汁パウダーにも注意が必要です。砂糖を加えていなくても、これらには果物から来る天然のグルコース、フルクトース、スクロースなどの糖が含まれていて、これもまたむし歯の原因になります。


量に関しては、グミの栄養成分表示の「炭水化物」欄を参考にすると大体の糖の目安がわかります。炭水化物=糖質+食物繊維のため、食物繊維が含まれていると糖の量は多少少なくなりますが、おおよその糖は把握することが可能です。


グミの中の糖分確認方法

しかし、研究論文によれば、フッ化物入りの歯磨き粉が普及しているため、糖類の摂取量とむし歯発症の関連性は弱くなっています。ただし、これはむし歯以外の体への悪影響は考えられるため、糖類の摂取には依然として注意が必要です。


グミがむし歯になりやすい理由として、ダラダラ食べをしてしまうことがあります。食べたいと思った時に、サッと食べることができるグミ。この便利さが何回も分けて食べることにつながり、むし歯になりやすくなります。間食などで糖類を頻繁に摂取すると、歯の表面が溶ける時間が長くなり、むし歯になりやすくなります。


むし歯を予防するためには、糖の摂取量を減らすことも重要ですが、同様に、食事の回数を増やさないことも大切です。頻繁に糖分を摂取することは、むし歯のリスクを高めることにつながります。


2. 酸味料が入っている


甘いだけでは飽きてしまうことがあります。これは人間の味覚の特性と関連しています。人間の舌には甘味、塩味、酸味、苦味、うま味といった基本的な5つの味覚があります。それぞれの味がバランスよく配合されると、一つの味が強すぎず、飽きにくくなります。


例えば、甘さだけの食べ物は一定量を食べると飽きてしまいがちです。これは脳が甘さに慣れてしまい、同じような刺激を受け続けることで食欲が減退するからです。しかし、酸味が加わると、その新しい味覚刺激により舌がリセットされ、飽きるのを遅らせる効果があります。


酸味は唾液の分泌を促進し、これにより食事の途中で口の中が乾くのを防ぎます。これは食事をさらに楽しく、食べ続けやすくします。さらに、消化を助け、食べ物の摂取をより快適にします。また、酸味が強いと刺激が強くなるため、刺激を求めて購入する方もいます。


一部のグミには酸性のフルーツフレーバーが含まれています。これらの酸性成分もまた、エナメル質を弱らせ、むし歯のリスクを増加させます。


酸っぱくなくても保存性を高めるために酸味料が入っています。


3. 粘着性がある


グミは非常に粘り気があり、歯に付着しやすいです。これにより、糖分が長時間にわたって口内に留まることになり、酸の生成とエナメル質への攻撃が進行します。


むし歯になりにくいグミの選び方と食べ方


1. キシリトール配合のグミを選ぶ


市販のグミにもキシリトール配合の商品はありますが、甘味料としてキシリトールが100パーセントではなく、50%以下と考えられ、残りの甘味成分として砂糖などが使用されています。実際むし歯の原因にならないという表記もなく、キシリトールが配合されていないグミよりはむし歯のリスクが減るというイメージです。


一方、歯科専売品のキシリトールグミはキシリトール100%でむし歯の原因となる糖類は一切使用していない、お口と体に優しいノンシュガーグミです。よく噛むことを目的とするためにもお口の中に長く停滞させ、かつむし歯の原因を作らないグミを選んでいただくことをおすすめします。


キシリトール100%グミ
歯科専売品のキシリトール100%グミ

キシリトールグミには1日の摂取量には制限はありませんが大量に摂取すると体質によってお腹がゆるくなることがあります。一時的な症状で問題はありませんが、気になる場合は小学生までは推奨量のキシリトール3g以内(1袋の1/3程度)にしてみましょう。


2. 食べる頻度を少なくする・ダラダラ食べをしない


むし歯を予防するために、糖の摂取量を減らすことはもちろん大切ですが、実は回数が増える方がむし歯にとって危険性は高くなります。


では、1日の飲食が何回までまでならむし歯になりにくいのでしょうか?


過去の研究論文からまとめてみると、以下のようになりました。


1. 成人であれば1日4回以下であればむし歯の発症が低い

2. 4歳児は1週間で30回以上の飲食回数だとむし歯が多くなった

3. 成人でフッ化物入り歯磨き粉を使用する場合は1日5回以下の飲食回数で歯が溶けるよりも再石灰化(ミネラルの補給)が上回った、フッ化物入り歯磨き粉なしだと3回以上で歯が溶けるリスクが高くなった

※いずれも朝食・昼食・夕食も1回としてカウントします。


むし歯のリスクを抑えるためには糖を含む飲食を1日4回までとすることが良いと考えられます。朝食・昼食・夕食以外に間食回数は1回となります。


つまり間食の回数はなるべくダラダラ食べずに1回にまとめることがむし歯リスクを下げることにつながります。


「甘いものを食べてもその都度うがいをすれば大丈夫」という考え方も注意が必要です。うがいによるお口の中の酸性度を調べた研究によると、砂糖水を口の中で含ませてから、10秒間水でブクブクうがいしてもらった結果、お口の中が中性に戻るまで平均で15回も濯ぐことが必要だったという報告があります。


甘いものを口にするたびに、毎回10秒間のうがいを15回もできるでしょうか?そうすると甘いものを摂取する回数を減らしたほうが現実的と考えられます。


3. フッ化物歯磨き粉の使用


先ほどの研究結果より「成人でフッ化物入り歯磨き粉を使用する場合は1日5回以下の飲食回数で歯が溶けるよりも再石灰化(ミネラルの補給)が上回った、フッ化物入り歯磨き粉なしだと3回以上で歯が溶けるリスクが高くなった」という内容がありました。

フッ化物入りの歯磨き粉を普段の口腔ケアに使用することで、むし歯の進行を遅らせることが可能です。


4. 歯科医院での定期的なチェックと予防歯科


初期のむし歯は色の変化が少なく、口の中は暗く狭いため見逃してしまうことが多いです。

歯科医院で定期的な検診を受けて、初期むし歯のチェックや予防処置を受けてもらいましょう。


 

まとめ


1. グミ市場は成長中で、2022年にはガムを上回る売り上げとなった。


2. グミの需要拡大に伴い、多様なフレーバーやパッケージが増加している。


3. 健康に気をつける必要がある面もあり、特に歯科ではむし歯のリスクがある


4. グミ市場の成功要因はSNSでの拡散効果や様々な食感・味の提供、健康イメージの広がりなどが挙げられる。


5. グミは糖を多く含んでおり、細菌が糖を分解して歯を溶かす酸を作り出すため、むし歯になりやすい。


6. グミには酸味料が含まれており、エナメル質を弱らせることでむし歯のリスクを増加させる。


7. グミは粘着性があり、歯に付着しやすいため、口内に長く糖分が留まりむし歯の進行を促進する。


8.グミのむし歯リスクを減らすためには、キシリトール配合のグミを選び、食べる頻度を少なくし、フッ化物歯磨き粉を使用し、歯科医院での定期的なチェックと予防歯科を受けることが大切。

 


この記事を書いた人


菊川の一般歯科と矯正歯科、小児歯科の歯医者さん。

医療法人社団 統慧会 かわべ歯科 理事長 川邉滋次

静岡県菊川市でお子様の歯並び矯正治療と、予防歯科を中心に行っております。


 

参考文献


1. Moynihan, Paula, and Poul Erik Petersen. "Diet, nutrition and the prevention of dental diseases." Public health nutrition 7.1a (2004): 201-226.


2. Tinanoff, Norman, and Carol A. Palmer. "Dietary determinants of dental caries and dietary recommendations for preschool children." Journal of public health dentistry 60.3 (2000): 197-206.


3. Hoshino, Etsuro, et al. "Plaque pH recovery by mouth-rinses with water." Japanese Journal of Oral Biology 31.2 (1989): 218-223.


4. Margolis, H. C., E. C. Moreno, and B. J. Murphy. "Effect of low levels of fluoride in solution on enamel demineralization in vitro." Journal of Dental Research 65.1 (1986): 23-29.


閲覧数:1,063回0件のコメント
bottom of page