これが歯並び異常?意外と気づきにくい乳歯の閉鎖歯列弓(子どもの歯並びのお話)

突然ですが、下の写真どちらが正しい歯並びだと思いますか?


A 乳歯がきっちりとすき間なく並んでいる

B 乳歯の前歯部分にすき間がある

今回AとBの写真を用意しました。どちらも生えているのは乳歯だけです。

どちらが正しい乳歯の歯並びでしょうか?


Aの写真は重なりは若干ありますが歯と歯の間にはすき間がなくきっちりと並んでいます。

Bの写真は模型ですが、あちこちの歯と歯の間にすき間があります。


一見、Aの写真の方が歯並びが良く見えるかもしれません。Bはすき間が大きすぎるので食べる時に歯にはさまりそうという意見もあるかもしれないですね。



1乳歯の歯並びにはすき間がある


この2つの中で良い歯並びは「B」です。


永久歯の歯並びですき間が存在すると歯並び異常の1つと考えられますが、正常な乳歯の歯並びには歯と歯の間にすき間があります。



これは歯科関係の教科書などにも記載されており、「霊長空隙(れいちょうくうげき)」と「発育空隙(はついくくうげき)」とよばれています。ちなみに霊長空隙や発育空隙のないAのような歯並びを閉鎖歯列弓(へいさしれつきゅう)とよびます。


霊長空隙は犬歯とよばれる、尖った歯の周りにできるすき間です。

発育空隙は「霊長空隙以外のすき間」ですが、奥歯のすき間はほとんどないため、主に前歯のすき間を指します。


この霊長空隙や発育空隙は、大人の歯が生えてくる時に大事な役割を持っています。


乳歯の根本部分に永久歯がみえている

Bの写真の模型は今後生える永久歯の位置を透明にすることで表現しています。

ここで上の前歯を見てみると子供の歯の根元部分に大きな大人の歯が見えています。

上の乳前歯は7歳〜8歳頃に抜けます。乳前歯が抜けると、その部分から永久歯が生えてきます。


乳歯と永久歯の大きさの差

乳歯と永久歯、同じ部位の前歯の大きさを比べてみると、永久歯は乳歯よりも横幅が大きいです。正直子供の歯の幅だけで、大人の歯がきれいに生えてくるのは難しいです。


しかし、前歯と、前歯の間に適度なすき間がある場合には、大人の歯生えるスペースを確保できます。


つまり、子供の前歯の間のすき間は大きな大人の歯のためのスペースだったわけです。



2すき間のない歯並びはどのような危険性があるの?


ではAの写真の、歯と歯の間にほとんどすき間のないお子さんの場合はこの先放っておくとどうなるでしょうか?


スペース不足が想定されますので、曲がった状態で無理やり生える、後ろから重なって生える、生えるのが大幅に遅れてしまう、生えない状態で埋まっているなど歯並びが悪くなる恐れがあります。



3もし子どもがすき間のない乳歯の歯並びだったら?


すき間がないだけで、絶対に歯並びが悪くなってしまうというわけではありません。

早期に矯正治療やMFTとよばれるお口周りのクセをとるためのトレーニングを続けることですき間を獲得することも可能です。そのため、歯科医院への相談をお勧めします。



まとめ


①正常な乳歯の前歯の歯並びにはすき間がある。


②乳歯のすき間は永久歯を生えさせるためのスペースである。


③すき間がない乳歯列は将来歯並び異常を起こす恐れがある。


④すき間がない乳歯の歯並びの時は歯科医院に相談をお勧めします。



この記事を書いた人


静岡県菊川市のかわべ歯科院長兼理事長で歯科医師の川邉滋次です。

医療法人社団 統慧会 かわべ歯科 理事長 川邉滋次


今回は閉鎖歯列弓(へいさしれつきゅう)をあげてみましたが、この機会に、皆さんのお子さんの歯並びをもう一度よく見てあげてください。未然に将来の歯並び異常を防ぐことができるかもしれません。


今回、当てはまらなかったお子さんもこのページから歯並び異常がないか確かめてみてください。


参考文献


①Proffit著, 高田健治訳: 新版プロフィトの現代歯科矯正学.クインテッセンス出版,2004: 215-219.


②日本小児歯科学会: 日本人の乳歯歯冠並びに乳歯列弓の大きさ 乳歯列咬合状態に関する調査研究. 小児歯科学雑誌, 31(3): 375-388, 1993.

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