
子どもの前歯のかみ合わせが深い場合の矯正方法は?(子どもの歯ならびが気になる)
更新日:1月14日
上下の歯をしっかりとかみ合わせた時、前歯のかみ合わせが深い状態を歯科用語で「過蓋咬合(かがいこうごう)」といいます。このかみ合わせは「乳歯だけの時期」「永久歯が生え変わっていく時期」「永久歯が生えそろった時期」いずれの時期にもみられます。

上下の前歯のかぶり方の状態を表す指標に、オーバーバイト(深さ)とオーバージェット(奥行き)の2種類あります。今回の過蓋咬合はオーバーバイト(深さ)が大きい状態です。


この深さが乳歯・永久歯どちらも、下の前歯の隠れた部分が長さの2/3以上だと過蓋咬合と診断されます。かぶり方が大きいと、正面からは下の前歯が上の前歯に完全に隠れてしまって見えにくくなる場合もあります。
今回はこの過蓋咬合についてまとめてみました。
▼目次
過蓋咬合はこのような症状もあります
1. 下の前歯が内向きに倒れ、歯が重なっている
過蓋咬合になると咬み合わせの力の影響を大きく受けます。特に下の前歯は上と比べて小さいため、咬み合わせの力が内向きにかかり、下の前歯が後ろ向きに傾いてしまいます。そのため、歯列が狭くなり歯が重なりやすくなります。

2. 下の前歯が上あごの歯ぐきに突き刺さってしまう
過蓋咬合が過度に強いと下の前歯は上の前歯ではなく、その後方部分の歯ぐきにぶつかってしまう場合があります。突き刺さった部分の歯ぐきは下の前歯の跡がついていることもあります。


3. 奥歯の高さが低いまたは奥歯が傾いている
奥歯の高さが低い・奥歯が傾いている場合は前歯が食い込みやすくなり、過蓋咬合が起きやすくなります。
4. 下あごの骨の大きさ・形・位置の異常
上のあごに対して下のあごの大きさや形、位置の異常によって過蓋咬合が起きる場合があります。この診断には「セファログラム」とよばれる矯正用のレントゲンが使用されます。
過蓋咬合の原因は?
1. くいしばり
かみしめが続いてしまう状態です。日中でもついついしてしまうことが多いという特徴があります。
くいしばりは子どもの生活の変化(入園・入学・受験)によるストレスとも関係していると言われています。歯に無理な力を強くかけ続けるとかみ合わせの高さが低くなり、前歯のかぶりが深くなります。
2. ほおづえ・うつぶせ寝
ほおづえやうつぶせ寝はあごに非常に強い力を押しつけるため、上下のあごのゆがみや歯列のゆがみを短期間で引き起こしてしまいます。下のあごを過度に押しつけることによって、くいしばりと似た状態となる場合もあります。
3. 唇をかむ
上下の前歯に唇が入ることで、上の前歯は前に押し出され、下の前歯は後ろ方向に倒されてしまい、上下の隙間が大きくなります。さらに隙間が多くなることで下の唇がより入りやすくなるため、悪化することがあります。

4. 口呼吸
口呼吸によって口輪筋の力が弱くなってしまうため、口を閉じるためにオトガイ筋という他の筋肉が働くことになってしまいます。オトガイ筋を利用し続けることで、下あごの成長が抑えられ下顎が前へ成長しにくくなります。

幼児〜小学生までの矯正治療方法
乳歯だけの歯並び(乳歯列期)の時は骨格の異常や乳歯の奥歯の位置関係に異常がある場合に矯正治療を始める場合があります。
乳歯から永久歯に生え変わっていく時期(混合歯列期)の小学生頃の場合、何もしないで自然に過蓋咬合が解消していくことは難しいため、矯正治療の対象となります。
過蓋咬合の小児矯正として、「あごの骨の成長を利用し奥歯のかみ合わせを上げる」「下のあごを前に成長させる」ことを目標としていきます。まず過蓋咬合になって原因の特定のための検査やカウンセリングをします。原因が特定された後、原因を取り除くためのトレーニングを行って、奥歯のかみ合わせを上げて前歯のかぶりを減少させていきます。
過度に咬み合わせが深い場合は、「奥歯の咬み合わせ部分にプラスチック素材を足す」「奥歯のかみ合わせを上げる装置を入れる」「前歯の高さを下げ、奥歯のかみ合わせの高さを上げる装置を入れる」方法があります。
ただし、レントゲンなどの検査により、骨格の成長に大きな問題がみられる場合には外科を含む成人矯正をおすすめする場合があります。
まとめ
①上下の前歯のかぶり方が大きく下の歯の長さの2/3以上が隠れていると過蓋咬合
②過蓋咬合の原因にはくいしばりやほおづえ、うつぶせ寝、唇をかむなどがある。
③小児での過蓋咬合 の歯列矯正では原因の除去が必要である
この記事を書いた人

医療法人社団 統慧会 かわべ歯科 歯科医師 川邉滋次
参考文献
①Mew J. The cause and cure of malocclusion. Heathfield: John Mew (2013).
②Manfredini, Daniele, et al. "Bruxism is unlikely to cause damage to the periodontium: findings from a systematic literature assessment." Journal of periodontology 86.4 (2015): 546-555.