上下前歯のかみ合わせが深く上の前歯が目立ってしまう場合の原因と対処法
更新日:4月23日
上下の歯をしっかりとかみ合わせたとき、前歯のかみ合わせが深くなり、上の前歯が目立ってしまう状態を、歯科用語で「過蓋咬合(かがいこうごう)」といいます。このかみ合わせは、「乳歯だけの時期」「永久歯が生え変わっていく時期」「永久歯が生えそろった時期」のいずれの時期にもみられます。

上下の前歯のかぶり方の状態を表す指標に、オーバーバイト(深さ)とオーバージェット(奥行き)の2種類あります。今回の過蓋咬合はオーバーバイト(深さ)が大きい状態です。ちなみに、オーバージェット(奥行き)が大きい場合は上顎前突(出っ歯)と呼ばれます。


この深さが乳歯・永久歯どちらも下の前歯の隠れた部分が長さの3分の2以上である場合、過蓋咬合と診断されます。かぶり方が大きいと、正面からは下の前歯が上の前歯に完全に隠れてしまって見えにくくなる場合もあります。
そこで今回は、この過蓋咬合の原因と対策についてまとめてみました。この記事が歯並び、かみ合わせに悩んでいる方の一助になれば幸いです。
▼目次
過蓋咬合の特徴
1. 下の前歯が内向きに倒れ、歯が重なっている。
過蓋咬合は、かみ合わせの力の影響を大きく受けます。特に下の前歯は上の前歯と比べて小さいため、かみ合わせの力が後方にかかり、下の前歯が後ろに傾いてしまいます。そのため、下あごの歯列が狭くなり、歯が重なりやすくなります。

2. 下の前歯が上あごの歯ぐきに突き刺さってしまう。
過蓋咬合が強い場合、下の前歯は上の前歯ではなく、その後方部分の歯ぐきにぶつかってしまう場合があります。突き刺さった部分の歯ぐきは下の前歯の跡がついていることもあります。


3. 奥歯の高さが低い、または奥歯が傾いている。
奥歯の高さが低い・奥歯が傾いている場合は、前歯が食い込みやすくなり、過蓋咬合が起きやすくなります。
4. 下あごの骨の大きさ・形・位置の異常
上のあごに対して下のあごの大きさや形、位置の異常によって過蓋咬合が起きる場合があります。この診断には「セファログラム」とよばれる矯正用のレントゲン検査が必要です。
過蓋咬合の原因は?
1. くいしばり
くいしばりとは、歯をかみしめ続けてしまう状態です。
日中でも無意識にしてしまうことが多いという特徴があります。
くいしばりは、子どもの生活の変化(入園・入学・受験)によるストレスとも関係していると考えられています。歯に無理な力を長期間かけ続けると、かみ合わせの高さが低くなり、前歯が深くかぶってしまうことがあります。
2. ほおづえ・うつぶせ寝
ほおづえやうつぶせ寝は、あごに非常に強い力がかかります。これによって、上下のあごのゆがみや歯列のゆがみを短期間で引き起こされることがあります。また、下あごを過度に押しつけることによって、くいしばりと似た状態となる場合もあります。
3. 唇をかむ
唇をかむことによって、上下の前歯にそれぞれ圧力がかかります。この圧力によって、上の前歯が前方へ押し出され、下の前歯が後ろに倒れてしまいます。その結果、上下の歯の隙間が大きくなり、さらに唇が入りやすくなります。

4. 口呼吸
口呼吸をすることで、口の周りの筋肉が弱くなってしまいます。そのため、口を閉じるためにその下にあるオトガイ筋を使うことになります。オトガイ筋を長期間使い続けることで、下あごのの成長が抑えられ、下あごが前へ成長しにくくなります。

幼児〜小学生までの矯正治療方法
乳歯だけの歯並びの時期(乳歯列期)は、骨格異常や奥歯の位置関係に異常がある場合に矯正治療を開始することがあります。
乳歯から永久歯に生え変わっていく時期(混合歯列期)には、何もしないで自然に過蓋咬合が解消していくことは難しいため、矯正治療の対象となります。
過蓋咬合の小児矯正として、「あごの骨の成長を利用し奥歯のかみ合わせを上げる」「下のあごを前に成長させる」ことを目標としていきます。まず、過蓋咬合の原因を特定するための検査やカウンセリングをします。その後、原因を取り除くためのトレーニングを行って、奥歯のかみ合わせを上げて前歯のかぶりを減少させていきます。
過度に咬み合わせが深い場合は、「奥歯の咬み合わせ部分にプラスチック素材を足す」「奥歯のかみ合わせを上げる装置を入れる」「前歯の高さを下げ、奥歯のかみ合わせの高さを上げる装置を入れる」方法があります。
ただし、レントゲンなどの検査により、骨格の成長に大きな問題がみられる場合には口腔外科を含む成人矯正をおすすめする場合があります。
まとめ
1. 過蓋咬合とは、上下の前歯のかみ合わせが深くなり、上の前歯が目立つ状態。
2. 過蓋咬合は、乳歯列期、混合歯列期、永久歯列期のどの時期でもみられる。
3. 過蓋咬合の原因は、くいしばり、ほおづえ、うつ伏せ寝、唇をかむ、口呼吸などがある
4. 過蓋咬合の特徴として、下の前歯が内向きに倒れ、上あごの歯ぐきに突き刺さったり、奥歯の高さが低くなっていることがある。
5. 幼児から小学生までの治療方法として、過蓋咬合の原因を特定し、矯正装置やトレーニングで奥歯のかみ合わせを高く上げる方法ある。
6. 国家うの成長に問題がある場合には、成人矯正が必要になる場合がある。
この記事を書いた人

医療法人社団 統慧会 かわべ歯科 歯科医師 川邉滋次
参考文献
1. Mew J. The cause and cure of malocclusion. Heathfield: John Mew (2013).
2. Manfredini, Daniele, et al. "Bruxism is unlikely to cause damage to the periodontium: findings from a systematic literature assessment." Journal of periodontology 86.4 (2015): 546-555.