すきっ歯は自然に治る?放置してはいけないケースと治療方法を歯科医師が解説
- 歯科医師 川邉滋次

- 7月6日
- 読了時間: 8分
更新日:7月14日
目次▼
はじめに

子どもの前歯にすき間があると、
「このまま自然に閉じるの?」
「矯正しないと治らない?」
「何歳まで様子を見ても大丈夫?」
と心配になる保護者の方は多いのではないでしょうか。
実は、7〜9歳頃にみられる前歯のすき間は、永久歯が生えそろう過程で自然に閉じることが多く、必ずしも治療が必要というわけではありません。
一方で、過剰歯や先天性欠如歯、上唇小帯の異常などが原因の場合は、自然には改善せず、治療が必要になることもあります。
この記事では、
子どものすきっ歯は自然に治るのか
何歳まで様子を見てもよいのか
治療が必要なすきっ歯の特徴
すきっ歯の原因と治療法
について、歯科医師がわかりやすく解説します。
子どものすきっ歯は自然に治る?
結論からいうと、子どもの前歯のすき間は自然に閉じることが多くあります。
特に6〜8歳頃は、永久歯が生え始める時期のため、前歯がやや外側に向かって生え、一時的にすき間ができることがあります。

この状態は歯科では「みにくいアヒルの子時代」と呼ばれ、犬歯など周囲の永久歯が生えそろうにつれて前歯が中央へ押され、多くは自然に隙間が閉じていきます。

そのため、この時期だけで矯正治療が必要になることは多くありません。
ただし、永久歯が生えそろっても隙間が改善しない場合は、他の原因が隠れている可能性があります。
何歳まで様子を見ても大丈夫?
子どものすきっ歯は、年齢によって考え方が変わります。

特に、
前歯の隙間が大きい
永久歯がなかなか生えてこない
左右で歯の生え方が違う
このような場合は、早めに歯科医院で相談すると安心です。
自然に閉じないすきっ歯の特徴
次のような場合は、自然に改善しないことがあります。
小学校高学年になっても前歯の隙間が閉じない
前歯の間が大きく開いている
前歯の間に歯ぐきが入り込んでいる
永久歯がなかなか生えてこない
歯の本数が少ないように見える
このような場合は、レントゲン検査を行うことで原因が分かることが少なくありません。
レントゲン検査でわかること
前歯のすき間が長期間改善しない場合は、レントゲン検査を行うことで原因を確認します。
レントゲンでは、
過剰歯が隠れていないか
永久歯が足りない(先天性欠如歯)
永久歯の位置に異常がないか
埋まったままの歯がないか
などを確認できます。
原因が分かれば、お子さんに適した治療方法を選択できます。

すきっ歯の原因
すきっ歯の原因は1つではありません。
子どもでは永久歯の生え変わりによる一時的なものが多い一方、過剰歯や先天性欠如歯、上唇小帯の異常などが原因となることもあります。大人では歯周病や舌の癖などが原因となる場合もあります。
ここからは、すきっ歯の主な原因について詳しく解説します。
過剰歯の存在
歯と歯の間に過剰歯と呼ばれる余分な歯があると、前歯の間に隙間ができることがあります。過剰歯は、上の前歯の中央にできることが多く、前歯の隙間がいつまでも閉じない場合は、レントゲン検査で見つかることが少なくありません。
過剰歯が原因の場合は、放置しても自然に隙間が閉じることは少ないため、抜歯が必要になることがあります。抜歯だけで自然に隙間が閉じることもありますが、隙間が残る場合には、歯科矯正治療で歯を動かして閉じていきます。
上唇小帯(じょうしんしょうたい)の異常

上唇小帯(じょうしんしょうたい)とは、上の唇と歯ぐきをつないでいる細い筋(すじ)のことです。唇をめくると、中央に見える細いひだが上唇小帯です。
上唇小帯は、生まれたときからありますが、成長とともに細くなり、付着する位置も上へ移動していくのが一般的です。
しかし、上唇小帯が太いままだったり、歯と歯の間まで入り込んで付着していたりすると、前歯の間に隙間ができる原因になることがあります。

5〜6歳頃までは、上唇小帯が成長とともに自然に細くなり、付着する位置が上へ移動することがあります。そのため、食事や歯磨きに支障がなく、唇の動きにも問題がなければ、すぐに治療を行わず経過観察となることも少なくありません。
一方、永久歯が生え始めても前歯の隙間が閉じない場合は、まずレントゲン検査などで過剰歯をはじめとした他の原因がないかを確認します。そのうえで、上唇小帯の付着異常が原因と判断された場合には、上唇小帯切除術による治療を行うことがあります。
歯の大きさとあごの大きさの不一致
あごに対して歯が小さい場合や、あごが大きく歯が並ぶスペースに余裕がある場合には、歯と歯の間に隙間ができることがあります。
このような場合は、矯正治療で歯を動かして隙間を閉じるのが一般的です。隙間が大きく、矯正治療だけでは改善が難しい場合には、被せ物やダイレクトボンディング、ラミネートベニアなどで見た目を整えることもあります。
矮小歯(わいしょうし)・栓状歯(せんじょうし)
矮小歯(わいしょうし)とは、他の歯に比べて明らかに小さい歯のことです。
栓状歯(せんじょうし)は、前歯が円すい状(先が細くなった形)になっている歯を指します。上の前から2番目の歯(側切歯)によくみられます。

矮小歯や栓状歯は、生まれつき歯が小さかったり、通常とは異なる形をしていたりする歯です。遺伝などが関係すると考えられています。
それ自体が病気ではありませんが、歯と歯の間に隙間ができたり、かみ合わせや見た目に影響したりすることがあります。
治療には、歯に樹脂を直接盛り足すコンポジットレジン修復や、歯の表面に薄いセラミックを貼り付けるラミネートベニアなどがあります。歯の状態や年齢、審美性などを考慮して、適した治療法を選択します。
歯の先天性欠損(せんてんせいけっそん)
歯の先天性欠損とは、乳歯または永久歯の一部が生まれつき形成されない状態を指します。
このため、歯の本数が正常よりも少なくなり、歯と歯の間に隙間が発生しやすくなります。
先天性欠損がある場合には、矯正治療によって隙間を縮める方法や、ブリッジやインプラントを用いて欠損部分を補う方法などがあります。
癒合歯(ゆごうし)
癒合歯とは、生まれつき2本の歯がくっついて1本になった歯のことです。乳歯によくみられますが、まれに永久歯にもみられることがあります。
癒合歯があると、それに続く永久歯が通常の2本ではなく1本だけ生えてくることがあります。その結果、永久歯の本数が少なくなり、歯と歯の間に隙間ができることがあります。
このような場合は、歯並びやかみ合わせの状態に応じて、矯正治療や被せ物などを組み合わせて治療を行います。
習癖の問題(前歯が前に傾く)
舌を前に突き出して飲み込む癖(舌突出癖)や、舌がいつも低い位置にある「低位舌」、指しゃぶり、上下の前歯の間に下唇を巻き込む癖などが続くと、前歯に少しずつ力が加わり、すきっ歯の原因になることがあります。
特に子どもの歯やあごは成長途中のため、弱い力でも長期間続くと歯並びに影響を及ぼすことがあります。
このような場合は、矯正治療で歯を動かすだけではなく、原因となる癖を改善することも大切です。癖が残ったままでは、治療後に再び前歯の隙間が開いてしまう(後戻りする)ことがあるためです。
必要に応じて、舌や唇、お口の周りの筋肉を正しく使えるようにするトレーニング(MFT:口腔筋機能療法)を行い、歯並びが安定しやすい環境を整えます。
すきっ歯を放置するとどうなる?
子どもの生え変わりの時期にみられる一時的なすき間であれば、経過観察で問題ないことがほとんどです。
しかし、原因があるすきっ歯を放置すると、
見た目が気になる
発音しづらい音がある
食べ物が詰まりやすい
歯並びやかみ合わせに影響する
ことがあります。
気になる場合は、「もう少し様子を見ても大丈夫なのか」「治療が必要なのか」を一度歯科医院で確認してもらうと安心です。
原因によっては、かみ合わせや歯並びへの影響が大きくなることもあるため、長期間すき間が改善しない場合は早めに原因を確認することが大切です。
まとめ(すきっ歯・空隙歯列)
すきっ歯(空隙歯列)は、歯と歯の間に隙間がある歯並び。
子どもの前歯のすき間は、永久歯が生えそろう過程で自然に閉じることが多く、すぐに矯正が必要とは限らない。
一方で、過剰歯、先天性欠如歯、上唇小帯の異常などが原因の場合は、自然には改善しないことがある。
大人のすきっ歯は、歯の大きさ、歯周病、舌の癖などが原因となることがある。
すきっ歯の治療方法は、矯正治療、ダイレクトボンディング、ラミネートベニア、被せ物など、原因によって異なる。
前歯のすき間が長期間改善しない場合や気になる症状がある場合は、歯科医院で原因を確認することが大切。
子どものすきっ歯の多くは成長とともに自然に改善するが、「自然に閉じるすきっ歯」と「治療が必要なすきっ歯」を見分けることが大切。

執筆者・編集者プロフィール

菊川市 かわべ歯科院長 歯科医師 川邉滋次
参考文献
1. 酒井暢世, et al. "乳歯列期における上唇小帯の形態と付着位置に関する調査研究." 小児歯科学雑誌 55.1 (2017): 44-50.
2. 鈴木冴沙, et al. "乳歯列期における上唇小帯の形態と付着位置に関する調査研究 幼児における実態調査." 小児歯科学雑誌 57.4 (2019): 444-450.
3. 野川博史. "補綴処置によって矮小歯の審美性改善と臼歯部の咀嚼機能の回復が得られた症例." 日本補綴歯科学会誌 15.1 (2023): 89-92.
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