歯並びのために4歳までに指しゃぶりをやめる方法を歯科医師が解説
- 歯科医師 川邉滋次

- 7月4日
- 読了時間: 11分
更新日:7月18日
▼目次
はじめに-指しゃぶりと歯並びの関係は?

あごの形や歯並びをゆがめる、無意識にくり返してしまう癖のことを「口腔習癖(こうくうしゅうへき)」といいます。
その中でも指しゃぶりは発生頻度が高く、長く続くことで「下の歯並びがガタガタになる(叢生)」「上下の前歯がかみ合わない(開咬)」「前歯が前に出る(出っ歯)」「かみ合わせが一部逆になる(交叉咬合)」など、歯並びやかみ合わせに影響することがあります。

指しゃぶりへの対応は年齢によって異なります。まずは年齢別の目安をご覧ください。

ここからは、指しゃぶりが歯並びに与える影響や、年齢に応じた適切な対応方法について詳しく解説します。お子さまの指しゃぶりをやめさせる方法でお悩みの保護者の方に、ぜひ参考にしていただければ幸いです。
指しゃぶりが歯並びを悪くする理由
指しゃぶりは親指のイメージが強いですが、親指以外にも人差し指やその他数本の指で行うことがあります。単に「口に指を入れる」「しゃぶる」というイメージがありますが、実際は「指を軽くかむ」「強く吸う」ことが多いです。
しゃぶる指の種類や、時間、吸引の強さによって個人差は出ますが、次のような「あごや歯並び、かみ合わせへの影響」があります。
1 . 前歯を押し付ける

親指を使った指しゃぶりは上のあごと上の前歯が前方向に押されます。押される回数が1回2回であれば問題にならないのですが、クセになっているためこの圧力が頻繁に発生します。その結果あごや前歯が突き出てしまい、出っ歯をつくってしまいます。
また圧の加える方向によって、上下の歯と歯の間にすき間ができてしまう、歯並びの中央位置がずれてしまうことがあります。
2 . 上あごがせまくなる
指を強く吸うことで外側から圧力がかかり、上のあごの幅が狭くなります。狭くなった歯列は、V字のような前歯部分がすぼんだような形になってしまいます。

3 . 上くちびるのめくれ・お口ポカン

指しゃぶりをする子どもは、口がポカンと開いてしまうことが多いです。口が開いた状態では口呼吸のクセがつきやすく、結果として上の唇のしまりがなくなり、めくれてしまいます。
生まれてから2歳までの指しゃぶりはやめる理由はない
赤ちゃんには口に近づいた物を吸う「吸啜反射(きゅうてつはんしゃ)」という原始反射(生まれつき備わっている反射)があります。
指しゃぶりは乳幼児に一般にみられ、不安や緊張を抑える効果があるといわれています。手の動きが活発になる生後2ヶ月頃から目にする機会が増えますが、実は生まれる前(胎生7ヶ月頃)から母親のお腹の中で指しゃぶりをしていることが明らかになっています。

また、赤ちゃんの指しゃぶりは口の機能発達にとって非常に大切です。特に生後12ヶ月頃までに指や色々な物をしゃぶるのは、目で見て手を動かし、味や形を覚えて動きを協調させるための必要な行為と考えられています。この時期の指しゃぶりは、眠い時、不安な時、退屈な時、お腹が空いた時などにすると言われています。
1歳半〜2歳で指しゃぶりはピークとなりますが、この時期は「お口の機能を高めるために意味のある生理的行為」と考えられています。また「ハンドリガード」とよばれる自分の手を見つめることで認知の発達につながるため、無理にやめさせる理由はありません。
この時期、将来指しゃぶりが習慣化しないようにするための対策としては、以下の方法があります。
授乳は時間をかけて乳児が満足するまで抱く。
哺乳瓶を使用するときは飲み口の穴が大きくないものを選び、乳児が時間をかけて飲むことで唇の運動を積極的にさせる。
生後6ヶ月までは離乳をさせない。(早すぎる離乳は指しゃぶりの原因になる恐れ)
指しゃぶりは4歳頃までに卒業を目標にしましょう
指しゃぶりは、子どもが夢中で遊ぶ時間が増えたり、手や口を使う遊びが増えたりすると、自然に減っていくことが多いです。
そのため、指しゃぶりは4歳頃までにやめることを目標にすることをおすすめしています。
2歳を過ぎても指しゃぶりが続くと、歯並びやあごの成長に影響が出始めることがあります。しかし、多くの子どもは3歳頃から徐々に指しゃぶりの回数が減っていきます。
指しゃぶりの頻度や吸う力にもよりますが、4歳頃までにやめることができれば、一時的に起こった歯並びやかみ合わせの乱れが、その後の成長とともに自然に改善するケースも少なくありません。
一方で、歯並びやかみ合わせに変化が見られたり、指にたこができるほど強く吸っていたりする場合は、クセが定着する前に、お子さんに合った対策を始めることが大切です。
また、指しゃぶりをやめても、その代わりに爪かみや舌を前に出すクセなどへ移行してしまうこともあります。指しゃぶりだけでなく、お口全体のクセにも目を向けながらサポートしていきましょう。
以下は、当院で保護者の方へ実際にお伝えしているアドバイスの一例です。
1.子どもに自信を持たせるような声かけをする

「指を吸ってるとカッコ悪くなるよ」というマイナス言葉よりも、「指を吸わない〇〇くん、かっこいいね!」「〇〇ちゃん、指しゃぶりやめたらお姉さんみたいだね!」というプラスの言葉をかけてあげてください。自信を持たせると子どもは成長していきます。
2. 親子で一緒に手を使う遊びを取り入れる
お絵描きやぬり絵、ハンドスピナー、プッシュポム(プチプチのおもちゃ)など手を使う遊びを親子で一緒に行うことで、指しゃぶりの機会を少なくする方法があります。

3. 体をいっぱい動かす
先程夢中で遊ぶ・手や口を使うと指しゃぶりが減っていくと説明しましたが、ぼーっとしている暇な時についつい指しゃぶりをしてしまうことが多いため、その時間が少なくなるように「いっぱい体を動かすこと」や「夢中になること」で指しゃぶりをしてしまう機会を自然に減らすことは良いと考えられます。

4. 寝付くまでは手をつなぐ
お子様が眠くなってしまった時に優しく握ってあげることで、愛情表現で安心感を与えながら指を口に入れないようにする方法です。

5. 手袋や靴下を手にはめる
手袋や指にテーピングをして指しゃぶりが難しい環境にするのも1つの方法です。新幹線が好きな男の子には新幹線の手袋がなかなか見つからなかったため、新幹線の靴下をあえて手にはめてもらいながら楽しんでもらったこともあります。指人形をつくり、子どもと遊びながら指しゃぶりをやめるように伝えるのも良いです。

6.指しゃぶりに関する絵本を読む
指しゃぶりの本を何度も読み聞かせをすることで、子どもが内容を記憶し、「指しゃぶりはいけない」と自分自身で気づく可能性があります。

7. 指しゃぶりを防ぐためのマニキュア(非推奨)
安息香酸デナトニウムという苦味成分を使用した指しゃぶり専用のマニキュアが販売されています。なめると苦いので「もう同じ経験をしたくない」と思わせ、指しゃぶりをやめさせようという狙いですが、少し強引な方法ですので他の方法と比べると当院ではお勧めしない方法です。

4歳を過ぎても指しゃぶりが続く場合は、お子さんの気持ちに寄り添いましょう
4歳を過ぎても指しゃぶりが続く場合は、「やめなさい」と無理に止めるのではなく、なぜ指しゃぶりをしているのかを考えることが大切です。

指しゃぶりは、不安や緊張、寂しさなどの気持ちを落ち着かせるために行っていることもあります。そのため、保護者の方だけでなく、幼稚園や保育園など周囲の大人と協力しながら、お子さんが安心して過ごせる環境を整えてあげましょう。
無理に指しゃぶりをやめさせようとすると、爪かみや唇をかむ、自分の髪の毛を抜いてしまうなど、別の好ましくない行動に置き換わってしまうことがあります。焦らず、お子さんのペースに合わせて取り組むことが大切です。
指しゃぶりの背景に強いストレスや不安があると考えられる場合は、小児科や歯科だけでなく、必要に応じて児童心理の専門家へ相談することも選択肢の一つです。
ご家庭では、指しゃぶりをしていることを叱ったり責めたりするのではなく、「今日は指しゃぶりをしない時間が長かったね」「頑張っているね」と、できたことをたくさん褒めてあげましょう。
お子さんの気持ちに寄り添いながら、小さな成功を積み重ねていくことが、指しゃぶりの卒業への近道になります。
4歳を過ぎても指しゃぶりが続く場合でも、すぐに矯正治療が必要になるわけではありません。まずは歯並びやかみ合わせへの影響を確認し、お子さまに合った対応を考えることが大切です。
おしゃぶりは使用した方がいいの?
指しゃぶりと並んで保護者の方々からよく質問されるのがおしゃぶりです。
おしゃぶりは育児において便利な道具です。赤ちゃんの気持ちを落ち着かせる、眠りやすくさせる、指しゃぶりを防ぐ、鼻呼吸やお口周りの周囲筋の発達を促し、あごの成長を期待することで使用されています。

しかし、このおしゃぶりに関しては意見が分かれているのが現状です。
例えば、世界保健機関(WHO)では「母乳育児を行っている乳児には、人工乳首やおしゃぶりの使用を避ける」ことを推奨しています。
一方、アメリカ小児科学会は「寝ている時の窒息防止のために乳児期におしゃぶりの使用」を推奨しています。
小児歯科に携わる私の見解としては、0歳児にはメリットはありますが、1歳以降は歯並びに悪い影響を起こすことがあります。1歳は言葉の発達のためにも大事な時期なので、口をふさぐおしゃぶりはあまり望ましいものではありません。おしゃぶりは早めにやめていくべきだと考えています。
よくある質問(指しゃぶりと歯並び)
Q. 寝るときだけの指しゃぶりでも歯並びに影響しますか?
A. 寝ている間は長時間指をくわえることが多く、日中だけの指しゃぶりより歯並びへ影響が出る場合があります。4歳以降も寝るたびに続く場合は、一度歯科医院で確認してもらうと安心です。
Q. 保育園ではしないのに家だけで指しゃぶりをします。問題ありませんか?
A. ご家庭では安心してリラックスできるため、指しゃぶりをするお子さまは少なくありません。無理に叱るのではなく、不安や疲れがないか様子を見守りながら、安心できる環境を整えてあげることが大切です。
Q. 指しゃぶりをやめれば歯並びは自然に戻りますか?
A. 成長途中であれば改善することもありますが、歯並びやかみ合わせによっては自然に戻らない場合もあります。気になる場合は、早めに歯科医院で相談することをおすすめします。
まとめ
指しゃぶりは乳幼児期によく見られる発達の一環であり、3歳頃までは無理にやめさせる必要はない。
歯並びへの影響を考えると、4歳頃までに自然に卒業できるようサポートすることが目安である。
長期間続くと、出っ歯(上顎前突)、開咬、V字歯列、交叉咬合などの不正咬合につながる可能性がある。
指しゃぶりをやめさせる際は、叱ったり無理に我慢させたりせず、子どもの気持ちに寄り添った対応が大切である。
手を使った遊びを増やすことや、生活リズムを整えること、安心して眠れる環境づくりが自然な卒業を後押しする。
4歳を過ぎても毎日続く場合や、歯並び・かみ合わせに変化が見られる場合は、歯科医院への相談が望ましい。
早期に歯並びやかみ合わせを確認することで、適切なアドバイスや治療につなげやすくなる。
執筆者・編集者プロフィール

静岡県菊川市 かわべ歯科 理事長 川邉滋次
当院でも、「4歳を過ぎても指しゃぶりがやめられない」「歯並びへの影響が心配」というご相談を多くいただきます。
実際には、お子さまの年齢や指しゃぶりの頻度、歯並びの状態によって対応方法は異なります。経過観察で問題ないケースもあれば、生活習慣の見直しや小児矯正の相談が必要になることもあります。
「まだ様子を見ていて大丈夫かな?」と迷われた際は、一人で悩まずお気軽に歯科医院へご相談ください。早めに確認することで、必要以上に心配することなく、お子さまの成長に合わせた適切なサポートにつなげることができます。
参考文献
1. 山口秀晴,大野粛英,橋本律子:はじめる・深めるMFT お口の筋トレ実践ガイド.株式会社デンタルダイヤモンド社,2016.
2. 大野粛英:指しゃぶり 基礎から指導の実際.わかば出版,2003.
3. Task Force on Sudden Infant Death Syndrome. "SIDS and other sleep-related infant deaths: updated 2016 recommendations for a safe infant sleeping environment." Pediatrics 138.5 (2016): e20162938.
4. 井上美津子. 指しゃぶり おしゃぶり Q &A 発育に合わせた対応を考えよう. 医学情報社, 2012
5. 日本小児歯科学会ホームページ. 学会からの提言. おしゃぶりについての考え方 指しゃぶりについての考え方. 2006.
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