子供の前歯がガタガタに生えてきた…原因・治療法を歯科医師が解説
- 歯科医師 川邉滋次

- 7月6日
- 読了時間: 10分
▼目次

はじめに-子供の前歯がガタガタでも様子を見ていい?
永久歯が生え始めた頃、お子さまの前歯がガタガタに重なって生えてきて、
「このまま様子を見ても大丈夫?」
「矯正治療は必要?」
「永久歯を抜かなければいけないの?」
と不安になる保護者の方は少なくありません。
当院でも小児矯正の相談で最も多いのが、「前歯がガタガタに生えてきた」というご相談です。
子供の前歯がガタガタになる歯並びは、歯科では「叢生(そうせい)」と呼ばれ、日本人に最も多い不正咬合の一つです。

この記事では、前歯がガタガタになる原因や放置するリスク、治療法、受診のタイミングについて、矯正治療に携わる歯科医師がわかりやすく解説します。
子供の前歯がガタガタ…自然に治る?
前歯がガタガタになり始めるのは、永久歯の前歯が生え始める5〜6歳頃が最も多くみられます。この時期に前歯が重なって生えてきた場合は、一度歯並びを確認することをおすすめします。
前歯が少し重なっているからといって、すぐに矯正治療が必要になるわけではありません。しかし、「今は治療を始めないこと」と「自然に治ること」は別の話です。
初回の診察では、歯が並ぶスペースやあごの成長、今後の歯の生え変わりを確認したうえで、すぐに治療を始めるか、適切な時期まで定期的に経過を確認するかを判断します。
重なって生えてきた前歯が、何も介入せずにそのまま自然にきれいな歯並びへ改善するケースは少ないです。
そのため、永久歯が生え始めて前歯の重なりが気になった場合は、まずは一度矯正相談を受け、歯が並ぶスペースやあごの成長を確認してもらうことをおすすめします。
早めに歯科医院へ相談したほうがよいケース
次のような場合は、永久歯が自然にきれいに並ぶスペースが不足している可能性があります。早めに原因を確認することで、適切な治療開始時期を判断しやすくなります。
乳歯の時から歯と歯の間にすき間がほとんどない
前歯が大きく重なっている
永久歯が内側や外側から生えてきている
永久歯が生えるスペースが明らかに不足している
むし歯などで乳歯を早く失っている
このような場合は、原因を確認するためにも一度矯正相談を受けることをおすすめします。
子供の前歯がガタガタになる原因
前歯が重なる根本的な原因は、
「歯の大きさ」と「あごの大きさ」のバランスが合っていないことです。
大きく分けると原因は2つあります。
1. あごが小さい(スペース不足)
最も多い原因です。
永久歯は乳歯より大きいため、あごが十分に成長しないと歯が並ぶスペースが不足し、前歯が重なって生えてしまいます。
2. 乳歯を早く失ってしまった
重度のむし歯や外傷などで乳歯を早く失うと、隣の歯が移動してしまい、永久歯のスペースが足りなくなることがあります。
あごの成長を妨げる「意外な原因」
歯並びは遺伝だけではありません。
近年では、以下の表のようにお口の使い方や生活習慣も大きく関係すると考えられています。

子供の前歯がガタガタだと放置しても大丈夫?
前歯の重なりが強い場合、そのままにすると歯磨きが難しくなり、むし歯や歯肉炎のリスクが高くなります。
また、成長後にはあごを広げることが難しくなるため、将来的に歯科矯正を行う際に永久歯の抜歯が必要になる可能性もあります。
見た目だけの問題ではなく、将来の歯の寿命にも関わることがあるため、前歯の重なりが気になる場合は早めに相談することが大切です。
子供の前歯がガタガタな場合の治療法
ここからは、前歯がガタガタな場合に行われる主な治療法をご紹介します。
マイオブレース

口呼吸や舌の癖など、お口の機能改善を目的としたマウスピース型矯正装置です。
装置だけでなく、MFT(口腔筋機能訓練)を併用しながら、あごの健やかな成長をサポートします。
バイオブロック・急速拡大装置

前歯の重なりが大きい場合には、上あごを広げて永久歯が並ぶスペースを確保する治療を行うことがあります。
成長期ほど効果が期待できるため、適切な時期に開始することが重要です。
矯正症例紹介(歯並びがガタガタ)
【症例1】 お子様の「歯がガタガタに生えてきた」という主訴で来院されました。 抜歯をせず、マウスピース型の矯正装置「マイオブレース(K-1)」と、お口周りの筋肉を鍛えるトレーニング(MFT)を併用した症例です。

【症例1の治療の経過】
初診時(左上):下の歯が重なり合い、並ぶスペースが不足しています。
12ヶ月経過(右):装置の装着とトレーニングにより、顎が正しく発達。叢生がほぼ解消されました。
36ヶ月経過(左下): 治療開始から3年。後戻りすることなく、歯並びがしっかりと維持されています。
【症例1のメリットデメリット】
(メリット)
抜歯の可能性を低減:顎の成長を促すため、将来的に永久歯を抜くリスクを減らせます。
根本原因にアプローチ:歯を動かすだけでなく「口呼吸」「舌の癖」「飲み込み方」など、歯並びを悪くする原因自体を改善します。
痛みが少ない:ワイヤー矯正に比べ、締め付けられるような痛みがほとんどありません。
日中1時間+就寝時のみ:学校に装置を持っていく必要がないため、紛失やいじめの心配がありません。
(デメリット・注意点)
本人のやる気が不可欠:毎日装着し、トレーニングを継続する必要があります。
適応年齢がある:混合歯列期(乳歯と永久歯が混ざった時期)が最も効果的で、大人になってからでは骨の成長が止まってしまうため適応できない場合があります。
骨格的な問題には限界がある:あごのズレが非常に大きい場合は、他の矯正方法を併用することがあります。
【症例2】初診時、上下の歯列に大きな重なり(叢生)が見られたお子様の症例です。 顎の成長を根本から整える「バイオブロック」と、正しい口の使い方を習得する「マイオブレース」、そして「口腔筋機能訓練(MFT)」を組み合わせることで、抜歯をせずに歯が並ぶスペースの確保を目指しました。

【症例2の治療の経過】
初診時(左上):上下の歯列に重なりがあり、前歯が窮屈に並んでいる状態です。
16ヶ月経過(右中):装置の併用により、叢生(ガタガタ)がほぼ解消されました。 この段階で、正しい歯の並ぶスペースが確保されています。
6年経過(左下):治療開始から6年後(治療完了から3年後)。成長期を過ぎても、歯並び・かみ合わせ共に維持されています。
【症例2の治療のメリットデメリット】
(メリット)
長期的な安定を目指しやすい:筋肉の癖を治すだけでなく、骨格(土台)から整えるため、大人になっても後戻りしにくくなります。
口元のバランスの改善を期待:あごの骨を正しい位置・大きさに導くことで、鼻呼吸がしやすくなり、口元全体のシルエットが引き締まります。
将来的な抜歯リスクを最小限に:早期に土台を広げるため、健康な歯を抜かずに済む可能性が高まります。
(デメリット・注意点)
治療のステップが多い:成長に合わせて装置を使い分けるため、保護者様とお子様、 そして歯科医院がチームとなって数年単位で取り組む必要があります。
就寝時の装着管理:治療後長期にわたって歯並びやかみ合わせを安定させるには、 成長のピークに合わせて適切に装置を使用することが求められます。
重なりの強い場合は慎重な対応:合計10ミリメートルを超えるような強い歯の重なりが見られる場合、永久歯の抜歯も治療の選択肢に入ってきます。 一度矯正相談を受けていただくことをお勧めします。
よくある質問
Q. 子供の前歯がガタガタなのは何歳まで様子を見ていい?
A.永久歯の前歯が生え始める5〜6歳頃は、歯並びが大きく変化する時期です。しかし、前歯がガタガタに重なって生えてきた場合、自然にきれいな歯並びへ改善することは多くありません。
そのため、「何歳まで様子を見る」というよりも、前歯の重なりに気づいた時点で一度歯科医院や矯正歯科で相談することをおすすめします。 必要に応じて経過観察を行い、適切な治療開始時期を判断します。
Q. 永久歯が乳歯と重なって生えてきたらどうする?

A. 乳歯が抜ける前に永久歯が内側や外側から生えて重なってきた場合、乳歯がぐらついていれば自然に抜けることもあります。しかし、ほとんど動いていない場合は、乳歯の抜歯が必要になることがあります。
また、乳歯を抜いても歯が並ぶスペースが不足していると、前歯のガタガタが改善しないこともあります。永久歯が重なって生えてきたら、一度歯科医院で確認してもらいましょう。
Q. 子供の前歯がガタガタでも永久歯は抜かないといけない?
A.必ずしも永久歯を抜くわけではありません。
成長期であれば、あごの成長を利用して歯が並ぶスペースを確保できる場合があり、抜歯を避けられる可能性があります。
一方で、重なりが非常に大きい場合や、あごの成長だけでは十分なスペースを確保できない場合には、永久歯の抜歯が選択肢になることもあります。
抜歯が必要かどうかは、歯並びだけでなく、あごの大きさや成長、かみ合わせなどを総合的に診断して判断します。
Q. 子供の矯正は何歳から始めるのがおすすめ?
A.矯正治療を始める適切な時期は、お子さまの歯並びや成長によって異なります。
一般的には、永久歯の前歯が生え始める5〜7歳頃に一度相談すると、歯が並ぶスペースやあごの成長を確認できます。
この時期に問題が見つかれば、あごの成長を利用した治療を選択できる可能性があり、将来的に永久歯の抜歯を避けられる場合もあります。
そのため、前歯のガタガタや歯並びが気になった時点で、一度矯正相談を受けることをおすすめします。
まとめ
叢生(ガタガタの歯並び)は日本人の子供に多く、見た目だけでなく将来のむし歯リスクや歯の寿命にも悪影響を及ぼす。
乳歯の時期に歯と歯のすき間がほとんどない場合は、永久歯がきれいに並ぶスペースが不足するサインになることがある。
歯が重なる根本原因は「あごの小ささ」にあり、舌の位置や食いしばりなどの日常的な癖があごの成長を妨げている。
小児期にマイオブレースやバイオブロックで骨格から整えることで、将来的に永久歯を抜かずに済む可能性が高まる。
早期に口腔機能や顎の成長へアプローチすることで、歯並びだけでなく、正しい呼吸や口元の健やかな成長につながる可能性がある。
執筆者・監修者プロフィール
医療法人社団 統慧会 かわべ歯科(静岡県菊川市) 理事長 川邉 滋次(歯科医師)
前歯がガタガタに生えてきた場合は、早く矯正を始めることが大切なのではなく、「適切な時期を逃さないこと」が大切です。
気になる場合は、永久歯が生え始める5〜6歳頃を目安に、一度歯科医院で歯並びやあごの成長を確認してもらうことをおすすめします。
参考文献
1. 河合 聡, 口腔習癖 実践編 アイコンで見える化する口腔機能の問題点, 医歯薬出版株式会社, 東京, 2021.
2. 河合 聡, 口腔習癖 見逃してはいけない小児期のサイン, 医歯薬出版株式会社, 東京, 2019.
3. Hafez, Hend Salah, et al. "Dental crowding as a caries risk factor: a systematic review." American Journal of Orthodontics and Dentofacial Orthopedics 142.4 (2012): 443-450.
4. 河合 聡, 萌出障害 先天欠如, 歯胚位置異常, 過剰歯, 捻転歯 臨床対応CASEBOOK,ヒョーロン パブリッシャーズ, 東京, 2022.
5. 藤井元太郎, et al. "若年者における不正咬合の発現に関する疫学的研究." 北海道矯正歯科学会雑誌 25.1 (1997): 69-75.
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