子どものクチャクチャ食べはなぜ起こる?叱る前に確認したい原因と対処法
- かわべ歯科 歯科医院

- 8月3日
- 読了時間: 12分
▼目次
はじめに―子どものクチャクチャ食べを「マナーの問題」だけで片づけていませんか?
食事中に口を開けたまま噛み、「クチャクチャ」と咀嚼音を立てて食べる人を、俗に「クチャラー」と呼ぶことがあります。
「子どもがクチャラーになっている」
「何度注意しても、口を閉じて食べられない」
「大人になっても直らなかったらどうしよう」
このように、子どもの食べ方を心配している保護者は少なくありません。

クチャクチャ食べは、食事のマナーとして注意されることが多い食べ方です。しかし、子どもの場合は、単なる癖だけでなく、鼻の通りや唇・舌・頬の動きなどが関係していることがあります。
そのため、何度も「口を閉じて食べなさい」と注意するだけでは改善しないことがあります。まずは、なぜ口を開けて食べているのかを確認することが大切です。
この記事では、子どものクチャクチャ食べについて、音が出る仕組み、考えられる原因、家庭で確認したいポイント、対応方法を歯科医師が解説します。
クチャクチャ音はなぜ出るの?
食べ物をかむときは、歯だけでなく、舌・頬・唇・あごを協調させて動かします。
舌は食べ物を左右の奥歯へ運び、頬は食べ物が外側へ逃げないように支えます。さらに、唇を閉じることで、食べ物や唾液を口の中に保ちながらかむことができます。
ところが、食事中に唇が開いていると、食べ物と唾液が混ざる音が口の外へ伝わりやすくなり、「クチャクチャ」という音として聞こえやすくなります。
ただし、クチャクチャ音の出方には、食べ物の種類、一口量、かむ速度、食べながらの会話なども関係します。そのため、音がするという理由だけで、口呼吸や口の機能に問題があると判断することはできません。
大切なのは音だけで判断せず、かんでいる間に唇を閉じられているか、食べ物が口に残っていないか、鼻で呼吸できているかなどを一緒に確認することです。
調査では、クチャクチャ食べの子どもの約8割が食事中に唇を閉じていなかった
2003年に、仙台市内の保育園に通う4~6歳児を対象として、食事や呼吸の状態を保護者に尋ねた調査があります。275人に質問票を配布し、206人から回答を得ています。
この調査では、「クチャクチャ音を立てて食べる」と回答された子どもの約8割について、保護者が「食べているときに唇を閉じていない」と回答していました。
また、口呼吸の子どもは、鼻呼吸の子どもと比べて、
クチャクチャ音を立てて食べる
食事中に口を閉じていない
食べ物が口の中に残りやすい
といった食べ方の問題が多く認められました。

さらに、2021年に全国66か所の歯科医療機関を受診した3~12歳の子ども3,399人を対象として行われた調査では、日常的に口が開いている「口唇閉鎖不全」が30.7%に認められました。

口唇閉鎖不全がある子どもでは、「音を立てて食べる」「食事中に口を閉じていない」といった食べ方も多くみられました。これらの結果から、クチャクチャ音には、食事中に唇を閉じられているかどうかが関係している可能性があります。
ただし、いずれも主に保護者へのアンケートをもとにした横断調査であり、クチャクチャ音の原因や、口呼吸との因果関係を直接証明したものではありません。
また、日中や睡眠中に口が開いているからといって、必ずしも口呼吸をしているとは限りません。「クチャクチャ音がする=口呼吸」「音がする=唇の力が弱い」と単純に判断せず、唇や舌の動き、鼻の通り、かみ合わせなどを確認するきっかけの一つと考えてください。
子どもがクチャクチャ食べをする4つの原因
1.食事中に唇を閉じられていない
クチャクチャ音が気になるときに、まず確認したいのが、かんでいる間に唇を閉じられているかという点です。
食べ物を口に取り込んでかみ、飲み込むまでの間、唇は食べ物や唾液を口の中に保つ役割を担っています。
乳幼児期は、歯の萌出やあごの成長に伴って、唇・舌・頬を使って食べる機能が発達していく時期です。口唇閉鎖力についても、幼児期には年齢とともに高まる傾向が報告されています。
そのため、低年齢の子どもでは、食べる機能がまだ発達の途中にあり、かんでいるときに一時的に口が開いてしまうこともあります。
一方、幼児期後半になっても毎回口を開けてかんでいる場合は、単に唇の力が弱いと決めつけず、鼻の通り、歯並びやかみ合わせ、舌や頬の動きなども確認する必要があります。
2.鼻が詰まっていて、食事中に呼吸しにくい
食事中は、唇を閉じてかみながら鼻で呼吸するのが基本です。しかし、アレルギー性鼻炎、慢性的な鼻詰まり、アデノイドや扁桃の肥大などによって鼻で呼吸しにくい場合、子どもは食事中にも口を開けて呼吸しようとします。
6~12歳の子ども123人を対象とした研究では、鼻から息を吸い込む力が低い子どもほど、
咀嚼中に唇を一定して閉じられない
噛む速度が遅い
固形物の飲み込み方に問題がある
といった特徴が認められました。
鼻で十分に呼吸できない場合、子どもは、かむ動作の途中で口を開けて呼吸しようとします。その結果、食べ物と唾液が混ざる音が外へ伝わりやすくなります。
この場合、本人に「口を閉じなさい」と注意しても、鼻で呼吸しにくい状態が続いていれば改善は困難です。鼻詰まり、鼻水、いびき、口を開けて寝るといった様子が続いている場合は、食べ方だけでなく鼻の状態も確認しましょう。
※口呼吸については「子どもの口呼吸・お口ぽかん」の記事で詳しく解説しています。
3.舌・頬・あごをうまく協調させられていない
食べ物をかむ動作は、単純にあごを上下させているだけではありません。舌で食べ物を奥歯へ運ぶ、頬で食べ物を歯の上に戻す、かんだ食べ物を唾液と混ぜてまとめるなど、複数の動きを同時に行っています。
これらの動きが十分に身についていないと、
食べ物が口の中でばらばらになる
頬や歯ぐきの周囲に食べ物が残る
一口を飲み込むまでに時間がかかる
水やお茶で流し込む
舌を前に出して飲み込む
口から食べ物をこぼす
といった食べ方がみられることがあります。
クチャクチャ音だけでなく、食後も口の中に食べ物が残っている場合は、舌や頬を使って食べ物をまとめる機能が十分でない可能性があります。
4.姿勢や一口量など、食べ方の習慣に問題がある
口の機能に大きな問題がなくても、食事中の姿勢や食べ方によってクチャクチャ音が出ることがあります。
特に注意したいのは、
一口量が多い
次々と食べ物を口に入れる
食べながら話す
テレビや動画を見ながら食べる
椅子や机の高さが合っていない
足が床につかず、体が安定していない
背中を丸めて顔を前に出している
といった状態です。
一口量が多すぎると、食べ物を口の中に収めるために唇が開きやすくなります。また、足が床につかず体が安定しない状態では、食事中の姿勢が崩れやすく、落ち着いてかみにくくなることがあります。
口腔筋機能療法を行った子どもの研究では、口のトレーニングとともに、食事中の姿勢や椅子・机の高さ、口を閉じて食べることなどを継続的に指導した結果、食べ方に関する問題が改善したことが報告されています。
ただし、この研究から、姿勢の改善だけでクチャクチャ食べが治ると判断することはできません。姿勢は、唇や舌の動き、鼻の通り、一口量などと合わせて確認することが大切です。
「マナーが悪い」と叱る前に確認したい7つのポイント
クチャクチャ音が気になるときは、次の点を確認してみましょう。
1.かんでいる間、唇を閉じているか
食べ物を口に入れた直後ではなく、奥歯でかんでいる間の唇を観察します。少し開く程度なのか、かんでいる間ずっと開いているのかを確認しましょう。
2.食事以外の時間も口が開いていないか
テレビを見ているとき、ゲームをしているとき、寝ているときなどにも口が開いている場合は、食事のマナーだけの問題ではない可能性があります。
3.鼻詰まりやいびきがないか
季節を問わず鼻が詰まっている、鼻水が多い、いびきをかく、口を開けて寝るといった症状がないか確認します。
4.食べ物が口の中に残っていないか
飲み込んだ後も、頬の内側、上あご、舌の周囲などに食べ物が残っていないかを確認します。
5.水やお茶で流し込んでいないか
食事中に毎回水分を含み、食べ物を流し込んでいる場合は、うまく噛んで食塊を作れていない可能性があります。
ただし、水分を取ること自体が悪いわけではありません。飲まないと飲み込めない状態が続いていないかがポイントです。
6.食べる速度が極端に速い、または遅くないか
一口をほとんどかまずに飲み込む場合だけでなく、いつまでも口の中に食べ物が残る場合も注意が必要です。
7.前歯の噛み合わせや舌の動きに問題がないか
前歯がかみ合っていない、出っ歯が強い、舌を前に出して飲み込むといった状態では、食事中に唇を閉じにくいことがあります。
家庭でできるクチャクチャ食べの対応
1.まずは注意するより観察する
「クチャクチャしない」
「口を閉じなさい」
と繰り返すだけでは、子ども自身も何を直せばよいのか分かりません。
まずは、
どの食べ物で音が出るのか
いつも音がするのか
疲れているときだけなのか
鼻が詰まっている日に強くなるのか
口を閉じようとしても閉じられないのか
を観察しましょう。
必要に応じて、普段の食べ方が分かる短い動画を撮影しておくと、歯科医院へ相談する際に役立つことがあります。撮影するときは、できるだけ普段どおりの食事の様子を記録しましょう。
2.一口量を少なくする
口いっぱいに食べ物を入れると、唇を閉じにくくなります。最初から「30回かみなさい」と回数を決めるよりも、まずはスプーンや箸に取る量を少なくし、口に入れた食べ物を飲み込んでから次の一口へ進むようにしましょう。
3.足がつく姿勢を作る
椅子に深く腰をかけ、足の裏全体が床や足台につくようにしましょう。
椅子が大きすぎたり、足が宙に浮いていたりすると、食事中に体がぐらつき、背中を丸めたり顔を前へ出したりしやすくなります。安定した姿勢を作ることは、落ち着いてかむための基本です。
足が床につかない場合は、市販の足台や丈夫な踏み台を使用して高さを調整してください。適切な足台がない場合は、厚みのある雑誌などで一時的に代用できますが、滑ったり崩れたりしないよう、必ず安定させて使用しましょう。
4.食べている最中に話しかけすぎない
食べながら返事をしようとすると、口が開いて音が出やすくなります。食事中の会話は大切ですが、子どもが口に食べ物を入れているときは、飲み込むまで返事を待つことも必要です。
5.鼻詰まりが続く場合は耳鼻咽喉科へ相談する
鼻で呼吸しにくい状態のまま、唇を閉じる練習だけを続けても、改善しないことがあります。
鼻詰まり、鼻水、いびき、口を開けて寝るといった症状が続いている場合は、耳鼻咽喉科へ相談し、鼻やのどの状態を確認してもらいましょう。
6.親御さんがお手本になる
子どもは、食事中の姿勢やかみ方、口の閉じ方などを、家族の様子を見ながら身につけていきます。まずはテレビやスマートフォンを消して、食事に集中できる環境を整えましょう。「ながら食べ」では姿勢が崩れやすく、口を閉じて噛むことへの意識も向きにくくなります。

また、親御さん自身が口を開けたままかんでいないか、食べ物を口に入れたまま話していないか、一度振り返ってみることも大切です。
子どもだけに「口を閉じて」「音を立てないで」と繰り返すよりも、家族みんなで姿勢を整え、口を閉じてゆっくりかむ姿を見せる方が、自然に正しい食べ方を身につけやすくなります。
何歳までなら様子を見てもいい?
食べる機能は、歯の萌出や口の成長に合わせて少しずつ発達します。特に乳幼児期は、唇・舌・頬・あごの動きが発達の途中にあり、食べ方にも個人差があります。
明確な年齢基準はありませんが、幼児期後半になっても毎回口を開けてかむ場合や、食べ物が口に残る、鼻詰まりやいびきが続く場合は、一度歯科医院へ相談してもよいでしょう。
年齢にかかわらず、次のような状態が続く場合は、長期間様子を見続けないことが大切です。
毎回口を開けてかんでいる
食事以外の時間も口が開いている
食べ物をうまくかめない
食べ物が口の中に長く残る
水分がないと飲み込めない
食べ物を頻繁にこぼす
舌を前に出して飲み込む
鼻詰まりやいびきが続いている
前歯がかみ合っていない
食事に極端に時間がかかる
また、むせや咳き込みが多い、飲み込みにくそうにしている、体重が増えにくいといった症状がある場合は、年齢を問わず、早めに小児科や専門の医療機関へ相談してください。
クチャクチャ食べはどこに相談すればいい?
まずは、子どもの口腔機能を診ているかかりつけの歯科医院や小児歯科へ相談しましょう。
歯科医院では、
食事中に唇を閉じられるか
舌や頬を使えているか
正しく噛めているか
飲み込むときに舌が出ていないか
歯並びや噛み合わせに問題がないか
必要に応じた口唇閉鎖力の測定
普段の口の開き方
食事中の姿勢や一口量
などを確認します。
鼻詰まり、いびき、扁桃やアデノイドの問題が疑われる場合は、耳鼻咽喉科との連携が必要です。また、むせや飲み込みの問題が強い場合には、小児科、耳鼻咽喉科、摂食嚥下を専門とする医療機関などでの評価が必要になることもあります。
まとめ
子どものクチャクチャ食べは、必ずしもマナーだけの問題ではありません。
食事中に唇を閉じられないことが、クチャクチャ音と関係している場合があります。
まずは、唇を閉じてかめているか、鼻詰まりやいびきがないか、食べ物が口に残っていないかを観察しましょう。
一口量を少なくし、足がつく安定した姿勢で食べることも大切です。
鼻詰まりやいびきが続く場合は、耳鼻咽喉科への相談が必要になることがあります。
毎回口を開けて食べる、むせる、飲み込みにくいなどの症状が続く場合は、歯科医院や小児科などへ相談しましょう。
何度も「口を閉じなさい」と叱るだけでは、原因によっては改善しないことがあります。まずは普段の食べ方を観察し、子どもが口を閉じにくい理由がないかを確認することが大切です。
執筆者・監修者プロフィール
静岡県菊川市の歯医者さん 川邉滋次(歯科医師・院長)
参考文献
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