エナジードリンクは歯に悪い?毎日飲む人に知ってほしい「歯への影響」と飲み方
- 歯科医師 川邉滋次

- 2 分前
- 読了時間: 8分
▼目次
はじめに|エナジードリンクは歯に悪い?
歯科医師が気になるのは「成分」だけではありません
普通のエナジードリンクとむし歯の関係
注意したいのは「ちびちび飲み」
ゼロシュガーなら歯には問題ない?
エナジードリンクとスポーツドリンクの違い
飲むなら、歯への負担を減らすには?
こんな方は歯科医院でチェックを
まとめ
はじめに|エナジードリンクは歯に悪い?

仕事や勉強に集中したいとき、長時間の運転やスポーツの前後、眠気を覚ましたいときなど、エナジードリンクを飲む場面はさまざまです。冷蔵庫に常備している、毎朝1本飲んでいる、デスクに置いて何時間もかけて飲んでいる、という方もいるでしょう。
では、エナジードリンクは歯に悪いのでしょうか。
結論からいうと、飲めば必ずむし歯になるわけではありません。ただし、含まれる糖や酸に加え、飲む量や頻度、飲み方によっては、歯への負担が大きくなります。
大切なのは、エナジードリンクを一律に悪者にすることではなく、「何を、どのくらい、どのように飲んでいるか」を見直すことです。
歯科医師が気になるのは「成分」だけではありません
エナジードリンクを歯の視点で見るとき、私たちが主に確認したいのは「糖類」「酸」、そして「飲み方」です。
1.糖類
砂糖などが口に入ると、歯垢の中の細菌が酸をつくり、歯の表面を溶かします。唾液には歯を修復する働きがありますが、糖をとる回数が多いと修復が追いつかず、むし歯になりやすくなります。
2.酸
エナジードリンクには、酸味をつけたり品質を保ったりするために、酸が含まれることがあります。酸性の飲み物に歯が繰り返し触れると、むし歯菌とは関係なく、歯の表面が溶けることがあります。これが「酸蝕症(さんしょくしょう)」です。
英国で主要なエナジードリンク5製品を調べた研究では、すべてが酸性で、糖を多く含む製品もありました。ただし、これは2019年に英国で販売されていた5製品の結果です。日本の商品すべてに当てはまるわけではありません。

成分や容量は商品や国、販売時期によって異なります。まずは、手元の商品の栄養成分表示を確認しましょう。
(pHだけでは決まらない「酸の強さ」)
飲み物の酸性の強さを示す代表的な数値が「pH」です。しかし、歯への影響はpHだけでは判断できません。「滴定酸度(てきていさんど)」も重要な指標です。
pH:測定した時点で、どの程度酸性かを示す値
滴定酸度:酸を中和するために必要なアルカリの量を示す値
簡単にいえば、滴定酸度は、飲み物にどれくらいの酸が含まれ、中和されにくいかをみる目安です。pHが同じくらいでも、滴定酸度が高い飲み物は中和されにくく、歯への影響が大きくなる可能性があります。ただし、実際の影響は、唾液の量や飲み方などによっても変わります。
2021年の実験では、調べたエナジードリンク3製品のpHは2.36~3.41で、30分間浸したヒトの歯のエナメル質すべてに酸蝕が認められました。
ただし、これは試験管内で行われた実験であり、唾液の働きや実際の飲み方をそのまま再現したものではありません。「その商品を飲むと、口の中でも同じように歯が溶ける」という意味ではなく、酸蝕の可能性を考えるための基礎的な情報です。
3.カフェイン
カフェインはエナジードリンクの代表的な成分ですが、糖や酸のように、むし歯や酸蝕を直接引き起こすとは確認されていません。2026年に複数の研究をまとめた報告でも、唾液への影響を調べた研究は少なく、はっきりした結論は出ていません。
歯への影響を考えるときは、まず糖や酸の量と、飲む量・頻度・飲み方に注目することが大切です。
普通のエナジードリンクとむし歯の関係
糖を含むタイプでは、むし歯のリスクを考える必要があります。糖入り飲料全般を対象にした研究では、毎日または週に何度も飲む人は、週2回未満の人に比べて、むし歯や酸蝕がみられる可能性が高いと報告されています。

一方、エナジードリンクとむし歯の関係は、まだはっきりしていません。多くの研究を公平に集めて評価した2026年の報告でも、むし歯を調べた研究は10件中2件だけで、研究の信頼性にも課題がありました。
つまり、「エナジードリンク=むし歯」ではありません。しかし、糖を含む飲み物を高頻度でとることは、むし歯予防の観点から見過ごせません。歯磨きの状態、唾液の量、フッ化物の利用、食生活など、ほかの条件も重なって一人ひとりのリスクが決まります。
注意したいのは「ちびちび飲み」
歯への負担を考えるうえでは、飲む量だけでなく、口の中が糖や酸にさらされる「回数」と「時間」も重要です。
同じ1本でも、短時間で飲み終える場合と、デスクや車に置いて何時間も少しずつ飲む場合では、歯への影響が異なります。一口飲むたびに糖や酸の影響を受けるため、何度も飲むと、唾液が口の中を中和して歯を修復する時間を確保しにくくなります。
一度に大量に飲む必要はありませんが、1本を何時間もかけて、だらだら飲み続けることは避けましょう。
ゼロシュガーなら歯には問題ない?
砂糖を含まないエナジードリンクは、糖入りのものに比べ、糖によるむし歯のリスクを抑える選択肢になります。
ただし、「砂糖ゼロ=歯への影響ゼロ」ではありません。 ゼロシュガーでも酸性の製品があり、酸蝕を起こす可能性は別に考える必要があります。実際、スポーツドリンクとエナジードリンクを比べた試験管内の研究では、Red Bull Sugar Freeも滴定酸度が高い製品の一つでした。
つまり、砂糖の有無は主にむし歯、飲料の酸性は主に酸蝕の問題です。「糖類ゼロ」という表示だけで判断せず、飲む頻度や飲み方にも気をつけましょう。
酸蝕が起こる仕組みや詳しい対策については、当院の「酸蝕症」の記事もあわせてご覧ください。
エナジードリンクとスポーツドリンクの違い
エナジードリンクとスポーツドリンクは名前が似ていますが、目的が異なります。
エナジードリンクは、主に覚醒感や集中力を求める人に選ばれる飲料で、カフェインなどを含みます。一方、スポーツドリンクは、運動時の水分や電解質、糖質の補給を主な目的としています。そのため、「運動するからエナジードリンクを飲む」という置き換えが適しているとは限りません。
ただし、スポーツドリンクにも糖や酸を含む製品があります。2012年の試験管内実験では、調べたエナジードリンクはスポーツドリンクより滴定酸度が高く、歯のエナメル質の減少も大きいという結果でした。しかし、これは特定の製品を使った実験であり、すべての商品や実際の口の中に、そのまま当てはめることはできません。
2026年に複数の研究をまとめた報告では、エナジードリンクを飲む量や頻度が多いほど、酸蝕のリスクが高まる傾向が示されました。一方、スポーツドリンクと酸蝕の関係については、研究結果が一致していませんでした。
どちらも名前だけで安全・危険と判断せず、糖や酸の性質と、飲む量・頻度・飲み方を合わせて考えることが大切です。
飲むなら、歯への負担を減らすには?
エナジードリンクを飲むときは、次の点を意識してください。
だらだら飲まない:少量ずつ何時間も飲み続けるのは避けましょう。
量と頻度を見直す:毎日の習慣になっている場合は、回数を減らせないか考えてみましょう。
飲んだ後に水を飲むか、口を水ですすぐ:飲料が口の中に残るのを減らせます。
就寝前に飲まない:睡眠中は唾液が少なくなるため、糖や酸の影響を受けやすくなります。
普段の水分補給は水や無糖のお茶を基本にする:のどが渇くたびに飲むと、歯が糖や酸にさらされる回数が増えます。
フッ化物配合歯磨剤を使う:毎日の歯磨きに加え、フロスや歯間ブラシ、定期検診も大切です。
ストローを使うと歯との接触を減らせる可能性はありますが、使い方によっては歯に触れます。ストローだけで安心せず、飲む頻度や時間を見直すことを優先しましょう。
こんな方は歯科医院でチェックを
次のような習慣や変化がある方は、一度、歯科医院に相談しましょう。
エナジードリンクをほぼ毎日飲んでいる
1本を何時間もかけて飲むことが多い
冷たいものや歯磨きで歯がしみる
前歯の先端が薄く、透けて見えるようになった
歯の表面がツルツルしたり、くぼんだりしてきた
むし歯を繰り返している
こうした変化には、酸蝕以外の原因も考えられます。自己判断せず、歯の表面やむし歯の有無、歯磨きの状態、唾液などを総合的に確認してもらいましょう。
受診の際に、普段飲んでいる商品名や、1日に飲む量、飲む時間帯を伝えると、より具体的なアドバイスを受けやすくなります。
まとめ
エナジードリンクが歯に与える影響は、「飲んだか、飲まなかったか」だけでは決まりません。見るべきポイントは、種類・成分・量・頻度・飲み方です。
糖入りタイプでは、糖をとる回数が増えることで、むし歯のリスクが高まり得ます。ゼロシュガーでも、酸性飲料としての影響は別に考える必要があります。そして、同じ1本でも、何時間もちびちび飲む習慣は、歯が糖や酸に触れる機会を増やします。
必要以上に怖がる必要はなく、まずは、成分表示を見る、だらだら飲まない、飲んだ後に水を飲む、普段の水分補給を置き換えないなどできることから始めましょう。気になる症状がある方や、毎日の習慣を変えにくい方は、歯科医院でご相談ください。
参考文献
Luo, Bella Weijia, et al. "Association Between Consumption of Energy and Sports Drinks with Oral Health: A Systematic Review." Dentistry Journal 14.6 (2026): 359.
Valenzuela, Maria Josefina, et al. "Effect of sugar-sweetened beverages on oral health: a systematic review and meta-analysis." European journal of public health 31.1 (2021): 122-129.
Clapp, Oliver, Maria Z. Morgan, and Ruth M. Fairchild. "The top five selling UK energy drinks: implications for dental and general health." British dental journal 226.7 (2019): 493-497.
Meira, Ingrid-Andrade, and Fábio-Correia Sampaio. "Influence of energy drinks on enamel erosion: In vitro study using different assessment techniques." Journal of clinical and experimental dentistry 13.11 (2021): e1076.
Jain, Poonam, et al. "A comparison of sports and energy drinks--Physiochemical properties and enamel dissolution." General dentistry 60.3 (2012): 190-7.
.png)





コメント