黒糖・ハチミツ・ラカント®︎(ラカンカ)の違いとは? むし歯のなりやすさを歯科医が解説
- 歯科医師 川邉滋次

- 6月25日
- 読了時間: 7分
更新日:6月29日
▼目次

はじめに-黒糖やハチミツは栄養があって身体に良さそうだけど、むし歯のなりやすさも変わるの?
「黒糖」や「ハチミツ」は自然の恵みからできた甘味料として、「身体に良さそう」「砂糖より安心」と思われる方も多いのではないでしょうか。また、近年では砂糖の代替甘味料として「ラカンカ(羅漢果)」を選ぶ方も増えています。
たしかに、黒糖にはミネラル、ハチミツには抗菌作用、ラカンカには砂糖の代わりとして利用できる特徴があり、それぞれに魅力があります。
しかし、「むし歯になりやすさ」という視点で見るとどうでしょうか。実は、自然由来の甘味料であっても、糖を多く含むものはむし歯菌のエサとなり、歯の健康には注意が必要です。一方で、ラカンカのように、甘くてもむし歯の原因になりにくい甘味料もあります。
今回は、砂糖の歴史や種類を紹介するとともに、黒糖・ハチミツ・ラカンカの特徴や、「むし歯のリスク」との関係について、歯科の視点から分かりやすく解説します。
砂糖の原料は?

砂糖の原料には、サトウキビとてんさい(サトウダイコン)があります。
暖かい地域ではサトウキビ、寒い地域ではてんさいが栽培されており、それぞれの気候に適した地域で砂糖の原料として利用されています。
サトウキビの歴史と日本の黒糖との関係

皆さんが砂糖の原料として最初に思い浮かべるのは、サトウキビではないでしょうか。
サトウキビは東南アジアからニューギニアにかけての熱帯地域が原産で、紀元前4000年頃にはすでに甘味の源として利用されていました。その後、インドで「砂糖を煮詰めて固める技術」が発達し、やがて世界各地へ広まっていきます。
ヨーロッパでは「白い黄金」と呼ばれるほど高価な嗜好品でした。
15〜16世紀の大航海時代には、コロンブスによってサトウキビがカリブ海地域へ持ち込まれ、プランテーション栽培が急速に拡大しました。
日本には16世紀頃、琉球王国を経て伝わり、温暖な気候を生かして黒糖づくりが盛んになりました。現在でも沖縄県や奄美地方では、伝統的な黒糖づくりが受け継がれています。
日本の砂糖の原料の8割を占めるてんさい(サトウダイコン)とは?

てんさいは地中海沿岸が原産で、もともとは家畜の飼料として利用されていました。
1747年、ドイツの科学者マルクグラフが、てんさいから砂糖を抽出できることを発見しました。その後、ナポレオン戦争による「大陸封鎖」をきっかけにヨーロッパ各地で栽培が広まり、寒冷地でも生産できる重要な砂糖資源となりました。
現在、日本で生産される国産砂糖の約8割は、北海道で栽培されたてんさいから作られています。また、日本で消費される砂糖全体の約3割がてんさい由来とされています。

現在、日本で生産される国産砂糖の約8割は、北海道で栽培されたてんさいから作られています。また、日本で消費される砂糖全体の約3割がてんさい由来とされています。
北海道帯広市には「ビート資料館」があり、てんさい糖の歴史や砂糖づくりについて学ぶことができます。てんさい糖は北海道の農業や地域産業を支える重要な作物の一つです。
こんなにもあった!?砂糖の種類
上白糖

上白糖は、日本で最も一般的に使われている砂糖です。サトウキビやてん菜から作られ、不純物を取り除いて白く精製されています。しっとりした質感とまろやかな甘さが特徴で、料理やお菓子作りに幅広く使われます。
三温糖

三温糖は、上白糖などを作る過程で出る糖液を再び煮詰めて作られた砂糖です。茶色い色はカラメル化した成分によるもので、香ばしい風味があります。コクのある甘さが特徴で、煮物や佃煮などに向いています。
和三盆

和三盆は、主に徳島や香川で作られる高級砂糖です。サトウキビの一種「竹糖(ちくとう)」から作られ、手作業で何度も精製されます。上品でやさしい甘さと、口どけの良さが特徴で、和菓子に使われます。
黒糖

黒糖は、サトウキビの絞り汁をそのまま煮詰めて作る砂糖です。独特のコクと香ばしさがあります。沖縄や奄美地方の特産です。
黒糖はむし歯の原因になるの?
黒糖(黒砂糖)は精製度が低いため、カルシウムやカリウムなどのミネラルをわずかに含んでいます。
しかし、主成分の多くはショ糖(スクロース)であり、白砂糖とほとんど変わりません。
むし歯菌(ミュータンス菌)はショ糖を利用して酸を作り、その酸によって歯が溶かされます。そのため、黒糖だからといって、白砂糖よりむし歯になりにくいわけではありません。
栄養面だけで黒糖を選んではいけない理由
黒糖には確かにカルシウム・カリウム・鉄分などのミネラルが含まれていますが、その量は決して多くはありません。

『日本食品標準成分表(八訂)増補2023年』によると、黒糖100g中の大部分はショ糖が占めています。
成人が必要とするカルシウムを黒糖だけで補おうとすると、現実的ではない量を摂取しなければなりません。一方で、その量を食べれば糖質の過剰摂取となり、かえって健康に悪影響を及ぼす可能性があります。
黒糖は栄養補給を目的として選ぶよりも、風味やコクを楽しむ甘味料として利用するのがよいでしょう。
ハチミツはむし歯の原因にならないの?

ハチミツは、花の蜜に含まれるショ糖をミツバチの酵素が分解し、ブドウ糖や果糖へ変化させたものです。
抗菌作用を持つ成分が含まれていますが、糖分を非常に多く含んでいるため、砂糖と同様にむし歯の原因になります。
自然由来だからといって安心せず、糖を多く含む甘味料であることを理解しておくことが大切です。
ラカント®︎(ラカンカ)はむし歯の原因にならない!?

「ラカント®」は、ラカンカ(羅漢果)由来の甘味成分とエリスリトールを主原料とした甘味料です。
ラカンカは、中国南部原産のウリ科の植物で、甘味成分である「モグロシドV」は砂糖の約250〜300倍の甘味を持ちながら、むし歯菌のエサにならないことが特徴です。
そのため、口の中で歯を溶かす酸がほとんど作られず、むし歯の原因になりにくいと考えられています。
市販されているラカント®製品の多くは、ラカンカエキスとエリスリトールを組み合わせて作られています。エリスリトールもむし歯菌に利用されにくいため、むし歯予防の観点から優れた甘味料です。
ただし、「ラカンカ配合」「ラカンカ使用」などと表示された甘味料がすべてラカント®と同じ成分とは限りません。 中には砂糖や果糖ぶどう糖液糖などが加えられている製品もあるため、購入時には原材料表示を確認し、「ラカンカエキス」「エリスリトール」が主原料となっているものを選ぶとよいでしょう。
まとめ
黒糖やハチミツも糖を多く含むため、白砂糖と同様にむし歯の原因になる。
黒糖に含まれるミネラルは少量で、栄養補給を目的に選ぶのはおすすめできない。
自然由来だからといって、むし歯になりにくいわけではない。
むし歯予防では、甘味料の種類だけでなく摂取量や摂取頻度も大切。
ラカンカの甘味成分はむし歯菌のエサになりにくく、砂糖の代替甘味料として活用可能。
ラカンカ甘味料を選ぶ際は、他にむし歯の原因である「糖」が入っていないか原材料の確認を推奨。
「身体に良さそう」というイメージではなく、成分を正しく理解して甘味料を選ぶことが大切。
この記事を書いた人

医療法人社団 統慧会 かわべ歯科 理事長 川邉滋次
砂糖やハチミツより注意が必要なのが、ジュースや炭酸飲料に多く使われる「異性化糖(果糖ブドウ糖液糖)」です。これはデンプンを分解して作る甘味料で、体に吸収されやすい果糖を多く含みます。吸収が早いため血糖値が急上昇しやすく、肥満や脂肪肝、糖尿病の原因になることもあります。また、むし歯菌のエサにもなるため、砂糖と同じようにむし歯のリスクも高まります。
参考文献
1. 独立行政法人 農畜産業振興機構. 砂糖の種類. https://www.alic.go.jp/consumer/sugar/variety.html
2. 文部科学省 科学技術・学術審議会資源調査分科会 編.日本食品標準成分表(八訂)増補2023年.東京都:文部科学省. 2023.
3. 伊藤直人. カリエスブック .医師薬出版. 2020, 58.
4. Neff, D. "Acid production from different carbohydrate sources in human plaque in situ." Caries Research 1.1 (1967): 78-87.
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