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磨きにくい所はこれ使って!小さい歯ブラシ-ワンタフトブラシの使い方を解説!

はじめに-まだまだ知名度の低いワンタフトブラシ…その正しい使い方を広め、多くの人の口腔ケアに役立てたい!


シングルタフトブラシの正しい使い方

ワンタフトブラシという小さな歯ブラシをご存知ですか?名前だけ聞いても思い浮かぶ方は少ないかもしれません。


ワンタフトブラシ

歯の模型

この清掃器具は「ワンタフトブラシ」といい、通常の歯ブラシよりもヘッド部分が小さいブラシです。ワンタフトブラシはシングルタフトブラシや1歯用ブラシ、ポイントブラシとも呼ばれています。電動歯ブラシに取り付けるタイプもあります。


ただ、このワンタフトブラシは認知度が低いため、歯科医院のブラッシング指導ではじめて目にしたという方もいます。実際、コンビニや薬局などの販売棚を見ても、ワンタフトブラシは歯ブラシと比較して販売している種類がとても少ない状態です。


この理由として、「使い方がいまいちわからない」「歯ブラシだけで十分清掃できると考えている人が多い」ことなどが挙げられます。


そこで、このワンタフトブラシをもっと多くの人に使って欲しいという想いで、今回はこのワンタフトブラシの魅力について詳しくまとめてみました。今までワンタフトブラシを使用していなかった方に興味を持っていただけたら幸いです。


目次▼



ワンタフトブラシが活躍して磨ける部分は?


掃除機のノズル
狭い場所は掃除機のノズルを付け替える

皆さんは部屋の隅やすき間を掃除機で掃除するときに、掃除機の先端はT字型のままでしょうか?多くの方が先端が細いノズルに付け替えると思います。その理由として、「狭い場所や届きにくい場所には大きな掃除器具は入らない」ことがあります。


では、お口の中で狭い場所や届きにくい場所とはどのような箇所でしょうか?ここでは7つ紹介していきます。


1. 上の奥歯の外側・下の奥歯の内側(歯の根本部分)


 上の奥歯の外側と下の奥歯の内側
 上の奥歯の外側と下の奥歯の内側

前歯と比べて奥歯のブラッシングは、歯ブラシが届きにくいこともあり、難しく磨き残しを発生させやすい部位が多いです。特に上の奥歯の外側部分や下の奥歯の内側は、ほほや舌によって歯ブラシが途中で引っかかってしまうことがあり、無理にブラッシングをしても根本部分など届かない部位が発生することがあります。


そこで、ヘッドの部分が小さいシングルタフトブラシが用いられ、通常の歯ブラシだけでは届かない狭い部分へアクセスできるようになります。


2. 親知らず・奥歯の後方部分


奥歯の後方部分
奥歯の後方部分

親知らず、親知らずがない場合には一番後ろにある歯の後方部分は歯ブラシの角度では当たりにくい箇所が出てきます。ワンタフトブラシは小さく角度がつけやすいため、このような部分にもアプローチが可能です。


3. 生えてきたばかりの歯


生えてきたばかりの歯

生えてきたばかりの歯は、歯の面積が少なく、周りを歯ぐきが覆っているくぼんだ状態です。このくぼみは歯ブラシでは大きすぎて、歯ブラシの毛先が歯の面に届かない場合があります。一方、ワンタフトブラシは面積の少ない陥没でも清掃可能です。


4. 歯が重なっている場所・歯と歯の間の空間


歯が重なっている部分
歯が重なっている部分

叢生(そうせい)とよばれる歯と歯が重なっている部分は、場合によっては狭くなっており、歯ブラシが届きにくい場所があります。


歯と歯の間の鼓形空隙
歯と歯の間の鼓形空隙

歯と歯の間には「鼓形空隙(こけいくうげき)」と呼ばれる空間はあります。この部分は歯ブラシが届きにくい場所として知られており、歯と歯が重なっていない場合でも、その形状が歯ブラシの清掃を難しくさせてしまうことがあります。鼓形空隙は、歯と歯の接触部分にできる小さな隙間で、食べ物の残りかすや歯垢が溜まりやすい場所です。


丸く小さい歯
日本人の歯は小さくて丸い

日本人の歯の特徴として、小さくて丸い形状が挙げられます。この丸い形状により、隣接する歯との間に窪んだ部分が生じやすくなります。四角い歯が特徴の欧米人とは異なり、日本人の歯は丸みを帯びているため、歯と歯の間にできる空間が大きく、歯ブラシが届きにくい部分が増える傾向があります。


歯のカーブ

日本人の歯の丸みと歯と歯の間の空間の大きさから、平面の歯ブラシでは、特に鼓形空隙の部分に効果的に当たらず、しっかりと掃除することが難しくなります。このため、歯ブラシだけでは不十分な場合があり、デンタルフロスや歯間ブラシだけでなくワンタフトブラシを使うことをおすすめします。これらの道具を正しく使うことで、歯の隙間に溜まった汚れをより効果的に除去することができます。


5. 固定式の矯正装置(ブラケット装置)をしている箇所


固定式の歯科矯正装置
固定式の歯科矯正装置

固定式の矯正装置を装着している場合、装置の形によっては狭く磨きづらい部分が出てしまいます。歯ブラシでその間のプラークや食べかすを除去することは困難なため、小さいヘッドのワンタフトブラシが役に立つと考えられます。


6. ブリッジのダミー歯周囲


ブリッジのダミー歯周囲
ブリッジのダミー歯周囲

ブリッジとは、歯を失った部分の両隣の歯を土台にして、被せ物でつなぐ歯科治療の方法です。


歯がない部分には「ポンティック」と呼ばれるダミーの歯が入りますが、このダミーの歯の下(歯ぐきとの間)には少し隙間があります。この隙間には、プラーク(歯垢)や食べかすがたまりやすく、通常の歯ブラシでは届きにくいため、清掃が難しいのが特徴です。


こうした狭い部分のケアには、専用のデンタルフロス(スーパーフロスなど)や、歯間ブラシ・ワンタフトブラシといった補助的な清掃用具の使用がおすすめです。これらを使うことで、ブリッジの下もしっかりと清掃しやすくなります。


7. インプラントの周り


インプラント周囲
インプラント周囲

インプラントを入れたからといって、生涯安心というわけではありません。インプラントの周囲にプラーク(歯垢)がたまると、「インプラント周囲炎」という、歯周病に似た炎症を引き起こすことがあります。


このインプラント周囲炎は、自覚症状が出にくく、気づかないうちに炎症が進行してしまうのが特徴です。そのため、毎日の丁寧なケアが非常に重要です。


ワンタフトブラシは、インプラントの根元などの細かい部分をピンポイントで磨けるため、磨き残しを抑えるのにとても有効です。インプラントを長持ちさせるためにも、正しいセルフケアを続けていきましょう。


ワンタフトブラシの種類について


ワンタフトブラシは毛先の種類に若干違いがあります


1. 円錐型


円錐型

多くのワンタフトブラシに見られる毛先の形です。尖った部分が狭い部分に入り込み清掃してくれます。


2. 台形型


台形型

根本部分より先が太くなっている形状をしています。平面を磨くことに適したブラシです。


3. ドーム型


ドーム型

先端が丸くなっています。スウェーデンやスイスのワンタフトブラシにこのような形が多いです。


4. 筆型


ペリオブラシ

ペリオブラシとも呼ばれています。毛がとても柔らかく、毛がしなるくらいの力加減(20〜25グラム推奨)で優しく歯の周りに当てます。細いためブリッジのダミー歯の隙間部分にも入れることが可能です。


ワンタフトブラシだけで口の中全体を磨く方法がある!?


2011年の研究では、ワンタフトブラシと一般的な平面歯ブラシの清掃効果が比較されています。その結果、プラークの減少率はワンタフトブラシで63.9%、通常の歯ブラシでは56.9%と、ワンタフトブラシの方がより多くのプラークを除去できたという報告があります。


実際、通常の歯ブラシの代わりにワンタフトブラシを使って全体を磨く方法も存在します。ワンタフトブラシは細かい部分だけでなく、歯列全体の清掃にも対応できるため、プラーク除去効果においては非常に優れているといえます。


ただし、毛先の面積が小さい分、一度に磨ける範囲が狭く、通常の歯ブラシに比べて時間がかかってしまうというデメリットもあります。忙しい毎日の中で、その時間を毎日確保するのは現実的ではないかもしれません。


大切なのは、無理なく毎日継続できるケア方法を選ぶこと。そのため、基本は通常の歯ブラシで全体を磨き、ワンタフトブラシは補助的なケア用具として活用する方法が現実的かつ効果的と考えられます。



ワンタフトブラシの適切な使い方


1. フロス・歯間ブラシ→歯ブラシ→ワンタフトブラシの順で使用する


まずは、フロスや歯間ブラシを使って、歯と歯の間にたまったプラーク(歯垢)や食べかすを取り除きましょう。


これは、歯ブラシによるブラッシングの前に行うことで、歯みがき粉に含まれるフッ化物が歯間にも行き渡りやすくなるためです。また、フロスや歯間ブラシは後回しにすると忘れやすいため、最初に行うことをおすすめします。


その後、歯ブラシでお口全体を丁寧にブラッシングし、仕上げに細かい部分や磨き残しが気になる箇所を、ワンタフトブラシを使ってしっかり磨くのが理想的なケア方法です。


2. 毛先の硬さによって磨き方を変える


ワンタフトブラシは毛束が短く、比較的硬めの感触のものが多いため、大きく動かす必要はありません。細かく動かす、または歯面をなぞるように使うだけで、効率よくプラーク(歯垢)を除去できます。無理に大きくゴシゴシと動かすと歯ぐきを傷つける恐れがあるため、優しく、ゆっくりとした動きで使うのがおすすめです。


一方で、毛先が筆型になっているタイプのワンタフトブラシは、毛が柔らかいため、毛先が軽く曲がる程度の力で、ホウキではくようにやさしく動かしましょう。こちらも、ゴシゴシと強くこするような使い方は避けてください。


3. 力を入れすぎない


毛先が硬めのワンタフトブラシは、やさしく当てるだけでもプラーク(歯垢)をしっかり除去できます。そのため、力を入れすぎると歯ぐきや歯の表面を傷つけてしまうおそれがあるので注意が必要です。


持ち方のポイントは「ペンを持つように」。軽く握り、やさしく歯に当てて動かしましょう。


4.鏡で確認&染め出しを活用


ワンタフトブラシは、歯ブラシで全体を磨いた後の“仕上げ用”です。やみくもに磨いてしまうと、すでにキレイになっている部分まで再び磨いてしまい、時間も手間もかかってしまいます。


そこでおすすめなのが、染め出し液の活用です。プラークを色で“見える化”することで、どこに磨き残しがあるかが一目瞭然に。必要な部分だけを効率よく磨くことができ、時間の節約にもつながります。


5. ワンタフトブラシにも寿命がある


毛先の開いたブラシは、汚れを落としにくくなるだけでなく、歯や歯ぐきを傷つけてしまうことがあります。たとえ見た目に変化がなくても、長期間使用したブラシは毛が劣化し、雑菌が繁殖している可能性もあります。


使用後はよく洗って乾燥させ、湿気の少ない場所で保管しましょう。歯ブラシと同じく1か月を目安に交換するのが理想です。


なお、1か月も経たずに毛先が開いてしまう場合は、力の入れすぎかもしれません。一度、歯科医院で歯科衛生士によるブラッシング指導を受けてみると安心です。




まとめ


1. ワンタフトブラシが活躍する磨ける部分は、

「上の奥歯の外側と下の奥歯の内側」

「奥歯の後方部分」

「生えてきたばかりの歯と生えきっていない歯」

「歯が重なっている場所と歯と歯の間の空間」

「固定式の矯正装置(ブラケット装置)をしている箇所」

「ブリッジのダミー歯周囲とインプラントの周り」


2. ワンタフトブラシの種類は円錐型、台形型、ドーム型、筆型の種類がある。


3. ワンタフトブラシだけで口の中全体を磨く方法があるが、時間がかかるため、歯ブラシと併用するのが効果的。


4. ワンタフトブラシの適切な使い方として「フロスまたは歯間ブラシでプラークを除去し、歯ブラシで全体を磨き、ワンタフトブラシで細かい部分を仕上げる」「毛先の硬さによって磨き方を変え、力を入れすぎないように注意する」「鏡で確認し、プラークを染め出しして確認する。」「ワンタフトブラシにも寿命があり、交換は1ヶ月を目安に行う」がある。



この記事を書いた人



予防の歯科衛生士


かわべ歯科 歯科衛生士スタッフ



参考文献


1. 下田裕子. 最高のOHI. 株式会社ジーシー.2023.


2. Lee, Dong-Won, and Ik-Sang Moon. "The plaque-removing efficacy of a single-tufted brush on the lingual and buccal surfaces of the molars." Journal of Periodontal & Implant Science 41.3 (2011): 131-134.




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