子供のいびきを放置しないで!歯科医師が解説する「正しい眠り」と「あごの成長」
- 歯科医師 川邉滋次

- 2025年8月1日
- 読了時間: 7分
更新日:2月13日
▼目次

はじめに-子どものいびき、「良く眠れている」と思っていませんか?
「うちの子、いびきをかいて寝ているけれど、疲れているのかな?」「スースーと口を開けて寝ている姿がかわいい」……そんなふうに思われている親御さんも多いかもしれません。
しかし、実は「子どものいびき」は、体からの切実なSOSである可能性が高いのです。
現在、注目されている「睡眠負債」。睡眠不足が借金のように積み重なると、心身に深刻な悪影響を及ぼします。まずは適切な睡眠時間が確保できているかを知ることが大切です。

しかし、たとえ十分な睡眠時間を確保していても、いびきをかいていると脳や体は休めません。いびきがひどくなると「睡眠時無呼吸症候群(SAS)」の疑いが出てきます。脳が深く眠ろうとするたびに呼吸が止まって脳が覚醒してしまうため、深い眠りにたどり着けないのです。
こうなると、体は質の悪い睡眠を補おうとして無意識に長く眠ろうとします。その結果、「10時間も寝たのに疲れが取れない」という事態を招き、実質的な睡眠時間は大幅に不足したまま、成長ホルモンの分泌や脳の発育、集中力に悪影響を与えてしまいます。
実は、いびきをかく子の多くは「口呼吸」が習慣になっています。口呼吸が続くと、あごが正しく成長せず、結果として歯並びが悪くなってしまいます。原因である「呼吸」を改善せずに矯正治療だけを行っても、治療が長引いたり、あとで歯並びが戻ってしまったりすることもあります。
お子さんの将来の健康のために。私たちは「歯」をきれいに並べるだけでなく、その土台となる「睡眠と呼吸」を整えるお手伝いをしたいと考えています。
いびきはなぜ起こるの?
いびきは「酸欠気味の浅い眠り」のことです。
正常な睡眠状態は気道が塞がれることなく、十分な幅があるため、息がスムーズに通ります。その後、肺から全身・脳に十分に供給されるため、細胞の修復や代謝が行われて、疲労が回復し成長も順調に促されます。「寝る子は育つ」ということわざがありますが、睡眠は子どもの成長に必要です。
ところが、眠っている状態で、気道とよばれる息の通り道が何らかの原因で狭くなってしまうと、息が通る時に空気や軟組織がふるえていびきが発生します。酸欠の前段階で十分な酸素が供給されないため、眠りが浅くなり疲労が回復しにくくなります。
子供のいびきが要注意な理由
子供は疲れた時や、風邪などの体調不良の時はいびきをする場合があります。
しかし、日常いびきをかく場合は閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)という「寝ている時に気道が塞がり無呼吸が起こる症状」が考えられます。無呼吸は10秒以上呼吸をしていない状態です。
ここで、いびきと無呼吸の違いについて説明します。いびきは気道と呼ばれる空気の通り道が狭くなり、周りの組織が振動したり、狭い部分に高速の気流が流れるために起こる音です。無呼吸は舌などの沈下で気道が閉鎖されてしまい気道が確保できない状態です。この状態では呼吸することができないため無呼吸となります。

大人の場合この無呼吸症状が1時間あたり5回以上だと軽度、15回異常だと中等度、30回異常だと重度の睡眠時無呼吸と診断されます。一方、子どもの場合は1時間に1回でも軽度の睡眠時無呼吸と診断されます(重度は10回以上)
以下の症状がある場合には、閉塞性睡眠時無呼吸の可能性が考えられます。
いびきをかく日が週に5日以上ある
寝ている時に口を開けていることが多い
寝ている時に呼吸が止まる
寝相が悪い
寝汗をかく
何度も寝返りをうつ
よだれが出る
口臭がある
睡眠中にせきこむことが多い
食事時間が長いように感じる
肉や繊維質の野菜を食べにくそうにしている
いびきが激しく呼吸が途中で止まってしまう子供は、しっかりとした睡眠をとることができません。睡眠不足の子どもは成長ホルモンの分泌がうまくいかず、発育障害のリスクもあります。
小児の睡眠時無呼吸は、脳と体の酸素が不足することでIQ(知能指数)が最大20ポイント低下し、ADHD(注意欠如・多動性障害)のリスクは5倍上がる可能性があることが報告されています。
そのため、子供のいびきは早期の対策が必要と考えられます。
子供のいびきの原因は?
子供のいびきの原因の多くが扁桃腺が腫れて大きくなることによって気道が狭くなることです。
扁桃腺は児童〜学童期にかけてリンパの発達により異常に大きくなります。鼻やのどに関係する扁桃腺が肥大すると、空気の通り道を狭くしてしまいます。
そのため、鼻から呼吸が難しくなる、鼻詰まりが起きやすい等を引き起こします。
いびきに関係する扁桃腺は、口蓋扁桃(こうがいへんとう)と咽頭扁桃(いんとうへんとう)があります。
1. 口蓋扁桃(こうがいへんとう)
腫れていると口を開けた時に目で確認できる扁桃腺です。5〜7歳が大きさのピークで、小学生後半から小さくなります。

2. 咽頭扁桃(いんとうへんとう)

咽頭扁桃はアデノイドともよばれます。鼻の奥に存在する扁桃腺で、直接目で見ることはできません。3歳から大きくなり7〜8歳がピークです。10歳頃から次第に小さくなっていく傾向があります。
いびきは歯並びに影響するの?
いびきをかく子供は、鼻で呼吸ができず、口で呼吸してしまう傾向があります。

そのため口呼吸によって、「お口周りの筋肉へ悪影響を与える」「成長ホルモンの分泌が少なくなりあごの成長発達が悪くなる」「永久歯が並ぶスペースが不足する」などの歯並び異常をおこすことがあります。
小児のいびき対策は?
小児の閉塞性睡眠時無呼吸の治療として、扁桃腺(口蓋扁桃・アデノイド )が原因の場合は、薬で扁桃腺(口蓋扁桃・アデノイド)の腫れを抑える方法や、扁桃腺を切除する方法などがあります。
睡眠医療をおこなっている医療機関(医科)では、閉塞性睡眠時無呼吸の検査として自宅で可能な簡易検査と、1泊2日入院をして精密な検査をする睡眠ポリグラフ検査(PSG検査)を行なっています。

他にも軽度〜中等度の場合はオーラルアプライアンスとよばれるマウスピース型の装置を歯科医院で制作して装着したり、中等度以上の場合は CPAP療法を行うことがあります。
ただし小児の場合オーラルアプライアンスは歯の生え変わり等を考慮するため医科でも処方する機会は稀です。


成人の場合は軽度から中等度まではオーラルアプライアンス、中等度以上の場合にはCPAP療法があります。
日常よくいびきをかく場合には、睡眠科・小児科と歯科の連携が大切です。

睡眠時無呼吸はアメリカやヨーロッパでは肥満が多いのに対し、アジア人ではあごの成長不足や変形が原因となることが多いです。そのため、歯科では「上のあごを矯正装置で拡大する」「筋機能のトレーニング等を続けあごの育成をする」ことで、あごの成長を促して、いびきと歯並び・かみ合わせの対策をする場合があります。
まとめ
1. いびきは「酸欠気味の浅い眠り」である。
2. 子供のいびきは発育に影響する。
3. 子供のいびきにはのどの近くの扁桃腺が関係している
4. 子供のいびきは口呼吸に関わりがあり、歯並び異常につながることもある
執筆・監修者プロフィール
かわべ歯科(静岡県菊川市半済の歯科医院)
理事長 川邉滋次(歯科医師 日本睡眠学会所属 小児矯正・予防歯科)
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