子どものいびきと睡眠中の歯ぎしりが気になる方へ。いびき は歯並びに影響するの?

皆さんは「睡眠負債」という言葉を聞いたことがありますか?

この言葉は2017年に新語・流行語大賞トップ10に選ばれていました。


簡潔に説明すると、睡眠不足は積み重なってしまうため、どこかで睡眠不足を返さない限り体や心に悪影響が出てしまうというスタンフォード大学(アメリカ)の教授が提唱した言葉です。


2015年の国民健康・栄養調査によれば日本に居住している方の平均睡眠時間が、6時間未満の割合は20代で約37%、30代で約42%、40代で約47%、50代では約51%と米国国立睡眠財団の推奨している平均睡眠時間7〜9時間に達していない方も多くいます。


実は、大人だけでなく子どもも世界と比較して平均睡眠時間が少ないです。日本を含むアジア(中国、韓国、インド)の9〜18歳の子どもの平均睡眠時間はヨーロッパの子どもと比べて1日あたり1〜2時間短く、アメリカの子どもより40〜60分短いことが報告されています。


日本では対策として2013年に文部科学省が「中高生を中心とした子供の生活習慣づくり検討委員会」を設置、2014年に厚生労働省が「健康づくりのための睡眠指針2014」を発表し、子どもの睡眠習慣への支援を行なっています。


このように睡眠が注目されてきていますが、いびきや歯ぎしりが睡眠に影響することはご存知でしょうか?もちろんいびきや歯ぎしりの音がうるさくて周りの方の睡眠に影響していることもありますが、いびきをしている本人にも健康に悪い影響を与えること、そして子供のいびきは発育や歯並び等に影響することが報告されています。


今回はいびきと睡眠中の歯ぎしりについてお話ししていきます。



1いびきはなぜ起こるの?


いびきは「酸欠気味の浅い眠り」のことです。


正常な睡眠状態は気道が塞がれることなく、十分な幅があるため、息がスムーズに通ります。その後肺から全身に酸素を供給し、細胞の修復、疲労の回復、成長を促してくれます。「寝る子は育つ」ということわざがありますが、睡眠は子どもの成長に必要です。


ところが、眠っている状態で、気道とよばれる空気の通り道が何らかの原因で狭くなってしまうと、息が通る時に空気や柔組織がふるえていびきが発生します。空気が十分に入らない状態のため、眠りが浅くなる、疲労が回復しにくくなる、発育障害が起こるリスクがあります。


いびきをかくと苦しくなり、何回も覚醒が起き、眠りが浅くなります。

眠りが浅い時に起こりやすいのが歯ぎしりです。


この歯ぎしりが起こる原因は色々な説がありますが、

①気道が狭いので呼吸が苦しくなる

②下あごを前に出して気道を大きくさせる

③呼吸が楽になる

④下あごが元の位置に戻る

⑤気道が狭いので呼吸が苦しくなる

と繰り返し行われることによって発生するのではないかと考えられています。


歯ぎしりが起こると歯がすり減るだけでなく、歯が割れる、詰め物が取れるなどのリスクがあります。



2こどものいびきが要注意な理由


こどもは基本的にいびきをしません。疲れた時や、風邪などの体調不良の時はいびきをする可能性はありますが、日常いびきをかく場合は要注意です。


いびきが激しく呼吸が途中で止まってしまう子どもは、しっかりとした睡眠をとることができません。睡眠不足の子どもは成長ホルモンの分泌がうまくいかず、発育障害となる恐れもあります。


他にも夜尿症(おねしょ)、落ち着きがなくなる、口呼吸になりのどが乾燥するなどの症状が出る場合があります。



3子どものいびきの原因は?


子どものいびきの原因の多くが扁桃腺です。

扁桃腺は児童〜学童期にかけてリンパの発達により異常に大きくなります。

鼻やのどに関係する扁桃腺は空気の通り道を狭くしてしまいます。


そのため、鼻から呼吸が難しくなる、鼻詰まりが起きやすい等を引き起こします。


いびきに関係する扁桃腺は、口蓋扁桃(こうがいへんとう)と咽頭扁桃(いんとうへんとう)があります。




①口蓋扁桃

腫れていると口を開けた時に目で確認できる扁桃腺です。5〜7歳が大きさのピークで、小学生後半から小さくなります。


②咽頭扁桃

咽頭扁桃はアデノイドともよばれ鼻の奥に位置する扁桃腺です。小学生低学年で肥大することがあり、気道を狭くさせ、いびきの原因になることがあります。また鼻呼吸をしにくくなるため、口呼吸になりがちになり、あごの成長に悪影響を与え、歯並びを悪くさせる恐れがあります。
咽頭扁桃

咽頭扁桃はアデノイドともよばれます。鼻の奥に存在する扁桃腺で、直接目で見ることはできません。3歳から大きくなり7〜8歳がピークです。10歳頃から小さくなります



4子どものいびきは歯並びに影響するの?


いびきをかく子どもは、鼻で呼吸ができず、口で呼吸してしまう傾向があります。


そのため口呼吸によってお口周りの筋肉へ悪影響を与える、成長ホルモンの分泌が少なくなり、あごの成長発達が悪くなる、大人の歯が並ぶスペースがなくなるなどの歯並び異常をおこすことがあります。



5子どものいびきの対策は?


日常よくいびきをかく場合には、まず耳鼻咽頭科に相談をしてください。


薬を飲んで、扁桃腺の腫れを抑える方法や、扁桃腺を切除する方法などがあります。


歯科の領域でも、上のあごを矯正装置で拡大する、筋機能のトレーニング等を続けて行うことによっていびきの対策になる場合があります。


そのまま何もしない方法は子どもの睡眠に悪影響を及ぼすことがあります。


もしこの記事を読んで子どものいびきが気になった方は、子どもが寝ている時に一度チェックしてみてください。



まとめ


① いびきは「酸欠気味の浅い眠り」である。


② 浅い眠りによって歯ぎしりが起こりやすくなる。


③ 子どものいびきは発育に影響する。


④ 子どものいびきにはのどの近くの扁桃腺が関係している


⑤ こどものいびきは口呼吸に関わりがあり、歯並び異常につながることもある


この記事を書いた人


静岡県菊川市のかわべ歯科院長兼理事長で歯科医師の川邉滋次です。

医療法人社団 統慧会 かわべ歯科 理事長 川邉滋次


参考文献

Fuligni AJ, Bai S, Krull JL, Gonzales NA. Individual Differences in Optimum Sleep for Daily Mood During Adolescence. J Clin Child Adolesc Psychol. 2019;48(3):469-479. doi:10.1080/15374416.2017.1357126


②Tan HL, Gozal D, Kheirandish-Gozal L. Obstructive sleep apnea in children: a critical update. Nat Sci Sleep. 2013;5:109-123. Published 2013 Sep 25. doi:10.2147/NSS.S51907


③Caprioglio A, Levrini L, Nosetti L, Berini J, Macchi A, Tagliabue A, Tettamanti L. Prevalence of malocclusion in preschool and primary school children with habitual snoring and sleep-disordered breathing. Eur J Paediatr Dent. 2011 Dec;12(4):267-71.

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