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トラブルに巻き込まれないためにも知っておきたい歯科衛生士と歯科助手の違い

更新日:5月28日

はじめに-歯科衛生士と歯科助手は具体的に何が違うの?


歯科衛生士

歯科医院に行くとよく耳にする「歯科衛生士」と「歯科助手」。一見似ているように思えますが、実は仕事内容や役割、資格の面で大きな違いがあります。


歯科衛生士は国家資格を持ち、患者さんの口腔ケアや予防処置を専門的に行う医療従事者。一方、歯科助手は資格がなくても働けることが多く、診療の準備や器具の片付け、患者さんの案内など、医院のサポート役として大切な役割を担っています。


この記事では、両者の具体的な違いやそれぞれの仕事の魅力について詳しくご紹介します。これから歯科業界で働きたいと考えている方や、歯科医院に通う患者さんにもぜひ知っておいてほしいポイントです。


歯科衛生士法違反年表

一方で、歯科関係の資格に関する事件も出てきています。この10年間で5件の資格違反があり、静岡県でも発生しています。2025年にも同様の事件が起こっていることから、今後もこのような事件は起きる可能性があると考えられます。


歯科医院に歯科衛生士として、または歯科助手として勤めた際に、「院長先生に指示されたから拒否できなくて‥」、「先輩にやってと言われたから大丈夫だと思って‥」といって業務の枠を越えた歯科診療をしてしまうと罪に問われます。知らなかったでは済まされません。


これから歯科医院に勤めようとしている歯科衛生士さんや歯科助手さんが思わぬトラブルに巻き込まれないようにするためにも、注意喚起として読んでいただけたら幸いです。


▼目次



歯科衛生士はどんな資格?どういうお仕事?


歯科衛生士は、歯科衛生士法により免許が与えられている国家資格です。


そのため、歯科衛生士免許を所得するには、3年以上歯科衛生士学校(大学では4年制)に通学し、年に1回行われる国家試験に合格することが必要です。


歯科衛生士の主な業務には、「歯科診療補助」「歯科予防処置」「歯科保健指導」があります。



歯科衛生士の業務

1. 歯科診療補助


歯科治療が安全・円滑に進むように診療を補助します。歯科医師のパートナーとして患者さんに安心して診療を受けていただけるように、全身状態にも配慮しながら治療のサポートを行います。


2. 歯科予防処置


お口の中が健康な状態を維持できるように、歯周病やむし歯の予防に取り組みます。歯や歯茎の状態をチェックし、歯石の除去したり、歯にフッ化物を塗ります。近年増えているパウダーメインテナンス(エアフロークリーニング)はこの歯科予防処置に該当します。


3. 歯科保健指導


年齢や環境に応じた生活習慣や食生活などの指導を通じて、お口の健康をサポートします。

保育所や幼稚園、小学校などで、歯磨きの方法などを指導する他、歯科医師と連携し、在宅や施設での歯科保健医療を担当します。


また、介護老人保健施設など、高齢者が利用する施設では、口腔ケアや食べる機能のリハビリテーションを行います。


歯科衛生士免許取得後の進路は、歯科診療所や病院の歯科口腔外科などに勤務する人だけでなく、老人福祉施設でお口のケアを担当したり、保健所や市町村保健センターで地域の保健業務に従事したりすることもあります。さらに、歯科衛生士学校で教師として働いたり、歯科材料メーカーなど歯科関連企業で研究や開発、商品説明やセミナーを開催する方もいます。


歯科助手はどんな資格?どういうお仕事?


歯科助手には特定の資格や免許が必要ではありません。実際には、歯科助手という名称自体が法的なものではなく、医療施設調査などでは「歯科業務補助者」と記載されます。


歯科助手の主な仕事には、医院の清掃や器具の片付け、滅菌作業、患者さんの案内、受付業務、連絡業務などが含まれます。


歯科器具の準備、診療の補助など歯科助手はできるの?


滅菌器


歯科医院の受付や電話や歯科材料の保管、歯科治療の準備、器具の消毒・滅菌に関しては、歯科衛生士、歯科助手共通して業務範囲です。


診療時に使用される水や患者さんの唾液を吸引するためのバキュームに関しては、歯科衛生士は問題なく行えますが、歯科助手については「法的には一応可能とされているとしても、現状のままでは不十分と思われる」という見解があります。つまり、歯科助手がバキュームを使用する場合、より専門的な知識や技術を持つ歯科衛生士や歯科医師の指導や監督が望ましいと考えられます。


レントゲンの撮影は歯科衛生士や歯科助手ができるの?

レントゲン装置

レントゲン装置の準備や患者さんの位置づけに関しては歯科衛生士・歯科助手共に業務範囲として法的に問題はありません。


しかし、レントゲン装置の撮影、つまり照射ボタンを押す行為は歯科医師のみと定められていますので、歯科衛生士や歯科助手が行うことは診療放射線技師法第24条により法律違反となります。


また位置づけでも「デンタルエックス線撮影」とよばれるお口の中に小さなフィルムを入れて撮影する場合、患者さん自身にフィルムを固定してもらう場合があるのですが、その時の患者さんへの指示において歯科衛生士は可能であっても歯科助手は行うことはできません。


歯石取りや検査などを歯科助手が行うことはできるの?


歯科衛生士はお口の中の検査(歯周病や汚れの具合など)や歯石取り、シーラント(歯の溝に封をする)、フッ化物塗布などは歯科衛生士法第2条で業務に定められています。


歯科助手の場合上記の業務はお口の中を触れること自体が法律によりできません。


ただし、お口の中の状況を説明する、患者さんへのブラッシング指導などは、歯科医師の指示があれば歯科助手も可能な場合があります。


歯科衛生士、歯科助手どちらもできない業務はあるの?


むし歯を削る治療、神経を取る根の治療、麻酔の注射、歯を抜くなどの外科手術など、歯科医師の治療業務に関するものは歯科医師法第17条によって禁止されていることが多いと考えられます。しかし、詰め物の装着や磨き上げなどは歯科衛生士ができる場合があります。


当院では歯科衛生士が診療室内の歯科衛生士業務、歯科助手は受付・滅菌と業務を分離しています。確かに歯科助手が診療室内でもできる業務はあるかと思います。しかし、このようにはっきりと仕事の線引きをすることで、歯科助手の方がうっかり衛生士業務を行ってしまったというミスを予防できますし、法律を守っているという環境の中であればスタッフが仕事に集中しやすいと考えています。極端かもしれませんが、「当たり前のことを当たり前に行う」ことが何よりも患者さんへ安心を提供するためには良い方法ではないかと信じております。



まとめ


1. 歯科衛生士の業務は「歯科診療補助」「歯科予防処置」「歯科保健指導」がある。


2. 歯科助手は医院の清掃や器具の片付け、滅菌、患者さんの誘導、受付、連絡業務などの仕事がある。


3. レントゲン装置の準備や患者さんの位置づけに関しては歯科衛生士・歯科助手共に業務範囲として法的に問題はないが、レントゲンの撮影は法律違反となる。


4. 歯科衛生士はお口の中の検査や歯石取り、シーラント、フッ化物塗布などは業務に定められているが、歯科助手は法律によりできない。


誤解をして欲しくないのは、歯科助手は免許を持っていないから悪いということではない点です。むしろ、歯科助手の方々は歯科医院になくてはならない存在です。

実際、当院でも歯科助手さんの業務やサポートのおかげで毎日スムーズな診療ができて助かっております。


私の見解にはなりますが、歯科医師、歯科衛生士、歯科助手(医院によっては技工士)が1つのチームとなってそれぞれ法律の範囲内で得意な仕事ができる環境があれば医院はより成長していくと考えています。いつも私をサポートしてくれるスタッフのメンバー達には感謝しております。



この記事を書いた人


歯科医師

医療法人社団 統慧会 かわべ歯科 理事長 川邉滋次


小児矯正と予防歯科から「先進の正しい医療情報を取り入れアウトプットしていく」

「お口の中の病変を原因から考える歯科医療の提案」を行っております。


参考文献


1. 歯科衛生士法(1948年・2014年改正)


2. 厚生労働省:平成28年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況.

 https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/eisei/16/


3. 山田隆文:日本の歯科衛生士の現状と未来 目白大学短期大学部研究紀要

56号57-70(2020年)The present and the future of the dental hygienists.

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