エアフロークリーニング:予防歯科先進国で一般的な歯科メインテナンスをご存知ですか?
- 歯科医師 川邉滋次

- 5月7日
- 読了時間: 7分
更新日:8月7日
はじめに-もう歯科医院でエアフロークリーニングを試しましたか?
▼目次

エアフロークリーニングとは、 歯科医療で使用される先進的なクリーニング方法の一つです。圧縮空気と微細なパウダー、水を同時に噴射し、歯の表面や歯周ポケット内の汚れを効率的に除去します。
「ジェットクリーニング」「パウダークリーニング」「エアアブレーション」とも呼ばれ、むし歯や歯周病の予防・改善に効果的な方法として注目されています。
エアフロークリーニングとは?
エアフロークリーニングとは、圧縮空気でパウダーを歯に吹き付ける装置を使用したクリーニング方法です。同時に水を噴射することで粉の飛散や詰まりを防ぎます。
従来の歯のクリーニングに比べて歯を傷つけにくく、効率的に汚れを落とすことが可能です。高圧で噴射された微細なパウダーが歯周ポケット内のバイオフィルムや細菌を物理的に除去します。

エアフロークリーニングは特に、歯周病に悩む方に有効なメンテナンス法です。歯ぐき内部のプラークをしっかり除去することで、歯周病の進行を防ぐ効果が期待されます。
臨床研究でも、毎月のエアフロークリーニングにより歯周病菌の減少と歯周病の改善が確認されています。
歯周ポケット内ではバイオフィルムが細菌を保護し、免疫や抗菌薬では排除が難しいため、物理的な除去が必要です。その効率的な方法としてエアフロークリーニングが注目されています。特に予防歯科が進んでいる北欧では、標準的なメンテナンス法として広く導入されています。
過去にもエアフロークリーニングは存在していた?
エアフロークリーニングは近年進化した技術ですが、起源は2000年頃にさかのぼります。当初はむし歯の切削や着色除去が主な目的でした。
むし歯の切削では「酸化アルミナ」パウダーを使用し、回転切削器具より痛みが少なく処置が可能です。また「バイオガラス」は知覚過敏や初期むし歯の予防にも利用されました。
着色除去には「重炭酸ナトリウム」「炭酸カルシウム」などのパウダーを使い、歯の表面の着色を効率的に落としますが、口腔内でのザラつきや塩辛さ、不快感、使用制限が課題でした。
高血圧や塩分制限のある方など、一部の患者では使用できない欠点もありました。
エアフロークリーニングが海外の歯科で一般的になった理由
過去の問題点を克服し、近年エアフロークリーニングが海外で広く普及した理由は「パウダーの進化」にあります。
1. 水で溶ける
グリシン、エリスリトール、トレハロースなどの水溶性パウダーが登場し、施術後の不快なザラつきが減少しました。そのため快適にクリーニングを受けられるようになりました。
2. 甘み
水溶性パウダーは優しい甘みがあり、使用感も向上。安全性も高く、口腔内で安心して使えます。
<グリシン>
アミノ酸の一種で静菌作用があり、食品にも使われます。歯ぐきの上や内部にも安全に使え、子どもにも抵抗がない優しい甘みがあります。
<エリスリトール>
糖アルコールの一種で、カロリーがほとんどなくむし歯の原因になりにくい甘味料です。抗菌作用でプラークを減少させます。
<トレハロース>
自然界に存在する二糖類で、グルコースが結合したものです。粒子サイズは大きめですが水溶性で安全です。
エアフロークリーニングの良い点
1. 歯や歯ぐきへの負担が少ない
エアフローの大きなメリットの一つは、その「優しさ」です。従来のスケーリング(超音波を使用して汚れを取り除く方法)では、歯に直接触れるため、敏感な方は痛みやしみる感覚を感じることが多いですが、エアフローは歯に優しく、痛みを感じることが比較的少ないです。また、知覚過敏を持っている人でも、エアフローを使用した場合、痛みを感じにくいとされています。
2. むし歯・歯周病の予防と改善が期待できる
エアフロークリーニングと従来のクリーニング(PMTC-ブラシなどを使った機械的クリーニング)は、虫歯や歯周病の原因となるバイオフィルムを除去できる点で共通しています。しかし、エアフローは小窩裂溝(しょうかれっこう)と呼ばれる歯のかみ合わせ面の深い部分や、矯正装置が歯に接着している状態、一部だけ見えている親知らず(半埋伏智歯)、被せ物や詰め物の境目、歯の根本部分、歯並び異常(凸凹)など、従来のクリーニングでは届きにくかった部位にもアプローチできるため、よりむし歯や歯周病の予防と改善が期待できます。

3. 着色汚れに対しても高い除去効果が期待できる
タバコのヤニやお茶、コーヒーなどによる着色汚れに対しても高い除去効果が期待できます。

4. 不快な音や振動が少ない
歯科医院で不快と感じる理由の一つに「音」と「振動」があります。エアフロークリーニングは、キーンという機械の回転音がなく、歯に直接触れずに清掃を行うため、振動を感じることもありません。
エアフローメインテナンスのデメリットと注意点
エアフロークリーニングは安全性が高く快適な清掃方法ですが、欠点として「使用できない症例」「使用上注意した方が良い症例」「粉の種類による禁止症例」「処置後の注意事項」が存在することが挙げられます。
1. エアフロークリーニングが使用できない症例
ぜんそくなどの呼吸器系の病気がある方
アレルギー・過敏症体質のある方
お口の中にケガや骨の異常のある方
2. エアフロークリーニングを使用上注意した方が良い症例
妊娠中および授乳中の方
妊娠中や授乳中の方は歯ぐき周りのポケット内の清掃はできませんが、歯の表面のクリーニングは可能です。
重度の歯周病がある方
3. 粉の種類による禁止症例
高血圧・高ナトリウム血症などのナトリウム摂取制限がある方
→炭酸水素ナトリウムパウダーが使用できません
香料成分(シトラス・ミントなど)にアレルギーがある患者
→炭酸水素ナトリウムパウダーが使用できない場合があります
歯の表面(エナメル質)にむし歯や損傷部位がある・エナメル質形成不全
→トレハロースが使用できない場合があります
4. 処置後の注意点
処置後すぐに喫煙や色素沈着しやすい飲食は控える
処置後、歯の表面は清掃で汚れが除去されており、色素が沈着しやすい状態です。術後2時間は喫煙や色素沈着のしやすい飲食は控えるようにしてください。
エアフロークリーニングは歯科での定期的な施術が大切
エアフロークリーニングは、歯周病の予防だけでなく、全体的な歯の健康を保つためにも重要です。歯周病が進行している方は、少なくとも3ヶ月に1回のペースでエアフロークリーニングを受けることをおすすめします。それによって、歯周ポケット内の細菌を効果的に除去でき、歯周病の進行を防ぐことができます。
また、3ヶ月ごとのクリーニングだけでなく、歯周病がかなり進行している場合は、月に1回のペースでクリーニングを行うことが推奨されています。
まとめ
1. エアフロークリーニングは圧縮空気で粉を歯に吹き付ける方法。
2. エアフロークリーニングは歯周病予防に有効で、歯周ポケット内の細菌を除去する。
3.使用される水溶性パウダーは、吹き付け時に痛みや不快感を軽減する。
4. 歯や歯ぐきに優しく、知覚過敏のある人にも安心できる清掃法
5. むし歯や歯周病の予防、着色汚れの除去に効果的
6. 粉の進化で甘みがあり、快適に施術が可能。
7. 定期的な施術が重要で、歯周病の進行防止に役立つ
エアフロークリーニングは、歯周病の予防や改善に非常に効果的であり、痛みが少ないため、敏感な方にも安心して受けられるクリーニング方法です。定期的にエアフロークリーニングを受けることをお勧めします。
この記事を書いた人

かわべ歯科院長 歯科医師 川邉滋次
参考文献
1.佐藤かおり, et al. "噴射切削装置 Whisper-jet (KCP1000) の臨床応用に関する研究 第二報 人工的に軟化させた象牙質に対する噴射切削効果." 日本歯科保存学雑誌 43.2 (2000): 547-554.
2.Bühler, J., et al. "A systematic review on the effects of air polishing devices on oral tissues." International journal of dental hygiene 14.1 (2016): 15-28.
3.Barnes, Caren M., et al. "An in vitro comparison of the effects of various air polishing powders on enamel and selected esthetic restorative materials." J Clin Dent 25.4 (2014): 76-87.
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