子供の奥歯にツノの様な突起!? 放置厳禁!中心結節が折れた時のリスクと予防
- 歯科医師 川邉滋次

- 9月9日
- 読了時間: 7分
更新日:9月10日
はじめに-子供の歯に出るツノ状の突起、中心結節とは!?
▼目次

中心結節とは、奥歯のかむ面の中央に「ツノ」のように突き出した小さな突起(出っ張り)ができる、歯の形態異常の一つです。

特に子供の下あごの小臼歯に比較的よく見られ、11〜12歳ごろに生え始める下あごの第二小臼歯(前から5番目の奥歯)で最も多く確認されます。また、第一小臼歯(前から4番目)でも一定の割合で発現します。
2015年にネパールの歯学部で行われた研究では、下あごの第二小臼歯での発生率は1〜4%程度と報告されています。また、日本・中国・フィリピンなどアジア系の人に多い傾向があるとも言われており、2020年の研究では北インドの集団で7.7%という高い報告もあります。
日本の古いデータになりますが、1984年に岩手医科大学附属病院の歯型模型を調査した結果では、下あごの第二小臼歯で約2.5%、第一小臼歯で0.6%程度の発生率が報告されています。
この中心結節は、見た目の特徴だけでなく、歯のトラブルを引き起こす場合もあります。なぜ問題になるのか、これから詳しく解説していきます。
なぜ「歯のツノ」に注意が必要なのか!?中心結節が折れるリスクと将来のトラブル

中心結節は、歯が作られる過程でかみ合わせる面が過剰に発達して「ツノ」「突起」「ポッチ」のような出っ張りができることが原因です。見た目は小さい盛り上がり程度でも、内部には細く伸びた神経が近接している場合が多いです。このため、硬いものをかんだりかむ力が強く加わったりすると、この突起が折れてしまいやすいという問題があります。
特に、生えたばかりの時期は、歯がまだ柔らかく完全に硬くなっていないため、衝撃で折れやすいのが特徴です。折れて中の神経が露出すると、痛みや「しみる」感覚、むし歯のような症状が出たり、細菌感染を起こすリスクが高まります。感染が進むと歯の根の内部に炎症が広がり、急性の強い痛みだけでなく、数年後に歯ぐきが腫れて膿がたまる(根尖性歯周炎)など、慢性的なトラブルを引き起こす可能性もあります。
こうした感染や炎症が起こると、最終的には神経を取る「根管治療(歯の根っこの治療)」が必要になることがあります。しかし、子供の歯は根がまだ成長途中なので、この段階で神経を取ってしまうと根の成長が止まり、歯の寿命が短くなるリスクもあります。
このような将来のリスクを避けるためには、子供の奥歯に「真ん中にツノがある」「かむ面に突起がある」「とがっている」などを見つけたら、「歯が変な形をしている」「出っ張りがある」など気づいたままを伝えて、早めに歯科医院で相談することが大切です。
中心結節が折れるのを未然に防ぐための歯科医院での処置とは?
歯科医院では、破折を防ぐために樹脂で突起の周囲を覆い補強したり、かみ合わせに支障がないように少しずつ削って形を調整する処置を行います。
1. 樹脂で突起の周囲を覆い補強する

コンポジットレジンという歯科用の白い樹脂材料で突起の周囲を覆って、細い突起部分を周りから補強する方法です。歯を削るなどの処置はないため、歯にダメージを与えにくく治療の第一選択肢として行われる方法です。
この際、ラバーダム防湿など周囲から唾液や湿気が入らない環境で処置を行なった方が、細菌が材料内部に残るリスクを減らせるため、当院ではその準備を行ってから処置を行なっています。
2.少しずつ削って形を調整する
この少しずつ削る方法は、痛みを抑えながら内部に新しい象牙質を作らせ、神経を深い位置に下げる「二次象牙質形成」を促します。これにより、将来的に摩耗しても神経が露出しにくくなるため、痛みや感染を予防できます。この方法は来院回数が多くなるだけでなく、歯を削った刺激によって歯の神経が炎症を起こすリスクもあるため、当院では基本的に行いません。
すでに欠けてしまった「歯のツノ」は放置せず早めに歯科へ
もしすでに「折れた」「欠けた」「ヒビが入った」状態で生えてきた場合も、放置すると神経が細菌に感染するリスクがあります。
こうした状態になると、見た目は健康な歯に見えるのに、実際には内部で神経が失われていたというケースも少なくありません。気づかずに過ごしていると、ある日突然、歯ぐきが腫れたり、かむと違和感を感じるようになったりして初めてトラブルに気づくことがあります。
中心結節が欠けたり折れたりした場合は、痛みがなくても歯科医院で診てもらうことが大切です。早めの処置で、神経を守ったり、将来的なトラブルを防ぐことができます。
見た目ではわかりにくいことも多いため、痛みや腫れがないか歯科で診察を受け、必要に応じてレントゲンで内部を確認することが重要です。レントゲンは根の先に膿がたまっていないか、炎症が広がっていないかを早期に発見するためにも役立ちます。
また、こうした突起の周囲は汚れがたまりやすいため、プラークがつきやすく虫歯や歯肉炎のリスクも高まります。折れた部分が鋭利になり、舌や頬を傷つけるなど日常生活でのトラブルも考えられます。
中心結節は保護者の方だから気づける異変です
保護者の方は特に、小学校高学年ごろの「乳歯が抜けて大人の歯が生え始める時期」に奥歯をよく観察してください。下顎の第1・第2小臼歯は、犬歯と6歳臼歯の間に生える大人の歯で、特にこの中心結節(ツノ、突起、出っ張り)が出やすい場所です。ちょうど仕上げ磨きを卒業し始める時期ですが、まだ子供さん自身では磨き残しに気づきにくいため、保護者のチェックがとても大切です。
もし「奥歯にツノみたいなのがある」「真ん中に突起がある」「かむ面がとがっている」など気づいたら、症状が無くてもかかりつけの歯科医院で相談すれば、適切な診断と予防処置を受けられます。その際はツノを削る治療ではなく、ツノの周りに歯科材料を詰める治療を要望していただけたら幸いです。
お子さんのお口の中は成長とともに変わっていきます。中心結節は珍しい症状ですが、折れてしまうとその後の歯の健康や将来の治療計画に大きな影響を及ぼす可能性があります。だからこそ「見つけたら放置せずに早めの受診」が大切です。
定期検診を通じて痛みや腫れがないか、レントゲンで内部の異常がないかをしっかり確認し、子供の歯を長く健康に保ちましょう。保護者の方の気づきと早めの対応が、お子さんの将来の大きなトラブルを未然に防ぐ第一歩になります。
まとめ
1. 中心結節は奥歯のかむ面中央にできる「ツノ状の突起」で、下顎の第2小臼歯に多くアジア系で発生率が高いと報告されている。
2. 内部に神経が近付いている場合が多く、生えたては歯が柔らかいため硬いものを噛むと折れやすく、痛みや感染の原因になります。
3. 折れると神経が露出し細菌感染や根尖性歯周炎を起こしやすく、根管治療が必要になり歯の寿命を縮めるリスクがあります。
4. 歯科医院では突起を樹脂で補強したり形を調整して破折を予防し、早期発見・処置で神経を守り将来のトラブルを防ぎます。
5. 小学校高学年の仕上げ磨き卒業期の子供は保護者の観察が大切で、歯のツノや突起に気づいたら早めに歯科医院で相談することが大切です。
この記事を書いた人

静岡県菊川市 かわべ歯科院長 川邉滋次
参考文献
1. Ayer, A., M. Vikram, and P. Suwal. "Dens evaginatus: a problem‐based approach." Case reports in dentistry 2015.1 (2015): 393209.1.
2. 守口修, et al. "中心結節の出現状況について." 岩手医科大学歯学雑誌 9.1 (1984): 16-23.
3. Arora, Preeti Chawla, et al. "Dens evaginatus: a diagnostic dilemma." SRM Journal of Research in Dental Sciences 11.1 (2020): 46-49.
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