歯がしみる原因7つ|むし歯との見分け方と知覚過敏の治療法
- 歯科医師 川邉滋次

- 7月14日
- 読了時間: 13分
▼目次
はじめに-歯がしみるのは危険信号?その正体は知覚過敏かもしれません

「歯がしみる」と感じたことはありませんか?
アイスや冷たい飲み物を口にしたときに「キーン」とした痛みを感じたり、歯ブラシが当たったときに歯がしみたりする方は少なくありません。
このような症状の原因の一つが「知覚過敏」です。
知覚過敏とは、冷たいものや甘いもの、歯ブラシなどの刺激によって、一時的に鋭い痛みを感じる状態です。研究によって割合には差がありますが、多くの人が生涯のうちに一度は経験するとされています。
近年は歯科医療の進歩によって歯の寿命が延び、高齢になっても自分の歯を保てる人が増えています。その一方で、加齢や歯周病などによって歯ぐきが下がり、歯の根元が露出することで、「歯がしみる」と悩む人も増えています。
また、健康のためにお酢や乳酸菌飲料などの酸性飲料を頻繁に摂取する習慣も、歯の表面を弱くし、知覚過敏を引き起こす原因の一つになることがあります。
ただし、歯がしみる原因は知覚過敏だけではありません。むし歯や歯のヒビ、詰め物の不具合などが隠れている可能性もあります。
この記事では、「歯がしみる原因」「むし歯と知覚過敏の違い」「自宅でできる対策」「歯科医院での治療法」について、わかりやすく解説します。
「歯がしみて困っている」「どのように対処したらよいのかわからない」という方は、ぜひ参考にしてください。
歯がしみるのはむし歯?それとも知覚過敏?
「歯がしみる=むし歯」と考える方も多いかもしれませんが、むし歯と知覚過敏は異なります。
むし歯は、細菌がつくる酸によって歯が溶かされ、歯の組織が失われていく病気です。
一方、知覚過敏の正式名称は「象牙質知覚過敏症」といい、冷たいものや甘いもの、歯ブラシなどが歯に触れた際に、一時的な鋭い痛みを感じる状態を指します。
知覚過敏では、むし歯のような穴や細菌感染が確認できないにもかかわらず、露出した象牙質を通じて刺激が歯の神経に伝わることで痛みが起こります。
冷たいものが触れたときだけ一時的にしみ、刺激がなくなるとすぐに治まる場合は、知覚過敏の可能性があります。
一方で、次のような症状がある場合は、むし歯や歯の神経の炎症、歯のヒビなどが原因の可能性があります。
・何もしていなくても痛む
・夜間にズキズキと痛む
・刺激がなくなっても痛みが続く
・かむと強く痛む
・特定の歯だけが強くしみる
歯がしみる原因を症状だけで正確に見分けることは難しいため、自己判断せず、歯科医院で原因を確認してもらいましょう。
歯がしみる仕組み

健康な歯では、外側にある硬いエナメル質が、その内側の象牙質を守っています。
しかし、歯のすり減りや酸によるダメージ、歯ぐきの退縮などによって象牙質が露出すると、外部からの刺激が歯の神経に伝わりやすくなります。
象牙質には、「象牙細管」と呼ばれる無数の細い管があります。冷たいものなどが歯に触れると、象牙細管の中にある液体が動き、その変化が歯の神経に伝わることで、「キーン」とした鋭い痛みが起こると考えられています。
特に歯の根元はエナメル質で覆われていないため、歯ぐきが下がると象牙質が露出しやすく、知覚過敏が起こりやすい部位です。
歯がしみる7つの原因
1.歯ぐきが下がる「歯肉退縮」
加齢や歯周病、強すぎるブラッシング、歯並び、矯正治療などによって歯ぐきが下がることがあります。
歯ぐきが下がると、これまで歯ぐきに覆われていた歯の根元が露出します。
歯の根元はエナメル質で覆われていないため、象牙質に刺激が伝わりやすくなり、冷たいものや歯ブラシでしみる症状が起こりやすくなります。
2. NCCL(非う蝕性歯頸部病変)

NCCLとは、むし歯以外の原因によって、歯と歯ぐきの境目付近が欠けたり、すり減ったりする状態です。
強すぎるブラッシングや酸性飲食物の影響、かみ合わせによって歯に加わる力など、複数の要因が関係していると考えられています。
歯の根元が削れたり欠けたりして象牙質が露出すると、知覚過敏の症状が起こりやすくなります。
3. 歯のヒビや破折
転倒や衝突などで歯をぶつけたり、硬いものをかんだりすると、歯に細かなヒビが入ることがあります。
また、歯ぎしりや食いしばりによって、少しずつ歯に負担がかかり、ヒビが生じる場合もあります。
ヒビから刺激が歯の内部に伝わると、冷たいものがしみたり、かんだときに痛みを感じたりすることがあります。
4. Tooth Wear(歯のすり減り)
Tooth Wearとは、むし歯以外の原因によって歯の表面がすり減ることです。
主な原因には、次のようなものがあります。
歯ぎしりや食いしばり
強すぎるブラッシング
歯の表面がすり減って象牙質が露出すると、冷たいものや甘いものがしみやすくなります。
5. 歯科治療や歯石除去後
むし歯の治療で神経を残したまま歯を削った後は、一時的に歯が刺激に敏感になることがあります。
また、歯石を除去した後に、歯石で覆われていた歯の根元が露出し、冷たいものがしみることもあります。
多くの場合は時間の経過とともに改善しますが、痛みが強い場合や長期間続く場合は、治療した歯科医院へ相談してください。
6.詰め物・被せ物の不具合
詰め物や被せ物と歯の間にすき間ができていると、冷たいものなどの刺激が歯の内部に伝わりやすくなります。
また、詰め物の下でむし歯が再発していたり、かみ合わせが強く当たっていたりする場合にも、しみる症状が起こることがあります。
金属製の詰め物や被せ物は熱を伝えやすいため、治療直後に一時的なしみを感じることもあります。
7. ホワイトニングやプール水の影響

ホワイトニング後は、薬剤の作用によって歯の内部に刺激が伝わりやすくなり、一時的に知覚過敏が起こることがあります。
通常は一時的な症状ですが、しみる症状が強い場合は、ホワイトニングの使用頻度や薬剤の濃度などを調整する必要があります。
また、競泳選手など、長時間にわたってプールを利用する人では、プール水の水質や管理状態によって歯の表面が影響を受け、歯の酸蝕や知覚過敏につながる可能性が報告されています。
一般的な頻度でプールを利用するだけで、直ちに知覚過敏が起こるわけではありません。
歯科医院での知覚過敏治療
知覚過敏の治療では、まずむし歯や歯のヒビ、歯の神経の炎症など、ほかの病気がないかを確認します。
そのうえで、症状や原因に応じて、主に次のような治療を行います。
・神経の反応をやわらげる
・薬剤で象牙質表面を処理する
・結晶などで象牙細管を封鎖する
・樹脂やセメントで露出部分を覆う

1. 神経の反応をやわらげる
知覚過敏では、冷たいものなどの刺激に対して、歯の神経が反応しやすくなっています。
この神経の反応をやわらげる成分の一つが「硝酸カリウム」です。
硝酸カリウムは、市販の知覚過敏用歯みがき剤にも配合されています。継続して使用することで、徐々にしみる症状をやわらげる効果が期待できます。すぐに効果が現れるとは限らないため、一定期間継続することが大切です。
製品によって使用方法が異なるため、歯科医師や歯科衛生士の指導、または製品の説明書に従って使用してください。
歯科医院では、症状や使用する機器に応じて、レーザーを用いた処置を行う場合もあります。
ただし、レーザー治療の効果には個人差があり、すべての知覚過敏に適しているわけではありません。歯や歯ぐきへの影響を避けるため、適切な診断と管理のもとで行う必要があります。
2.薬剤で象牙質表面を処理する
象牙質の表面に薬剤を塗布し、象牙細管の内部にあるたんぱく質などに作用させることで、刺激が神経に伝わりにくくなるようにします。
薬剤には、グルタールアルデヒドやHEMAなどを含むものがあります。使用する製品や歯の状態によって、作用の仕組みや効果の現れ方は異なります。
ただし、強い痛みが続いている場合には、知覚過敏ではなく歯の神経に炎症が起きている可能性もあります。そのため、薬剤を使用する前に、痛みの原因を確認することが大切です。
3. 結晶でふたをする
知覚過敏抑制剤の中には、象牙質の表面に結晶を形成し、象牙細管をふさぐことで刺激を伝わりにくくするものがあります。

製品によっては、薬剤が象牙質表面のカルシウム成分などと反応し、象牙細管をふさぐ結晶を形成します。
また、ナノサイズのリン酸カルシウムなどを象牙質に作用させ、細管を封鎖するタイプもあります。
塗布することで症状の改善が期待できますが、効果の現れ方には個人差があり、複数回の処置が必要になることもあります。
歯垢の付着や酸性飲食物の頻繁な摂取によって、形成された封鎖層が影響を受ける可能性があるため、治療後も適切な歯磨きと食生活の見直しが大切です。
4. 樹脂(レジン)・セメントでふたをする
歯の根元が大きく欠けている場合や、薬剤の塗布だけでは十分な改善が得られない場合は、レジンと呼ばれる樹脂や歯科用セメントで露出した象牙質を覆うことがあります。
露出した部分を物理的に封鎖するため、比較的早く症状が改善する場合があります。
ただし、レジンやセメントを確実に接着させるためには、歯の表面をきれいにし、水分を適切に管理する必要があります。
また、詰めた材料が時間とともにすり減ったり、剥がれたりすることもあるため、定期的な確認が必要です。
治療を進めるうえでのポイント
知覚過敏は、1回の処置だけで改善するとは限りません。
症状の程度や原因によっては、同じ薬剤を繰り返し使用したり、異なる方法を組み合わせたりする必要があります。
また、むし歯や歯のヒビ、歯の神経の炎症が隠れている場合は、知覚過敏の治療だけでは改善しません。
治療を進める際には、まず原因を正しく診断し、症状の経過を確認しながら段階的に治療を選択することが大切です。
一般的には、歯を大きく削るような治療を最初から行うのではなく、身体への負担が少ない方法から検討します。
治療の流れの一例は次のとおりです。
知覚過敏用歯みがき剤などで神経の反応をやわらげる
知覚過敏抑制剤を塗布する
象牙細管を薬剤や結晶で封鎖する
必要に応じてレジンやセメントで露出部分を覆う
ただし、すべての症例でこの順番になるわけではありません。歯の状態や原因によって、適切な治療方法は異なります。
歯科治療以外でできる知覚過敏対策
1. 飲食物の見直し
酸性の食べ物や飲み物を頻繁に摂取すると、歯の表面からミネラルが溶け出し、象牙質が刺激を受けやすくなることがあります。
象牙質はエナメル質よりも酸に弱いため、すでに歯の根元が露出している場合は、飲食物の影響を受けやすくなります。

酸性になりやすい飲食物には、次のようなものがあります。
・炭酸飲料
・スポーツドリンク
・乳酸菌飲料
・果汁飲料
・お酢を使った飲み物
・柑橘類
・ワインやビール
これらを一切摂取してはいけないわけではありません。
しかし、長時間かけて少しずつ飲み続けたり、頻繁に口にしたりすると、歯が酸にさらされる時間が長くなります。
飲む回数や時間を決め、だらだら飲みを避けることが大切です。
2. 服用している薬を確認する
薬剤の種類によっては、口の乾燥や痛みの感じ方に影響し、歯の痛みや違和感に関係することがあります。
ただし、服用中の薬を自己判断で減らしたり、中止したりしてはいけません。
薬の副作用が疑われる場合は、処方した医師や薬剤師、歯科医師へ相談してください。
3. 歯以外が原因の痛みに注意する
歯が痛い、歯がしみると感じていても、実際には歯そのものが原因ではない場合があります。
三叉神経痛や筋痛、筋・筋膜痛などの口腔顔面痛では、歯に異常が見つからないにもかかわらず、歯の周辺に痛みを感じることがあります。
歯科治療を繰り返しても症状が改善しない場合は、口腔顔面痛を専門に扱う医療機関などへの相談が必要になることがあります。
4. 歯の神経を抜くのは最終手段
知覚過敏の症状が非常に強く、さまざまな治療を行っても改善せず、日常生活に大きな支障がある場合には、歯の神経を取る治療が検討されることがあります。
神経を取った歯は、治療前の歯質の喪失や治療による影響などから、将来的に破折するリスクが高くなることがあります。
そのため、歯の神経を取る治療は、ほかの方法で改善が得られない場合に検討する最終的な選択肢です。
知覚過敏は予防できるの?
知覚過敏を完全に防ぐ確実な方法はありません。
健康な歯ぐきであっても、加齢による歯肉退縮を完全に防ぐことは難しいためです。
ただし、象牙質が露出する原因を減らすことで、知覚過敏が起こるリスクを抑えられる可能性があります。
知覚過敏の予防につながるポイントは次のとおりです。
・歯周病を予防する
・力を入れすぎた歯磨きを避ける
・自分に合った硬さの歯ブラシを使う
・酸性飲食物を頻繁に摂取しない
・歯ぎしりや食いしばりについて相談する
・定期的に歯科検診を受ける
歯の根元を強く横磨きすると、歯ぐきの退縮や歯のすり減りにつながる可能性があります。
ご自身の口の状態に合った歯ブラシや歯みがき剤、ブラッシング方法について、かかりつけの歯科医院でアドバイスを受けることをおすすめします。
まとめ
1.歯がしみる原因は知覚過敏だけではありません。むし歯や歯のヒビ、詰め物の不具合などが隠れている場合があります。
2.知覚過敏は、露出した象牙質に冷たいものや歯ブラシなどの刺激が加わり、象牙細管を通じて神経に刺激が伝わることで起こります。
3.主な原因には、歯ぐきの退縮、NCCL、歯のヒビ、歯のすり減り、歯科治療後、詰め物や被せ物の不具合、ホワイトニングなどがあります。
4.治療には、知覚過敏用歯みがき剤、知覚過敏抑制剤、象牙細管を封鎖する薬剤、レジンやセメントによる修復などがあります。
5.知覚過敏は、1回の治療で改善しないこともあります。原因や症状に応じて、複数の方法を段階的に行うことがあります。
6.酸性飲食物の頻繁な摂取や強すぎる歯磨きを避け、歯周病や歯ぎしりへの対策を行うことも大切です。
7.何もしなくても痛む、夜間にズキズキする、かむと痛む、刺激がなくなっても痛みが続く場合は、早めに歯科医院を受診しましょう。
執筆者・監修者プロフィール

医療法人社団 統慧会 かわべ歯科 理事長 川邉滋次
参考文献
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冨士谷盛興.象牙質知覚過敏症 第4版目からウロコのパーフェクト治療ガイド. 第4版第1刷. 医歯薬出版株式会社. 2024.
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