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歯に食べ物が挟まる…原因と対処をお伝えします。

はじめに


皆さんは食事の時に歯に食べ物が挟まった経験はありますか?繊維質の食べ物やパンなどが歯の間に入ってしまうことはあると思います。


歯の間に食べ物がつまる

ただし、同じ箇所に頻繁に食べ物がつまってしまう場合は何らかの原因が考えられます。そのまま放置すると、歯や歯ぐきに悪影響を与えてしまう恐れがあります。


食べ物が歯の間に押し込まれた状態を「食片圧入(しょくへんあつにゅう)」といいます。食べ物がはさまったままの状態は歯ぐきに炎症を起こし、長期間続くと歯の周りの骨が下がってしまうことがあります。


今回は、食べ物が詰まりやすくなる原因と対策についてまとめてみました。


目次▼

 

食べ物がはさまる原因は?


1. 隣同士の歯の間に隙間が大きい


正常な永久歯列では、歯と歯の間に接触点(コンタクトポイント)と呼ばれる隣同士の歯が接触する部分があります。歯の間にフロスを通した時に少し抵抗を感じることがありますが、そのきつくなっている部分が接触点です。


歯の接触点

隣の歯同士は全体的に接触しているわけではなく、一部分だけが接触しています。接触点以外の空間は、日本の楽器である小鼓のような形状をしており、鼓形空隙(こけいくうげき)と呼ばれています。


鼓形空隙

隣の歯同士がくっついているわけではありませんが、歯と歯の間は密着しているため、食べ物がつまることを予防してくれます。


しかし、歯並びの問題や歯の本数の異常等で、歯と歯の間に隙間ができてしまう場合があります。この場合、食べ物が容易に歯の間に入り込み、つまりやすくなります。


歯間部の隙間は食片圧入を起こしやすい


2. 歯にむし歯がある


全てのむし歯が食べ物を歯の間につまらせる原因ではありません。歯と歯の間の部分にむし歯が発生し、穴が開いて空洞ができると、食べ物がはさまりやすくなります。


時には、外見上はむし歯のない健康そうな歯でも、食べ物が詰まりやすかったり、フロスがよく切れてしまうことがきっかけで、歯の間に存在するむし歯が発見できることもあります。


このような場合は、早期にむし歯の治療を受けることをお勧めします。


3. 被せ物や詰め物に問題がある


被せ物や詰め物が隣の歯と適切に接触していないか、形状に問題がある場合、食べ物が歯の間につまりやすくなることがあります。治療が完了し、普段通りに食事ができると思っていても、食べ物が頻繁に詰まるようなら、治療を受けた歯科医院に相談することをお勧めします。


4. 歯周病が進行している


歯周病の初期段階では、食べ物が歯の間につまることは少ないですが、進行し重度の歯周病になると、歯が揺れ動くことで歯と歯の間に隙間ができやすくなります。


5. 隣同士の歯の高さや位置が異なる


先に説明したように、歯の接触点の位置がずれていると、食べ物が歯の間につまりやすくなることがあります。例えば、隣の歯の高さが異なる、歯が重なっているなど、歯同士が正確に整列していない場合に起こりやすいです。


両隣の歯の高さの違い

歯の重なり

この問題の解決策としては、被せ物や詰め物で形を修正する方法や、歯科矯正治療を受けて歯並びや高さを修正する方法があります。


6, 歯の生え変わり直前で乳歯に揺れがある


幼児や小学生の場合、歯の生え変わりの時期を経験します。永久歯が生え変わる直前には、乳歯が揺れて抜けることがあります。この揺れによって歯と歯の間に隙間ができやすくなり、食べ物が歯の間につまりやすくなります。この問題に対する解決策としては、適切なホームケアの徹底や、揺れている乳歯の抜歯が考えられます。


7. ブリッジの間の歯の空間が大きい


ブリッジは、歯を失った箇所において、両隣の歯を利用して、橋をかけるように被せ物をする方法です。この歯を失った部分にあるダミーの歯を「ポンティック」と呼びます。


歯科ブリッジのポンティック

ポンティックの底の部分は歯茎に合わせて作られますが、形状が不適切であったり、歯ぐきが退縮してしまった場合には、隙間が大きくなり食べ物が入りやすくなります。


解決方法としてはブリッジの交換やホームケアの徹底が考えられます。


食べ物がはさまった時の家庭でしてほしい対処方法


1. デンタルフロス(糸ようじ)


デンタルフロスを使用して歯と歯の間の部分にある食べかすを取り除きます。歯の接触部分がややきつく、ここで力を入れすぎると勢い余って歯ぐきに食い込んでしまう恐れがあるために、優しい力でスライドさせながら挿入してください。


ただ、フロスを上下させても食べかすや汚れは取れることが少ないため、歯の根元までゆっくり入れた後は、歯の面に沿って清掃することをお勧めします。


2. 歯間ブラシ


歯と歯の間部分の空間が大きい場合に使用できます。歯間ブラシを入れたときに痛みがある、入らない場合は、歯間ブラシの適応でないか、歯間ブラシのサイズ選びが間違っている可能性があります。適切な歯間ブラシの大きさと使用方法はかかりつけの歯科医院で相談してください。


3. ウォーターフロス(水圧で汚れを除去する電動器具)


水圧で歯と歯の間の汚れや異物を取り除く電動の歯科清掃器具です。ワイヤーを使用した歯科矯正治療などでデンタルフロスを挿入できない部分や、デンタルフロスや歯間ブラシをうまく使用できない場合もお勧めします。


ウォーターフロス
ウォーターフロス

よくやってしまう間違った対処方法


1. 爪やつまようじで取り出そうとする


爪やつまようじを使ってはさまった食べ物を取ろうとすると、鋭利な部分で歯ぐきを傷つけてしまう場合があります。


つまようじは歯ぐきを傷つける恐れがあります。

2. 歯ぐきにぐいぐいと清掃器具を食い込ませる


デンタルフロスや歯間ブラシを使用しても、なんとか食べかすを取ろうと歯ぐきにぐいぐい食い込ませるような使用方法では、歯ぐきにダメージを与えてしまい、炎症や歯ぐきの下がりの原因になってしまうことがあります。適切に使用して、それでもとることができない場合にはかかりつけの歯科医院に相談することをお勧めします。


 

まとめ


1. 歯の間に食べ物がはさまりやすくなる原因には、「隣同士の歯の間のすき間が大きい」「歯にむし歯がある」「被せ物や詰め物に問題がある」「歯周病が進行している」「隣同士の歯の高さや位置が違う」「歯の生え変わり直前で乳歯に揺れがある」「ブリッジの間の歯の空間が大きい」があります。


2. 食べ物がはさまってしまった場合の家での対処方法としては、デンタルフロス・歯間ブラシ・ウォーターフロスの使用があります。


3. 食べ物がはさまってしまった場合、間違った対処法として、爪やつまようじの使用、歯ぐきにぐいぐいと清掃器具を食い込ませることがあります。


 

この記事を書いた人



かわべ歯科歯科衛生士

かわべ歯科 歯科衛生士スタッフ


幼児の場合、食べ物以外でも異物が挟まることがあり、その状態に本人が気づかずにいることがあります。毎日の仕上げ磨きで親御さんが気付くことも多いため、毎日の仕上げ磨きはしてあげてください。


 

参考文献


1. 澤熊文平. "食片圧入に伴う歯周組織の変化と歯間離開状態との関連性に関する実験病理学的研究." 福岡歯科大学学会雑誌 31.2 (2004): 71-92.


2. 江澤庸博, 箭本玲奈, and 江澤眞恵. "コンタクトエリアと歯周治療についての再考." 日本歯周病学会会誌 64.3 (2022): 98-102.

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