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同じところに食べ物が歯に挟まる・詰まる…その原因と対処を歯科衛生士が解説

はじめに-同じところに食べ物が歯に挟まる場合は要注意 


目次▼


皆さんは、食事中に繊維質の食べ物やパンが歯に挟まった経験を、一度はしたことがあるのではないでしょうか。


はさまる

同じところに頻繁に食べ物が挟まる場合、何らかの原因が考えられます。そのまま放置すると、歯や歯ぐきに悪影響を及ぼす恐れがあります。


食べ物が歯の間に押し込まれる状態を「食片圧入(しょくへんあつにゅう)」といいます。食べ物が挟まったままや同じところに何回も挟まる状態だと歯ぐきに炎症を引き起こし、長期間続くと歯の周りの骨が下がってしまうことがあります。


歯の間に食べ物がつまる

歯科医師会が2022年に実施した「歯や口の悩み」に関する年代別調査によると、40代から70代の人々の多くが「ものがはさまること」を悩みとして挙げています。また、若い世代でもこの悩みが上位にランクインしており、食べ物が歯に挟まることは幅広い年代で共通の悩みとなっていることがわかりました。


歯や口の悩み

そんな「同じところに歯にものが挟まる」悩みの一助になるように、今回は歯に食べ物が詰まりやすくなる原因と、その対策についてまとめてみました。



同じところに食べ物が歯に挟まる原因は?


1. 隣同士の歯の間に大きい隙間がある


正常な永久歯列では、隣同士の歯が接触する「接触点(コンタクトポイント)」と呼ばれる部分があります。フロスを通した際に少し抵抗を感じることがありますが、その抵抗がある部分が接触点です。


歯の接触点

隣り合う歯同士は全体が接触しているわけではなく、一部分のみが接触しています。この接触点以外の空間は、日本の楽器である小鼓のような形をしており、「鼓形空隙(こけいくうげき)」と呼ばれています。


鼓形空隙

接触点は密着しているため、食べ物が挟まるのを防いでくれます。


しかし、歯並びの問題や歯の本数の異常などにより、歯と歯の間に隙間ができる場合があります。このような場合、容易に食べ物が歯に詰まりやすくなります。


歯間部の隙間は食片圧入を起こしやすい


2. 歯と歯の間に虫歯がある


歯と歯の間に虫歯ができて穴が開くと、食べ物が詰まりやすくなります。一見、健康そうに見える歯でも、「同じところによく食べ物が歯に挟まる」「フロスが頻繁に切れる」ことがあれば、歯と歯の間に虫歯があるかもしれません。


おかしいな?と思ったら早期にむし歯の検査をかかりつけの歯科医院で受けることをお勧めします。


3. 被せ物や詰め物に問題がある


被せ物や詰め物が隣の歯と適切に接触していない場合や、形状に問題がある場合、食べ物が歯の間に詰まりやすくなります。治療部位周囲に頻繁に食べ物が挟まるようなら、歯科医院に相談することをお勧めします。


4. 歯周病が進行している


初期の歯周病では食べ物が歯の間に詰まることは少ないですが、進行して重度の歯周病になると、歯が揺れることで隙間ができ、歯と歯の間に食べ物が詰まりやすくなります


5. 隣同士の歯の高さや位置が異なる


歯の接触点の位置がずれていると、食べ物が歯の間に挟まることが多くなります。例えば、隣同士の歯の高さが異なったり、歯が重なっていたりすると、凹凸ができ食べ物が詰まりやすくなります。


両隣の歯の高さの違い

歯の重なり

解決策としては、被せ物や詰め物で歯の形を修正する方法や、歯科矯正治療を受けて歯並びや高さを修正する方法があります。


6, 歯の生え変わり直前で乳歯に揺れがある


幼児や小学生は、歯の生え変わり時期を経験します。永久歯が生える直前に、乳歯が揺れることがあります。この揺れにより、歯と歯の間に隙間ができ、食べ物が詰まりやすくなります。解決策としては、適切なホームケアの徹底や、揺れている乳歯の抜歯があります。


7. ブリッジの間のダミー歯の空間が大きい


ブリッジは、歯を失った部分に、両隣の歯を利用して橋をかけるように被せ物をする治療法です。この歯のない部分に設置されるダミーの歯を「ポンティック」と呼びます。


歯科ブリッジのポンティック

ポンティックの底は歯ぐきに沿って作られますが、形状が不適切であったり、歯ぐきが退縮してしまうと、隙間が大きくなり、食べ物が入りやすくなります。


解決策として、ブリッジの交換やホームケアの徹底が挙げられます。


食べ物が歯に挟まる時の対処方法


1. デンタルフロス(糸ようじ)


デンタルフロスを使用していて、歯と歯の間に詰まった食べ物を取り除きます。歯の接触部分が少しきつい場合、無理に力を入れるとフロスが歯ぐきに食い込んでしまう恐れがあるため、優しい力でスライドさせながら挿入してください。


ただし、フロスを上下に動かすだけでは、汚れが取りにくいことが多いです。歯の根元までゆっくりとフロスを入れた後、歯の面に沿って清掃することをお勧めします。


2. 歯間ブラシ


歯と歯の間の空間が大きい場合に使用できます。歯間ブラシを入れる際に痛みがある場合や、ブラシ部分が入らない場合は、歯間ブラシが適していないか、サイズが間違っている可能性があります。適切な歯間ブラシのサイズや使用方法については、かかりつけの歯科医院で相談してください。


3. ウォーターフロス(水圧で汚れを除去する電動器具)


水圧を利用して歯と歯の間の汚れや異物を取り除く電動の歯科清掃器具です。ワイヤー矯正中でデンタルフロスを挿入できない部分や、デンタルフロスや歯間ブラシをうまく使用できない場合にもお勧めします。


ウォーターフロス
ウォーターフロス

ついついやってしまう間違った対処方法


1. 爪やつまようじで取り出そうとする


爪やつまようじを使って、歯に挟まった食べ物を取り除こうとすると、鋭利な部分で歯ぐきを傷つけてしまう場合があります。


つまようじは歯ぐきを傷つける恐れがあります。

2. 無理に清掃器具を押し込む


不適切な清掃方法

デンタルフロスや歯間ブラシを使っても、なんとか食べ物を取ろうと歯ぐきにぐいぐい食い込ませるような使い方をすると、歯ぐきにダメージを与え、炎症や歯ぐきの下がりの原因になることがあります。正しい使い方をしても取れない場合は、かかりつけの歯科医院に相談することをお勧めします。



まとめ


1. 食べ物が同じところに歯に挟まる原因には、「隣同士の歯の間のすき間が大きい」「歯にむし歯がある」「被せ物や詰め物に問題がある」「歯周病が進行している」「隣同士の歯の高さや位置が違う」「歯の生え変わり直前で乳歯に揺れがある」「ブリッジの間の歯の空間が大きい」などがある。


2. 家庭での対処方法としては、デンタルフロス・歯間ブラシ・ウォーターフロスの使用を推奨。


3. 間違った対処法として、爪やつまようじの使用、清掃器具を歯ぐきに無理に押し込むことが挙げられる。


この記事を書いた人



かわべ歯科歯科衛生士

かわべ歯科 歯科衛生士スタッフ


幼児の場合、食べ物以外でも異物が歯に挟まることがあり、その状態に本人が気づかずにいることがあります。毎日の仕上げ磨きで親御さんが気付くことも多いため、毎日の仕上げ磨きはしてあげてください。


参考文献


1. 澤熊文平. "食片圧入に伴う歯周組織の変化と歯間離開状態との関連性に関する実験病理学的研究." 福岡歯科大学学会雑誌 31.2 (2004): 71-92.


2. 江澤庸博, 箭本玲奈, and 江澤眞恵. "コンタクトエリアと歯周治療についての再考." 日本歯周病学会会誌 64.3 (2022): 98-102.

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