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子どものお口ぽかん・口呼吸は大丈夫?原因・影響・改善方法を歯科医師が解説

▼目次


はじめに-それは「クセ」ではなく、お口の機能の問題かもしれません


口を開けて横を見上げる子どもの横顔と「お口ぽかんや口呼吸」などの注意書きイラスト。

「テレビを見ていると、いつも口が開いている。」

「寝ている時も口がぽかんと開いている。」

「食事中にクチャクチャと音を立てて食べている。」

このような様子はありませんか?


近年、3〜12歳の子どもの約3人に1人に「お口ぽかん(口唇閉鎖不全)」がみられることが報告されています。


お口ぽかんの子ども増加を示す日本語インフォグラフ。円グラフで「はい30.7%」「いいえ69.3%」、3~12歳の約3人に1人が当てはまる可能性、対象者3,399人。

お口ぽかんとは、無意識に口が開いたままになっている状態のことです。単なるクセと思われがちですが、歯並びやあごの発育、お口の健康だけでなく、呼吸や睡眠、全身の健康にも影響する可能性があります。


よく「お口ぽかん」と「口呼吸」は同じものと思われますが、実は少し異なります。お口ぽかんは口が開いている状態、口呼吸は口で呼吸している状態を指します。どちらも放置するとさまざまな問題につながるため、早めに気付いて適切に対応することが大切です。


この記事では、お口ぽかんの原因や影響、口呼吸との関係、チェック方法、治し方についてわかりやすく解説します。



お口ぽかん(口唇閉鎖不全)とは?


お口ぽかん(口唇閉鎖不全)とは、安静時に上下の唇を自然に閉じることができず、無意識に口が開いている状態をいいます。

本来、口を閉じている時には、唇は軽く触れ合い、舌は上あごについています。しかし、お口ぽかんでは口唇や舌の筋肉のバランスが崩れ、この正常な状態を保つことができません。


お口ぽかんの原因


お口ぽかんは、一つの原因だけで起こることは少なく、複数の要因が重なって起こることがほとんどです。


1. お口のまわりの筋力不足


唇や頬、あごの筋肉が十分に発達していないと、口を閉じ続けることが難しくなります。


食事の内容や噛む回数、日常的なお口の使い方なども、お口まわりの筋肉の発達に関係すると考えられています。


2. 歯並びやかみ合わせの異常


出っ歯(上顎前突)や前歯のかみ合わせの異常があると、上下の唇が自然に閉じにくくなります。


また、お口ぽかんが続くことで歯並びが悪くなることもあり、お口ぽかんと歯並びは互いに影響し合っています。


3. 舌やお口のクセ(口腔習癖)


舌で前歯を押すクセ(舌突出癖)、指しゃぶり、唇を噛むクセなどは、お口まわりの筋肉のバランスを崩す原因になります。


また、舌が本来あるべき上あごではなく低い位置にある「低位舌」も、お口ぽかんと深く関係しています。


4. 口を閉じる習慣が身についていない


幼い頃から口を開けたまま過ごす時間が長いと、それが当たり前になり、鼻呼吸ができていても口を閉じる習慣が身につかないことがあります。


5. 上唇小帯の付着異常


上唇の裏側にある上唇小帯が前歯の近くまで付着していると、唇の動きが制限され、口を閉じにくくなる場合があります。


お口ぽかんによって起こりやすい問題


お口ぽかんは、単に口が開いているという見た目だけの問題ではありません。口が開いた状態が続くと、お口の中の環境や歯並び、あごの成長などに影響することがあります。


1. むし歯・歯肉炎・口臭の原因になりやすい


口が開いた状態が続くと、お口の中が乾燥しやすくなります。


唾液には、食べかすや細菌を洗い流したり、酸によって溶けかけた歯を修復したりする働きがあります。


お口が乾燥して唾液の働きが弱まると、細菌が増えやすくなり、むし歯や歯肉炎、口臭のリスクが高まります。


2. 歯並びやかみ合わせに影響する


歯並びは、舌が内側から押す力と、唇や頬が外側から押す力のバランスによって保たれています。


お口ぽかんによって唇の力が弱くなったり、舌が低い位置にある状態が続いたりすると、このバランスが崩れます。その結果、出っ歯(上顎前突)や前歯がかみ合わない開咬などにつながることがあります。


3. あごや顔つきの成長に影響することがある


成長期に口が開いた状態や口呼吸が続くと、舌の位置やあごの使い方が変わり、あごや顔面の成長に影響する可能性があります。


成長期の口呼吸でみられる顔貌の特徴を説明する図。横顔の少年と、鼻が低く見える・唇が前に出る・下あごが後退しやすいの3項目。

ただし、顔つきは遺伝や骨格、鼻やのどの状態など、さまざまな要因によって決まります。お口ぽかんだけで特定の顔つきになるわけではありません。


4. 発音や飲み込みに影響することがある


舌が本来の位置より低い「低位舌」や、飲み込む時に舌で前歯を押す「舌突出癖」があると、発音や飲み込み方に影響することがあります。


舌で前歯を押す動きが繰り返されると、歯並びやかみ合わせを乱す原因になることもあります。


このように、お口ぽかんには複数の問題が関係します。「口を閉じなさい」と注意するだけでは改善しない場合もあるため、口が開いている原因を確認することが大切です。


口呼吸とは?


口呼吸とは、本来は鼻で行う呼吸を、口で行っている状態です。

鼻には空気を温めたり、湿らせたり、細菌やウイルス、花粉を取り除くフィルターの役割があります。しかし、口呼吸ではこれらの働きが十分に行われません。


口呼吸の原因


口呼吸の原因は大きく分けて2つあります。


1. 鼻づまり

アレルギー性鼻炎、花粉症、副鼻腔炎、アデノイド肥大などにより鼻で呼吸しにくくなると、自然に口呼吸になります。


2. 習慣

以前に鼻づまりがあった影響などで、鼻が通るようになっても口呼吸が習慣として残ってしまうことがあります。


口呼吸による影響


口呼吸が続くと、お口の中が乾燥しやすくなり、むし歯や歯肉炎、口臭のリスクが高まる可能性があります。


また、鼻には、吸い込んだ空気を温めて湿らせ、ほこりや花粉などの異物を取り除く働きがあります。口呼吸ではこうした鼻の働きを十分に活用できないため、のどの乾燥や不快感につながることがあります。


さらに、睡眠中の口呼吸は、いびきや睡眠の質の低下と関連する場合があります。日中の眠気や集中しにくさがみられる場合は、鼻づまりや睡眠中の呼吸状態も含めて確認することが大切です。


子どもがお口ぽかんや口呼吸になっていないかチェック


「うちの子は大丈夫かな?」と思ったら、まずは日常生活を振り返ってみましょう。

次のような様子が多くみられる場合は、お口ぽかんや口呼吸の可能性があります。

  • テレビやゲーム中によく口が開いている

  • 寝ている時に口が開いている

  • いびきをかく

  • 食事中にクチャクチャ音を立てる

  • 唇が乾燥しやすい

  • 日中に口臭が気になる

  • 鼻づまりが多い

  • 前歯が出ている

  • 朝起きた時に口やのどが乾いている

  • 発音がはっきりしない

当てはまる項目が多い場合は、一度歯科医院で相談することをおすすめします。


お口を閉じる力を測ってみよう!


口を閉じる力(口唇閉鎖力)は、見た目だけでは判断できません。

当院では「リップデカム」や「りっぷるくん」を用いて、口唇閉鎖力を数値で測定しています。


口を閉じる力を数値でチェックできる説明図。左は女の子の横顔に水平にひっぱる検査。右にリップデカムとりっぷるくんの測定器。

測定は数分で終わり、年齢ごとの基準値と比較することで、お子さんのお口まわりの筋肉の発達を客観的に評価できます。


また、トレーニング前後で数値を比較できるため、成長や改善の様子も確認できます。


お口ぽかん・口呼吸を改善するためには?


改善するためには、まず原因を明らかにすることが大切です。鼻づまりが原因の場合は、耳鼻咽喉科での治療が必要になることがあります。


一方、お口まわりの筋力不足や習慣が原因であれば、お口まわりの筋肉や舌の使い方を整える口腔筋機能療法(MFT)を行い、自然に口を閉じられるように練習していきます。


必要に応じて歯並びやかみ合わせの改善を目的とした小児矯正を併用することもあります。歯科と耳鼻咽喉科が連携し、お子さんの原因に合わせた治療を行うことが大切です。


唇の筋肉を鍛えるトレーニング器具


口唇閉鎖力を高めるためには、自宅で継続できるトレーニングも効果的です。


当院では、お子さんの年齢や状態に応じて、「リップルトレーナー」「ポカンX」「医療用吹き戻し」などを活用しながら、お口まわりの筋肉を無理なく鍛えていきます。


口唇閉鎖力を高めるためのトレーニング紹介。子ども3人がリップルトレーナー、吹き戻し、ポカンXを使い、口を閉じる練習をしている。

大切なのは、短期間で頑張ることではなく、毎日少しずつ継続することです。



まとめ


  1. お口ぽかん(口唇閉鎖不全)は、3〜12歳の子どもの約3人に1人にみられ、単なるクセではなく、お口の機能の問題である場合があります。


  2. 主な原因には、お口まわりの筋力不足、歯並びやかみ合わせの異常、舌やお口のクセ、口を閉じる習慣の不足、上唇小帯の付着異常などがあります。


  3. 口呼吸は、お口ぽかんとは異なり「口で呼吸している状態」を指します。鼻づまりや習慣が原因となることが多く、お口ぽかんと深く関係しています。


  4. お口ぽかんや口呼吸を放置すると、むし歯・歯肉炎・口臭だけでなく、歯並びやあごの成長、発音、睡眠、全身の健康にも影響を及ぼす可能性があります。


  5. 気になる症状がある場合は、まずお子さんの生活習慣をチェックし、必要に応じて口唇閉鎖力などの検査を受けることが大切です。


  6. 鼻づまりが原因の場合は耳鼻咽喉科との連携、お口まわりの筋力不足が原因の場合は口腔筋機能療法(MFT)やトレーニングを行うことで改善が期待できます。


  7. お口ぽかんは成長とともに自然に改善するとは限りません。歯並びや顔つきへの影響が大きくなる前に、原因を見極めて早めに対応することが、お子さんの健やかな成長につながります。



執筆者・監修者プロフィール


菊川の一般歯科と矯正歯科、小児歯科の歯医者さん。

医療法人社団 統慧会 かわべ歯科 理事長 川邉滋次



参考文献


1. Y Nogami. Prevalence of an incompetent lip seal during growth periods throughout Japan:a large-scale,survey-based,cross-sectional study.Environ Health Prev Med 2021.


2. 今井一彰. 鼻呼吸歯医者さんの知りたいことがまるわかり鼻と口の呼吸で何が違う?なぜ違う?. クインテッセンス出版株式会社 2020.


3. 山口英晴 大野粛英 橋本律子. はじめる・深めるMFT お口の筋トレ実践ガイド. デンタルダイヤモンド社 2016.


4. 河井聡.口腔習癖見逃してはいけない小児期のサイン. 医歯薬出版株式会社 2019.


5. Mummolo S.Salivary markers and microbial flora in mouth breathing late adolescents.Biomed Res Int 2018.

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