子供の下の歯が見えないのは大丈夫?過蓋咬合の原因と矯正が必要なケース
- 歯科医師 川邉滋次

- 2月13日
- 読了時間: 8分
更新日:7月7日
▼目次

はじめに
「子どもの下の前歯がほとんど見えないけれど、大丈夫?」
「上の歯が深くかぶさっているけれど、矯正が必要なの?」
このような疑問を持つ保護者の方は少なくありません。
実は、上下の前歯は少し重なっているのが正常ですが、下の前歯がほとんど見えないほど深くかみ合っている場合は、「過蓋咬合(かがいこうごう)」という不正咬合の可能性があります。

過蓋咬合は一見すると歯並びがきれいに見えるため見逃されやすいものの、成長とともに歯並びやかみ合わせ、あごの発育に影響を及ぼすことがあります。
この記事では、子どもの下の歯が見えない原因や放置するリスク、歯科医院を受診する目安、治療方法について歯科医師がわかりやすく解説します。
正常なかみ合わせとの違い-下の歯が見えなくても問題ない?
正常なかみ合わせでは、上の前歯が下の前歯を2〜3mm程度覆う状態が理想とされています。
しかし、
下の前歯がほとんど見えない
上の前歯が下の前歯を完全に覆っている
下の前歯が上あごの歯ぐきに当たる
このような場合は、過蓋咬合の可能性があります。
「下の歯が見えない=すぐに矯正が必要」というわけではありませんが、一度かみ合わせを確認してもらうことをおすすめします。
なぜ子供の下の歯が見えない?過蓋咬合を引き起こす6つの原因
過蓋咬合は一つの原因だけで起こるものではなく、骨格的な特徴や生活習慣、お口の癖などが複数重なって生じることが多い不正咬合です。
1.骨格的な特徴
生まれつき上下のあごの大きさや位置のバランスによって、かみ合わせが深くなることがあります。 特に下あごの成長が控えめな場合には、上の歯が下の歯を深く覆いやすくなります。
2.口呼吸による筋肉のバランスの乱れ
口呼吸が続くと、舌や唇、お口周りの筋肉のバランスが崩れます。 成長期にこの状態が続くと、下あごが前へ成長しにくくなり、過蓋咬合につながることがあります。
3.食いしばり
子どもでも、睡眠中や集中している時に無意識に食いしばることがあります。 強い力が長期間加わることで、かみ合わせがさらに深くなる場合があります。
4. 下唇をかむ癖

下唇をかむ癖があると、上の歯は前へ押し出され、下の歯は内側へと倒れ込みます。その結果、上下の重なりが深くなり、さらに唇を噛みやすくなるという悪循環に陥ります。
この癖が続くと、上の前歯は前方へ、下の前歯は内側へ傾きやすくなり、過蓋咬合がさらに進行することがあります。
5. ほおづえ・うつぶせ寝の癖

1回のほおづえやうつ伏せ寝だけで過蓋咬合になるわけではありません。 しかし、成長期に長期間続くと、あごへ偏った力が加わり、かみ合わせに影響する可能性があります。
6. 生まれつきの歯の本数不足
生まれつき下の前歯が足りない場合は、歯列の幅が小さくなり、結果として上の歯が下の歯を深く覆うことがあります。
「かみ合わせが深いだけ」と放置するのが危険な3つの理由
「痛みがないから」と様子を見られがちですが、過蓋咬合を放っておくと将来的に以下のようなトラブルを招く恐れがあります。
1. 下の前歯が上あごの歯ぐきを傷つける


かみ合わせが深くなると、下の前歯が上あごの歯ぐきに直接当たり、歯ぐきを傷つけることがあります。
痛みや炎症だけでなく、歯ぐきが下がる原因になることもあります。
2. 下の前歯がガタガタになりやすい

深いかみ合わせでは、下の前歯が内側へ押し込まれやすくなります。
その結果、永久歯が生えそろう頃に前歯が重なり合い、ガタガタの歯並び(叢生)になることがあります。
→ガタガタの歯並びについて詳しく知りたい方はこちら
3. あごへの負担が大きくなる
過蓋咬合では、下あごが後方へ押し込まれやすくなり、顎関節へ負担がかかります。
将来的に「あごが鳴る」「口が開きにくい」など、顎関節症の症状につながることがあります。
何歳から始める?子供の過蓋咬合の矯正治療
過蓋咬合は、永久歯が生えそろってから治療を始めるとは限りません。
成長期はあごの発育を利用できるため、乳歯列期から混合歯列期に原因を改善することで、将来的な抜歯矯正を避けられる可能性があります。
治療の目標
あごの成長を活かして奥歯の高さを適切に整え、下あごを理想的な位置へと誘導します。そのために当院では、主に以下の2つの手法を用いて矯正治療を行っています。
お口周りのクセの改善:根本原因である食いしばりや口呼吸などを整えるトレーニングを行います。
矯正装置:必要に応じて、奥歯のかみ合わせを上げる装置を使用し、自然なかみ方へと導きます。
他にもレントゲン検査(セファログラム)を行うことで、骨格的な問題がないか精密に診断し、お子様一人ひとりに適したタイミングを提案します。

矯正治療症例紹介(下の歯が見えない過蓋咬合)
ここからは、実際に当院で行った過蓋咬合の矯正治療例をご紹介します。治療期間や変化には個人差がありますが、治療のイメージとして参考にしてください。
【症例1】「かみ合わせが深く、下の歯がほとんど見えないこと」と「前歯の重なり」を主訴に来院された患者様です。お子様の成長段階に合わせて3種類のマイオブレースを順次使用し、お口周りの筋肉トレーニング(MFT)を併用しました。

(症例1の治療経過)
初診時:上の歯が下の歯を深く覆い、かみ合わせが非常に深い状態です。
10ヶ月経過:装置の効果により、かみ合わせが浅くなり、隠れていた下の歯が見えるようになってきました。
15ヶ月経過:ここから本格的に歯の重なり、叢生の治療が進みます。
36ヶ月経過:歯並びが整っただけでなく、上下のかみ合わせのバランスも良い状態で維持されています。
(症例1のメリット)
深いかみ合わせが改善されることで、あごの位置が整い、口元のシルエットやフェイスラインにも良い変化が出ることがあります。
また、特定の歯に負担が集中しにくくなり、将来的な歯のすり減りや破折の予防にもつながります。
(症例1の注意点)
成長に応じて装置を使い分ける必要があり、定期的な通院が欠かせません。
また、かみ合わせの高さを改善するためには、就寝時を含めた装置の使用が重要になります。
【症例2】「上の歯が下の歯を深く覆っていること」に加え、「上下の歯の中心位置が左右にズレていること」を主訴に来院された症例です。2種類のマイオブレースと口腔筋機能訓練を併用し、歯並びだけでなく、かみ合わせのバランスも整えていきました。

(症例2の治療経過)
初診時:かみ合わせが深く、上下の歯の中心位置が大きくズレている状態です。
5ヶ月経過:装置の装着とトレーニングにより、かみ合わせが目に見えて浅くなってきました。
15ヶ月経過:ズレていた歯の中心位置が合い、左右のかみ合わせのバランスも整ってきました。
(症例2のメリット)
歯の中心位置や左右のかみ合わせのバランスが整うことで、左右均等にかみやすくなります。また、成長期にバランスを整えることで、顔立ちの左右差を予防できる可能性があります。
(症例2の注意点)
中心位置を整えるためには、舌の位置やかむ力のバランスを整えるトレーニングが大切です。短期間で変化が見られることもありますが、装置の使用やトレーニングを継続する必要があります。
まとめ
過蓋咬合とは、上の前歯が下の前歯を深く覆い、下の歯がほとんど見えない状態です。
軽度であれば問題ないこともありますが、下の前歯がほとんど見えない場合は、一度歯科医院でかみ合わせを確認してもらいましょう。
原因には、骨格的な特徴、口呼吸、食いしばり、下唇をかむ癖、ほおづえ、歯の先天性欠如などがあります。
放置すると、歯ぐきを傷つけたり、下の前歯がガタガタになったり、顎関節へ負担がかかったりすることがあります。
成長期はあごの発育を利用できるため、早めに相談することで負担の少ない治療につながる場合があります。
執筆・監修者プロフィール

小児矯正&予防歯科の歯医者さん かわべ歯科 歯科医師 川邉滋次
過度にかみ合わせが深い場合は、「奥歯のかみ合わせ部分に樹脂素材を足す」「奥歯のかみ合わせを上げる装置を入れる」などの方法を行うことがあります。
ただし、レントゲンなどの検査により骨格の成長に大きな問題がみられる場合には、口腔外科や成人矯正に対応した専門機関をご紹介する場合があります。
参考文献
1. Mew J. The cause and cure of malocclusion. Heathfield: John Mew (2013).
2. Manfredini, Daniele, et al. "Bruxism is unlikely to cause damage to the periodontium: findings from a systematic literature assessment." Journal of periodontology 86.4 (2015): 546-555.
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