歯並び矯正は医療費控除の対象?歯科での医療費控除をわかりやすく解説
- 歯科医師 川邉滋次

- 5 日前
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更新日:2 日前
はじめに-歯科治療・歯科矯正の医療費控除申告忘れてませんか?
▼目次

医療費控除(いりょうひこうじょ)とは、1年間(1月1日〜12月31日)に払った医療費が多かったときに、税金が安くなる制度です。自分だけでなく、一緒に生活している家族(配偶者・子ども・両親など)の医療費もまとめて計算して申告できます。
また、申告を忘れてしまっても、領収書があれば過去5年までさかのぼって申告できますので安心です。
当院でも、初診のときに治療説明と合わせて医療費控除のお話をしますが、「歯科治療や小児矯正が申請できると思わなかった」という声をよく耳にします。
このページでは、歯科治療でどんなものが医療費控除の対象になるのかをわかりやすく解説します。少しでも皆さまのお役に立てれば幸いです。
歯科治療・歯科矯正で医療費控除の対象となるもの
歯科医院での治療費(自費診療・保険診療)
歯科治療全般(虫歯治療、歯周病治療、根管治療、抜歯、入れ歯、ブリッジ など)
インプラント治療
小児矯正を含む、機能改善を目的とした歯科矯正
歯科用CTやレントゲン検査
歯科でのボトックス注射(歯ぎしりや顎関節症の治療)
親知らずの抜歯
入院費や手術費
歯ぎしり・食いしばりがあり、スポーツ時に症状悪化する恐れがある場合に治療として製作したマウスピース
通院のための交通費
患者さん本人の電車・バス等の公共交通機関の交通費
(タクシーは原則対象外ですが、緊急時や夜間などやむを得ない場合は対象)
お子様の通院に付き添う保護者の公共交通機関の交通費
歩行不安・認知症など高齢者で1人での通院が難しい場合の付き添いの方の公共交通機関の交通費
手術や鎮静後で帰宅時に付き添いが必要な場合、付き添いの方の公共交通機関の交通費
障害や病気のため、成人でも1人で通院できない場合、付き添いの方の公共交通機関の交通費
医療費控除の対象外となるもの
ホワイトニングなどの美容目的の治療
審美目的の歯科矯正(機能改善を伴わないもの)
健康診断や人間ドック(重大な疾病が発見され、引き続き治療を行った場合は除く)
デンタルエステ(歯科医院で口元のむくみやたるみの改善やリラクゼーション・美容を目的として行う施術)
サプリメントやビタミン剤
歯科でのビタミンC点滴
スポーツ外傷予防のために作ったスポーツ用マウスピース
自家用車のガソリン代や駐車場代
患者さんが成人以上で1人でも通院可能なのに付き添いで来た方の交通費
具体的にどのくらい税金が戻ってくるの?
戻ってくるお金は、「医療費控除の金額 × 自分の所得税率」でだいたい決まります。…と言われても、これだけだと少し分かりにくいですよね。
ここからもっと分かりやすく説明します。
医療費控除とは、1年間にかかった医療費が多かったときに、国が税金を安くしてくれる制度です。まず知っておきたい大事なポイントは、控除というのは「自分のお金が減る仕組み」ではないということです。むしろその逆で、税金を計算するときに使う「所得(税金のもとになる金額)」を小さくしてもらえる仕組みです。
この「所得を小さくしてもらう」ことで、結果的に納める税金が少なくなり、確定申告後にお金が戻ってくることがあります。つまり、誰かがあなたのお金を取るわけではなく、あなたの手元に残るお金が増える仕組みです
医療費控除の対象になるのは、1年間の医療費が10万円を超えたときです。国は「病気やケガである程度お金がかかるのは仕方ない」と考えており、その「ある程度」が10万円という基準になっています。そのため、10万円までは対象外で、10万円をこえた部分だけが医療費控除の計算に使われます。(総所得額が200万円未満の人は、10万円ではなく「総所得金額の5%を超えた分」 が対象です。)

例として 年間40万円の医療費 がかかった場合を考えます。
控除対象は40万円 − 10万円 = 30万円となります。
所得税率が20%の方なら30万円 × 20% = 6万円(所得税分)
住民税の軽減も合わせると合計で約9万円が戻ってくることもあります。
「医療費が多かった年ほど、戻ってくる金額も大きくなる」という仕組みです。

先ほどは所得税率20%で計算しましたが、全員が一律ではなく、上記のように所得によって税率が変化します。
矯正(見た目のためだけの場合は対象外)やインプラントなど高額治療を分割で払っているときは、その年に支払った金額だけ が医療費としてカウントされます。例えば50万円のインプラントを5年で10万円ずつ分割した場合はその年に払った10万円分だけ申告できます。
医療費控除の申告に必要なものは
医療費の領収書
交通費の記録(日時・経路・金額がわかるもの)
医療費控除の明細書(国税庁サイトで作成)
給与所得の源泉徴収票
保険金支給があった場合は、その金額がわかる書類
申告する本人の口座番号と印鑑
医療費控除の申請方法
確定申告期間(毎年2月16日〜3月15日)に、e-Tax または紙の申告書で税務署へ提出します。この時期を逃してしまうと申請は来年となってしまうため注意が必要です。
一緒に知っておきたいセルフセルフメディケーション税制
セルフメディケーション税制とは、国が健康づくりを応援するために設けた税金の控除制度です。日頃から健康診断や予防接種、歯科健診などに取り組んでいる人が、市販薬の中で「スイッチOTC医薬品」と呼ばれる特定の薬を年間12,000円以上購入した場合、確定申告をすると税金が減額されます。
スイッチOTC医薬品とは、もともと医療機関で処方されていた薬の成分を、市販薬として使えるようにしたものです。痛み止めやアレルギー薬、胃薬の一部が該当します。対象の薬には、パッケージやレシートに「セルフメディケーション税制対象」や「スイッチOTC」といったマークが表示されています。
控除額は、対象薬の年間購入額から12,000円を差し引いた金額で、最大88,000円が限度として所得控除として認められます。たとえば、対象薬を年間30,000円購入した場合、30,000円から12,000円を引いた18,000円が控除の対象になります。
この制度を利用するには、一緒に「その年に健康の保持増進に関する取り組みを行ったこと」も必要です。具体的には、健康診断、がん検診、人間ドック、そして歯科健診の結果通知書や領収書、予防接種の予防接種済証や領収書があります。
なお、この制度は通常の医療費控除とは併用できず、どちらか一方を選んで申告する必要があります。
せっかく対象薬を購入していても、レシートがないと申告ができません。購入時のレシートに「セルフメディケーション税制対象」とわかりやすく記載されていることが多いため、該当するものは保管しておくと安心です。領収書の提出は必要ありませんが、確定申告期限などから5年間の保存が必要であり、税務署から提出を求められる場合があります。
ちなみに歯科医院で販売されている予防用品・衛生用品の多くは、セルフメディケーション税制の対象には含まれません。例えば、フッ素入り歯磨き粉・ジェル・洗口液は、医薬部外品または化粧品として分類されることが多く、税制の適用対象外となります。
また、歯ブラシ・デンタルフロス・歯間ブラシ・タフトブラシなどの口腔清掃用具についても、医療機器として扱われるため、こちらもセルフメディケーション税制の対象外です。
さらに、キシリトールタブレットや栄養補助サプリメント、口腔保湿ジェルなどの製品も、医薬品ではなく食品・医療機器・化粧品のいずれかに分類されることから、同制度の対象とはなりません。
まとめ-歯科と医療費控除の関係
歯科の治療費(虫歯・歯周病・根管治療・小児矯正・インプラントなど)や通院の公共交通費は医療費控除の対象になる。
美容目的のホワイトニング・審美矯正・サプリ・駐車場代などは医療費控除の対象外。
医療費控除は「所得を小さくすることで税金が減る制度」で、確定申告後にお金が戻ることがある。
控除額は「医療費 − 10万円(または所得の5%)」で計算し、所得税率に応じて戻る金額が決まる。
申告には領収書・交通費記録・明細書・源泉徴収票・保険金書類・口座情報が必要。
セルフメディケーション税制はスイッチOTC薬を年間1.2万円超購入した場合に使える別制度で、医療費控除と併用不可。
この記事を書いた人

かわべ歯科院長 歯科医師 川邉滋次
歯科治療の多くは医療費控除の対象となります。特に、矯正治療・小児矯正(審美矯正を除く)、インプラント治療などの自費診療、保険診療でも口腔外科での大きな手術、長期間にわたる歯科治療などは医療費が高額になりやすいため、申告されると税負担の軽減につながります。
歯科医院で貰った領収書は大切に保管し、年末に一度医療費をまとめていただくことをおすすめします。
より詳しい情報を知りたい方は国税庁のホームページを参考にしていただけたら幸いです。
参考文献
国税庁. (2024). セルフメディケーション税制とは|令和6年分 確定申告特集. Retrieved from https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/tokushu/keisubetsu/self-medication.htm
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