「天然成分配合・オーガニック歯磨き粉」に潜む意外な落とし穴とは!?
- 歯科医師 川邉滋次
- 9月12日
- 読了時間: 15分
はじめに-天然成分配合やオーガニックの歯磨き粉は効果が高いの!?
▼目次

皆さんは、お家にある歯磨き粉をどのような基準で選んでいますか?
2021年に実施されたインターネット調査では、歯磨き粉を購入する際にまず頭に浮かぶブランドとして、テレビCMなどでよく知られた有名ブランドが多く挙げられました。また、選ばれる理由については、「効能」よりも「使い慣れているから」といった、習慣や安心感に基づく声が多く見られました。
一方で、近年注目されているのが「天然成分配合」「無添加」「オーガニック」といった“ナチュラル志向”の歯磨き粉です。化学物質に対する不安や健康意識の高まりから、「体にやさしい」「安心して使える」というイメージで選ぶ人も増えています。
実際、大手オンラインショッピングサイトには、高価格帯の歯磨き粉も販売されており、高価な商品=歯や歯ぐきに良い・効果が高いというイメージを持つ人も少なくありません。歯磨きへのモチベーションを保つためにあえて高い歯磨き粉を買う人もいます。
そこで本記事では、天然成分配合の歯磨き粉が持つ魅力とともに、見落とされがちな注意点についても掘り下げていきます。「歯にいい」「身体にやさしい」というイメージは本当なのか?今こそ歯磨き粉を見直してみませんか?
「天然成分配合」「無添加」「オーガニック」歯磨き粉の違い分かりますか?
歯磨き粉には「天然成分配合」「無添加」「オーガニック」など、体にやさしそうな言葉が並んでいて、何が違うのか分かりにくいと感じる方も多いと思います。
まず「天然成分配合」ですが、自然由来の成分が入っているという意味です。ミントやカモミールといったハーブ、重曹や海塩などが代表的です。ただし、少しでも天然成分が入っていれば表示できるため、「全部が天然」というわけではありません。
一方で「無添加」とは、体に負担をかけやすいと考えられる成分をあえて入れていないことを示します。例えば、保存料や人工甘味料、合成香料、着色料などが該当します。ただし「何を無添加にしているのか」は商品によって違うため、「無添加」と書いてあるからといってすべて安心というわけではなく、成分表示を確認することが大切です。
そして「オーガニック」は、農薬や化学肥料を使わずに育てた植物由来の成分を中心に作られた歯磨き粉を指します。海外には「USDAオーガニック」「COSMOSオーガニック」といった認証制度があり、マークが付いている製品は厳しい基準をクリアしています。日本では基準がやや曖昧ですが、認証マークがあればより信頼できます。
つまり、天然成分配合は「自然の恵みを取り入れている」、無添加は「余計なものを加えていない」、オーガニックは「自然環境や体へのやさしさを追求した本格派」とイメージすると分かりやすいと思います。
「研磨剤不使用」の落とし穴! 清掃剤≒研磨剤だった!?
歯みがき粉には、一般的なペースト状のタイプ、液体に近いさらさらしたタイプ、水のようにさらっとしたタイプ、少し湿った粉のタイプ、さらさらの粉のタイプなど、さまざまな形があります。これらの違いは主に「研磨剤」がどのように配合されているかによって決まります。
研磨剤には、歯の表面についた着色汚れを落とす作用があります。そのため、歯みがき粉のパッケージに「歯を白くする」と書かれている場合、特別なホワイトニング成分が入っていなくても、研磨剤など汚れを落とす成分が含まれていれば法律上その表示が認められています。
研磨剤は、着色汚れの除去やホワイトニング後の色戻り防止には有効ですが、一方で、歯ぐきが下がって歯の根元が露出している場合などには歯を削ってしまい、知覚過敏などの症状を悪化させることもあるため注意が必要です。
また、「研磨剤不使用」と書かれた歯みがき粉の中には、成分表示に「清掃剤」と記載されているものがあります。
日本歯磨工業会(日本国内で歯磨き剤や口腔ケア用品を製造・販売している企業で構成される業界団体)では研磨剤と清掃剤はほぼ同じ意味で使われています。
つまり、実際には研磨剤が含まれていることになります。これは「研磨剤」という言葉を避けて表現しているだけであり、場合によっては消費者に誤解を与える可能性があるのです。
また天然成分配合の歯磨き粉では研磨剤(清掃剤)として天然成分が使われているケースがありますが、研磨剤に天然成分が使われていようがいまいが、研磨剤には変わりないため、注意事項は一緒です。天然成分の研磨剤だから削れないというわけではありません。
発泡剤に発がん性はない!?けれども少ない方がいい理由

市場に出回っている歯磨き剤には、発泡剤として「ラウリル硫酸ナトリウム」が配合されています。この成分により、ブラッシング時に泡立ちが生じます。
ラウリル硫酸ナトリウムについて、「発がん性があるのでは?」という疑問を持つ方もいますが、現在のところ科学的な証拠に基づき「発がん性がある」とは認められていません。
例えば、IARC(国際がん研究機関)では、ラウリル硫酸ナトリウムは発がん性物質として分類されておらず、「発がん性のある物質リスト」にも含まれていません。
また、アメリカFDA(食品医薬品局)もラウリル硫酸ナトリウムの使用について特に問題視しておらず、一定の濃度以下での使用を許可しています。
さらに、CIR(化粧品成分審査専門委員会)では、ラウリル硫酸ナトリウムは「短期間の使用であれば安全」とされています。ただし、刺激性があるため、長時間の使用や高濃度での使用は避けるべきとされています。
さて、泡立ちの話に戻りますが、発泡剤の有無による効果を比較した研究論文では、泡立ちがプラーク抑制や歯肉炎抑制に有意な影響を与えることは確認されていません。つまり、歯磨き粉の泡立ち自体に清掃効果は期待できないということです。また、泡立ちが多いと磨いている部分が見えにくくなり、磨き残しのリスクが高まる場合もあります。
一方で、泡が出ることでブラッシング時の満足感が得られることもあります。毎日使うものなので、味や使用感が良い方がブラッシングのモチベーションにつながるため、泡立ちにはモチベーション維持というメリットもあります。
筆者自身の考えとしては、鏡を見ながら丁寧にブラッシングしてほしいという思いがあるため、発泡剤の少ない「低発泡」タイプや、発泡剤をほとんど含まないジェルタイプの歯磨き粉をおすすめしています。
歯磨き粉はブラッシングの邪魔をしている!?
ここで残念なお話をしなければなりません。それは歯磨き粉はブラッシングの邪魔をしてしまっているという事実です。
従来は「歯磨き粉を使うと効率よくプラークを取り除くことができる」と考えられていましたが、2016年の研究論文では「ブラッシング時に歯磨剤を使っても使わなくてもプラークの取れ方に影響はない」という報告があります。
むしろ歯磨き粉が歯と歯の間に入り込んでしまうと、溜まってしまった部分は歯ブラシの毛先が滑ってしまうため、汚れに届かない「スライディング効果」という現象を起こし、歯ブラシの清掃効果を弱めてしまいます。

つまり、歯磨き粉を使用しないで磨いた方がプラークが取れるということになります。
歯磨き粉を買うならこの有効成分が入っているかチェック
では、歯磨き粉を使うメリットは一体何でしょうか?せっかく歯磨き粉を使うなら、水で磨くより優位性が欲しいですよね!?
歯磨き粉を使うメリットとして「有効成分」が挙げられます。
有効成分には「知覚過敏の予防」「むし歯予防効果」「殺菌、炎症を抑える」「着色汚れを除去する」などがあるため、自分に合った有効成分が入ったものであれば使用した方が良いと考えられます。

特にフッ化物(フッ素)は市場の歯磨き剤の92%に入っており、普及によって子どものむし歯予防に大きく貢献しているため、フッ化物が入っているものが有用であると考えられます。
しかし、シェアが大きいのにもかかわらず、令和4年歯科疾患実態調査によると、フッ化物配合歯磨き粉を使用したことがある人の割合は52.4%と2人に1人とまだまだ使用率は低いです。
つまり、歯磨き粉を選ぶ基準として、
1. 自分自身が悩んでいるお口の中のトラブルを解決できる有効成分が入っているか?
2.フッ化物が配合されているか?(濃度が大切です)
を意識しながら購入することをおすすめします。
天然成分の歯磨き粉に含まれる有効成分は本当に効果があるの?
まず結論として、効果が認められる成分もある一方で、全く根拠がない成分も存在するため、「その成分に関するエビデンス(研究や実験の証拠)が十分にあるかを確認すべき」です。
インターネットで購入できる歯磨き粉の中には、「〇〇が〇〇に効く」といった表示が見られますが、実際には論文で効果が薄いと結論づけられていたり、そもそも科学的に価値のある研究が存在しない場合もあります。これを「エビデンスがない」と言います。
ここ数年で新しく登場した有効成分であれば、まだ研究が十分でないこともありますが、何年も経過してエビデンスが不足しているものについては、効果がほとんどないと判断してよいでしょう。
エビデンスがない成分の場合、その効果は成分自体によるものではなく、ほかの成分や偶然の要素(プラシーボ効果など)による可能性もあり、同じ効果を繰り返し得られる保証はありません。
1. 活性炭
2024年の論文によると、活性炭のホワイトニング効果はわずかであり、従来のホワイトニング歯磨き粉や10%過酸化尿素ゲルと比べて、歯の色の変化は小さいことが示されています。
さらに、活性炭は研磨性が高いため、長期間の使用によって歯の表面が粗くなり、エナメル質を傷つける可能性があります。また、フッ素と組み合わせた場合、活性炭がフッ素を吸着してフッ化物の「歯を守る効果」を減少させる可能性も指摘されています。
2. パールパウダー・珊瑚(コーラル)アパタイト
どちらも天然の清掃剤(研磨剤)として使用されています。研磨剤であるため、歯の表面の着色を除去し、実質的に歯を白く見せることは可能と考えられます。ただし、ホワイトニング(漂白)効果はありません。もちろん研磨剤のため歯の表面にダメージを与える恐れもあります。
パールパウダーに関しては、エビデンスが見当たらず、珊瑚アパタイトについても研究論文はほとんどありません。 しかし、多くの研究で微粒子ハイドロキシアパタイトが初期むし歯の再石灰化やエナメル質の修復に有効であることが示されています。珊瑚アパタイトの主成分はハイドロキシアパタイトに類似しているため、理論的には同様の効果が期待できると考えられます。
3. 重曹
重曹は弱アルカリ性で汚れを中和する作用がありますが、コーヒーやタバコの着色、歯垢(プラーク)を落とす力は限定的です。歯科医院専売の歯磨き粉に比べると効果は劣ります。
重曹にはフッ化物は入っていないため、むし歯菌の増殖を抑えたり、歯質を強化したりする効果はありません。
また、重曹は粒子が粗いため、研磨剤として使うと歯の表面を傷つけることがあります。歯の表面が削られると、歯が黄ばんだり、むし歯や知覚過敏の原因になることもあるため逆効果になることもあります。
4. キシリトール
キシリトールは多量に摂取しなければ特に害はありません。過去には「むし歯菌を抑える」「歯を強化する」とメディアで謳われていましたが、キシリトール自体に有益な効果がないことが研究で報告されています。
つまりほとんど影響を与えない甘味料なので、歯磨き粉に甘みを与えて歯磨きしやすくするという点では良いのかもしれません。
ただし、「天然成分=エビデンスがない」というわけではありません。有効な研究結果が報告されている天然成分もあります。
5. クルクミン
ウコン由来の天然成分である「クルクミン」は、多くの論文で抗炎症作用が報告されており、大阪大学の研究でもその効果が示されています。
このように、天然成分の効果を判断する際は、信頼できる研究結果やエビデンスの有無を確認することが大切です。
6. ネオナイシン
ネオナイシンは、九州大学大学院農学研究院と鹿児島大学大学院医歯学総合研究科などが携わり、乳酸菌が作り出す「ナイシン」という抗菌ペプチドをもとに開発された天然由来の抗菌成分です。チーズや乳製品の保存料にも使われるナイシンを、口の中のむし歯菌や歯周病菌に効くように改良したのが特徴です。
このネオナイシンは、天然成分をメインとして作られているため、体にやさしく安心して使えます。お口の中の細菌を抑える効果が高いのに、使ったあとはアミノ酸などに分解され、環境への負担も少ないのが魅力です。
ネオナイシンを配合した歯磨き粉や口腔ケア製品も登場しており、薬品に頼らずに自然の力でお口を清潔に保つ方法として小さなお子さんや高齢者にも安心して使えます。
オーガニック歯磨き粉は身体に優しい利点を活かしてみよう!
オーガニック歯磨き粉は、自然由来の成分を中心に作られており、農薬や化学肥料を使わずに育てられたハーブやオイルが配合されています。そのため、体や環境にやさしいという点が大きな利点です。
化学的な添加物をできるだけ避けたい方や、肌や粘膜が敏感で刺激を感じやすい方にとっては安心して使いやすい商品といえます。また、自然な香りや味わいを楽しめるのも魅力で、人工的な香料が苦手な方にも向いています。
一方で、欠点もあります。まず、合成成分を使わない分、泡立ちが弱く「しっかり磨けている感じがしにくい」と感じる方もいます。さらに、フッ素を含まないタイプも多く、むし歯予防効果を重視する場合には物足りないことがあります。また、原料や製造に手間がかかるため、一般の歯磨き粉に比べて価格が高めになりやすいのもデメリットです。
つまり、オーガニック歯磨き粉は「安全性ややさしさ」を重視する方にはメリットが大きい反面、「むし歯予防効果の高さ」や「使いやすさ」を求める方にとってはやや不便さを感じることがあるといえます。
むし歯予防の効果や使いやすさをさらに高めるためには、フッ化物入り(できれば1450ppm)のオーガニック歯みがき粉を使うのがおすすめです。また、オーガニック歯みがき粉でブラッシングしたあとに、ジェルタイプのフッ化物入り歯みがき粉を歯全体にぬり広げるように仕上げみがきをしてください。
歯周病予防の歯磨き粉は歯周病が治るわけではない
「殺菌剤」や「抗炎症剤」が含まれている歯周病予防の歯磨き粉が販売されています。
しかし、歯周病予防の歯磨き粉は「使えば歯周病が治る」というわけではありません。
殺菌剤や抗炎症剤などの有効成分は、歯周病の初期段階の「歯肉炎」を抑える効果はありますが、歯周病が進行した深い歯周ポケットまで到達することは期待できません。
歯周病を治すためには、日常のブラッシングに加えて、歯科医院で歯周治療と定期的なメインテナンスをすることが大切です。
歯科専売品と市販品の歯磨き粉の違いは?
歯科専売品の歯磨き粉が市販品と異なる点は「低研磨性」と「低発泡性」です。
1 . 低研磨性
「研磨剤(清掃剤)が少ない」という意味です。研磨剤は着色汚れを落とす作用があります。
歯磨き粉の「歯を白くする」という表示は、ホワイトニング効果のある特別な有効成分が入っていなくても、汚れを落とす成分が入っていれば法律で表示が認められています。
研磨剤は「着色汚れ」や、「ホワイトニング後の色戻りの防止」には有効ですが、歯の根元が露出している場合などは削れてしまい症状を悪化させる場合もあるので注意が必要です。
2 . 低発泡性(ていはっぽうせい)
低発泡性とは「発泡剤が少なく、泡立ちが少ない」という意味です。ジェルタイプであれば泡立ちがほとんど出ません。
歯科専売品と市販品でフッ化物濃度に差はあるの?
日本では製造販売承認基準によって、歯磨き粉にはフッ化物イオン濃度が1,500ppm以下に定められています。歯科専売品でも市販品でも最大で1,450ppmくらいの商品が販売されているため、フッ化物濃度の上限には差はありません。
まとめ
1. 研磨剤は歯の着色汚れを落とすが、研磨剤不使用表示でも「清掃剤」として研磨剤が含まれる歯磨き粉がある。
2. 発泡剤(ラウリル硫酸ナトリウム)に発がん性はないが、泡立ちが多すぎると磨き残しのリスクになる。
3. 歯磨き粉はブラッシングの効果を邪魔することがあり、使用しても使用しなくてもプラーク除去効果自体は変わらない。
4. 歯磨き粉の有効成分(特にフッ化物)はむし歯や知覚過敏予防に有効。
5. 天然成分の歯磨き粉には効果が証明されたものもあるが、効果が不十分なものも多い。
6. 「殺菌剤」や「抗炎症剤」は、歯周病が進行した深い歯周ポケットまで到達することは期待できない。
7. 歯科専売品は低研磨・低発泡が特徴。
この記事を書いた人

医療法人社団 統慧会 かわべ歯科 理事長 川邉滋次(歯科医師・子供の歯並び矯正・予防歯科)
参考文献
1. 紺谷洋子ほか: 歯ブラシの植毛部の状態による歯垢除去効果について 第3報. 小児歯誌, 24(3): 548(1986)
2. Cees Valkenburg et al: Does dentifrice use help to remove plaque? A systematic review. Journal of Clinical Periodontology, 43(12):1050-1058(2016)
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4. 厚生労働. 令和4年歯科疾患実態調査結果の概要. 24. 2023. https://www.mhlw.go.jp/content/10804000/001112405.pdf
5. Ribeiro, Edgar Pedreiro, et al. "Whitening efficacy of activated charcoal-based products: A single-blind randomized controlled clinical trial." Journal of Dentistry 143 (2024): 104877.
6. 橋詰桃代, et al. "入院高齢者における口腔カンジダ症と舌苔に対するネオナイシン-e 配合口腔用ジェルの効果に関する予備的研究." 老年歯科医学 37.1 (2022): 53-59.
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