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口を開けるとまた切れる…治りにくい唇の端が切れる症状:口角炎の原因と対策

更新日:2023年9月2日

はじめに


唇の端が切れる、血が出てしまう、かさぶたになって治りかけたところで口を開けるとまた切れてしまい、なかなか治らないという経験はありませんか?それは「口角炎」かもしれません。


口角炎は口角亀裂とも言われ、唇の端(唇の横)に炎症が起こる病気で、赤く腫れたり、ひび割れたり、化膿したりすることがあります。また、出血や痛みを伴うこともあり、口を動かすたびに苦痛を感じることがあります。


唇の端が切れる口角炎

しかし、口角炎は自然に治癒することもあるため、多くの人はそれを病気と認識せず、口角炎だけで医科や歯科を受診する人は少ないです。しかし、口角炎は口腔の環境や全身の健康状態を敏感に反映することもあるため、安易に見過ごすことは危険です。


そこで今回は、唇の端が切れる口角炎の原因と対策について詳しくまとめてみました。口角炎の痛みで悩んでいる方や、なかなか口角炎が治らない方に読んでいただければ幸いです。


目次▼


 

細菌による感染(黄色ブドウ球菌、カンジダ菌)


耳鼻咽喉科での口角炎の細菌検査では、日本人80人のうち黄色ブドウ球菌が48.8%、カンジダ菌が26.3%検出されたという報告があります。


子どもの場合は黄色ブドウ球菌による細菌感染が多く、成人の場合はカンジダ菌による真菌症が多いです。


黄色ブドウ球菌は、人間の皮膚の表面に存在しており、特に鼻やのどの粘膜にもよく見られます。この細菌は通常、人体に害を及ぼすことなく、健康な人々の常在細菌として存在しています。しかし、免疫力の低下した人や、傷口などの体の防御機構が低下した部位に侵入すると、感染症を引き起こすことがあります。黄色ブドウ球菌は高齢者で多くみられる誤飲性肺炎の原因菌でもあります。


ブドウ球菌
ブドウ球菌

カンジダ菌は酵母の一種である真菌です。真菌は酵母だけでなくカビやきのこも仲間です。


カンジダ菌
カンジダ菌

カンジダ菌は外から侵入してくる菌ではなく、皮膚や消化管、お口の中に元々いる菌=常在菌です。そのため、健康な人の体内ではカンジダ菌がいても発病することは少ないです。しかし、加齢や全身の病気、ステロイド剤や免疫を抑える薬を使用することにより、免疫系が弱っているときや体のバランスが乱れた時に症状が発生することがあります。


(唇の端が切れる口角炎の対策と治療方法)


お口の中の常在細菌により口角炎が引き起こされている場合には、正しい口腔ケアと、細菌感染に負けない免疫力をつけ、健康なお口の中や唇を保つことが大切です。そのためにも、歯科医院に行って正しいブラッシング方法や、お口の中のケア方法を受けてください。


自己流でやっていたブラッシング方法が、磨けていないだけでなく、歯ぐきにもダメージを与えてしまう場合があります。仮に自分自身で時間をかけて研究し、良いブラッシング方法にたどり着いたとしても、歯科の技術や知識は日々進歩し続けているため、歯科の専門家に聞いた方が早かったという結果になってしまいます。(車輪の再発明といいます)


また、カンジダ菌は糖質をエサにして増えるため、糖質の摂取を控えて増えすぎないようにすることが大切です。


唾液が減るドライマウスの場合、唾液に含まれる抗菌成分が減少することで発生しやすい傾向もあります。唾液を出す、保つためにも、お口の中をしっかり動かすトレーニングや、水分の補給、口呼吸があれば鼻呼吸に切り替えるなど対策をしていきましょう。


入れ歯を装着している方は、口の中だけでなく入れ歯のケアと歯科医院でのメインテナンスも必要です。


家での入れ歯のお手入れが不十分な場合、入れ歯の角や金具部分が唇に当たり傷つけたりすることで、そこがカンジダ菌に感染する場合があります。お口の中だけでなく入れ歯もしっかりと清掃するようにしましょう。


入れ歯のメインテナンスは大切

また入れ歯のメインテナンスをしていない、不具合が発生しても放っておいてしまった場合、人工歯がすり減ってしまい入れ歯の高さが低くなってしまうことがあります。咬み合わせの低い入れ歯を使用していると唇の端にシワができ口角炎が起こりやすくなります。


口角炎は、要介護高齢者に比較的多くみられます。唾液の減少や免疫力の低下、自分自身で上手く口腔ケアができなくなったことによって発生しやすいと考えられます。


入れ歯の清掃と入れ歯装着の指導を行なっても改善しない場合には、抗真菌薬の軟膏を塗って経過を見守っていきます。歯科では通常、フロリードゲル経口用2%などの外用薬を処方しています。


ビタミンの不足


口角炎はビタミンB2(リボフラビン)や ビタミンB6(ピリドキシン)などが不足していると口角炎が発症しやすくなります。これらのビタミンの摂取不足以外に、胃腸障害や抗生物質の服用、ストレス、肝障害で不足してしまう場合があります。


1. ビタミンB2の不足


ビタミンB2は、体内のエネルギー代謝や細胞の成長と再生に関与する重要な栄養素です。

ビタミンB2不足による口角炎のメカニズムは以下の3つが考えられます。


A. 皮膚の乾燥


ビタミンB2は、皮膚や粘膜の健康を維持するために必要です。不足すると、皮膚や口角の乾燥が進み、傷やひび割れが生じる可能性が高くなります。それにより、細菌や真菌が感染しやすくなり、口角炎が発生します。


B. 免疫機能の低下


ビタミンB2は免疫機能の正常な運営にも関与しています。不足すると免疫機能が低下し、口角周辺の細菌や真菌への感染リスクが高まります。


C. ヘモグロビン合成の低下


ビタミンB2は、赤血球のヘモグロビン合成にも必要です。ヘモグロビンは酸素を運ぶ役割を果たしており、不足すると細胞に十分な酸素が供給されず、口角炎などの口内の組織の健康に影響を与える可能性があります。


(ビタミンB2を多く含む食材)


ビタミンB2を多く含む食材としては、肉(レバーやハツ)や魚介(うなぎ・かに・いわし・さば)、納豆やきな粉、チーズ、卵、野菜、海苔やわかめ、アーモンドやくるみ、落花生などがあります。


口角炎対策のビタミンB2を多く含む食べ物

2. ビタミンB6の不足


口角炎とビタミンB6不足の関係については、以下のようなメカニズムが考えられています。


A. 免疫機能の低下


ビタミンB6は、免疫機能を正常に保つために必要な栄養素の一つです。不足すると、免疫機能が低下し、口角周辺の細菌や真菌の感染リスクが高まります。


B. 口内粘膜の健康維持


ビタミンB6は、口内粘膜の健康を維持するためにも大切です。ビタミンB6の不足は、口角の粘膜の健康を損ない、口角炎のリスクを増加させる場合があります。


単にこれらのビタミンを含む食材の摂取が不足しているだけでなく、胃腸や肝臓の障害、抗生物質の服用、ストレスでも不足してしまうことがあります。


(ビタミンB6を多く含む食材)


ビタミンB6を多く含む食材には、魚介類(かつお、さば、さけ)、野菜(ししとう、モロヘイヤ、ブロッコリーなど)、玄米、胡麻、落花生などがあります。


ビタミンB6を多く含む食材
ビタミンB6を多く含む食材


免疫力の低下


免疫とは名前の通り「感染症などの(疫)から免れる」という意味です。体内に異物(ウイルスや細菌など)が侵入しても病気を引き起こさないように働く体の防御機構のことです。


体に細菌が侵入すると、免疫システムの1つである「T細胞」がやっつけてくれますが、亜鉛が不足するとこのT細胞が減少してしまい、免疫が低下します。


そのため、亜鉛が豊富に含まれている食材を積極的に摂りましょう。亜鉛は肉や魚介類に多く含まれているため、ヴィーガンやベジタリアンの方、消化能力が低下した高齢者は不足しやすいと考えられます。サプリメントで亜鉛を摂取する場合は摂取量を確認し、乱用しないように注意してください。


全身の病気としては糖尿病や貧血があります。梅毒やHIV感染症などの性感染症も口角炎を含めた口の中の病変が生じます。特に梅毒患者報告数は2011年から徐々に増加し続けています(2019〜2020年を除く)。口角炎が治らないことから、このような病気が発見される場合もあるため、長引く場合や繰り返し発生する場合には、ご自身で解決せず医科または歯科へ相談をしてください。


似ているようで違う口角炎と口唇ヘルペス


口角炎と口唇ヘルペスは、同じような唇の周りの問題ですが、原因や症状に違いがあります。口角炎は、主に口の両側の角にできる炎症です。ウイルスの関与はありません。口角炎の原因菌は常在菌のため、他の人から感染する心配はありません。


一方、口唇ヘルペスは、単純疱疹ウイルス(HSVー1)によって引き起こされる感染症です。口唇ヘルペスの症状は、唇や口の周りに水疱(水ぶくれ)ができ、その後、痛みやかゆみを伴って潰れてしまうことです。感染が続く場合、再発することもあります。この単純疱疹ウイルスは、感染した人から唾液や皮膚の接触から他の人に感染することがあります。


口唇ヘルペスの歯科での対応として抗ウイルス薬の処方があります。


口唇ヘルペス
口唇ヘルペス

 

まとめ


1. 口角炎は唇の端に炎症が起こり、赤く腫れたりひび割れたりする病気。


2. 口角炎の原因には細菌感染(黄色ブドウ球菌、カンジダ菌)、ビタミン不足、免疫力の低下がある。


3. 口角炎の原因となる細菌には黄色ブドウ球菌とカンジダ菌が挙げられる。


4. ビタミンB2とB6の不足が口角炎のリスクを高める。


5. 亜鉛不足や全身の病気によって免疫力が低下し、口角炎を引き起こす可能性がある。

 

この記事を書いた人


かわべ歯科院長川邉

医療法人社団 統慧会 かわべ歯科 理事長 川邉滋次


 

参考文献


1. 岸本麻子, et al. "口角炎について." 耳鼻と臨床 56.3 (2010): 101-110.


2. Kitamura, Hidemitsu, et al. "Toll-like receptor–mediated regulation of zinc homeostasis influences dendritic cell function." Nature immunology 7.9 (2006): 971-977.


3. 余田敬子. "口腔・咽頭に関連する性感染症." 日本耳鼻咽喉科学会会報 118.7 (2015): 841-853.


4. 医歯薬出版(編) : 日本食品成分表2023 八訂. 医歯薬出版. 東京. 2023.


5.厚生労働省. 「日本人の食事摂取基準」(2020年版).

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/eiyou/syokuji_kijyun.html

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